Skybound ace ―   作:心ここにあらず

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エピソード17

三月の空は淡い光を落としていた。

雪ヶ丘中学校の体育館は、卒業式特有の静かな緊張に満ちている。

紅白幕、卒業証書の並ぶ机、保護者のざわめき――すべてが今日で終わる三年間の象徴のようだった。

 

前列の一角。

神凪リオは胸元に手を当て、呼吸を整えていた。落ち着いているように見えて、その指先は微かに震えている。

三年間に積み重ねた練習、悔しさ、勝利、そして――敗北…なにより隣で並んで走り続けた親友の姿…

 

その仲間、日向翔陽は、そわそわしすぎて椅子の上で小さく上下に揺れている。

 

(相変わらずだな……はは…翔陽らしくてそっちの方がいいけど…)

 

リオは思わず苦笑した。

翔陽はこの三年間俺とみっちりバレーに注ぎ込んだ結果…中学入学当初は素人からスタートしたにも関わらず未だは強豪校に入ってもレギュラー入りは硬いと思わせる実力を身につけた。

 

(実際割と何個か推薦とか来てたしな…本人に行く気が無さすぎて意味なかったけど…)

 

翔陽には俺と同じように強豪校や様々なバレー部のある高校から中学最後の公式戦を見た後推薦が届いていたが本人が予め胸に決めていた高校があるためスカウト達の無駄足で終わってしまったのだった

 

 

「これより、卒業証書授与を行います」

 

担任の声が響いた瞬間、体育館全体が静まり返った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆式が終わって

 

校庭へ出ると、春の風が制服を揺らした。

友人たちが写真を撮り合い、泣く者、笑う者、抱き合う者であふれていた。

 

翔陽は体育館を振り返りながら、ぽつりと呟く。

 

「これで、ほんとに終わりなんだなぁ……」

 

リオはその横で腕を組む。

 

「なんだよ翔陽…しめっぽいのはなしだろ?」

 

「…お前だって!」

 

そう言うリオの瞳にも薄っすらと雫が滲んでいるように見える

 

軽口を交わしながらも、翔陽の目はうっすらと潤んでいた。

 

 

「…リオ…ありがとうな!俺にバレーを教えてくれて!」

 

「…なんだよ…もう…そう言うのは…なし…だろ」

 

「これから…は…もう…お前にトス…上げてもらえないけど…もっと上手くなって……リオよりも…」

 

「…あぁ…おれもぜってぇ…負けねぇから!」

 

そして互いに突き出した拳を合わせる

 

 

 

そしてリオは何も言わず、ただ視線を前に向ける。

 

――この景色を見るのも、今日が最後か。

 

風に靡く校舎の影、三年間毎日のように上り下りした階段。

春の光がそこらじゅうを白く照らしていて、やたらと鮮やか

 

そうして

 

二人の声に、周囲の友人たちが少し振り返って笑う。

その笑い声に混じり、春の風がまた吹いた。

 

そこへ、仲間たちの声が飛んでくる。

 

「おーい翔陽ーっ! リオー! 写真撮んぞー!!」

 

「早く来いってー!」

 

翔陽とリオは顔を見合わせ、同時に笑った。

 

「行くか」

 

「おう!」

 

翔陽は先に駆け出し、リオもその背中を追う。

三年間、何度も見た光景のはずなのに――

その背中はいつも以上に大きく、眩しく見えた。

 

春の校庭、制服の袖を揺らしながら、二人は仲間の輪へと走っていく。

 

最後の一日、最後の時間。

それは確かに終わりだったが、同時に――もっと大きな始まりでもあった。

 

 

◼️中学生編 完

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◼️高校生編  青葉城西高校 入学

 

 

 

 

 

 

 四月の風はまだ冷たかったが、頬を刺すような鋭さはなく、どこか柔らかな匂いを含んでいた。

 神凪リオは、その風を胸いっぱいに吸い込み、校門の上に掲げられた文字を見上げる。

 

「青葉城西高校」

 

 中学のとき、県内の強豪として何度も耳にした名。

 その門をくぐる自分の姿が、まだ現実味を帯びない。

 

