Skybound ace ―   作:心ここにあらず

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エピソード11

「ふぅ〜とりあえずまずは第一ミッションクリアってところか…」

 

「何のことだリオ?」

 

「??」

 

いやなんで翔陽まで?マークなんだよ!

いやまぁどうせ忘れてるだけなんだろうけどさ…

 

 

「いや元々この試合に勝つためのゲームプランとして第一セットを奪うことは必須条件だったんだ。」

 

「いやお前勝つためって…相手優勝候補だって知ってたんだろ?」

 

「もちろんさ…その上で俺とコーチの中でこのゲームの勝率を計算してみたところ…」

 

「「…」」

 

「客観的にみて6.4でこっちが有利かなと」

 

「「!?」」

 

「マジかよリオ!」「優勝候補相手にウチが!?」

 

「あぁ…贔屓目抜きにしても俺と翔陽の実力は向こうの選手たちに負けていないと思う…なんなら攻撃時に関して言えば向こうよりもうちの方が数段上だと思う…そして肝心の守備面に関してもこの1年間で佐藤くんは曲がりなりにも俺たちについてきた実績がある…あの程度のサーブや正面のスパイクなら難なくあげるだろうしね…これを加味した結果がさっきの言葉に繋がるって訳だ」

 

「…マジかよ」

 

「うちもちゃんと勝算あったんだね…」

 

「ここまでが予定通り…そしてこの後がこのゲームの最も大事なセットになる…みんなにはよく聞いて欲しいんだが」

 

「「「…」」」

 

「うちはおそらく…長くゲームを続ければ続けるほど敗戦の色が濃厚になっていくだろう」

 

「「「!?」」」

 

「ここまで圧倒じゃんか!」

 

「それは俺と翔陽に対してなんのデータも対策もなかったからだ…それにサーブやスパイクに関しても多少は初見殺しに近い結果だったからな…そして強ければ強いチームほど"慣れ"るのも早い傾向にある…それにバレーはどこまで行こうとチームスポーツだしね。これは別に攻めているわけでもなんでも無いから気にしないで聞いて欲しいんだけど…うちはチームの過半数がほぼ初心者で構成されている…チームスポーツである限り俺と翔陽でも全てをフォローできるわけじゃない…強豪校や二回戦から戦う中学がそれを狙ってこない訳がないからな」

 

「「「…」」」

 

「とは言え…別に勝てないとは言ってない!…ここからが本当の勝負ってだけだ!」

 

「「「!?」」」

 

「勝ちに行こうぜみんな!」

 

「おう!リオ!」

 

「そ、そうだなリオ」「そうだねリオ!」「はい!先輩!」

 

 

 

ここまで第一セット。

リオと翔陽の暴れっぷりが観客席のざわめきや期待感を証明していた。

 

初参加校が歴史ある名門を破るんじゃないのか…そんな淡い期待を抱くものも少なくなった

 

そしてリオと翔陽の攻撃は…

とにかく速く、強く、読めない。

特に神凪リオの実力――あれだけ強力なスパイクとサーブを持ちながらセッターもこなす事が出来…スパイカーである翔陽を自在に操るスタイルは北川第一にとって完全に未知だった。第一セットはどこか皆雪ヶ丘というチームを舐めていたことでどこか迷いが生じていたように感じた

 

だが。

 

第二セット、北川第一の眼には迷いが消えていた。

 

サーブは強烈なジャンプサーブというわけではなく通常のアンダーサーブのはずだが…

問題はそこではなかった。

 

「サイドに流すぞ!」

北川第一のエースの声が響く

 

レシーブ陣の4人のうち――

狙われているのは3人。

 

経験の浅い1年、そして普段は別競技を行っている助っ人の2人。

完全に“弱点”を突きにきていた。

 

「っぐ、また俺か!」

 

レシーブが乱れる。

リオは跳んで対応しようとしたが距離的にどうしても無理がある。

 

翔陽がフォローに飛び込む。

 

「リオ! まだいける!」

 

レシーブが乱れる。

リオは跳んで対応しようとしたが、どうしても無理がある。

 

翔陽がフォローに飛び込む。

 

「リオ! 頼む!」

 

「任せろ!」

 

なんとか繋ぎ、トスを上げるが形にならない。

相手はそのままチャンスボールをオープンで上げ強烈なスパイクを叩き込んだ。

 

 

――ドンッ!

