レゼさんじゅうろくさい   作:大学鯖

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第二十四話

 私はレゼ、16歳?、無職。現在二道でバイト中。寝不足。

 

 結局、昨日は学校にデンジ君を置いてきてしまった。

 台風一過、今日は快晴。モーニングの時間も無事終了

 

 「レゼちゃん、無事じゃないから。遅刻分引いとくよ」

 

 「ケチケチケチケチ」

 

 などとぶーたれていたら、ベルが鳴って客が入ってきた。

 

 「いらっしゃいませぇ~」

 

 愛想よく店員モードになって振り返ると、公安の制服を着たイケメンが入ってきた。

 背中に刀を背負い、髪の毛を後ろで束ねてあるサムライみたいな感じ。

 

 そのイケメンがじっと私を見ていた。

 ただ、その目線は私に見惚れてとか、そんな感じじゃなく、むしろ警戒心にあふれたものだった。

 

 その客は椅子に座り、コーヒーを注文した。

 私がコーヒーを運ぶと、不意に彼が口を開いた。

 

 「レゼさん……でしたか?」

 

 「はい……?」

 

 「失礼、私はこういうものです、デンジがお世話になっています」

 

 といって、名刺を出して来た。

 

 「公安対魔特異4課 早川アキ」と書いてあった。

 

 あー、この人かデンジ君のいうイヤ~な先輩、か。

 ということは、デンジ君が監視されてて、近づいた私が不審者ということで調べにきたか。

 

 「もしよろしければ、少しお時間頂戴してもかまいませんか?」

 

 あ~断り切れなさそうか、しょうがない

 

 「結構ですよ、ヘイヘイマスター、私にもコーヒー!」

 

 「だからアンタ店員でしょ……」

 

 「いいじゃないですかぁ」

 

 といいつつ彼の隣に座る。

 

 「で、ご用件はなんですか?あ、デンジ君大丈夫でしたか?」

 

 というと、明らかに驚きの表情を見せていた。

 

 「デンジは今朝帰ってきましたよ、何か死にそうなツラしてました」

 

 「あ、良かった。無事帰れたみたいですね」

 

 あちゃ~デンジ君のフォロー忘れてた。まあ緊急事態だったからなぁ。

 

 「失礼ですが、昨晩アイツと一緒に居ましたか」

 

 「えー、そんなこと私に言わせるんですかぁ?」

 

 精一杯乙女モードで返す。

 

 「いや、朝帰りでこの世の終わりみたいな顔して帰ってきたら、そりゃ聞きたくなるでしょ」

 

 「……ですよね」

 

 「しかも、あいつめちゃくちゃ頬っぺた腫れてたんで、今日休ませてますよ」

 

 え、そんな強く叩いたっけ……。ああ、思ったよりムカついてたのか、私。

 

 「こんな事聞くのは野暮かもしれませんが、昨晩何があったんですか?」

 

 「あー……まぁ、……彼と学校でデートしてました」

 

 「あなた高校生ですよね?」

 

 「そうですよ」

 

 なんでそんな事聞くんだろ?

 

 「なんで中学校行ったんです?」

 

 ……え、あれ高校じゃなかったのか。ソ連ならあの大きさだと高校なんだけど……。

 

 頭の中にバッハのトッカータとフーガ 二短調が流れてくる。日本では「鼻から牛乳」というらしい。

 

 「いや、私の母校で」

 

 何とかごまかして答えると

 

 「で、何でかアイツ上半身裸で帰ってきたんですよね」

 

 ♪チャラリ~鼻から牛乳

 

 「いや、あの……私トイレでコケて……彼に服を借りて」

 

 「ああ、そんであいつ女物の服を持って帰ってきたんですね。で、あなたどうやって帰ったんですか?」

 

 ♪チャラリ~鼻から牛乳

 

 「………彼のシャツで」

 

 「……あいつ下着も靴も持って帰ってきましたよ」

 

 ♪チャラリ~鼻から牛乳

 

 「////////////彼のシャツだけで…………」

 

 どんな羞恥プレイだよ!いや、カメレオン使ってたから見えなかったと思うけど、え、じゃあ私の下着もデンジ君が持ってるの?

