Skybound ace ―   作:心ここにあらず

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エピソード18

「はいはい!一年の自己紹介も終了したところでレクリエーションやってきま〜す!」

 

 

 

リオの自己紹介の後に監督やコーチが場を離れその後及川が場を仕切り直した

 

 

 

「あの〜練習はいいんですか?監督達もどこかにいっちゃったみたいですし?」

 

 

 

気になっていたことを金田一が突っ込んだ

 

 

 

「あぁ〜いいのいいの初日はみんなで仲を深める親睦会って決まってるし…練習は明日からね!あ、ちなみにウチは週6練習の毎週月曜は休みだからね」

 

「「「え!」」」

 

「その反応〜どうせ休みなし休憩なしのどこかのスポコンとかで見る昭和風部活動を想像してたでしょ〜」

 

「いやでも!」

 

「やりすぎは返って怪我の確率を増やすだけだし成長を遅くさせることもあるんだよ?こまめに休息も入れてあげないと…ほらボディビルダーの人たちもよくチートデイとか挟むでしょ?あれと同じよ」

 

「…なんか違う気がするがまぁ…うちに来たからには早くうちに慣れろ」

 

 

 

及川の後に岩泉がフォローを入れる

 

 

 

「とりあえず!今からみんなでゲームしようか!監督とコーチにも相談したら練習を組み合わせたゲーム様式なら許可するってお言葉いただいだからね!てな訳で…とりあえず上級生とペア組んで欲しいな!」

 

 

「「「え?…」」」

 

「マジかよ!」「いきなりとか無理だって!」「俺岩泉さんがいいな!」

 

 

(いきなり上級生と2人とか無理だろ…しかも俺自己紹介のせいで2年生からは多分敬遠されてるし…どうすんべこれ)

 

 

「あ、リオは俺とね!他の奴じゃあ可哀想だし」

 

「…え…えぇ!」

 

「なに?嫌なの?」

 

「いや…いやって言うか疑問っすけど」

 

「これからやるゲームは俺以外だと相手にならないからね」

 

「…あのゲームって」

 

そういうと及川は両手を叩きみんなの注目を再度集める

 

 

「はぁい注目!これからサーブを交えた1対1のゲームをやります!勝てばジュース1本!負けてもペナルティはないよ!上級生の方はあるけどね

てな訳でルールは簡単!コートの両端と真ん中に並べられた3本のボトルを自分の得意なサーブで狙い撃ちしてください!ジャンプでもフローターでもなんならアンダーでもいいよ?あ、上級生はアンダー禁止ね?それと…もし上級生に勝つようなことがあったら…」

 

「「「…」」」

 

「キャプテンである俺の方から監督に推薦しておいてあげるよ」

 

「マジかよ!」「アンダーでもいいんだろ?ワンチャンあんじゃね?」「俺サーブ苦手だわ」

 

 

盛り上がる一年生をみた上級生は

 

 

「おうおう舐められてんな俺ら」

 

「まぁ良いんじゃないか?活気があって」

 

「岩ちゃ〜ん!さっきから何カッコつけてんの?」

 

「死ねグズ川」

 

「まぁ、昨日まで中坊だったやつに負けるくらいならレギュラー剥奪でも良いだろ」

 

「そうそう!軽く捻っちゃってよ!」

 

「そういうお前の相手が1番ヤバそうだけどな」

 

「俺は神凪が勝つ方にラーメン一杯」

 

「俺も」「俺チャーシュー追加」「俺味玉トッピングね」

 

「お前らどっちの応援してんだよ!」

 

 

 

騒がしい3年を尻目に一年は

 

 

「なんか色々盛り上がってんな」

 

「…まじで組む相手やらかした…」

 

「あ、金田一岩泉さんか…あの人すげぇの?」

 

「…神凪は他所から来てるから知らないのか…あの人は中学の時からエースやってた程の人で上あがってもレギュラーを長年勤めてるしどうやっても高校上がりたての金田一が勝てる相手じゃないかも…」

 

「ヘェ〜…面白そうじゃん」

 

「ま、あの人より数段やべぇサーブ持ってんのがお前の相手だけどな」

 

「及川さん?」

 

「…そ…中学の時点でベストサーバー取ってたし」

 

「それ俺も取ってるけど」

 

「…MVPはウシワカに取られたけどどっちがとってもおかしくなかった」

 

「俺は取ってるよ…MVP」

(決勝まで進んでないしチームが負けた責任の俺が賞もらった時は中々受け入れられなかったけど)

 

 

*補足…リオ本人は納得のいっていない、たまたま取れた賞だと思っているが大会運営が各選手の成績スタッツを確認したところ各数字が圧倒的なスタッツを誇っており準決で敗退したとはいえ決勝に進んだ両チームの誰よりも成績を残していたのだからMVPは必然であったと言える。むしろ不満を漏らしているのは本人ぐらいのものである

 

 

「「…」」

 

「…どしたん?」

 

「…いや改めてやべぇ奴がチームメイトになったんだなって思って」

 

「…同意」

 

「ま、及川さんに関しては元々やりそうだなって思ってたし余計楽しみになってきたな」

 

