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ちょっと次話から原作から外れる予定です。
業務多忙につき投稿ペース落ちるかもですが、お付き合いいただけると幸いです。
私はレゼ、16歳(のフリ)。
今、変質者に襲われそうになってて大ピンチ?
早くデンジ君のところに行きたいのに……デートの邪魔すんじゃねぇ!
私の眼は既にそいつが侵入者だということを把握していたが、あえて聞いてみる。
「デンジ君…?」
「そーそーデンジ君だよ、俺はさあ。俺も丁度ションベンしたかったんだよね」
………なにコイツ?
「連れションしようぜえ?なあ?」
………この時点でデンジ君がここにいなければもう殺している。
しかし、万が一彼がここに来た場合に、私の本性を見られる恐れがある。
……しょうがない、ああ、めんどくさい。
私は逃げることにした。途中でデンジ君が助けてくれるかもという自分勝手な願望で、か弱い女の子を演じながら腰を抜かしたり、必死で机を倒して抵抗するふりをしながら屋上へと駆け上がった。
「なんで逃げるんだ?連れション行くって約束したろ?」
………絶対殺す。
「待ってよ~、お話しようよ~、ねえ~」
気持ちワルっ!!
絶対こいつ質の悪いサディストだ。しかもスナッフムービーとか撮って喜んでるやつだ。
多分今までもいっぱい犠牲者が出てるんだろうな……。
しょうがない、私が仕留めるか……。こんなのにデンジ君の手は汚させたくない。
屋上なら多分来ないだろうし、それに……この雨自然じゃないな、悪魔の気配がする。
……台風の悪魔か。こんなバカと組んでるとしたらお仕置きだね。前回切り刻まれただけじゃわかんなかったか。
「お~い、もしも~し、君は屋上でションベンすんのか~?」
この変態が……。とりあえずまだか弱い女の子のフリをする。
「アナタ…アナタなんなの!?」
ホント、何なのコイツ……? アメリカあたりのデビルハンターか……?
それにしてはザコ過ぎないか? 有名どころは大体狩りつくした気がするけど……。
「そういう事聞く自分こそ己が何者なのかわかっているのか?」
……! 偶然だろうけど痛いとこついてくる。そう、私は何者か?16歳のか弱い女子高生レゼ?36歳のソ連のスパイ? 爆弾の悪魔? モルモット? 私は何? などと考えていたら
「俺はお前を知っているぜ」
……!なんでお前が知っている!?
固唾を飲んで待っていると……
「お前はチーズだ」
は?どういう意味?
まさか私、チーズ臭い!?え、嘘!? ちょっと待って!?
「ネズミを表に誘き寄せる為のチーズ」
「何を言ってるの…?お願いやめて」
……は? マジで何言ってんのコイツ?と思うと同時に
焦った、私からチーズみたいな臭いがするとかじゃなかった……
もしデンジ君にそんなこと思われてたら、ハラキリするしかなかった……。
心の中でずっこけながら、ちょっぴりホッとしながら次の言葉を待つ。
「これからお前の顔の皮を剥いで、目をくり抜いて、チェンソーに見せつけてこういうんだ」
なるほど……デンジ君狙いで私はその人質と……
「キミの大切な女性はまだ生きているよ」
「するとなぜだかだいたい、みんな俺の言う事を大人しく聞いてくれるんだ」
つまり弱いものを人質に取って今まで殺しをやってきたと……
だからこんなザコでも務まるのか。はっきり言って弱すぎる、どう見てもこの業界では生きていけない。
そして、これを私が狙われた場合に置き換えてみた。ジョンがやられる姿は想像できないので、ミーシャが、あるいはデンジ君が囚われて顔の皮を剥がれたと……。
「だからあとは殺すだけ、お前の体で欲しいのは皮と目だけなんだ」
つまり、結局は人質も殺してんだよね……。
ミーシャやデンジ君がこんな目にあったとしたら……
私の結論は決まっている。生きている事を後悔するレベルで苦しませて殺す。
怒りでまぶたが痙攣する。こんな奴が生きていても世の中のためにならない。
そして、これと組んだ台風も同罪だ。
相手の得物はナイフだけだ。銃は隠していないようだ。
私は完全に戦闘モードに移行している。
「命は……いらない」
そういってダッシュしてナイフを振りかざす。
完全なテレフォンパンチだ。素人丸出し。
まあ、最後まで演技しますか……
棒読み気味の悲鳴を上げる。
「アあ、あああアアア!」
