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ビーム君のファンの人、ごめんなさい。
私はどんなにボコボコにされても一途なビーム君が大好きです。
私はレゼ、36歳。ソ連のスパイ。
サメの魔人を相手にマトリョシカを起動する。
そのとたんに不可思議な空間が私たちを包む。
マトリョシカの悪魔、その力はいわば結界のようなものだ。
内部構造は何層にも分かれているが、とりあえず何もない、だだっ広い空間に私とサメを閉じ込めた。
この空間のメリットは、この中で起こったことは一切外に漏れないということと、何よりも……私が全力で暴れても壊れないことだった。
「ギャ!?なんだここ!?」
サメが泳いで外に出ようとするが、不可視の壁に阻まれる。
「ダメだよ、私とデンジ君を覗いてたでしょ、サメ君」
すると、サメが私を見て震えだす。
「お、お、おお、お前は……!?」
狂暴な魔人だと思ったのに、一目散に私から距離を取る
「にげろにげろにげろ、ヤヴァヤヴァヤヴァヤヴァヤヴァ!」
何でそこまで怖がっているのか?
「なんで匂いで気づかなかった!ビィーム!!」
え、私そんなに臭う!? さっきシャワー浴びたばっかなのに……
(そういやさっきもチーズって言われたし、もしかして体臭キツいのかな……?)
スパイとして隠密行動を取る以上、それは気にかけていたはずなんだけど…。
悪魔の嗅覚は鋭いからだね、と、そう思い込むことにした。私が臭い訳じゃない!
「そん匂い、お前ボムかあああ!」
ん、ちょっと待て。私たちは初対面のはずなのになんで知ってるの?
情報ぐらいは公安なら持ってるかも知れないけど、匂いで判別したよね。
これは本気で締めて、聞きださないとかな……。
そう思いながら首元のピンに指をかけ一気に引き抜く!
「ボンっ」
私の始業の合図だ。変身するときはいつもこう呟いて爆弾になり切る。
途端に私の頭が爆ぜて飛び散る。傍から見たらスプラッタだ。
そして、黒い導火線が私の腕を、体を包み、グローブとエプロンを構成する。
私の頭は、大きな爆弾が牙を剥いて笑っているような、そんな姿になった。
爆弾の悪魔、私の本気を出す悪魔のモード。
サメ君には悪いけど、デンジ君にフラれた憂さ晴らしをさせてもらうね。
サメ君はものすごいスピードで私から逃げていた。
でも、無駄だ。ジャンプした私は足の裏で爆発を起こす
ボッ!!
ジェット機のように音を置き去りにして飛んだ私は、爆風を残し、一気にサメの魔人の前に立ちふさがる。
「ギ、ギギャ…」
なんの予備動作もなく、肘の後ろで爆発を起こしながら、音速の拳を叩き込む。
文字通りマッハパンチ。まず躱せない。しかも無拍子で飛んでくる。
ドゴン!!ボオン!!
サメのどてっぱらに命中し、さらに爆発を起こす。
これだけでも、大抵の悪魔だと胴体が千切れる。
しかし、このサメは異常なほど丈夫だった。
「ア、ヴヴヴ!!」
「聞きたいことがあるんだけど、素直に教えてくれるなら攻撃しないよ?」
優しく聞いたつもりだったけど、サメ君は恐がりながら抵抗するようだ。
「ヴヴ、ヴヴヴヴヴ、ヴァ!!」
唸り声をあげながら、頭が巨大なサメの顎に変化した。
文字通りジョーズだった。目が6つあるけど。
「ギャワ!!」
サメが飛び掛かってきた。何のひねりもなく。
(それじゃ、自殺だよ……)
半ば呆れながら、上あごに手を当てて爆発させる。
ボワンッ!!!