 

 「あいつが言うには、俺がレゼとエッチしなかったらビンタされたって」

 

 ♪チャラリ~鼻から牛……ってちょい待ち!

 ああ、マスターが鼻からコーヒー吹いた……。

 

 「いや、端折り過ぎ!」

 

 流石に誤解がひどすぎるので、昨日の顛末を掻い摘んで話してみた。

 

 「………何というか、デンジのバカがすみません……」

 

 「いえ、こちらこそ、お恥ずかしい話ですみません……」

 

 まさか、ほぼ100%結ばれるシーンで他の女ともやってみたいなんて言われるとか想像する方が難しい。

 

 「あいつ、義務教育受けてないとか言ってたけどまさかそこまでバカだったとは……」

 

 「いや、こちらもさすがに想定外だったので慌てちゃって……」

 

 「……それで、デンジの事は……」

 

 「いや、咄嗟にビンタしちゃいましたけど、怒ってないから気にしないでねって伝えてもらえると……」

 

 「そうですか、あいつも喜ぶと思います」

 

 そっか、デンジ君が私に嫌われたと思って落ち込んでたのか。あれ、どうしよう。もしかして彼、二道に来なくなるところだった?

 

 私はものすごく崖っぷちに居たことを、今更ながら分からされて冷や汗が止まらなかった。こんなしょうもない事で彼と会えなくなる寸前だったなんて……。

 

 などとどうしようもない事を考えていると、不意に早川君が話し出した。

 

 「それでですね、ちょっとここから込み入った話になるんですけど……」

 

 彼の纏う雰囲気が、弟思いの兄から公安のそれに変わる。

 

 「何でアイツに言い寄ったんですか?」

 

 ほら来た、ここからは取り調べの時間だね。まあそりゃそうだよね。 

 

 「わかってると思いますが、アイツはチョロい。それこそ美人に声をかけられたらすぐ落ちる」

 

 「やだ~、美人だなんて」

 

 「いや、あなたはそれを知っててアイツを誘ってる。だからこそ、あなたの動機が見えない」

 

 「……一目ぼれだって言ったらどうします?」

 

 「信用できない」

 

 キッパリと言われてしまった、実は正解なんだけどなぁ……。

 

 「どうしたら信用してもらえます?」

 

 とりあえず、私の中での早川アキという人物のプロファイリングを修正する必要があった。

 

 (冷徹で悪魔嫌い……は表向きで実は人情に篤い、それこそデンジ君のお兄さんのような存在……)

 

 そしてこれが正しければ、

 

 (デンジ君も彼に信頼を置いている、いわば家族のようなもの。ならば……)

 

 「デンジ君が心配なんですよね、こんな得体の知れない女が近づいてきて……でも、私がデンジ君を好きなのは本当ですよ」

 

 「最初それを聞いて失礼ですがハニトラだと思いました。ただ、俺も今わからなくなってます」

 

 そりゃあんだけ間抜けさらしてたらスパイには見えないよな……。

 自分の服の事、素で忘れてた。しかもパンツとブラまで……。

 

 「正直、あなたのことはスパイかなにかだと疑っていました。そしてデンジに近づいて始末するかあるいは拉致するかそういう行動をすると睨んでました。でも、果たしてそうなのか?」

 

 「あはは、スパイとかこんな子どもに無理ですよぅ」

 

 と、誤魔化そうとすると、途端に殺気を浴びた。

 咄嗟に驚いたフリをする。

 

 ビクッ!!

 

 「ヒッ!!」

 

 「……なるほど、よくわかりました」

 

 「……なんですか、今の、まだ震えが……」

 

 ただの女子高生が殺気を浴びたように足がすくんで震えているように見せた。

 

 「いや、驚かせてすみません……」

 

 そう言いながら彼がメモを渡してきた。曰く

 

 「できれば内密の話がしたい」

 

 と書いてあった。あちゃ~バレたか。やるなぁ。

 さて、ポンコツレゼちゃんはここまでだ。真面目にお相手しよう。

 

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