と叫びながら、まず膝の皿に前蹴りを入れて砕く。足があり得ない方向に曲がる。
「ぐぁ!!」
そしてナイフを持つ手をひねると同時に肘で相手の肘を折り、バックを取る。
念のためもう一本の腕も肩から折って、相手の胴体に足を絡めながらチョークスリーパーで終わりだ。
これから脱出するには目つぶしが有効だが、あいにく腕は全部潰してある。頭も抑えてあるのでヘッドバッドもできない。完全に詰みだ。
何度も繰り返した殺しの技、ソ連仕込みの軍隊格闘技だ。
一番苦しい死とは、結局窒息なのだ。
何回も死んだ私だからこそわかる。砕かれた関節の痛みを味わいながら苦しんで死ね。
「ア……ぱ、ぱ…ア…パ」
男が暴れるが、すでにコントロールはこちらのものだ。
折れてない足をばたつかせるが何にもならない。
「ぱ……あ、パ、ア……ぱ…ア」
そして、カウントダウンが始まる。
何度も歌ってきたあの歌を、私は無意識に歌っていた……。
♪ День моего свидания с Джейн
(僕とジェーンのデートの日)
Все готово
(準備は万端)
Утром мы пойдем вместе в церковть
(朝、一緒に教会へ行こう)
Мы будем пить кофе и есть омлеты в кафе
(カフェでコーヒーを飲んでオムレツを食べよう)
После того как мы прогуляемся в парке
(公園をちょっと散歩したら)
Мы пойдем в аквариум и увиде* любимых
Джейн, дельфинов и пингвинов
(水族館へ行ってジェーンの好きなイルカとペンギンを見よう)
После обеда мы отдохнем
(ディナーの後はひと休みしよう)
Итак, что мы сделали утром
(それで、僕らは今朝なにをしたっけ)
Мы будем говорить об этом пока не вспомним
(思い出すまで語り合うけど)
Мы не вспомним
(僕らは思い出せないだろう)
И ночью мы будем спать в церкви
(そして僕らは教会で眠るだろう)
何の変哲もない、ジェーンの一日。
ジェーンが朝起きて、デートして、教会で眠るまでの歌。
しかし、私にとってはかけがえのない歌。私の憧れの人生で、一度は叶った夢。
ジョンとの思い出の歌であり、ミーシャの子守歌であり……。
そんな大切な歌を殺しのカウントダウンに使っている私は何なのだ。
先ほどのこの男の言葉がよみがえる。
「そういう事聞く自分こそ己が何者なのかわかっているのか?」
黙れ……黙れ!!
ああ、そうだわかっている!
私はソ連のスパイでモルモットで殺人兵器だ!
決してジェーンになれない、普通の暮らしを夢見て、結局失くしてしまった兵器にすぎない。
そして、デンジ君とも……。
こんな人殺ししかできないような女が彼の隣にいて良いわけがない。
今なら彼は日の当たる場所に帰れる、私は無理だ。
彼なら私に光をくれると思ったが、そんなものは私のエゴでしかない。
彼は大切な人たちに囲まれて、真っ当に生きるべきだ。
……そしてその中に私は居ない。いや、居てはいけない…………。
気が付けば、男が暴れるのをやめていた。
歌を丁度歌い終わった。男は既に事切れていた。
もはや、男に対する怒りなど何もなく、どうでもよかった。
そして、その前にもう一人落とし前をつける相手が残っていた。
私は排水溝に近寄り、その渦を見つめながら低い声で呟く。
「嵐で学校に閉じ込めたのキミでしょ、台風」
向こう側から明らかな怯えが伝わってくる。
「レ……レゼ様ガイタトハ……シ、シ、知リマセンデシタ……」
「香港であんだけ切り刻んでもまだ分からなかった?」
「モ、モ、申シ訳ゴザイマセンッ!」
「抵抗したら、楽には死ねないよ。ラーゲリ、捕えなさい」
すると、ソ連兵の姿をした悪魔が現れ、排水溝から渦を吸い出す。
「ヒ、ヒッ!!オタスケ……」
排水溝から大量の水と同時に台風の悪魔が吸い込まれていく。
いつ見てもこんな大きなものが入るのは不思議だった。
「大丈夫だよ、死にはしないから、それじゃあ初仕事ね」
私は台風の悪魔に命じる。
「その男の死体を処理して、明日の朝まで雨を降らせ続けなさい。そして私たちを学校に閉じ込めなさい」