レゼさんじゅうろくさい   作:大学鯖

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やっと本編に戻ってきました。


第十四話

 私はレゼ、16歳。いろんな闇が見えた気もするけど、ただの女子高生でカフェ店員(はぁと)

 

 (今日はデンジ君来てくれるかな……?)

 

 などと考えながら、モーニングのお客さんに応対していく。マスターはモーニングセットを作る機械になっていたので、それ以外は全部私がやった。ここしばらくお客さんが増えている気もするけど、気のせいか……

 

 (私を撮ってる気もするけど気のせい……じゃないよな、これ)

 

 さて、どうしよう。

 そう思いながら、水を運んでそいつの前でこけて、携帯を水浸しにする。

 

 「うわーーー!!!」

 

 「ごめんなさ~~~い!!!」

 

 オロオロとして泣き出しそうな顔を作る。さてどう出てくるか。

 これで弁償しろだの言いだしたら裏路地へご招待だが…うん、向こうも弱みがあるので言い出せないね、この辺やっぱり日本人だね。写真はさすがにNGだからね。

 

 「ちょっとレゼちゃん!」

 

 マスターからお小言がきた。

 

 「すみませ~ん!!」

 

 こんな風にちょっとドジなほうがかわいいのだ、かわいいは正義で大抵のことはかわいいで押し通せる。日本で学んだ。そう、決して天然ではない……。

 

 そうこうしているうちにモーニングが終わった。

 

 「レゼちゃん、次からたちの悪い客居たら僕に言ってね」

 

 (おろ、バレてた)

 

 「……マスター、ごめんなさい」

 

 「レゼちゃん来てからああいうの増えてるけど、迷惑行為は出禁にするから」

 

 「だから僕を頼っていいからね」

 

 「ありがとうございます、マスター」

 

  と、言いながらふと気づいた。

 

 (あれ、この人そういえば意外と隙がないな……)

 

 もしかしたら、意外と荒事に慣れているかもしれない。

 人は見かけによらないもんだ、その最たるものが自分だけど……。

 

 なんて思いながら、リュックから学校の宿題(ソ連製)を出してみた。

 

 (これ、大丈夫か?あってるのか?)

 

 ちょっと不安になりながら、とりあえず地理を始めた。

 なんかソ連が妙に大きい気がするけど、まあいいだろう。

 

 しばらく勉強するふりをしながら、デンジ君をどうすべきか考えていた。

 

 一番の問題は……

 

 (どうやったら彼を殺さずに任務完了できるか……)

 

 そう、一番の問題はもう私が彼を殺せないことだった。正直、彼の顔を見て、年齢を聞いたらもう無理だった。

 

 (どう見てもジョンとミーシャの生まれ変わりじゃん……)

 

 向こうからすると、こいつ何言ってんだという案件に違いないが、私はそうとしか思えなかった。そして、この時点で私の任務はほぼ達成不可能ということだった。

 

 (ソ連に生きたまま連れて帰るのはありか……?)

 

 いや、今の上層部なら最悪私もろとも始末される可能性が高い。 

 

 (その場合、私がソ連から亡命するコースもあるのか……)

 

 そもそもなぜチェンソーマンの心臓を欲しがるのか?

 

 彼が武器人間だから、その心臓を奪えば自国の武器人間が作れる?そんな単純な話ではなさそうだ。それならデンジ君そのものを攫った方が楽だろう。なんならその見返りが私自身であってもよい。

 

 他の武器人間ではだめなのか。例えば日本にはサムライソードという刀の魔人がでたという。それではなく、あえてチェンソーマンと名指しだった。

 

 あと、そのサムライソードを鎮圧するときに日本の公安にマキマという魔女がいたという。彼女は手も触れずに遠隔地のヤクザを殺したらしい。しかも、銃で撃って体に大穴が空いても死ななかったらしい。

 

 (どうかんがえても人間じゃないな。武器人間か……それとも……)

 

 あれ、公安? 猛烈に嫌な予感がする。

 デンジ君に確認しなければいけない。

 すると、ちょうどベルが鳴ってお客さんが来たのが分かった。

 

 「あー、お客さんだぁ」

 

 そう、待ってたお客さん。デンジ君がやってきた。

 

 「昼食い来た」

 

 「えー続けてくるほどおいしくないでしょココ」

 

 と、マスターの目の前で言ってみた。うん、失礼すぎるな私。

 

 「ウマいよ?」

 

 と、デンジ君。まー、そりゃキミはね。何食ってもウマいだろうね。

 

 「おいしいよ」

 

 と、マスター。いや、あなたはちゃんとリサーチしよ。

 

 私は二人にむかって

 

 「バカ舌」

 