爆風と炎に包まれて黒焦げになったサメが倒れる。
でも死んでない、頑丈だ。
「話す気になった?」
問いかけると、彼は震えながらとんでもない爆弾発言をした
「ボム……銃の悪魔の……仲間!」
………今何と言った?銃の悪魔、夫と息子の仇。私が人生全てかけて滅ぼしてやると誓った存在。
私が……銃の悪魔の…………仲間!?
そして、なんでコイツはそんなことを知っている!?
「……聞き捨てならないことを言ったね、話してくれるかな?」
色んな感情が混ざりまくって、色も温度も感じない地獄の底から聞こえるような声でサメに尋ねる。
「ギ、ギ、、ギギギ……ギャワワ!!」
シャカシャカシャカ……!!
今度は全身サメになって逃げて行った。何故か虫みたいな4本の足を器用に動かしながら。
「ゴキブリみたいだ……」
気持ち悪いので撃ち落とそう。
私は腕の一本をミサイルに変えて、高速で逃げるサメをロックオンした。
シュボッ!!
間の抜けたような音を立てて、ミサイルがサメを追いかける。
完全にどう動くか、もう予想済だった。なので、その行先にミサイルを置く。
いわゆる偏差射撃というやつだ。
ボーン!!
遠くで爆発音が聞こえる。命中だ。私はそこへ急行する。
なおも逃げようとしたので、頭上から蹴りを加えて、文字通りサンドバッグにする。
サメの白いどてっぱらに数えきれないほどのパンチを打ち込む。
そして、パンチを打ち込むたびに私の欠片を埋め込んでいく。
数十発のパンチを浴びせてグロッキーになったところで、その欠片を一斉に起爆させる。
ド!ドド!ドドド!ドガーン!!
連鎖爆発がサメを包み込んで行く。
ヤバいやり過ぎた!? 久々に暴れたせいで加減がいまいちできなかった。
ほぼ消し炭になったサメが地面に横たわる。
「きゃ……き……」
良かった、生きてた……。この子スゴイ頑丈、うちに欲しい。よし捕虜にしよう。
「サメ君、答えられるかな?」
「は……話したら殺される……!マキマ様と約束……!」
(またアイツか!忌々しい!)
やはりコイツもマキマに支配されているようだ。
「じゃあ、しょうがない。今、死んじゃう?」
「俺、チェンソー様に仕える……死ねない……」
ん、ちょっと待った。マキマじゃなくてチェンソー様?
なんで、マキマの配下じゃなかったの?
「あなた、公安のマキマの配下じゃないの?」
「マキマ様、恩人。でもチェンソー様絶対!」
「私はデンジ君の味方だよ?」
「なんでお前ボム、チェンソー様の敵!」
「うーんと、わかりやすく言うとデンジ君と一緒でボムの心臓を持った人間って言えば分かる?」
「いやその匂いボム、間違いない!」
「うん、サメ君。そのボムってのはどこで会ったの?」
「……言えない。マキマ様約束。」
「とりあえず、私はレゼ。ボムの心臓を持っているけどボムの記憶は無い。これでいいかな?キミ、名前は?」
「……ビーム」
「ん、じゃあビーム君、とりあえず治療するけど捕虜になってもらうね。言っとくけど抵抗したら楽には死ねないよ」
「……」
とりあえず血を飲ませて回復させてからラーゲリに送った。
すると、不思議なことにラーゲリが吸い込もうとするとビーム君の胸から鎖のようなものが見えて逆の方向に引っ張ろうとしていた。
(もしかして、これがマキマの支配か)
鎖は焼け焦げてだいぶボロボロになっていた。
その鎖を爆破してみると、切れそうになったところが見えたので連続で爆破してみた。
すると、パリンッ!という音と共に鎖が切れた。
「ん、あああ思い出した!」
とビーム君が言うので、一旦ラーゲリに入れる前に話を聞くことにした。
「どうしたの、何か思い出した?」
「マキマ、チェンソー様の敵!」
「ん、どうゆう事?」
