レゼさんじゅうろくさい   作:大学鯖

16 / 60
感想、評価、お気に入り登録ありがとうございます。
年末で業務多忙につき遅くなりました、申し訳ございません。
なんとしても最後まで書き上げますので、長い目でお付き合いいただければ幸いです。


第十六話

  私はレゼ、16歳、女子高生(ときどき36歳、母)。

 

 彼を連れ出して、ついた先は月明りに照らされたプールだった。

 

 私は手をプールに浸して水温を測る。

 

 「はは、冷た~い!」

 

 夏とはいえ曇り空の夜、プールの水温は冷たくなっていた。

 とはいえみんなで泳いだソ連の湖に比べるとそこまでは冷たくなかった。

 

 「デンジ君は泳ぐの好き?」

 

 と何気なく聞くと

 

 「俺あんま泳げないんだよね」

 

 と返ってきた。日本では小学校で水泳を教わるらしいけど、小学校に行っていない彼は今まで泳いだことがなさそうだった。

 

 さっきまで、16歳の女の子として彼に接しようとしていたのに、またわが子に水泳を教える母が顔を出す。

 

 「じゃあ、教えてあげる、泳ぎ方」

 

 そういって、自然に服を脱ぎ始める。

 さも、子どもをお風呂に連れて行くときのように、恥じらいもなにもなく。

 

 「え!?」

 

 彼が狼狽している。そうだった、目の前で同級生の女の子が服を脱ぎ始めるというのは、彼の年頃だとありえなかったんだ……。つい親子ぐらいのつもりでいた。

 

 今更そんな当たり前のことに気づいたけど、ここまで来たら引っ込みがつかないので、さも誘惑するように、小悪魔のように笑いながら上着を脱ぐ。

 

 「脱ぎなよ、服着てると沈んじゃうよ」

 

 そういいながら、下も脱ぐ。彼がキョドっているのがわかる。この歳ぐらいの男の子だと、下着が服の隙間からちらっと見えるくらいで興奮するものだったというのを、すごく久しぶりに思い出した。

 

 「エッチすぎじゃないすか?」

 

 だめだなぁ、デンジ君。これくらいでエッチすぎなんて言ってちゃ。

 後ろで腕を組みながら、胸を強調しながら聞いてみる。

 

 「泳げるようになりたくないの?」

 

 残念ながら、私の平らな胸では強調したところで谷間など作れなかったけど、そんな私の胸でもデンジ君は反応していた。白いブラに包まれた私のふくらみを凝視しながら、彼がポツリとつぶやく。

 

 「なりたくなってきた……」

 

 いいリアクションだ。ならもっとすごいことしちゃうとデンジ君はどうなっちゃうのかな? いたずら心満載で、私はさらに過激な行動にでた。デンジ君を上目遣いで見上げながら、彼が胸をガン見している中で、後ろ手にブラを外して見せた。

 

 「オあえ!?」

 

 多分彼は生まれて初めてお母さん以外のおっぱいを見たのだろう。いや、幼い頃にお母さんを亡くしたらしいので、おっぱい自体見た事がなかったかもしれない。目線が完全にキョドっていた。彼が私の裸に夢中になっているのがなぜか楽しくて、さらに煽ってみた。

 

 「デンジ君もハダカなっちゃお」

 

 そう言いながら、最後の一枚に手をかける。おっぱいでああなってしまうなら、初めて女の子のあそこを見ちゃうとどうなっちゃうんだろう? 

 

 私も初めての経験に興奮していないと言えば嘘になる。初めて夫に見せたときとは違う、私がリードしてあげているという優越感、なぜか妙に硬い彼のガードを崩す達成感、自分が彼の初めてになっているという特別感がないまぜになっていた。

 

 アダムを誘惑して楽園を追放されるイブのように、頬を染めながら彼も生まれたままの姿になるように促す。

 

 「どうせ暗くて見えないよ」

 

 確かに暗い、彼が見えるかは分からない。しかし、私の白い身体を月明りが照らして妖しく光っている。彼は全て見えているはずだ。彼の眼はじっと私の身体を見ている。特に生まれて初めてみる、私の女の部分を目に焼き付けようとしているのがわかる。

 

 (嬉しいような……でも恥ずかしい……)

 

任務では全く感じたことのなかった羞恥心がここにきて頭をもたげてきた。

 

 最後の一枚を脱ぎ去った私は、さっと彼の目線をかわす様にプールに飛び込んだ。

 

 彼はなぜかまだ葛藤していたが、プールに隠れた私を追いかける誘惑に勝てず、何かに負けたような顔をして全裸になっていた。その表情がなぜかお預けを食った犬のように見えて、思わず笑ってしまった。

 

 (あれ?結構良い体してるな……)

 

 デビルハンターを続けているせいか、同年代の男の子よりもしっかりと筋肉がついているようだ。一瞬、彼に見惚れそうになった私は、気持ちを切り替えた。

 

 「あはは!つめたっ!デンジ君もおいでよ!」

 

 無邪気に、しかし女を意識させるようにプールの中から彼を誘う。

 

 彼はこの期に及んでまだ何かと戦っているようだった。

 恐らく彼の頭の中で天使と悪魔が戦っているのだろう。

 

 じゃあ逆に子ども同士が遊ぶような雰囲気の方が彼も抵抗がないかもしれないな、と思い

 「わー溺れちゃう、助けて」

 

