Skybound ace ―   作:心ここにあらず

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エピソード12

牛島さんと及川さんの勧誘イベントを上手く躱した俺は既にみんなが向かっているであろう駅まで歩いて行こうと体育館出口を出ると

 

そこには

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……くそ。まだだ…負けたままじゃ終われねぇ……!次だ!次は必ずお前と1番を倒して俺がコートに1番長くいてやる!覚えていやがれ!」

 

「…おう!次もぜってぇ負けねぇ!いつでもかかってこい!」

 

そう言い残す影山はこちらの方に歩いてきた

 

 

「…!?テメェは!?」

 

 

「…悪りぃちょっと聞いちまったわ」

 

 

「…別に良い…聞かれてもやることは変わんねぇ」

 

 

「…影山くん?だっけ?」

 

 

「なんで名前!?」

 

 

「悪りぃ俺一応キャプテンだからさ、チーム名簿とか見れるのよ…ま、それは良いんだけど…【王様】とか言われてるらしいじゃん?」

 

 

「…ちっ!」

 

 

「…正直初めて聞いた時はなんて誇り高い異名なんだろうって思った…けどその反応や今日のお前のチームメイトの反応…対応を見ているうちにそれがポジティブな意味じゃなく揶揄されている言葉だと気づいた」

 

「…」

 

「こんなこと俺に言われても嬉しくねぇしイラつくだけだと思うけど…バレーは1人じゃ出来ねぇぞ?…俺もさっきある人に言われたんだけどさ…俺1人が上手くても全国一位にはならないらしいぞ?それよか全国出れるのですら危ういかも…なんでも1人でできれば良い…お前そんなこと思ってたんじゃないか?」

 

「ッ!?」

 

「…だから俺たちみたいな素人チームに負けた…勿論お前以外にも問題は沢山あっただろうな。「勝って当たり前」「素人」「体格の差」…そちらが俺たちを見下す理由なんていくらでも思いつく…」

 

「でもな…セッター…それもあのチームの軸であるお前がもっとメンバーを使いこなすことができればウチは勝てなかったかも知れない…もう俺がなにを言いたいのか分かるだろう?」

 

「何様かと思うけど…お前は今日勝った俺たちと同じくらいデケェ経験をしたかも知れない…ほらどっかの監督も言うだろう?」

 

「【負けたことが財産になる】ってな!どうせなら負けたことをバネにしてもう一度上(高校)でやろうぜ!」

 

 

「!?当たり前だ!…クソッ!思い出させやがって!」

 

 

「…じゃあな影山…」

 

 

「…名前…名前はなんだ」

 

 

「…くく…神凪リオ…リオでいいぞ」

 

 

「…そうか…」

 

 

そう小さく言い残し影山は去って行った。すれ違い様に小さく「ありがとな」って聞こえたのは幻聴じゃないはずだ。もしかすると上でやる時は本当のコート上の【王様】になってるかもな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●その日の夜

 

 

「そうそう…翔陽ってやつなんだけど今度日本に帰ってきたときアドバイスしてあげて欲しいんだ…ポテンシャルは未知数…体格は劣るけどセンスやバレーに対する意欲は文句なし。俺が教えれることは教えた…うん…お願い」

 

 

 

俺はイタリアにいるパパに俺と翔陽のことを見て欲しいと頼み込んでいた。ぶっちゃけ俺が翔陽に教えれることはもうないし基礎はほぼ固めたからここからは自分次第なんだが…それだと必ず壁にぶつかるはずだからな

 

 

 

ーーぷるるるーー

 

 

画面を見ると声を聞きたいと思っていた女性の名前が表示されていた

 

 

「もしもし!うん…勝ったよ!…身長も去年より伸びたしもうアリサちゃん上から見下ろせちゃうと思うよ…」

 

 

アリサちゃんから今日の試合について色々聞きたいらしく電話をかけてくれたのだった。俺は15歳…アリサちゃんは18歳で共に受験が忙しく電話はよくするけど会うのは去年のクリスマスに東京まで行ってデートしたぶりなのだ…