彼の話は要領を得なかったが、要約すると、銃の悪魔と爆弾の悪魔は地獄でチェンソーマンと戦ったらしい。で、ビーム君は地獄の記憶をもっていて爆弾の悪魔を知っていた。
そして、ここからが最大の問題だが、その時銃の悪魔と爆弾の悪魔を眷属にしていた悪魔がいて、マキマはそいつと一緒にいたらしい。
その後、ビーム君は弱ったチェンソーマンとはぐれたて、気が付けば地上に居てマキマに囚われたらしい。
なぜか今の今までマキマを恩人だと思い込んでたようだ。
これらから分かったことは、まずマキマが人間じゃない、というかどうも悪魔らしい。それが人型で言語を話すという事は相当上位の悪魔だと推測できる。次に、ボムが銃の悪魔の仲間というのは地獄での話で、地上では関係ないらしい。
ただ、そうすると疑問がいくつか残る。これは今日戻ってから整理しよう。
差し当って問題はビーム君の処遇だ。
「で、ビーム君。これからどうする?」
「公安戻る、マキマに支配される、でもボムお前チェンソー様の敵!」
「違うよビーム君、私はレゼ。デンジ君の敵のボムじゃない」
「何?」
「まず、私にボムの記憶はない。そして、ボムは心臓だけで意識はない、何よりも……」
思い出すと少し恥ずかしい。何であんなことをしていたのか
「さっきまで見てたでしょ。その、私とデンジ君が……いい雰囲気だったのを。」
「見てた、お前チェンソー様誘惑!」
「あのね……、誘惑しようとする人は他の女の話持ち出されて、怒り狂ってビンタなんかしないの」
「…………たしかに」
「誘惑だったら大失敗だからね、あれ」
どう見てもスパイ失格だ。見張っていたのがソ連のエージェントなら粛清に動いていただろう。負ける気は全くしないけど。
「だからね、ビーム君。提案があるの」
「提案?」
「デンジ君を守りたいんだよね、なら手を組みましょう」
これは賭けだ。ビーム君はどうやらチェンソーマンに忠実らしい。しかし、彼にとってはマキマも私もどっちも敵だったのだ。
「多分、マキマは人を洗脳できる。ビーム君もそうだったでしょ。さっきデンジ君も軽くだけどそうなってた」
「……」
「このままだと、デンジ君、いやチェンソーマンもマキマに支配されちゃうよ」
「チェンソー様、マキマの支配、ダメ、絶対!」
「だよね。だから私は信じなくてもいいからデンジ君を守って欲しいの。」
「……ビームお前嫌い」
そりゃあんだけボコボコにしたらそうだよね……
「……その、さっきはごめんなさい。どうしたら許してくれるかな?」
「俺、ボム嫌い、だけど、チェンソー様お前好き。だから協力する」
「ありがと……」
「チェンソー様、絶対!絶対!幸せにしろ」
不意を打たれた。まさかここでこんなアシストが入るとは思わなかった。
「ん、ありがと……絶対デンジ君を幸せにするね!」
「あと、俺アザラシが好き。買ってこい」
「いや、アザラシは……売ってないかな……」
「じゃあ、魚でいい」
「わかった、買ってくるね。今帰るとマキマが気づくから、私に囚われたことにしておいて。」
そう言ってマトリョシカの中のセーフハウスを展開する。
何となく彼はデンジ君に忠誠を誓っているようなので、ラーゲリに入れない方がいい気がした。
「しばらくはここに居ておいて、欲しいものがあれば持ってくるから」
「あと水ないか?」
ああ、そうかサメだもんね。マトリョシカには流石に海はないけど、かつて私たちが行った湖はあった。
「じゃあ、こっちが湖の鍵ね、ちゃんと閉じまりしてね」
「わかった」
こうしてなぜかサメを飼うことになってしまった。
とりあえず、デンジ君の様子を見に行くとまだ寝ていたのでそのまま寝かせておいてあげることにした。何よりもここを撤退しないと危ない。
「……デンジ君、またね」