目の前で起きた翔陽の跳躍を見て俺は久しぶりに心踊るものを感じた
それは
『初めてリエーフとあった時か…』
はたまた
『佐久早率いる千代田区ジュニアに負かされた時か…』
それに匹敵するくらいの衝撃を俺は今感じたのだった…それも自分よりも一回り…いや二回りは小さい素人のコイツに…
「…はは…おもしれぇ…翔陽!お前なれるかもしれないぞ?その"小さな巨人"に」
「え?本当に!?まじのまじ?」
「あぁ…お前次第だがな…そらくらいのポテンシャルはあると思う」
「ヘェ〜そっか〜俺も小さな巨人か〜」
体をクネクネさせてニヤける顔を隠せていない翔陽だが急に何かを思い出したかのように振り返り
「次!次リオのスパイク見せてよ!」
「俺か?あ、でも…」
「なに?」
「いやなんでも…」
(ここで俺のスパイクを見て自信をなくすのか…それとも…)
「とりあえずネットよりは高くあげてくれ。あとはこっで合わせる」
「おう!」
ーーダンッ!ーー
翔陽は助走の一歩目から、すでに己とは違うことに気づいた。
床をえぐるような踏み切り――瞬間、コートの全体が震えるかのように響き渡る踏切の音
そして跳躍した次の瞬間
「――ッ!!」
ーードゴォォォォン!!!ーー
轟音のような衝撃音。
ボールはコートに弾み
一直線に体育館2階まで突き刺さる。
ドシュゥゥッ!!
「……す、す、スゲェぇぇ!!」
「…はは」
「どうやんの!?ねぇどうやんの!?」
「まぁ落ち着けよ翔陽。とりあえず今のお前ではまず無理!てかそんな簡単に出来たら俺の立つ瀬がないって」
(てかぶっちゃけ俺と翔陽じゃあ成長してもスパイカーとしてのベクトルが違う…言うなれば俺は大砲型…その体格とパワー・フィジカルでゴリ押しすることを基礎としているのに対して翔陽はおそらくその技術や選択肢で交わしていくスタイルに変化していくはずだからな)
その後も丸1時間練習してその日は帰るのだった
●後日俺たちは授業後に職員室に向かった
「「失礼しまぁぁす!」」
「おう!来たか日向に神凪!こっちこっち!」
俺たちが歩いていくとコーチは一枚の書類を取り出し話し始めた
「率直に言うがお前たち2人をバレー部に入れることは出来ない」
「「え!そんな!」」
「まぁ聞け…しかしそれは女子バレー部の話だ。…お前たちにはコレから男子バレー部を創部させて貰う。喜べ第一号だ!」
「うぉぉぉ!俺たちが第一号!?なんかかっけぇぇ!」
「いや翔陽…そんな良いもんじゃ無いって」
(俺たち一年2人で創部ってそれ上の世代0だし今からメンバー募っても大会には間に合わない…それに他にも…あぁこんなことなら無理言って東京残れば良かったかな〜)
「でもぶっちゃけどうしたらいいんですか?俺たちみたいな一年2人じゃ練習もままならないですよ?」
「まぁそこについては考えてある。コレから説明する」
「「…」」
「何もこちらとしても部活だけ作って放っておくわけじゃ無い。とりあえず学校の部活動としては17時まではとりあえずうちの女子メンバーと合同練を週3日は行って欲しい。」
「他の日は?」
「他の日については…コレから移動しながら説明する」
「「??」」
俺と翔陽はそのままバッグとシューズだけ持ってコーチの車に乗ること20分…
「ここだ!」
「「ここって…」」
そう…そこは昨日俺と翔陽が2人で練習していた市民体育館だった
「コーチ、なんでここに?」
「まぁ中入ってみろって!」
そう言われたので恐る恐る中を覗く俺と翔陽…
そこでは…
「うぉぉらぁ!声出せ声!」
「「はい!!」」
ーーバギャァァァァァァン!!ーー
「ナイスキー!!」「流石だな!」
俺たちよりふた回りは大きい青年たちがバレーの練習を行なっていた
「あのーこれは?」
「っ…」
翔陽はビビって隠れちまったし
「この人たちはうちの市の近くにある大学のバレー部の皆さんたちだ。ちなみに強豪だぞ?普段は大学の体育館で練習しているらしいんだが練習終わりに週2.3回はここでも練習しているらしいぞ」
「ヘェ〜大学生…」
(通りで…俺も中学生にしちゃでかい方だけど背丈は勿論厚みがもう全然違う…)
「ここに連れてきたってことは…」
「そう!お前たちにはコレから週3回の学校での練習以外ここのバレーの練習にも参加して貰う!ちなみに許可は取ってあるし向こうの大学さんにも快く聞いていただいた!あ、それにうちの学校の練習後も来ていいぞ?」
「マジですか…」
(ヤッベェ!!正直学校選びミスったとか思ってたけど中学の段階からこんなレベルのたけぇとこでやれるなんて!全国トップの中学でも無理だぞ!ここでやれば間違いなく上手くなれる!)