 

 

「…うん…迷ってる…東京に行っても楽しそうだけど…こっちにきてリエーフくらい気を許せる友達も出来たんだ…うん…ごめんね。大会が終わったら必ず会いに行くから…うん…愛してる…おやすみ」

 

 

 

俺はそのまま2時間ほど電話したのち終了したのだった。

それにしても高校…か。宮城には世代No. 1と呼び声高い大エースと総合力ではそいつすら凌ぐ技量の化け物がいる

でも東京にも昔…人生で初めてバレーで俺に土をつけた奴らも居る…ガキの頃で、あのレベルなら今は牛島さん並みの怪物に成長している可能性もある…

あとはリエーフともう一度同じコートに立つのもありだなぁ

 

ま、今は大会に集中しねぇとな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●翌日 2回戦 泉館中学校

 

 

俺たち雪ヶ丘は昨日と同じ体育館で2回戦を迎えようとしていた。2回戦の相手は泉館中学校…ぶっちゃけ簡単に言うとただの参加校である。一回戦がお互いに弱小校同士の衝突だったため…どちらが勝ち残ってもシードの北川第一とやる運命だったのである

 

 

ーードパァァァァァァァァン!!ーー

 

 

「「と、とれる訳ねぇ」」

 

 

「「「うぉぉぉぉ!」」」

 

 

「9本連続!サービスエースの記録って何点だっけ?」

「11とかじゃなかったっけ?」

「これじゃあ記録を破るのは今日だな!」

 

 

 

北川第一の守備陣を崩壊させたリオのサーブを参加校同然の中学生に取れと言う方が不可能な話でありこの試合も初手からサービスエースが続いていた

 

 

ーードパァァンァァァァァァン!ーー

 

 

「ぐっ!」

 

ーーギュルン!ーー

 

 

「「「うぉぉぉぉ」」」

 

「記録更新だぁ〜!」「まじやべぇって!」「いやでも相手弱小だろ〜?」「お前出来んのかよ」「出来ませんけど〜」

 

 

 

 

 

個人の記録では俺が宮城県の連続サービスエース記録を叩き出したりなど二回戦も2戦セットを先取り先取で完勝。この日は勝てば2試合あるので昼食を食べたのち準々決勝が始まる…

 

 

 

 

 

 

 

●準々決勝 千鳥山中学校

千鳥山は強豪校であり北川第一も苦戦を要するならここからだろうと予め予期していたほどの実力者集団である。去年まで在籍していたリベロはあの白鳥沢や青城からもスカウトが届いていたほどの逸材だったらしい。

 

「勝負してみたかったなぁ〜」

 

今年昨年ほどの守備力はないそうだがそこは強豪校らしく今年も安定した強さを身につけてきた。チームカラーとしては突出したものはないが総合的にレベルの高いチームだそうだ。

 

 

 

 

雪ヶ丘の主将であるリオは、コイントス後にベンチへ戻りながら小さく息を吐く。

 

「……やっぱ強豪校は場慣れしてんなぁ。…今回は苦戦は免れねぇかも知れねぇな」

 

隣を歩く翔陽は、逆にワクワクした顔で笑っていた。

 

「でも倒しがいあるよな!俺が跳んでぶち抜いてやる!」

 

リオは苦笑しつつ、胸の中で火がつく感覚を確かに感じていた。

 

 

 

 

千鳥山のサーブはコースがいやらしい。

4枚守備のそれも両サイドの前に落ちる軌道、ラインギリギリの深いボール、速いフローター。

雪ヶ丘は最初からレシーブが乱れ、トスは綺麗に上がらない。

 

リオはブロックに張り付く2枚を見上げながら、ぎりぎりの体勢でトスをあげそれを翔陽が捻じ込む

 

バチィィン!

