お気に入り登録、評価、感想ありがとうございます。
レゼダンス大バズりですごいな(小並感)
チェンソーマン特典第七弾がでましたね。
予想大外れでしたが、思ってたよりはるかにスゴイのが来ました。
絶対欲しいと思うので、週末はまた見に行きます。頼むから100億いって欲しい。
私はレゼ、16歳、恋する乙女(なのか?)
プールに降り注ぐ雨は一向に止まず、むしろその勢いを強めてきた。嵐の予感だ。
私たちはプールから上がり、先ほどの教室に戻った。
子どものように裸で戯れるのも悪くなかったが、それよりも私はデンジ君にもっと近づいてみたかった。
窓の外に降りしきる雨を見ながら
「止みませんねぇ」
と呟いてみる。もちろんそのままの意味ではなく、まだ帰りたくない、一緒に居たいという意味で言ったが、どうも伝わらなかったらしい。
しばらく私たちは無言のまま窓の外を眺めていた。
その間に、私の浮かれていた頭も程よく冷えてきた。
冷静になってから考えると、私は彼と一緒になりたいと思うあまり、私自身の問題を忘れていたことに気づく。
私は彼を好きになる資格はあるのか?
それを思うと心臓を鷲掴みにされたように苦しい。
私はソ連のスパイで彼の命を狙う刺客だ。
仮にその任務を放棄したとして、私はこれまでの人生で多くの命を奪っている。
ミーシャが大きくなって、私の様な女を連れてきたとしたら……
(そんな女はやめなさい)
そう言ってしまう自分がいることに気づく。
そして、私に36歳の未亡人だ。彼は私の息子と同じ歳の16歳だ。
たとえ私の見た目が16歳だとしても、彼を偽り続けることはできるのか?
……無理だ。私が耐えられない。彼には私の全てを知って欲しかった。
しかし、それを知らせるということは、彼と一緒になることはできないということだ。
さらに最大の問題は
(私は本当にデンジ君が好きなのか?)
実はジョンとミーシャを重ねて見ているだけで、デンジ君のことを何も知らないのじゃないか?
私はデンジ君が好きだ、これは間違いなさそうだ。
でも、それはジョンに似てるから、あるいはミーシャが大きくなった姿を彷彿とさせるから
……それだけじゃないのか?
彼は私に一輪のガーベラをくれた。そこにジョンを重ねてしまった。
彼は酷い幼少期を過ごし、16歳で学校も行かずデビルハンターをやっている。
そこに、私やジョンのモルモットとしての生い立ち、あるいはミーシャが辿ってしまったかもしれない未来を重ねてしまった。
そう、私はデンジ君そのものをまだ見ていないのではないか?
私のこの世の全てであったジョンとミーシャを合わせたような存在、それが、私にとってのデンジ君だ。でも、それはデンジ君を見ているようで見てないのではないか?
何よりも一番怖いのは、デンジ君がそれに気づいてるのではないか……という事だった。
彼は教育を受けてないだけで、その観察眼や地頭はむしろ良いと思う。
そして、野生のカンなのか、私が欲しい言葉を常に見抜いてくる。
その彼の眼が、私の嘘を見抜いているのではないか?
日本人の16歳の女子高生……という真っ赤な嘘で塗り固められた私の本当の姿を見抜いてしまうのではないか?