 

【1:0】

 

(やっぱ狙ってきたか…守備を崩されるのが一番きついな。こっちの攻撃の形が作れなくなる)

 

 

 

 

その後も北川第一は一貫して狙ってきていた、

 

 

「またこっちか!」

 

 

レシーブが跳ね上がり、リオがコート外まで走って拾う。

身体を捻りながらの無理な体勢であるが…それでもスパイクが打てる位置までなんとかトスを上げる。

 

「翔陽ッ!」

 

「任せろォッ!!」

 

翔陽は叫びながら打ちぬく

だがリオが攻撃できる位置にいない今スパイクを打てる選手は翔陽しかいないことは北川第一も把握しており翔陽に対して3枚のブロックを敷いてきていた

 

 

「うぉ!?」

 

「くそ!」

 

ブロックに当たる――

がボールはそのままネット中に吸い込まれなんとか得点を上げることに成功

 

歓声、そして安堵のため息が混じる。

 

 

「相手の選択肢を無くせっ!1番を封じれば2番しか攻撃パターンは残ってないぞ!」

 

 

相手の監督からそのような声が響き渡る

 

翔陽は追いかけるように走りながら歯を食いしばった。

 

「クッソ……俺がもっと決めれていたら!」

 

 

その後も決めたら決められたらの両者譲らない展開が続く

こうなると単純な速さや高い打点だけでは得点が決まらない。

 

点差はずっと拮抗。

 

10-10

12-12

14-14

 

守備陣の狙われた3人が下を向き悲壮感を漂わせる。

「ごめん、また弾いちゃって……」

「俺がミスばっかしてるから……」

「どうしたら……」

 

その瞬間、リオは振り返って叫んだ。

 

「顔上げろ!!!!」

 

体育館が一瞬静まるほど通る声。

全員が顔を上げる。

 

「俺たちはチームで戦っている!

一人が崩れたら、他の五人で立て直す。

それがチームだろ。

“自分のせい”なんて思うな!、ここでは勝つことだけを考えることだ!」

 

翔陽も拳を握りしめて叫ぶ。

 

「落としたら拾う!崩れたら俺たちが立て直す!

だから、自信持ってあげてくれ!!」

 

 

「「「リオ(先輩)…翔ちゃん(翔陽)(日向先輩)」」」

 

リオと翔陽の言葉で三人の表情が先程までとは変わったことが分かる

腹が据わり、目に闘志の光を宿す。

 

 

◆第二セット中盤…

 

相手サーバーがまた一年生を狙ったサーブを撃つ。

今度は一年の肩口へえぐるような軌道。

 

 

 

「来いっ……!」

 

一年はステップを一歩左へ寄せ、ボールの落ち際に体を入れた。

ドライブの揺れを見極め、胸トスではなく腕を張って角度作り――

 

バシッ!

 

綺麗な形でリオの真上に返った。

 

「ナイスレシーブ!!」

 

リオはその一瞬…レシーブの完璧さ…否…成長に、久しぶりに“鳥肌”を感じた。

 

助走を取る翔陽へ向けて完璧なフロントトスを上げる。

平行より少し速い、“セミ”に近い軌道。

 

翔陽はブロックの手の位置を見る。

二枚が寄ってきている。

 

(ブロック2枚!――空中で切り返す!!)

 

跳び上がってから、肩のラインを一度ストレートへ向ける。

ブロックが釣られた瞬間、

空中で身体をクロス側へひねり返した。

 

――ズドンッ!!

 

「決まったぁぁ!!」

 

 

 

 

 

18-18

19-19

21-20

再びリード。

 

相手は焦りつつ、翔陽の助走パターンに再び意識を割く。

 

 

「2番の入りに合わせろ!