 

 

俺と金田一と国見で話しているうちに及川が指示を出し始めゲームがスタートする。

 

やはり一年生の多くはアンダーサーブのようだ。強豪校出身者が多いとはいえジャンプサーバーは中々いないらしく北川第一のレギュラーだった国見でさえ後半の数本を除いてアンダーサーブだったしジャンプサーブの方も威力・精度ともにそこそこだった。

 

逆に上級生…中でも3年生はほとんどがジャンプかフローターを放っている。驚きなのがその精度…おそらく日常的に練習していたためかそこそこの威力に対してコントロールはしっかりされており殆どのものが5割近くの確率で撃ち抜いていた。

そして気づけば国見を合わせた俺と金田一を除いた一年生は全員漏れなく敗退しており残るは俺と金田一の2人となっていた。

 

 

「どう見る?同中のお前から見て」

 

「…正直勝てる絵が浮かばないってのが本音」

 

「やっぱり?アンダーでも?」

 

「…うん…他の3年生…レギュラー以外の人たちならまだ勝機はあったけどレギュラーメンバーは厳しい。…特に岩泉さんと及川さんは"別格"…アイツに限らず誰が出ても無理でしょ」

 

「…俺でも?」

 

「…君か…君なら…岩泉さんとはもしかしたら良い勝負するかもね…それでも」

 

「及川さんには勝てないと…」

 

「…うん…申し訳ないけど県内の高校生であの人以上のサーバーはいないと思うよ」

 

 

これまで自分で言うのもなんだけどサーブにおいて俺以上の選手なんてそれこそ大学生まで登らないといなかった…にもかかわらず同じ高校生で…ここまではっきり勝てないって言われることになるとはな

 

 

「…はは…上等!」

 

「…??」

 

 

リオは自分より強い相手が現れたことへの興奮を表すような笑みを浮かべる

 

 

 

 

 

金田一は始め苦戦するもアンダーサーブでなんとか1本倒すことに成功する。そしてその後から自分の実力を見せる為かジャンプサーブに切り替えるがおそらく見様見真似なのだろうか…フォームもバラバラで威力を意識しすぎて手打ちになっている。

 

結局最初の一本のみで終わってしまった。

 

 

岩泉さんは流石の一言…青城のエースを唄っているだけあって決して大柄な体格ではないがその身体能力と身体操作で素晴らしい精度のサーブを放った。

放たれたサーブはそのまま端の的を撃ち抜いた。

 

 

「い、一撃で…」「やべぇ!」「エースはやっぱ違うな!」

 

 

「やるなぁ今のサーブ!…岩泉さんともやってみてぇな」

 

「…あれを見てもやる気があるなんて君って変態?」

 

「誰が変態だ」

 

「…」

 

「大丈夫か金田一のやつ」

 

「…まぁ元々勝てるとは思ってなさそうだし大丈夫でしょ…思ったよりも差がありそうなのは結構くるかもだけど」

 

 

 

その後も岩泉は5球ほどで全ての的を撃ち抜きそのまま岩泉の勝利で終了することになった。

 

 

「お前も練習すればこのくらいはできるようになるさ…俺にはない体格というアドバンテージも持ってるんだしな」

 

「はい!…ありがとうございます!」

 

 

 

 

 

「良い人だな岩泉さん」

 

「…うん…わざわざ後輩のフォローまでしてくれるなんてあの人は昔から心から尊敬できる数少ない人だよ。…そんなことより次君だよ」

 

「…っし!…やるか!」

 

「よしじゃあ次やろうかリオ」

 

「の前にお前やれんのかよ…監督から足首ストップくらってたろ」

 

「大丈夫大丈夫!テーピングガチガチだし。医者からもストレッチくらいならリハビリがてら良いって言われてるし…それに」

 

「…それに?」

 

「俺は3本あれば十分だしね!」

 

「!?…へぇ〜」

 

「「「!?」」」

 

流石の自信をのぞかせる及川に対してリオも本能からか一気に闘争心を剥き出しにし獰猛な笑みを浮かべた

 

 

 

「じゃ、やろうか」

 

及川は軽く首を回しながら、ラインの後ろに立つ。

足首には白いテーピングが幾重にも巻かれているが、重さを感じさせる様子は一切ない。

 

「条件はさっきと同じ。三本の的、先に全部倒した方の勝ち」

 

「了解です」

 

リオは短く答え、ボールを受け取った。

 

 

——威力は怪物クラス

——けど、まだ“精度”はまだその段階にはいない。

 

それを及川は中学の時の大会をみて見抜いていた

 

 

 

「っし……!」

 

 

 

リオは深く息を吸い、数回バウンドさせた後トスを高く上げる。

 

大きい歩幅の勢いのある助走

そして全体重を乗せ切った踏み切り

リオの両足に重心がのりきり衝撃音が響く

 

 

 

 

ーードンッ!!ーー

 

 

 

そして上半身を弓のように大きくしならせ獲物を射抜く態勢を作る

 

目線でボールを捉えたのちボールに向かってその左腕の剛腕を振り抜く

 

 

