レゼさんじゅうろくさい   作:大学鯖

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今回は番外編です。デンジ君が心配なアキ君のお話です。
早川家大好きなので、パワーちゃんは早く帰ってきてもらいたいですね。
野茂さんはすごいいいキャラなので、ここでは頑張ってもらいます。


第二十二話

 俺は早川アキ。20歳。公安対魔特異4課所属

 

 今日は野茂先輩の頼みで、2課の若手に稽古をつけている。

 

 今はスパーリングだ。相手のパンチを躱してボディに一発、ガードが下がったところを顎にストレート。

 

 ボグッ!

 

 「ぐはぁっ!」

 

 相手のマウスピースが吹っ飛ぶ。

 

 「勝負アリ!」

 

 「ぐうう……ご指導ありがとうございます」

 

 「ありがとうございました」

 

 正直ぬるい。これじゃ悪魔の前に出たらすぐ死んでしまうだろう。

 などと考えていたら

 

 「アキィ~わざわざ来てもらってすまないな」

 

 後ろから頬に傷のある小柄な男性が現れた。2課の野茂さん、俺の先輩だ。

 

 「野茂さんの頼みは断れません」

 

 「おお?そうか?なら今すぐ2課に戻ってこい」

 

 ……俺の目的がなければそうしたいところだけど

 

 「特異課なんて血生臭い話しか聞かないぞ、順当にいけば5年後に俺が副隊長になる。そうなったら本気でお前を誘うからな」

 

 「ありがとうございます」

 

 俺は本気で感謝した、もっともそれは決して叶わないのだが……。

 

 訓練が終わって着替えると、野茂さんに飲みに誘われた。

 

 横に居た天使の悪魔は、甘いものが出るならとついてきた。

 そして、こっそりと俺に尋ねてきた。

 

 「ねえねえ、5年後はもう死んでますって言わなくていいの」

 

 「……その事誰から聞いた」

 

 「パワーちゃん」

 

 「あの糞悪魔……」

 

 あの鳥頭に言ったのが間違いだった。

 

 「お前は誰にもいうなよ」

 

 と念を押すと

 

 「キミはいいなぁ、僕も早く死にたいな~。生きてると頑張らなくちゃいけないからね。死ねば頑張らなくていいし……」

 

 などとぼやいていた。コイツはほんとに役に立たねぇ。

 銃の悪魔の討伐に行けるのだろうか、不安になってきた。

 

 などと憂鬱になっていたら野茂さんに飲みに誘われた。

 

 「アキィ、しけた顔してんなよ。飲みに行くぞ! 天使君もどうだい?」

 

 「いや、帰ります」

 

 「んだよ、連れねえなあ。まあしょうがねえ、アキ行くぞ!」

 

 こうして、強制的に連行されることになった。幸いデンジのバカは今日は遅くなるらしい。なぜか妙にうかれてやがった。

 

 ……万が一にもありえねぇと思っていたが、どうも本当に女ができたみたいだ。

 

 昨日、雨宿りしたら、美女と出会ってそのまま喫茶店で仲良くなったとか言ってた。

 あんなバカを好きになる美女とか、どう見ても怪しいと思ったので、同僚にその喫茶店でそいつの写真を撮ってもらった。

 

 どうも察知されたらしく水をぶっかけられたらしいが、その対策はしてあったので顔は写っていた。

 

 紫がかった黒髪で後ろに髪をまとめてある、色が抜けるように白い美女だ。

 年齢はデンジと同じくらいか。一見女子高生のバイトに見えるが何か引っかかる。

 

 こんな美人が会ってすぐのデンジに一目ぼれするか?

 ……あり得ない。そうすると危険なのはハニトラだ。

 そもそも、どちらかというとルックスも日本人離れしている。

 

 そう思いながら写真を見ていると、野茂さんが画面をのぞき込んでいた

 

 「どうしたよアキ……お前これ彼女かよ!えらい美人だな!」

 

 「いえ、違いますよ。うちの課のバカが入れ込んでる女ですよ」

 

 「いやいや、お前こんなカワイコちゃんならそりゃあ入れ込むだろうよ……?」

 

 その女の写真を見ていた野茂さんが、不意に考え込んだ。

 

 「どうしたんすか、野茂さん?」

 

 「……おいこの美女どっかで見たことないか?」

 

 「野茂さん、また見境なくナンパしたんですか?」

 

 「いや、本当に……。まあいいかとりあえず行くぞ」

 

 と、3人で居酒屋に繰り出した。

 居酒屋についてしばらくしてから、程よく酔いが回ったころに唐突に野茂さんが

 

 「アキ、さっきの写真もっかい見せてくんねえか?」

 

 と言い出したので、先ほどの写真を見せることにした。

 

 「……まさかな、そんなワケないか」

 

 「どうしました?」

 

 「いや、昔な……それこそ俺がまだガキのころだな。多分18年前くらいか。ソ連でな身寄りのない子どもたちが人体実験に使われてるってなニュースが流れてな。最初は都市伝説だと思われてたんだがよ、実際あったんだわ、その実験施設」

 

 「ああ、それ俺が生まれたころくらいですね」

 