奴へはリードブロックだ!ストレートに寄れ!」

 

リオはその声を聞きながら、密かに笑った。

 

 

(なら――次は)

 

翔陽へアイコンタクト。

 

「翔陽!ちょいちょい…」

 

 

「なんだ??」

 

 

 

ーゴニョゴニョゴニョ

 

 

 

 

翔陽は一瞬驚くが、すぐに獰猛な笑みで頷く。

 

 

「任せろ……!」

 

 

こちらは翔陽のサーブで相手を乱し相手はなんとかボールをあげるものの乱れたレシーブからスパイクを放つことは厳しくこちらのチャンスボールとなる

 

 

「チャンスボール!」

 

「リオ先輩お願いします!」

 

 

 

「2番だ!2番が来るぞ!」

 

 

ここまで基本的に得点を決めてきたのは2番の翔陽ということもあり初手に相手にイメージさせたリオのスパイクへの印象はかなり薄くなっていた

 

 

ースッ

 

 

「い、いや!違う1番だ!1番が来るぞ」

 

 

「なに!?」

 

 

翔陽がリオへセットアップする形――

バックアタックの体勢へ入る。

 

 

 

若干15歳の中学生でありながら最高到達点は340センチを超える数値を誇る。

相手も気づくのが遅れた。

 

「やべっ、1番が来たぞ!!」

 

だがもう遅い。

乱雑に並んだ3枚ブロックの上から

 

リオは空中で身体を反らせ、

トップスイングから一気に叩きつける。

 

ーードガァァァン!!ーー

 

レシーバーが一歩も動けないほどの速度と角度。

試合終盤にして北川第一は理解するのだった

 

雪ヶ丘というチームの最大の矛という存在が誰であるのかを

 

 

 

 

 

 

 

 

22-21

23-22

24_23

 

相手はライトへのラインショット、OHのインナー、クイックと多彩な攻撃を見せてくる。

守備陣三人は足を止めず、必死に読み、跳び込み、繋ぐ。

 

リオはものすごい運動量で動き――

どんな乱れトスでも形に変える。

 

翔陽もブロックをかわし、なんとか得点に繋ぎリードを守り続ける

 

 

 

24 – 23

あと一点。

 

 

マッチポイントとなった後のこのサーブ権…サーブを放つことを許されたのは奇しくも今試合10点以上サービスエースを取り続け北川第一を何度も絶望に叩き落とし早くも今大会No. 1サーバーとの呼び声も産出している男…リオからであった

 

 

体育館の空気が張り詰めている。

リオはボールを手に、

呼吸を整えるようにゆっくりと視線をコートへ走らせた。

 

 

全員が腰を落として完全警戒。

 

「来るぞ……ぜってぇ終わらせねぇ」

「構えろ、絶対に止めるぞ!」

「…」

 

彼らは知っている。

リオが本気で打つスパイクサーブは、

レシーブ"不可能の暴力"そのものだと。

 

翔陽が前から叫ぶ。

 

「決めろリオ!!ここで終わらせろ!!」

 

ーーダン、ダン、ダン

 

「…ふぅ」

 

(ここまで色々あったな…ほんとよく初心者ばかりのこのチームが優勝候補なんて言われている強豪校相手にこのスコア…出来すぎも良いとこだな…でも俺は出来すぎでもなんでも良い…今はただ…勝利という看板が欲しい)

 

ボールを高く一回弾ませる。

跳ね上がったボールを手のひらで受け止めた瞬間、

リオの体から“雑念”が完全に消えた。

 

右足、左足――

重心を鋭く前へ乗せながら四歩助走。

最後の一歩は床を抉るように大きく踏み、

爆発的な跳躍へと変換される。

 

空中で完全に水平になるほど反り、

腕を後ろへ引き切る。

 

 

いくつもの得点を編み出したリオの剛腕が振り抜かれた。

 

ーードガァアアァン!!!ーー

 

空気が裂けるというより、

“ボールを殴り飛ばした”衝撃音が体育館に響く。

 

ボールは――

直線。一直線。

しかし途中で加速したようにさらに伸びた。

 

ボールはネットの上を“針の穴を通すように”抜け、

そのままストレートライン際へと落下。

 

レシーバーが必死に腕を伸ばすが、

 

ーーギュルンッ!!!ーー

 

歪な回転を生み出したボールに腕を弾き飛ばされ、

ボールはコート奥のラインに真っ直ぐ落ちた。

 

 

◆決着

 

体育館が揺れるような歓声。

ベンチが跳ね上がる。

翔陽が走ってきてリオに飛びつく。

 

 

「「「ウォォォォ!!!」」」

 

「「「リォォォォ!」」」

 

 

ーードタドタッ!