 けれど胸の奥では、確かに“跳ねているもの”があった。

 不安でも緊張でもない。

 名前の通りに、空へ弾む“青い衝動”。

 

(……やっとここに来た)

 

 制服のポケットに差し込んだ右手が、ごくわずかに震えた。

 この震えの正体は、自分でも分かっている。

 “期待”だ。

 あの体育館で、本気のバレーをぶつけられる——その期待。

 

 ゆっくり校舎へ歩きながら、少し?だけ視線を感じる。

 

 

「ねぇあの人カッコよくない?!」「ハーフかな?身長高ぁい!?」「どうしよう!声かけちゃおうかな!?」

 

 

金髪のせいか、それとも宮城大会で少し名が知れたせいか。

本人の意図せぬ間にバレーとは関係のないところでも注目を集めていく

けれどリオはいつも通りリラックスした様子のまま歩いていった

 

 

(アリサさん以外の女に興味なんてねぇしな)

 

 

 入学式は淡々と終わった。

 長い挨拶、祝辞、校歌——どれも頭には残らない。

 ただ一つ、式が終わった瞬間から、リオの足はほぼ無意識で体育館へ向かっていた。

 

 シューズの音。

 レシーブの衝突音。

 ボールが床に落ちる前の、空気の震え。

 

 それらが欲しくてたまらなかった。

 

 

体育館の扉を開けると、視界が一気に広がった。

 まだ練習時間前だが、三年生らしき数名が準備をしていた。

 そのうちの一人が、ぱっと顔を上げる。

 

「——おぉ、来たね…ゴールデンルーキー?」

 

 軽く茶化すような雰囲気のある声

 

 けれど一瞬で空気を支配する存在感。

 

 リオは足を止める。

 

「及川さん…お久しぶりです」

 

「嫌だなぁ〜メールはしてたでしょ?」

 

「ははは…まぁ対面では久しぶりなんで…」

 

 

 

「ま、とりあえずみんなに紹介しとくか。

 みんな聞いて!!…こいつが——“神凪リオ”…」

 

「こいつが!?」「あの時の1番か…」「身長伸びてね?」

 

 

 その声が落ちると同時に、体育館の中の視線が一気に集まる。

 リオは一歩前へ出て、深く頭を下げた。

 

 

 

「今日からお世話になります!一年の神凪リオです。ポジションはWSでサーブとスパイクには自信があります!よろしくお願いします!」

 

 

「おうよろしく!」「デケェくせに愛想いい奴だな」「デケェは関係ねえだろ!」

 

「はいはい!一応言っとくと今年のトッププロスペクトで白鳥沢の特待蹴ってウチ来てくれてるからね。…実力は折り紙つきよ」

 

「マジかよ!白鳥沢蹴ったの!」「及川以来じゃね?」「てか歴代でも及川徹と神凪くらいだろ?」

 

そして

 

「……あの時よりもさらに成長したように見えるな」

 

 低く響く声。

 青葉城西の主軸にして絶対的エース…岩泉一だ。

 腕を組み、じっとリオを見ている。

 

「……中学の大会、見てたぞ。

 スパイクサーブにあのスパイク…まるでウシワカの野郎を見てるかのようだった」

 

「…え〜と…ありがとうございます?」

 

「岩ちゃ〜ん?ただでさえ強面のくせにそんな凄まないの!?」

 

「引っ叩くぞ」

 

 

 

そこへ——

 

 

「お、おいっ……マジで来やがった……!?」

 

「……あ、ほんとだ。あの時の1番……」

 

 聞き覚えのあるような無いような声が二つ

 

そこには髪の毛がとんがった長身の男と何処かやる気の削げる風貌のだるそうに両手をポッケに入れている少年がいた

 

(どっかで見たことあるな)

 

「なぁ…君たち…俺と会ったことあるのか?」

 

「「…」」

 

「…やっぱ覚えてなかったか…」

 

「清々しすぎて怒る気にもならないね」

 

「…お前達が一回戦で戦った北川第一…そこのレギュラーだよ2人とも」

 