 と、舌を出してみた。もっとも私も偉そうに言える立場ではない。

 残飯だろうが死骸だろうが食べてたネズミが何を言ってると自嘲した。

 

 そして、本命のデンジ君との会話をしたいけど、彼は隣のテーブルにいたので

 

 「こっちの机で食べないですか、お客様~」

 

 とからかいながら呼んでみると

 

 「いーよ、勉強中だろ?店員のクセによ」

 

 (お、仕事はマジメなんだ)

 

 とか妙なとこで感心してしまったが、ちょっとやられっぱなしもシャクなので

 

 「キミは学校いってないだろ~、16歳のくせによ。そっちの方がヤバいと思いますけどねぇ」

 

 などと、どの口がと思いながらからかってみる。

 16歳で学校にいってないのがヤバいなら、生まれてから学校に一度も行ったことがなくて、16歳で既に殺しもスパイもやってた自分はなんなのか、と。

 

 (私とジョンはともかく、ミーシャは学校行かせたかったな……)

 

 と、もはや彼と同級生の設定を忘れて、完全に母目線だった。

 

 「そうかなぁ……そうかあ?」

 

 やっぱりこの子も生い立ちが普通じゃないから……なんて不憫な……という内心を必死に隠しながら、からかいつづけた

 

 「学校行かないでデビルハンターなんて珍種だよ、珍種」

 

 すみません、16歳で学校もいかず、デビルハンターもスパイも軍人もやってた女が言っていいことじゃないよね……。でもレゼは普通の女子高生だから……ごめんね。

 

 これ以上この会話を続けるとボロが出そうなので、強引に詰め寄ることにした。

 

 「こっちで勉強しよ~と、そっちつめてつめて」

 

 と彼の隣に詰め寄ると、彼はさっきの学校とか勉強のことを真面目に考えてたみたいで

 

 「……漢字は読めるようになりたいかな……」

 

 とボソッと言ってきた。

 

 「漢字読めないの!?じゃ教えてあげる」

 

 この歳の男の子は下ネタ大好きなはずだ。

 てか、男っていくつになっても下ネタ好きだから、下ネタいける女は懐に入りやすいというのがハニトラを実戦で叩き上げた私の経験だ。

 

 「問題、ジャジャン!この漢字は何と読むでしょう?」

 

 ノートを広げると、一面に「金玉」と大きく書いてあった。

 

 「キンタマだろ、エロ女!」

 

 「なんだわかってるじゃん!」

 

 うーん、リアクションが小学生ぐらいっぽい、新鮮!

 

 (だめだ、完全に思考がおばちゃんだ……)

 

 後ろでマスターがコーヒーを吹き出していた。

 それを見なかったことにしてたら

 

 「唯一キンタマだけは読めるんだよ!」

 

 「アハハハハハ!!なんじゃそりゃ!」

 

 だめだ、やられた。なんでキンタマだけなのよ!

 爆笑したのなんて何年ぶりだろう?それこそ彼がいた数年の間だけだったはず。

 

 「では次の問題、これは何と読むでしょうか?」

 

 ノートを広げると大きく「睾丸」と書いてあった。

 

 「ん…なんとかまる……?」

 

 「正解はこうがんでした~!」

 

 マスターがまた後ろでむせていた。

 

 「こうがんって何だよ!?」

 

 「キンタマでぇ~す!」

 

 「エロ女!」

 

 「デンジ君、また一つかしこくなったねぇ」

 

 「……レゼとなら学校いきたかったかな、なんか楽しそうだし」

 

 不意打ちが来た、それはズルいよデンジ君……。

 さっきまでは子どもをからかってる感覚だったのに、気づけば男になって、女の子だった私が一番欲しかった言葉を投げかけてくれる。

 

 (あなた……ごめんなさい……)

 

 自分の最愛の人にそっくりな男が自分の一番欲しかった言葉をくれる……。

 

 (本気になってしまいそう……)

 

 そして、私は彼を本気で落としに行くことに決めた。

 

 すっと足を彼の足に絡ませて、肩に手をまわしながら彼の耳元で

 

 「いっちゃいますか? 夜」

 

 とささやいた。

 

 「夜?」

 

 彼がドキッとした様子がわかる。あえて、誤解を招く表現で彼の心のスキマに潜り込む。

 

 「一緒に夜の学校探検しよ?」

 

 夜の学校という怪しい響き、なにか非日常の、そして何かエロチックなことを想起させる。ハニトラの手管だが、本気なときでも使わない手はない。

 

 デンジ君を見ると、完全に真っ赤になってる

 

 「……します」

 

 なんで敬語? まあでも、

 

 (堕ちた……)

 

 よし、今晩が勝負かな。

 あれ?なんか忘れてるような……。

 いけない、いけない、レゼのキャラに引っ張られてるぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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