 

 

「イッテェおい!やめろ!ははは!」

 

「もうほんとすごいよ!リオと翔ちゃんも!」

 

「泣いてんじゃねぇかイズミン!」

 

「そういうコージも!」

 

 

 

よく見るとチームメイトの俺と翔陽以外のみんなが泣いていた

 

 

「はい!感動中のところ悪いね!そろそろ整列お願いしますね!」

 

 

「あ、すいません…おい整列するぞ!」

 

 

「「「はい!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合が終了し整列しながらも睨み続けてくる男を無視しながら俺たちは帰宅準備をする

 

 

「悪りぃ。ちょっとトイレ行ってくるから先駅向かってくれ!」

 

「おう。早く追いついてこいよ〜」

 

「あいあい〜」

 

 

そう言い残しトイレに向かいドアを開けようと瞬間

 

 

ーーガチャーー

 

 

「あ、」

 

「ん?」

 

 

中から白のジャージに紫のラインが入ったジャージをきた俺とそこまで体格の変わらない大男が立っていた

 

「あ、すんません。」

 

「…君は…雪ヶ丘の1番だな?俺は白鳥沢学園の牛島若利というものだ。」

 

「え?はぁ…」

 

「君のプレーは見た。

 スパイクもトスも、全ての技術が中学離れしている。そして何よりサーブとスパイク。あれだけ見るなら全国でもそうはいないだろうな。それに"良いもの"を持っているようだな」

 

 

そう言いながら牛島さんは俺の左腕を見た

 

 

「…ところで君はどこの高校に進学するのかは決まっているのか?」

 

「いや、m」

 

「あれあれあれ!天下のワカトシくんともあろうものが試合後に疲れたイタイケな中学生を虐めてるんですか!?」

 

「む?」 「次はなに?」

 

 

俺と牛島さんが声のした方を振り返るとそこには

 

白色のジャージに水色のラインが入ったこちらも180センチは軽く超えているシュッとしているどこかチャラ目な男が立っていた

 

 

「…及川か」

 

「ごめんねぇ一番くん〜こいつ怖かったでしょ?大丈夫?」

 

「いや、ほんとなに?マジで何この状況…」

 

「俺は青葉城西高校のキャプテンやってる及川徹って言うんだけど君凄いねぇ…見てたよさっきの試合…あそこまでの能力なら県内では無敵かもね…」

 

「県内…っすか」

 

「あぁ勘違いしないで…君の実力は間違いなく全国クラス…いやもしかしたら能力だけなら世代No. 1かも…けど…君がいても全国一位になれるとは限らない」

 

「…」

 

「君…今日はセッターやってたけど本来はスパイカーでしょ?」

 

「…はい」

 

「回りくどいの嫌いだからはっきり言うけど君…ウチ来なよ…俺なら君をさらに強くしてあげられる…それこそそこにいる"最強"にも勝たせてあげるよ」

 

「…」

 

「俺たちの会話に割り込んできたのは俺より先にアピールするためだったか及川…1番…」

 

「神凪っす…神凪リオって言います」

 

「神凪がうちに来てくれるなら俺が特別に指導してやる…俺はお前と同じサウスポーだし選手としてのスタイルも似ている…なによりさっきそいつが言った通り"最強"を教えてやるぞ?」

 

「はっ!相変わらず面白いくらいの自信だな!」

 

「??本当のことだからな…」

 

「「…」」

 

「あ、あのすんません…勧誘とか色々有難いんすけどちょっとまだ大会中なんで今はそっちに集中させてもらいます。また終わったら色々考えるんでそん時はお願いします」

 

「「…」」

 

「ま、そだね。元々ダメ元だし今日のとこは…いっか…そんじゃあね神凪くん!」

 

「…騒がしい奴め…それとさっきのことよく考えておいてくれ…うちに来てくれるなら後悔はさせないと約束しよう」

 

 

 

 

 

そう言い残し高校バレー宮城県内最強選手のNo. 1とNo.2は帰って行ったのだった。

 

 

 

「あ、アリサさんにも報告しねぇと!」

 

 

 

 

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