「おい翔陽!いつまでビビってんだ!」
「び、ビビってねぇし!ちょっとトイレ行きたかっただけだし!」
「うそつけ…てか聞け翔陽!この人たちのバレーみてどう思った?」
「…すげー上手い…"小さな巨人"くらい」
「いいこと教えてやる翔陽!この人たちはな大学生らしいんだ。それに強豪チームの…お前の憧れであるその小さな巨人が今はどのレベルにいるのかは知らないけどその人は高校生だったんだろ?なら間違いなくこの人たちの方がスゲェぞ?」
「!?小さな巨人よりも!?」
「あぁ!間違いなく…な!」
実際この考察は当たっていたのだった。ここにいる人たちは全国各地で高校生の頃に結果を残したバレーエリートであった。小さな巨人は高校生の頃は宮城では少し有名程度であったが全国で見ればそうでもなかった。
そのように話しているうちに
「すいません!今日から参加させていただく雪ヶ丘中学の者なんですけど!」
コーチが向こうの担当者たちに話しを通してくれた
「君たちが今日から参加してくれる神凪リオくんと日向翔陽くんかな?私は大学バレー部”コーチの**神庭(かんば)**だ。」
(片方はハーフかな?それにもう1人は年代と比べても小さい方だね)
「君は中1にしては破格の体格を有しているねぇ〜そっちの君は元気そうだ!よしお兄さんたちがきっちり指導してあげるから着替えてなさい!」
「「はい!よろしくお願いします!」」
そう言い残し去っていく中1コンビの2人
「金髪の彼…中1の割に体格も良いし同世代と比べても今まで努力していたのが分かるほどのしなやかな筋肉が付いてる。それに…どこかで見たことある顔…ですね」
「ふふふ…よくぞ気づいてくれましたね…彼…かのイタリアの英雄…セリアAの絶対エース・レオナルドの御子息なんですよ!」
「「「え!レオナルドの!?」」」
そこまで練習していた者たちや他のコーチを含め片耳を立てていた人たち全ての人間が驚愕した表情を浮かべる
「日本人と結婚したって聞いてましたけどまさかこんな田舎にいるとは…あれ…でもレオって今イタリアにいますよね?」
「あぁそれは昨年彼がイタリアチームに契約された際に神凪本人に日本に残るのか両親と共にイタリアに行くのか選ばせたそうなんです。それで日本に残ることになったらしいですよ。ここには母方のご実家もあるそうで…」
「あぁ〜なるほど…じゃあもう1人の彼は?」
「日向は"小さな巨人"に憧れた少年って感じでまだバレーのルールも詳しく無いそうなんですが神凪曰くですけど跳躍力は桁外れ…ポテンシャルだけなら彼と遜色ないそうですよ」
「それは…また…」
「ま、おそらく後半のは建前でしょうが…良いものを持っているのは間違いありません」
◆ウォーミングアップ
大学選手たちと一緒にアップを始めると、彼らの動きの滑らかさに日向は見惚れる。
「翔陽くん!足の使い方がバラバラだ…それじゃあ上手くならないぞ?」
声をかけてきたのは、大学レギュラーの1人である城戸(きど)。
バックアタックもこなす万能型で、身長192cm。
「もっと膝の向きを固定して、『踏む』意識で跳べ。君は、スピードはあるんだけど無駄な動きが多すぎね」
「は、はいっ!」
リオにはエースの槙島が寄ってきた。
「君、センスもあるし非常に鍛えられてるね中学生とは思えないよ!流石はあのレオナルドさんの息子さんだ!でも!…一つアドバイスするなら次のトス練でトスは“押す”んじゃなくて“浮かせる”。やってみな!スパイクの方は問題なし!」
リオは何度かトスを上げる。
槙島はわずかに表情をゆるめた。
「……へぇ、修正が早いじゃないか。流石だよ」
「ありがとうございます!」
日向が横目でそれを見て、思わず唇を尖らせる。
「リオ、なんか褒められてんじゃん!」
「うるさい、集中しろよ」
そうしてその後も選手たちやコーチたちにアドバイスを貰いながら練習についていくこと2時間…
「今日の練習はここまでだ!各自片付けに入るように!」
◆練習後:
片付けの後、城戸と槙島の2人が翔陽とリオに声をかけた。
「二人とも面白いしセンスあるよ!
またすぐに合同練習があるから今日の復習を忘れずにもっと強くなってきてね!」
リオは力強く頷き、翔陽も短く返す。
「もちろんです!」
体育館を出る頃には、ここに来れば二人はもっと強くなれると確信していたのだった