 

1試合目の相手だったら決まっていた…だが千鳥山のリベロが床を擦る音が響く。

 

「「「うぉぉぉ!!あれ拾うのかよ!」」」

 

「やっぱよく鍛えられてんなぁ」「流石は強豪!」

 

観客が思わず声を漏らすほど、千鳥山は驚異的じみた粘りを見せてくる。

 

「チャンスボール!」

 

リオは苦笑し、こちらへ返ったボールを見てすぐに助走に入った。

 

「翔陽頼む!」

 

「おう!」

 

「お願いします!」

 

 

ーードスッ!ーー

 

 

「くるぞ1番だ!」「右3枚締めろ!」「「おう!」」

 

 

流石は強豪校…この2戦でうちの情報は丸わかりって訳だ…

 

でもな…そんな簡単に止められるほど

 

(やわじゃねぇよ!)

 

 

俺は助走距離を確保したのち全力で跳躍…そして体を大きくしならせ左腕を大きく回しボールを叩き落とす

 

 

ーードンッ!ーーバギャァァァァァァァァァァァァン!!ーー

 

 

「ぐはっ!」

 

 

「まだだ!ワンタッt」

 

「いや無理だ…」

 

 

 

「「「うぉぉぉぉ!!」」」

 

 

 

「!?」

 

 

 

リオが放ったスパイクは3枚ブロックの1番右のブロックの手のひらに衝突したがその程度でボールの勢いを全て殺しきることが出来ず

 

ボールは手が届かないほど遥か後方へ

 

 

 

「シャア!!」

 

 

「ナイスリオ!」「うぉぉぉ!次!次俺にくれ!」

 

 

そこから雪ヶ丘は攻撃を止めず攻め続けたがコチラの攻撃は翔陽ですらギリギリ…俺でも少しでもトスの位置が下がればブロックに捕まってしまいそうなほど追い込まれたりもしたが…

 

そしてようやく、千鳥山のブロックが遅れた瞬間——

 

ーードゴォォォンッ!ーー

 

翔陽のストレートが抜けてなんとか第1セットを25-22で先取。

 

 

■ 第2セット

 

千鳥山はあいも変わらずサーブもブロックも、この2試合で雪ヶ丘を研究し尽くしたかのように的確だった。

 

翔陽の助走に合わせてブロックが2枚、リオには常にマークが1枚多い3枚でのブロック。

俺は苦しい中、ミドルを織り交ぜるが、それすら拾われる始末。

 

ここにきて攻撃陣と連携の選択肢の少なさが明確に弱点として現れ始めた

 

千鳥山の声がよく響く。

 

「粘れ!返してけば必ずチャンスは来る!」

 

接戦のまま中盤。

リオは呼吸を整えながら、翔陽の背中を叩いた。

 

「翔陽、次はCから飛べ。俺がツーのモーションから持っていく」

 

 

「オッケー!」

 

リオは自らが囮とセッターの役割を両方こなす作戦に出ようとした

そしてサーブカットが乱れたが、懸命に上げたボールを俺は助走を数歩だけ確保し跳躍

 

 

「ツーで打ってくるぞ!飛べ!」「「おう!」」

 

 

案の定千鳥山は俺がツーで打ってくることも北川第一の時で予測していたらしく俺に合わせてブロックが飛び上がる

 

(きた!!)

 

俺はその瞬間…スパイクの体制から空中で体制を一度整え両腕を上に持っていきトスを上げる体制をつくった

 

 

「違う!セットだ!攻撃は2番だ!」

 

 

相手の主将がこちらの意図を見抜くものすでにブロックは上がっている

 

 

ーーパスッーー

 

俺は左端にまでロングトスをあげそこに合わせて翔陽が跳躍する

 

 

ーードン!ーードパァァンン!!ーー

 

 

翔陽のスパイクは誰もいないコートの端に突き刺さった

 

セット後半、雪ヶ丘は攻撃のテンポを完全に上げリオがフェイントとツーでのスパイクを織り交ぜ始めたことで主導権を握ることに成功

翔陽はジャンプサーブで揺さぶり、ミドルも流れに乗り始める。

 

千鳥山も粘るが——

 

最後はリオがフェイントを落とし、25-23。

ストレート勝ちではあるが、スコアは1,2セット共にギリギリだった。

 

 

 

 

 

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