 と、完全に棒読みで助けを求めてみた。

 普段は完全に女優顔負けの演技をする私だけど、彼にはなぜかそんなことはしたくなかった。

 そう思いながら彼を見ると、彼は眼を閉じたまま、未だに葛藤の最中だった。

 

 (むー、往生際が悪い……)

 

 何に葛藤しているのか、後で問いただす必要があるな……。

 一番嫌な想像、彼が他に好きな女がいて、そいつに操を立てている……なんてことは考えたくなかったので、今回は無邪気な子ども同士になって水遊びする方向に切り替えた。

 

 (彼に女の子の味を教えるのはまだ早かったかもしれないな……)

 

 ちょっと反省しながら、彼を挑発してみる

 

 「ははあ~んわかった!さては泳げないからプール恐いんだな!」

 

 だからさっき泳げないと言ってただろうに、私は何を言ってるんだろう。頭の中身まで子どもになってしまったようだ。しかし、彼もやっぱり子どもなのでこの安い挑発に乗ってくれた。

 

 「ウらあ!!」

 

 ダッシュしながらプールにルパンダイブを決める彼を私の目がずっと追っていた。

 何故か私の眼は彼が全裸でガニ股になったその中心部……彼の男の部分をじっと見つめていた。

 

 (あれ?結構……)

 

 と思っていたら、大きな水しぶきを上げて彼が着水した。

 

それから、しばらくの間、私は彼とまるで魚になったように、童心に帰って水中で戯れていた。

 彼は私を追いかけるのに夢中で、いつしか泳げていることに気が付いてないみたいだった。

 私は潜った彼の上を泳いでいた。彼から見ると完全に丸見えになっていたけど、そんなことは気にならなかった。彼を見ると、その目にいやらしさや情欲はなく、純粋に子どものように遊んでいるのが楽しいという表情だった。お互い裸でいるのが自然な、不思議な感覚だった。

 

 「あはははははは!」

 

 「はっハハ、冷てぇ!」

 

 ひとしきり追いかけあったあと、私たちはプールの真ん中で立ち止まった。

 

 彼に泳ぎを教えてあげようとして、

 

 そういう私を水から顔を上げた彼が上目遣いに見つめる。

 彼の濡れた金髪が自然に後ろにかき上げられ、彼の眼が私を捉える……。

 

 その眼を、その表情を見て、私の心臓が跳ねた。

 

 ドキッ!

 

 (え……何これ……!?)

 

 初めて……じゃない。遠い昔たった一度だけあった、この感覚。

 思い出した……決して忘れるはずがない……亡き夫からの告白……。

 

 でも、これはそれだけじゃない。

 とても不思議な感覚。私の愛しい男(ダーリン)であり、私の可愛い子ども(ベイビー)……。

 そう、私が亡くした私の全てがここにあった!

 

 それを理解した瞬間、私は彼の虜になった。さながら蜘蛛の巣にかかった蝶のように……。

 

 彼の全てが欲しい、そして私の全てを捧げたい。

 

 私が彼を教え導く母であり、無邪気な彼の友達であり、彼の記憶に残り続ける初めての女であり、そのような彼の全ての女になりたいという欲がわいてきた。

 

 突き詰めれば彼の過去、現在、そして未来を全て私にしたいという独占欲なのかもしれない。

 

 彼に私の持てるすべてを教えたい。

 母として、女として、友達として、そして妻として……。

  

 「教えてあげる!」

 

 「デンジ君の知らない事、できない事」

 

 「私が全部教えてあげる」

 

 そう言って、私は彼に両手を差し出した。

 意識したわけではなかったけど、その姿はイコンの中の聖母マリアと同じポーズだった。

 

 叶うなら、彼のマドンナになりたい。

 母という意味でも、憧れの女という意味でも、そうありたいと思った……。

 

 本当に彼を男として意識したのは、まさに今だった。

 今までは、亡き夫と子どもを彼に重ねていた、それは否定できない。

 

 しかし、デンジ君はデンジ君だ。私が二度と手に入れることができないと思っていた私の人間としての幸せを全て与えてくれるかも知れない人だ。

 

 私の夫であり、子どもであってくれるかもしれない、そして死によって分かたれることのない、私にとってまさに人生そのものになってくれるかも知れない男だ。

 

 彼のことがもっと知りたい、そして、私のことをもっと知って欲しい。

 

 とりあえず、まずは泳ぎからだ。

 あの日ミーシャに教えた思い出がよみがえる。

 

 彼の両手を取り、水に浮くことから教える。

 デンジ君は呑み込みが早く、あっという間にバタ足を覚えた。

 夢中になるあまり、彼は息をしていなかった。

 

 「デンジ君、息継ぎ!息継ぎ!」

 

 彼はこれもすぐにマスターした。もうこれで泳げるようになった。

 わが子の早い成長を誇る母か、優秀な番を誇る女か、そのどちらの感情も私にあった。

 女としてはこれ以上の幸せはない。

 

 さて、泳ぎの次はいよいよ、女を、私を教えてあげよう……

 

 と思っていたら、大粒の雨が私の目に入った。

 

 「アハッ、雨だ、アメ!アハハハハハハ!」

 

 「ギャー!!」

 

 文字通り水入りとなって、再び童心に帰って遊び始めた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。