Skybound ace ―   作:心ここにあらず

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エピソード13

2回戦を危なげなく快勝した俺たちであったが準々決勝でぶつかった千鳥山中学とは千鳥山にうちの弱点やオフェンス面での対策を予めされていたお陰で辛勝も良いところであった。

 

少し整理しよう…

 

うちの弱点としてはやはり守備面…ただでさえ佐藤くん以外はアンダーサーブですらセッターの上まで運んでくることが厳しい中…強豪校の連中はそこからさらに両サイドや前後に打ち込んでくる

 

上がったとしても体勢が整っていないトスでは翔陽に上がることも難しく翔陽自身も何度も無理矢理体勢を作ってたりフェイントで誤魔化していたらしたがそろそろ限界も近づいてきていた

 

逆にこちらが通用する武器は俺と翔陽のサーブ…それに俺のスパイクと場合によっては翔陽との攻撃も機能はするだろう…

 

 

 

が…それも相手が普通の強豪かや中堅校ならの話であった

 

 

何より来週の準決勝の相手は…【白鳥沢学園中等部】

 

現在高校バレー"最強"を自他共に認める大エースの【牛島若利】を排出した名門も名門…北川第一を差し置いて優勝候補"筆頭"の県内最強の中学校である

 

チームカラーとしてはこちらも千鳥山と同じく大エースやスーパースターみたいな派手な選手は擁していないものの個々の実力は完全に北川第一や千鳥山を凌いでいる。

そして何より千鳥山がしたようにここまでのデータを踏まえてこちら側は丸裸の状態で奴らと向き合わなければならない。

 

 

「さてさてさぁて…どうしたもんかね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●白鳥沢学園中等部

 

白鳥沢のバレー部部室では部員全員とマネージャー…それにコーチと監督全員がモニターに映った映像を凝視していた。

モニターには第一戦…北川第一と雪ヶ丘の試合…

 

 

「「「…」」」

 

「監督…コイツが例の…」

 

「あぁ…初心者チームを準決勝のこの舞台まで引き上げてきた立役者の1人だな…観客の間では既に個人としては宮城No. 1を推す声も少なくない。…1番…神凪リオ…左打ちのオールラウンダーだがおそらくは本職はスパイカーだろう…チームの関係上セッターもやっているが明らかにスパイカーとしての実力が頭抜けているからな」

 

「…」

 

「正直に言わせてもらう…いくらウチでも今の状態では2枚ブロック…いや3枚きっちり揃ってても止めることは不可能かも知れない」

 

「「「!?」」」

 

「…そこまで…ですか?」

 

「あぁ…聞けば奴は既にウチの高等部や青葉城西からも特待を貰ってるらしい。上も奴をSランクと認めたと言うことだ…この中にウチの高等部から直接打診されたものがいるか?…今年も牛島君のようなスパイカーは居ない…がそれと勝敗が結びつくかは別の話だ」

 

「…どいうことですか?」

 

「お前たちに足りないものは"慣れ"ということだ。お前たちは十分基礎は備わっている。あとはそれに慣れるだけ…そして」

 

 

ーーガチャーー

 

 

入り口のドアから2人の人物が入ってくる

 

 

「「「!?」」」

 

 

1人は小柄な老人…身長はおそらく170もない…がここにいるものなら誰もが知っている大物人物… "鷲匠鍛治"

何を隠そう白鳥沢学園高等部の監督でありバレー部の総責任者である。そしてここ数年宮城県の覇者として君臨する白鳥沢学園の礎を築いた名将中の名将である。

 

 

そしてその後ろから来た人物…背丈は190近く有るだろうか…オフの時間帯だと言うのにその強者特有のオーラが滲み出るほどのバレー狂…名実ともに"最強"を体現する男…現白鳥沢学園高等部エースの"牛島若利"である

 

 

「「「牛島さん!」」」

 

「まじか生ウシワカ!」「ヤッベェ!」「なんで!なんでいんの!」

 

「こらこら落ち着きなさい!」

 