 「うわ、それ地味に凹むな。まあいいや、んで、ソ連恐えーとか思ってたら、その新聞に助けられた女の子が写ってたんだけどな、それがえらい美人だったんだよ。」

 

 「野茂さん、そんなころから女好きだったんですか……」

 

 「うるせーよ!いや、マジでその境遇が悲惨すぎたのと、見た目アイドルじゃん、クラスでも話題になったんだわ。んで、その後その娘死んじゃったみたいなニュースが流れて、余計に悲劇のヒロインみたいになったんだけどな……」

 

 「よくそんな前のこと覚えてますね」

 

 「いや、うちのクラスとかあれが初恋みたいなやつ結構いたんだよ。でな、ここからが本題だ。実はな、その写真の娘な、その娘にそっくりなんだよ」

 

 「いや、それはいくらなんでも……」

 

 「と、俺も思ったんでまさかそんなワケないかと思ったんだよ。でもな、ソ連だろ。なんかやってんじゃねえかと思ったんだよな」

 

 言われてみて、ハッとした。何かがつながった気がした。

 

 デンジのバカが入れ込む美女、可能性としてハニトラは考えた。

 わからないのは動機だった。しかし、この女がソ連出身なら、スパイという線が一気に浮上する。

 

 「野茂さん、公安に悪魔と人間が融合した奴がいるってご存じです?」

 

 「ああ、最近聞いたことあるな。岸辺先生が鍛えてるとか言ってたな」

 

 そうだった、野茂さんも岸部先生の門下だった。

 

 「実はそいつがその女に入れ込んでる後輩です」

 

 「おいおい、それって……」

 

 「この女、もしかするとかなりヤバい奴かも知れません」

 

 「ああ、俺がそのニュース見たのは大体18年くらい前だ」

 

 「つまりこいつは18年経っているのに全く見た目が変わっていない?」

 

 「しかもソ連ってか、おいアキ、これ誰かに話したか?」

 

 「その写真を撮ってきた公安の同期だけですね」

 

 「これはちょっと他には伏せとけ。俺が岸辺先生に相談してみる」

 

 「わかりました、野茂さん、俺明日この女を調査していいですか?」

 

 「まあ、お前なら大丈夫だろうが気を付けろ。並の相手じゃないぞ、多分」

 

 「すんません、恩に着ます」

 

 「アキ、それとな……このことはお前の上司、マキマさんだっけか?そっちにも伏せとけ」

 

 「……なんでですか?」

 

 「ちょっとさっきの血生臭い噂に関わる。ちょっと岸辺先生の判断を待ってくれ、頼むぞ」

 

 そういって野茂さんに写真を送ると、あとはまた普通に飲み会になった。

 

 「んで、アキよぉコレはできたのか、お?」

 

 と言って野茂さんが小指を立てる。

 

 「いや……俺にはもう復讐しかないっすから……」

 

 「……姫野のことは残念だったが、あんま引きずんなよ」

 

 やっぱり野茂さんはお見通しだった。

 

 「あいつはいい女だったが、岸辺先生曰くネジの外れ方が足りてなかったな」

 

 「……」

 

 「まあ、お前もどっちかと言えばネジが飛んでるタイプじゃねえから早めに2課に移ってこい。こっちは逆にネジが飛んでないやつの方が真っ当に出世するぜ」

 

 「……ありがとうございます」

 

 昔からこんな風に俺を気にかけてくれていた、それこそ俺にとって兄貴のような人だ。

 

 「んじゃ、明日もあるから今日はお開きだな。副隊長は今日合コンだとよ、かぁ~うらやましいねぇ!」

 

 「野茂さんならいくらでもいい人見つかるでしょうに」

 

 「俺ぁ当分一夜のロマンスの方が好みだな、それこそこんなカワイコちゃんならなおさらなんだがな」

 

 といって、俺から送られた写真を見ていた。

 

 野茂さんと別れて帰宅すると、デンジはまだ帰っていなかった。

 パワーは今マキマさんのところで血抜きをしているので、今この家には俺一人だ。

 

 (あのバカ、まさか今日泊まりか?)

 

 何か、夜の学校に行くとかわけのわからないことを言ってたが、もしその女がスパイならデンジは大丈夫か?妙な胸騒ぎがして、急に不安になった。

 

 (なんで俺がアイツの心配なんざ……)

 

 そう思ってもこのイライラは止まらない。とりあえずタバコを吸おうとして、昨日捨てたことを思いだした。

 

 (そうだった、姫野先輩を断ち切ろうとしたんだった……)

 

 やはり俺はまだ引きずっているのか。

 とりあえず、冷蔵庫の缶チューハイを空ける。

 

 ふと窓の外をみると、大雨だった。降る前に帰ってきてよかったと思う反面、デンジはどうしているのだろうかと思う。

 

 相手の女が何の裏もなければむしろいい事なのかもしれない。

 だが、どう見てもそう思えなかった。

 

 ただ、裏があろうとデンジに害を加えなければ、そして、デンジのヤツがそれで幸せならば……

 

 (それはそれでいいのかもな……)

 

 そう思いながら、明日そのカフェに行って自分の目で見極めようと心に決めた。

 

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