駅から徒歩20分圏内にある木造二階建ての田舎ならではの大きな家。
庭には柿の木があり、軒の下には干し大根が吊るされていた。
「うわ……東京に住んでた頃のうちとは全然ちがう……」
とその時
「いいところだろう?」
背後から声をかけられ、そこには老夫婦が立っていた。
白い髪の祖父と、優しく目元の下がった祖母。
写真でしか見たことがない——
リオが“初めて会う”の祖父母だった。
「…おじいちゃん?おばあちゃん?」
祖父は姿勢が良く、まるで軍人のような雰囲気すらある。
祖母は柔らかい笑みを浮かべ、両手を胸の前でぎゅっと握っていた。
近づくと——
「……リオ、か?」
祖父の低い声が震えている。
「はい。初めまして……リオです…神凪リオです!」
頭を下げた瞬間、祖父の表情がくしゃりと崩れた。
「おお……おお……やっと会えた……!
美羽の子……こんなに大きく……」
祖父は涙をこらえながらリオの肩をぎゅっと抱きしめた。
祖母も後ろから優しく背中に手を添える。
「ずっと会いたかったのよ。
東京にいると聞いて、遠い子だと思っていたけれど……ようこそ、宮城へ」
「……うん。俺も会いたかった!」
リオの胸に、温かいものがじんわり染みていく。
(……ここが、これから俺が暮らす家と家族なんだ)
玄関を開けると、ほんのりと味噌の香りが漂った。
どこか懐かしい匂いだった。
「リオくん、この部屋が今日からあなたの部屋ね」
祖母が案内してくれたのは、二階の明るい和室だった。
畳に差し込む光が優しくて、リオは自然と笑った。
「なんか……落ち着くなぁ」
「ふふ、よかった。
東京のお部屋とちがって、ちょっと寒いけどね」
「全然大丈夫!」
スーツケースを置いた瞬間、
外からゴウンゴウンと風の音が聞こえた。
●翌日
祖父母の家から歩いて15分ほどの場所に中学校があった。
古い校舎だが、活気のある雰囲気がある。
体育館で入学式での行事を済ませ、部活紹介が後日だったため今日はこのまま帰ろうかと廊下を歩いていた。人混みの中でじっと名簿表を見つめていた。
(雪ヶ丘の一年は三クラス……俺は1年1組)
「うおおおおおい!! どけどけどけぇ!!」
人混みの向こうから、
マンガみたいな勢いで突っ込んでくるオレンジ髪の小柄な少年がいる。
リオは反射的に横へよけた。
少年は止まり切れず、靴箱へ ゴンッ と頭をぶつけた。
「いってぇ……!!」
その姿を見て、周囲の生徒たちが一斉に笑いだす
「大丈夫か?」
「へ?あ、う、うん、大丈夫大丈夫!」
(うわっでっけ〜!髪の毛金だし目も青い…)
「名前なんて言うの?俺神凪リオって言うんだ。多分君と同じ一年」
(身長的に一年だと思うけどあってっかな)
「一年!?その身長で!?」
「まぁね。半分外国の血流れてるしパパが大きいからね。んで名前は?」
「あぁ!そうだった!俺日向翔陽!てかリオどっから来たの?この辺って小学校2つしかないのにリオみたいな奴初めてみたから!」
「あぁ、それは俺が少し前に東京から引っ越してきたからだよ。親の仕事の都合でね!…そんで
何をそんなに急いでるんだ?」
「東京!?って!?そうだ!やっべ急がなきゃ!俺体育館に行きたいんだ!」
「体育館?なんで?さっき入学式やったじゃん」
「バレー!!バレー部に入りたいんだ!」
「!?」
(その身長でバレーか…おそらくリベロかよくてセッターだと思うけど中々難儀なスポーツを選んだな)
「明日からって先生言ってたけど多分練習してるはずだから見に行きたいんだ!」
「俺も行くよそれ」
「え!?なんで?もしかしてバレー部入りたいの!」
「おう!俺もバレーやってんだ。先生が部活紹介明日って言ってたから明日行こうかと思ってたんだけど手間が省けたしどうせなら早めに知っておいた方が何かといいからな」
「じゃあ行こうぜ!」
そう言い残し俺と翔陽は歩き出した
道中俺らはお互いのことを色々話し合った
「へぇ〜翔陽はその"小さな巨人"に憧れてバレー部に入るんだ」
「おう!んでもって俺が次の"小さな巨人"になってやる!」
「てことは翔陽もクラブかチーム所属だったわけか?ポジションどこ?」
「……」
「なに?なんかまずい事きいた?」
「いやぁ〜それがですね。私の住んでた所にバレーチームが無くてですねぇ。軽いルールくらいしか知らない素人なんですよこれが。」