「はっはっはっ、元気が有り余っているようだな…今日中等部の方にお邪魔させて頂いたのは君たちのとある練習をサポートさせてもらうためだ」

 

「とある練習?」

 

「あぁ…君たちが次当たる中学に最早説明すら要らない天才…とでも言うのか…まぁそう言う類の選手がいるだろう?その選手を止めるのに随分苦労すると言うことをそちらの監督さんからお伺いしてね…今日からウチの牛島を3日間貸し出すことにしたのだよ」

 

「牛島さんを!?」「まじで!?」「いいんですか!?」

 

「あぁ…雪ヶ丘の1番…神凪くんのプレースタイルは牛島と同じ…何より同じ利き腕というのも大きいはずだ。それに背丈…パワー…跳躍力…どれをとってもこれ以上ない最適の相手な筈だ。十二分に揉まれてきなさい」

 

「「「はい!」」」

 

「よし…これからすぐアップから始める…準備しろ」

 

「「「お願いします!」」」

 

 

そう言い残し牛島と中等部の生徒たちが退出し残ったのは鷲匠と中等部監督のみになる

 

 

「…つかぬことをお聞きしますが…本音のところは何故牛島くんを練習台としてお貸しになられたので?」

 

「…相手の1番…」

 

「…神凪…くん…ですか」

 

「あぁ…奴は紛れもない未完の大器だ…バレーにおいて1番大事なものは何だと思うかね?」

 

「…それは…やはり努力…とかでしょうか」

 

「…そんな生ぬるい世界じゃありゃせんわ…バレーにおいて1番大事なのはフィジカルだ…まぁバレーに限らずこの世は"デカいモノが勝つ"それが自然の摂理だわ」

 

「…それは」

 

「勿論…ただデカいだけじゃそれはただの木偶の坊だわ…だが奴は…中学生離れしたフィジカルに加え…あの才覚…そして何より奴の父親…誰か知っているか?」

 

「父親…ですか?…神凪…そんな選手プロにいましたっけ?」

 

「…奴はイタリア人と日本人の間に生まれた子だ…父親の名前はレオナルド・アバニシア…イタリアの名門リーグ「セリエA」で長年活躍したイタリアの英雄とまで言われている男だ…」

 

「レオ!?…あのレオなんですか!?」

 

「…あぁ間違いない…東京にいる連れに確認したからな…そして奴はその才覚とフィジカルを見事に受け継ぎ…さらには幼少期からバレーの英才教育まで施されたと来たもんだ…久しぶりに鳥肌がたったわい…ありゃ若利以上のバケモンだわ」

 

「…それほどまでに…いや…でもそれと今回の件がどういうお繋がりに?」

 

「そりゃあ…他のとこに取られんために決まってるだろう…県内で負ければまず他の県の連中に知られることはない…それに負けたことで新たに成長の糧にすらしてしまうかも知れん。なにより…奴がウチ以外に行くことはなるべく阻止しておきたいからな…」

 

「…」

 

中等部の監督はあの名将…鷲匠がここまで一選手…それも中学生相手に発する言葉や評価とは思えない言動に驚愕と共に神凪に畏怖の念を抱き始めていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●準決勝 当日 白鳥沢学園中等部

 

 

「うぉぉっしゃぁ!今日も勝つぞ!みんな!」

 

「相変わらず元気だね翔ちゃん」

 

「こんな奴が他校から警戒されてるってんだからほんと世の中わからねぇな」

 

「翔陽!やる前からそんな元気出して疲れんなよ?てかトイレ行ったか…?つきあうぜ?」

 

「うっせぇ!俺は小学生か!?」

 

「「「ははは!」」」

 

 

いつも通り緩やかなそして和やかな雰囲気を醸し出している雪ヶ丘とは対照的に白鳥沢の方はどこか殺伐とした重苦しい雰囲気に包まれていた

 

 

「いいか…初めが肝心だぞ?ここを一本で切れば相手に少しでも動揺が走る…それがこの試合のキーポイントになるかも知れないからな」

 

「「「はい!」」」

 