「「岩泉さん!!」」

 

 

見兼ねた岩泉が会話に入りフォローする

 

 

「あぁ〜いたかも…青城にきたんだ!」

 

「北川第一は青城と繋がり深いから余程のことが無い限りみんなそのまま進むんだよ!」

 

「あ、そーなんだ…なら影山も?」

 

「…おまえ…影山のことは覚えてんのかよ…まぁいいや…アイツは別のこと行ったよ…どこだけっけな?」

 

「…烏野…」

 

「あぁそうそう!烏野高校ってとこ!」

 

「烏野!?」

 

「うぉ!なんだよいきなり…」

 

「い、いや、なんでも…」

(翔陽とおんなじとこかぁ〜…あっちも中々面白そうじゃねぇか!)

 

と一年生同士交流を深めていると

 

 

「はぁ〜い!そろそろ監督達戻ってくるから全体で新入生紹介とレクリエーションあるから!準備して!」

 

「「「はい!」」」

 

「「レクリエーション??」」

 

 

俺と金田一と国見は互いに顔を見合って頭に?マークを浮かべるのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁーい注目!!」

 

 

及川が声を上げ注目を集める。この場には新入生が10数人に上級生が40人ほど…そして監督にコーチが数人集まっていた

 

 

「えぇ…まずは入学おめでとう。この中に会ったこともある子もいると思うが私が… 青葉城西高校の監督である入畑だ。よろしくね。

それで…早速本題に入るんだが

 

…今日から、君たちは青葉城西高校バレーボール部の一員だ。

 

うちは“天才”を集める学校じゃない。中には"例外"もあったが…

才能がないと切り捨てる場所でもない。

勝つために考え、工夫し、努力し続ける集団だ。

 

楽な道は用意しない。

ミスは許すが、考えないことは許さない。

誰かのせいにするなら、まず自分のプレーを疑え。

 

上手い下手は関係ない。

コートに立つ資格があるかどうかは、

『勝つために何をするか』を自分で選べるかで決まる。

 

ここに来た以上、

全国を本気で獲りに行く覚悟がある者だけが残れ。

 

それが、青葉城西だ。…共に戦おう」

 

 

そしてその後も何人かアシスタントコーチやサポートしてくれる方々の挨拶を済ませ最後に

 

 

「じゃあ最後に…俺はコーチの溝口だ。

 

えー、監督の話でだいたい伝わったと思うけどね。

 

青城は“個”が強いチームだ。

セッター、エース、リベロ、ブロッカー――

誰一人として、ただの歯車じゃない。

 

だからこそ、

自分の役割を理解できない選手は置いていかれる。

 

練習は厳しいし、

理不尽に感じることもある。

でもそれは全部、勝つために必要なことだ。

 

ここでは名前も学年も関係ない。

上手いやつがコートに立つ。

結果を出したやつが信頼を得る。

 

ついて来られるなら歓迎する。

覚悟がないなら、今のうちに引き返せ。

 

――それでも覚悟のある選手は全力でサポートするしここにいる皆がそうであると信じている…改めて…入学おめでとう」

 

 

監督やコーチの挨拶が終了すると同時にどこからともなく自然に拍手が巻き起こった。

さすが強豪校…生徒だけでなく監督やコーチといったサポートしてくれる側の人間でさえ覚悟を決めて選手を導こうとしてくれているのが言動で垣間見えた。

 

 

及川徹(3年・セッター)

 

「はいはーい、じゃあ次は俺ね。

青葉城西バレー部キャプテン、及川徹でーす。

 

ポジションはセッター。

コートの中じゃ、だいたい全部俺の思惑通りにボールが飛ぶと思ってもらって構わないよ

 

(新入生の方を一通り見回して、にこっと笑う)

 

才能がある人も、ない人も、実力があるやつも、ない奴も

ここまで来たなら全力で使い倒すから覚悟しといて。

 

――あ、でも勘違いしないでね。

俺は優しい先輩だから、ちゃんと努力する後輩は大好きだよ?