「……まじ?」
「…まじ」
「…マジかぁ〜」
(てっきりどこからのクラブチームで腕を鳴らして入部を決意したのかと思ってたわ)
「なんだぁ!俺はここから上手くなるから見てろよリオ!ってかリオはどうなんだよ」
「俺?俺は父親の影響もあってガキの頃からクラブでやってたよ」
「ヘェ〜お父さんなんの仕事やってんの?」
「元プロ…で今はプロ専コーチ」
「プロ!?プ、プロってなんのプロ?」
「そりゃバレーだろ。逆に今の流れでそれ以外ないっつうの」
「ま、マジか…じゃあ絶対スゲェじゃん!もしかして!もしかして!全国とか行ったことあんの?」
「一応な…それなりに期待してもらっていいぜ?」
そんなこんなで話しながら体育館まで来て2人揃って中を覗くと…
「「女子しかいない…」」
「おい、翔陽…どう言うことだよ」
「俺に言われても分かんないっつうの」
するとそこに
「君たち体育館に何か用?」
「「へ?」」
そこには30代くらいのいかにも体育教師というような外見の女性が立っていた
「えっと、うちってバレー部ないんですか?」
俺は恐る恐るここに来た理由を問いただす。
「うん?バレー部あるよ…"女子"はね」
「「女子!?」」
「え、それってバレー部ないってことじゃん!どうしよリオぉぉ!」
俺に抱きついてきた翔陽を引き剥がしながら
「俺に言われてもどうしようもないっての!けどここの中学って部活強制ですよね?俺たちどうしてもバレー部に入りたいんです。どうにか出来ませんか?」
「んーそうだねぇ…出来なくはないけど…君たちにとってもそれが必ずいい選択になると言う保証はないよ?もしかしたら他の部活動に入部する方がいいかもしれない。それでもいいの?」
「「…」」チラッ
俺たちはお互いに目を合わせ
「「お願いします!」」
2人揃って女子のバレー部監督である小林さんに頭を下げた
「明日放課後職員室の方まで来てくれ。そこで色々説明する」
「「はい!」」
そう言い残し俺たちは体育館を後にした
「やばかったなぁ…ワンチャンバレー出来ないかもとか思っちゃったわ」
「それなぁ〜俺なんて初心者なのにここで出来なかったら初心者のまま高校生になっちゃうとこだった」
「…なぁ翔陽お前今から暇か?」
「ん?うんもう帰るだけでけど」
「ちょっと市民体育館寄ってかないか?多分借りれると思うし」
「まじ!?いいの?」
「行くだけ行ってみようぜ」
俺たちはそうして市内にある市民体育館まで向かい体育館を1時間だけ借りることに成功してハーフコートにネットを張った
「うぉぉぉ!コレがコート!!んでもってコレがボールかぁ!」
「お前ボールも触ったこと無かったのかよ…」
「だって小学生の時も体育の授業はドッチかバスケ、サッカーだったしな。バレーなんてまじでやったことない!」
「…あぁそう」
翔陽は正真正銘まじの素人だった。ボールの扱いやトスにレシーブ、簡単なレシーブパスですら弾くようなレベル…それを確認した俺はボールの掴み方や手の位置に腕の位置それに体の体制と基礎的なことは口頭で説明していった。
そしてその後色々実践していくこと30分…
「じゃあ次俺がトスあげてやるからスパイク打ってみ?」
「マジで!いいの!」
「はいはい!いいから良いから!ほら行くよっ」
ーーフワッと空中に上がるボールーー
ネットよりわずかに高い位置だろうか…スパイクとはいったもんだがコートに張り巡らせてるネットの高さは高校生と同じ高さである。俺はともかく中学生…それも一際小さい翔陽が打ち切るなんてことははなから想定していなかった
ーーーがーーー
_ダダッ 【ドンッ!】
翔陽は小さな体を体全体を沈み込ませるように力を貯めそれを解き放った瞬間
ネットの高さから手がはみ出るほどの跳躍を見せた
ーーバシッ!ーー
「あれ!ぐへっ」
翔陽はボールの到達点まで飛ぶことは出来たが肝心のスパイクはボールの端を叩いてしまいあらぬ方向に飛んでいってしまった。そしてその反動で翔陽自身もネットやひっかかると言う初心者ならではのミスを披露してくれたのだった
しかしそんなことよりも大事なことは翔陽の"並外れた跳躍力"である。身長が小さい分到達点は俺よりも遥かに低い…しかしそれは身長150ちょいしか無い日向とすでに170オーバーの俺を比べての話で、もし同じ身長だったら…
それほど驚愕の跳躍だったのである