 

ーーピィィィィィィィィ!!ーー

 

「集合してください!」

 

 

 

互いのチームが列になり集合する

 

 

「只今より準決勝…白鳥沢学園中等部と雪ヶ丘中学校の試合を始めます…礼!」

 

 

「「「「「お願いします!!」」」」」

 

 

 

『さあ!始まりました!宮城県・中学総合バレーボール全中予選準決勝を本日はお届けさせていただきます!実況の木下と解説担当の山下で本日は宜しくお願いいたします!』

 

『『よろしくお願いしまーす!!』』

 

『さ、本日準決勝から解説付きでお届けしますこの全中予選なんですが今大会は異常な盛り上がりを見せていますねぇ!山下さん!』

 

『ええ!何と言っても優勝候補と言われていたシードの北川第一を完封…そして毎年4強に食い込んでくる千鳥山を倒してきたダークホースの雪ヶ丘の存在ですよねぇ!』

 

『そうですねぇ〜前情報が何もないバレー部としては真新しい学校な筈なんですが2人の入部者がきっかけで大化けし今大会でも既に大注目を浴びています。まずは3年・MBの日向翔陽くんです!身長160センチのMBとしては体格には劣るもののそれをもろともしない素晴らしい跳躍力とバレースキルを擁しています!』

 

「そうですねぇ〜往年のバレーファンの中にはあの【小さな巨人】の再来だという声も段々増えてきましたからねぇ」

 

「はい!そして何と言っても雪ヶ丘を語る上で外せないのがこの人…1番の神凪リオ君ですよね!」

 

「ええ!まずは何と言ってもあのスパイクサーブ!おそらく中学生であの域に達している選手はこの年代ではいないでしょうね〜!」

 

「そうなんです!それに180センチをゆうに超える上背とフィジカルを持ちながら日向君にも負けない跳躍力で最高到達点は何と!340センチを超えてくるそうです!これはファンや観客が世代最強と呼ぶ理由も分かりますよねぇ〜!」

 

「ええ!そしてこの世代最強選手擁する雪ヶ丘に対峙するのがコチラは超名門…今大会も優勝候補筆頭!一度も苦戦することなく勝ち上がってきており…中・高と宮城県を席巻しています白鳥沢学園中等部です!」

 

 

「白鳥沢は個々でみると雪ヶ丘の2人ほど個性はないんですが何よりも全ての選手がいい選手なんですよねぇ〜なんかこう〜全員が強豪校にすすんでも恥ずかしくない力量を有していると言いますか〜」

 

「そうなんです!今試合注目されているのがチームとしては未だ疎ら…初参戦の新参者にしてダークホースの雪ヶ丘対名門中の超名門!中学バレーを語る上で外せない白鳥沢の一線になります!」

 

 

 

 

ーーピィィィィィィ!!ーー

 

 

『まずはサーブは雪ヶ丘…1番からになります!ここは要注目です!』

 

 

 

ーーダン、ダン、ダンーー

 

「…ふぅ」

 

リオは目を瞑りながら3回ほどボールを下に突いた後胸の前までボールを持っていき大きく息を吐く

 

 

「…っし」

 

そして目を大きく開いた後ボールを高高く舞い上げ助走を始める

 

 

ーーフワッーーダンッ!ダンッ!ダダンッ!ーー

 

 

定位置で全開で跳躍し全身を弓のように大きくしならせる…そして左腕を大きく振りかぶりその獲物に向かって

 

 

ーードパァァァァァァァァァァァァァァン!ーー

 

 

振り下ろされた

 

白鳥沢陣営はかつて無いほどの警戒体制を敷き4人を守備におく布陣を固めた

 

それでも轟音と同時に飛び出したボールの行方は

 

 

「アウッ」

 

「!?」

 

ーーピィィィィ!ーー

 

コート右端最奥のライン上に着弾した

 

審判がinの旗をあげコールされると同時に会場内が爆発したかのような大声援に溢れる

 

『ノータッチエェェェス!』

 