ロシア人のスパイで、悪魔人間で、殺人犯で、36歳で、未亡人で、経産婦で、デンジ君に亡き夫や息子を重ねて見ている。
考えれば考えるほど、私は彼にふさわしくないのではないか。
私なんかが彼の横に居てはいけないのではないか。
私の本当の姿を知れば、彼は私を好きになることはないだろう。
嘘をつき続ければ、彼を偽る私を、私自身が許せなくなるだろう。
私は彼に本当の私を知って欲しい
そして彼の全てを知りたい
そのうえで一緒にいたいという、夢のまた夢を追いかけるような儚い希望を抱いてしまった。
まずは、デンジ君自身のことをもっと知らなければ進めない。
ぐるぐる回る頭のなかで導かれた結論は、こんなことでしかなかった。
そして、勇気をもって彼のことを知る第一歩目の問いを投げかけることにした。
かつて悪魔に食わせた左腕を押さえる。腕はそこにあるのになぜか失くしたように痛む。
幻肢痛の逆のようなものなのか、いつしか、私が意を決して動く前のクセになっていた。
「デンジ君はさ、田舎のネズミと都会のネズミ……どっちがいい?」
かつてジョンが私に尋ねた質問だ。
「……なに、それ?」
私は彼がそれを読んだことがないという事に、なぜ気が付かなかったのだろう。
やはり、私は未だにジョンを彼に重ねているようだ。
「……イソップ物語っていう童話でね、田舎のネズミは安全に暮らせるけど、おいしいものは食べられない。都会のネズミはおいしいものは食べられるけど、人や猫に殺されるかもしれないっていうお話なの」
「ふーん……俺ぁ都会のネズミがいーな」
正直、ショックだった。私と似たような悲惨な人生を歩んできて、もう争いなんてこりごりなはずと勝手に思い込んでいた。だから、公安も無理やり働かされていて、彼はそこにいたくないはずだと決めつけていた。
それは、私が母として息子にそんな道を歩いてほしくないというような願望に過ぎなかった。
「え~!?田舎のネズミのほうがいいよ~平和が一番ですよ」
どの口が言っていると思いながら言う。それでも私は田舎のネズミがいい。できることならもう殺し合いなどごめんだった。平和が一番というのは、スパイで殺戮兵器の私が言ってはならない言葉だが、それでも本心だった。
でも、デンジ君は都会のネズミを選んだ。なぜそうなのか聞いてみると
「都会のほうがウマいモンあるし楽しそうじゃん」
限りなく短絡的で、若い思考だった。
「キミは食えて楽しけりゃそれでいいのか?」
「ああ」
即答だった。先のことなんか何も考えていない答えだった。
そう、彼の悲惨な生い立ちは今日を生きることが精一杯で、明日のことなんか考えても仕方がない、そんな人生を歩んできたのだった。
忘れていた。それは私もそうだったはずだ。
違ったのは、私は最愛の人と出会い、その人との生活が全てになったから平和を求めたのだ。そして、ジョンもそうだった。
しかし、ジョンはその前に「私と一緒なら」田舎のネズミが良いと言っただけで、本来彼は刺激と闘いを求めて都会のネズミを選んでいたのではなかったか。
私は自分の思い込みだけで、彼も平和が好きだから、デンジ君もそうに違いないと錯覚していたのだ。
やはり、デンジ君は私とは違うのだ。
無意識にデンジ君をジョンと重ねていたけど、やはり違うのだ。
だからこそデンジ君のことがもっと知りたくなった。
幸いまだ時間はある。というか、よく考えれば彼と出会ってまだ2日しか経っていないのだということに改めて気づいた。
てっきりもっと長い間彼と居たと思っていた。
デンジ君とジョンは違うという事を再認識し、一抹の寂しさはあったけど、デンジ君をもっとよく知りたいという思いはより強くなった。
「じゃあさ、この夏私といろんなところに行ってみない?一週間後お祭りがあるけど、
それまでも一緒に遊びに行ったりごはん食べたりしようよ、きっと楽しいしおいしいよ」
と、彼と一週間いっぱいデートすることで、もっと彼を深く知ろうと思った。
「……仕事終わってからならいーよ」
「いえーい、やった! 約束ね!」
「ちょっとおトイレいってきま~す」
と言いながら、ひらひらと彼に手を振って教室を出た。
「超糞かわいい……」
彼がボソッと呟くのが聞こえた。
いきなりの不意打ちに顔が爆発したように火照る。
心臓が早鐘を打つみたいに高鳴る。
スパイとしての私はどこかに行ってしまった。
それどころか、大人としての余裕もなくなって、恋する16歳になっていた。
(ダメだよ……デンジ君。反則だよぉ~)
嘘偽りのない彼の呟きに有頂天になっていた。
トイレから出て鏡をみると、そこに浮かれた女が立っていた。
そして、鏡をみてはたと気づく。可愛いと言われたのは偽りの私だ。
本当の私はそんな可愛いなんていうものではない。
彼の言葉に浮かれては、また現実に戻って落ち込むというループができてしまっている。
そんなことを繰り返しては、彼を待たせていることを思い出し教室に向かおうとした。
すると、向こうから怪しい人影が見えた。
どうやら素直には帰してもらえないらしい……。