 

 

ーーバキャァァァァァァン!!ーー

 

 

 

 

「「「「!?」」」」

 

 

 

破裂するような轟音が響き渡る

そして放たれたボールは凄まじい初速で左奥のボトルへと向かう。

 

このゲームで初めてリオを見た一年生たちと2年生は驚愕で声を失う。それほどまでに次元の違うプレーを見せる

 

 

しかし

 

 

ボールは左のボトルのさらにボール一つ分インナーに入り込みボトルに命中することは叶わなかった

 

 

その威力と迫力を目の前で体感した者は思わず言葉を失いボールに命中しなかったことなどそれほど重要なことではなかった

 

 

 

「や、ヤッベェェ!やっべぇよ!お前!」

 

 

 

2年の一見チャラい様にも見える茶髪マッシュの先輩が興奮しながら押しかけてきた。

名前は…確か矢巾… 矢巾秀先輩だ。

 

 

 

「あ、あざっす」

 

「最初マジイケメンで身長高くて及川さんにも認められてて気に入らなかったけどマジすげぇわ!!」

 

「「容姿関係ないだろ!?」」

 

「はいはい!一回一回そんな騒いでたら疲れるよほんと…」

 

「お前で騒がれてないからって嫉妬すんな」

 

「うるさいよ2番手サーバー」

 

 

 

隣で岩泉さんと及川さんが取っ組み合いをしている中で俺の第二投が始まる

 

第二投はまたもや左ライン上に置かれるバトルのインナー側を撃ち抜きボトルに命中しなかった。…その後も何度かチャレンジし何とか左端だけ撃ち抜くもここまででかなりの数を使っており残りラスト1球にしてボトルは2本余っておりクリアは不可能な状況。

 

 

「…さて…どうするか…」

(ラスト一本…ここで俺が及川さんを追い込む…ないし勝つことが出来れば俺のことを今すぐにでも認めさせることが出来るだろう…でも…それだけじゃ足りないな…)

 

 

 

ーードォォォン!!ーー

 

 

 

(今この瞬間に俺と言う存在を青城に刻み込んでやる!!)

 

 

 

ーードォパァァァァァァァァァン!!ーー

 

 

 

「んな!まだ上があったのか!?」

 

「はは…つくづくあの野郎を思い出すね」

 

 

 

明らかにギアを上げたリオのサーブを目撃し岩泉と及川の脳裏に1人の選手の影が思い浮かぶ

 

リオの放ったサーブは轟音と同時に飛び出し真ん中のボトル目掛け一直線に進んでいった

 

 

ーーパァァァァァン!!ーー

 

 

リオ本人から見ても自己採点が90点を記録するようなサーブは本人の意図通り真ん中のボトルを撃ち抜きこれで2本のボトルを撃ち抜いた結果となったのだった

 

このサーブを見て1番驚愕したのは及川徹だった…結論から言うとこの後及川はこのゲームで3本全てのボトルを撃ち抜きリオ相手にゲームで勝利することとなる

…が…及川本人からしたらそれは決して喜べるような内容とは程遠かった。

 

(何しろちょっと先輩っぽく中学と高校の力の差を見せてやろうって思ったんだけどなぁ〜やっぱ才能ってやつかなぁ〜…)

 

「はは…ははは…あははは」

 

「うぉ!大丈夫か及川のやつ…」

 

「…大体いつも変だから大丈夫だろ」

(中学の時とは少し違うな…)

 

 

 

 

そしてもう1人…満足していないのは勿論この男も同じことである…リオは先程の及川のサーブに自らの理想を思い描いた姿を重ねてしまった。

リオの求める理想のサーバー像とは…

 

 

脳裏に浮かぶのは、幼い頃から何度も背中を追ってきた男。世界最高峰のリーグでプレーし、

 観客のどよめきを支配していた、あの背中。

 

 父のサーブは派手ではあったがそれでも威力だけなら上には上がいたであろう。

 だが、「打ちたいところに、打ちたい回転で、確実に点をもぎ取る」

 それを当たり前のようにやっていた

 

(……俺は、まだ力に頼ってる)

 

 ギュッ、と拳を握る

 

ふと顔を上げると、周囲の視線が一斉に自分へ向いていることに気づく。

 

「……おい、静かすぎね?」

 

 矢巾が空気を破るように叫ぶ。

 

「一年の初日だぞ!?あのサーブ見せられて、黙ってられるか普通!!」

 

「いやほんとそれ!」

「マジで怪物来たじゃん!」

「及川さんが普通に本気出してるの初めて見たかも!」

 

「ちょ、ちょっと!?勝者へのリスペクトどこ!?」

 

 及川が抗議するが、誰も聞いていない。

 

 岩泉は腕を組み、リオをじっと見据えていた。リオのあの最後の一本。

 あれは“才能”だけじゃない。ちゃんと努力を積み重ねてきているのが見えた一本だったからだ。

 

 

 

「才能だけじゃ、生き残れない…か」

 

 

父の背中を追い、

 己の限界を越えるために。

 

 青城高校バレー部。

 そのコートに――新たな歴史が刻まれる

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