「「「「うぉぉぉぉぉ!!!」」」」

 

「やべぇやべぇ!まじバケモンだわ!」「白鳥沢が4人体制で触ることすらできないなんて」「いやでもあのコースはたまたまなんじゃないの?」「いやあいつのことだからわからねぇぞ?」

 

 

白鳥沢陣営は

 

「クソッ!ここまでしても取れねぇのかよ!」

 

「落ち着け!今のはおそらくたまたまだ!」

 

「!?」

 

「散々ビデオで見た感じ1番のパワーとスキルはスゲェけどあそこまでギチギチに決めるほどのコントロールは無い筈だ…次は必ず上げれるさ!」

 

「お、おう?まかせろ!」

 

 

 

雪ヶ丘陣営は

 

 

「やっぱスゲェェェェリオ!狙ったのか!」

 

「落ち着けよ翔陽!…正直マグレに近いな…」

 

「意外だね…リオにもそんな運要素あったんだ…」

 

「それな!てっきり狙ってやってんのかと」

 

「いやいや…流石に"まだ"あそこまでギリギリに撃ち込む技術は無いって!」

 

(ま、いずれは手に入れてやろうかと思ってるけど…てかパパならあれ以上の威力であのコースに狙って決めるんだからこの程度出来なきゃ"上"にはいけない)

 

 

 

 

 

『いやぁ〜驚きましたねぇ〜今のサーブ!どうでしたか?』

 

『いやもう笑うしか無いって感じですよね。コースはおそらく偶々なのかも知れないですけどあの威力を中学生が放つっていうこと自体おかしいことに皆さん気づいてくださいよ!高校生でも中々居ませんからね!』

 

『そうですねぇ〜ささ!その1番のサーブが始まります!』

 

 

 

 

 

ーードパァァァァァァァァン!ーー

 

 

「クソッ!流れた!」

 

「頼む!」

 

「任せろ!」

 

 

ーーギュルン!ーー

 

 

「ぐっ!悪りぃ!頼む!」

 

「ナイスナイス!上出来だ!」

 

 

リオの放ったサーブは少しコントロールが乱れリベロ右横へ…しかしコントロールが乱れたとしても左特有の回転も威力で幾度となく正面からでも得点をもぎ取ってきたサーブが

 

白鳥沢の前では

 

2本目から上げられてしまったのだった

 

 

「「「上がったぁぁぁぁ!」」」

 

 

「いくぞ!」「こい!」

 

 

そして上がったボールをセッターが綺麗にトスをあげスパイカーが体勢を整える

 

それを見たリオと日向は

 

 

「翔陽!合わせろ!」

 

「おう!」

 

「行くぞ!…せぇの!」

 

 

ーードンッ!ーー

 

相手スパイカーが放ったスパイクは俺の掌に当たり後方へ飛んでいく

 

 

「ワンタッチィィ!」

 

「佐藤君!」

 

「お願いします!」

 

 

それを佐藤くんが追いかけ拾い上げ俺がセットポジションに着く

そして軽く白鳥沢の位置を確認…正面に2枚…翔陽に1枚!

 

「いけ!」

 

「もってこぉぉぉぉい!」

 

 

俺があげたセットを左端にいる翔陽が打ち切る

 

 

ーーがーー

 

 

「!?」

 

 

ーードシャッ!!ーー

 

 

「なに!?」

 

 

俺の近くに居た1人のブロッカーが翔陽のブロックに参加し2枚ブロックで翔陽のスパイクを叩き落としたのだった

 

 

『雪ヶ丘の2番のスパイクを止めるどころかドシャットしちゃうなんて初めて見る光景ですね!』

 

『ええ!それに雪ヶ丘はスパイカーが1番と2番しか居ないと常々言われていたことが影響しているのでしょう。先ほどのブロック…1枚は元々1番についていた筈ですがトスと分かるや否や迷わず2番の彼がいる方に走りましたからね!』

 

『なるほど〜それにしても素晴らしい攻防が続いています!』

 

 

《雪ヶ丘1:白鳥沢1》

 

 

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