 

(少し声を落として)

 

逆に、逃げ腰なやつは……

青城じゃ、すぐ居場所なくなるから」

 

 

岩泉一(3年・ウイングスパイカー/副主将)

 

「……3年、岩泉一。

ポジションはウイングスパイカー、副主将だ。

 

さっきの及川の話、半分くらいは話盛ってるから気にすんな

 

(及川の後頭部を軽くはたきつつ)

 

ただ一つだけ本当なのは、

こいつのトスに応えられなきゃ意味がないってことだ。俺たちは頂点しか目指してないからな

 

青城は、

“トスを上げてもらって当然”なやつはいらねぇ。

 

自分の役割を理解して、

自分で点を取りに行けるやつだけが、コートに立てる。

 

以上だ。よろしくな」

 

松川一静(3年・ミドルブロッカー)

 

「3年、松川一静。ミドルブロッカー。

 

……派手なことは言えないけど、

ブロックと読み合いには自信ある。

 

前衛の仕事は地味だし、

報われないことも多い。

 

それでも、

一本止めれば流れは変わる。

 

そういう仕事が好きなやつ、

歓迎するよ」

 

花巻貴大(3年・ウイングスパイカー)

 

「同じく3年、花巻貴大。ウイングスパイカー。

 

うちはさ、

『強いやつが一人いれば勝てる』チームじゃない。

 

全員が自分の役割をやって、

その上でちょっと無茶するから強い。

 

真面目すぎるのも、

調子に乗りすぎるのも長続きしない。

 

バレー、ちゃんと楽しめるやつなら

きっとやっていけると思うよ」

 

 

 

渡親治(2年・リベロ)

 

「2年、渡親治。リベロ。

 

後ろの守備は俺がやる。

だから前の人たちは、思い切り打っていい。

 

ただし、

守ってもらって当たり前だと思うな。

 

一本一本、

“この一本を拾わせる価値があるか”

考えて打ってほしい。

 

……まあ、拾うけどね」

 

 

その後も3年生と2年生の自己紹介が続き、終わったあと及川が

 

 

「ま、そんな感じで

クセの強い2.3年生だけどさ

 

(新入生に向き直って)

 

ここに来た以上、

君たちはもう“外部の人間”じゃない。

 

敵になるのは、

他校だけでいい。

 

――味方同士で、

一番高いところを獲りに行こうよ。ま、期待してるよルーキー達」

 

 

 

そう言い残した後

 

 

「んじゃ次は新入生ね!そっちの子からどうぞ!」

 

 

俺は及川さんの刺した指とは逆に位置しているので最後のトリを任されることが決定した。

と言うか確実にそうなるように仕組んだなあの人…

 

 

金田一、国見、その後も何人も続いていく新入生をみているとやはりほとんどが北川第一出身であり他中から来ているものの方が少ないことがよく分かった。

 

 

 

「じゃあ大トリよろしく!」

 

 

満面の笑みで親指を立てこちらに合図を飛ばしてくるあの人向かって軽くため息を吐きながらも一歩前にすすむ

 

 

「雪ヶ丘中学から来ました神凪リオです!ポジションはWS…スパイクとサーブなら誰にも負けません!…正直に言うと青葉城西か白鳥沢か直前まで悩んでました…なんなら今でも正直ここに来たのが正解なのか分かっていません。」

 

「「「…」」」

 

「なので…ここに…青葉城西に来たことを俺自身で正解に出来るくらい結果を残します…具体的には県内"最強"を必ず俺の手で倒しチームを勝利に導きます…生意気だのなんだの言われようともこれだけは譲るつもりはありません…以上です」

 

 

反応的にはまちまちって、感じか…3年生は好意的に受け取ってくれた人が多いな。これはおそらく俺の実力を知っていることが大きく影響している。

逆に2年生は生意気だと捉えるものもチラホラ…やっぱそう思うやつがいると思ったけど…関係ねぇわ

ここは実力主義…年上だといって敬語は使うけど尊敬はしねぇし一歩も引かねぇ…俺はここにバレーだけをしに来たのだから…

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