レゼさんじゅうろくさい   作:大学鯖

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仕事に追われていますが、現実逃避して書いております。
鼻から牛乳は著作権が必要なのか否か散々悩みました。
ハーメルンはその辺りありがたいですね。


第二十五話

 私はレゼ、36歳。元ソ連のスパイ。現在、フリーター。

 

 デンジ君の先輩の早川アキ君に身バレしました。

 すごい優秀だな。どうやって分かったんだろう。などと感心しながら

 

 「沈黙」

 

 私は悪魔を呼び出して、私たちの会話が漏れないようにした。

 

 「これでいいですか?」

 

 「やはり、あなたとても強いですね」

 

 「いやいや、これで即バレしてる時点で三流ですよぉ」

 

 などと謙遜してみるが、私の反応速度は人間とは比較できるレベルではないので、人間からすると反射に見えるはずなのだけど…。

 

 「いや、種明かしすると俺の特殊能力です」

 

 え、それはマジでどうやって?

 

 「詳しくは言えませんが、俺があなたに切りかかったら100回やって100回とも殺される未来が見えました。」

 

 ん~、特異課だから彼の契約してる悪魔の力かな。まあ、これは詮索してもしょうがない。

 

 「それで、実はあなたがスパイだという事もあたりをつけてます」

 

 これは日本の公安も侮れない。どうやって分かったんだろう?と疑問に思っていると、こちらは種明かしをしてくれた。

 

 「昨日の朝、写真撮ってたやつがいたでしょう?」

 

 あ~あの私が水ぶっかけた盗撮野郎ね。確かにカメラをお釈迦にしたはずだけど…。

 

 「あれと同時にマイクロカメラで撮った写真を先輩に見せてみたんですよ。最初はデンジのバカが誑し込まれてるかもっていうのを女に詳しい先輩に相談するつもりだったんですけどね」

 

 その時からすでにマークしてたか。やられたなぁ。

 

 「そしたら、その先輩がね、あなたに見覚えがあるっていうんですよ。まさかと思ったんですけどね。昔雑誌で見たソ連の”秘密の部屋”の生き残りとそっくりだって」

 

 え、そんな写真残ってたの!?今から18年くらい前だよね?

 

 「先輩もガキのころに見たらしくて、すげー美人がいるぜ、付き合いてぇとか初恋の人だとかで覚えてたらしいです」

 

 ……嘘でしょ、さすがに引いた。

 

 「問題なのはここからで、その娘はその後すぐに亡くなったとのことでした。」

 

 「………」

 

 「そして、その子の姿は今のあなたの姿と全く一緒だったそうです。亡くなってから18年経っているのに」

 

 あーあ、こりゃ完全にバレたか。さて、どうしようかな。ただ、ここで彼を敵に回すのはNGだね。

 

 「とりあえずあなたの出自はソ連ってことで間違いないですね」

 

 「そこまで把握されてたら誤魔化す意味はないですね、あなたの言う通りです」

 

 「なぜ日本に?そして、なぜデンジに?」

 

 「私はたしかにソ連のスパイでした。ただし、元、と言ったほうが適切です。」

 

 「……元?」

 

 早川君がとても訝し気な顔をする。

 

 「はい、達成不可能な任務を渡されましたので脱走することにしました」

 

 「達成不可能な任務?」

 

 「デンジ君、いえ、チェンソーマンの心臓を奪取すること、でした」

 

 「やはり……でも、それがなぜ達成不可能な任務に?貴方なら問題なくデンジくらい一捻りでしょう」

 

 「はい、物理的にはそうです。が、精神的に無理です」

 

 「なぜ?」

 

 ここは変に隠さない方がいい。私は自分の気持ちに正直に、ありのままを答えることにした。

 

 「………彼が好きだからです」

 

 「それが一番わからない、なぜですか!?」

 

 「だから言ったじゃないですか、一目ぼれだって」

 

 自然にウインクして答える。早川君が動揺しているのが分かる。彼からすると一番ありえない答えだったのだろう。しかし、私は微塵も嘘はついていない。彼にもそれが分かったのだろう。

 

 「………なるほど、あなたは俺の手に負える相手ではなさそうです」

 

 「……ふふふ」

 

 彼からすると、歴戦のスパイがまさかこんな理由でと思って混乱しているのだろうけど、実は単純に事実を言ってるだけなんだよなぁ。裏の裏は表ってことだね。

 

 「デンジと一晩中一緒だったにもかかわらず、殺しもしないし、ハニートラップとして関係を持つわけでもなかった。むしろ、アイツに泳ぎを教えたり、バカなアイツをビンタしてまで教育したり……」

 

 違った、彼から見ても歴戦のスパイじゃなくてポンコツに見えてるだけだった。……うん、確かにどう見てもスパイじゃないよね。暗殺もハニトラもせず、単にボーイミーツガールやってる。

 

 「だから、これは分かります。あなたがデンジの敵ではないってことは」

 

 そう、そこは絶対分かって欲しかった。後付けだけどマキマが監視しているリスクを考えると全くスパイらしい行動を取らずに正解だった。ここで早川君の理解を得られたのは大きい。今後どう転ぶにしてもプラスだ。

 

 「そこだけでもわかっていただければ何よりです」

 

 「なので、ぜひ公安にご同行いただきたい」

 

 ……何で?疑い晴れたんじゃないの?イヤだよマキマに会うとか。

 

 「……それは勘弁して頂きたいんですけども」

 

 「俺の先輩と上司に会って欲しいんです」

 

 うわー来たー、マキマかぁ、今一番会いたくない人なんだけど……。

 

 「あなたの上司って誰ですか?」

 

 「公安魔特異1課の岸辺という者です」

 

 ……ん?マキマじゃないの?

 

 「あの、あなた4課でしたよね?」

 

 「そうですよ」

 

 「何で1課の人に?」

 

 「………ここだけの話、あなたがデンジにとって有害ならとっととマキマさんに始末してもらってました」

 

 (危な~い)

 

 ほんとに崖っぷちだったのか……。これ私が間抜けさらしてなかったら信じてもらえてなかったかも……。まさに怪我の功名。

 

 「でも、貴方はデンジの味方になってくれるかもしれない、そしてデンジの味方をするならソ連との繋がりはその時点でないと見ていい」

 

 あ、ソ連はもう心配しなくていいです。

 

 「そうなったときは、俺を呼べと岸辺さんからのオーダーでした」

 

 都合が良すぎる気もするけど、これで蜘蛛の糸を掴めたかもしれない。

 

 「あと、実は昨日からサメの魔人が帰ってこないんですが、何かご存じですか?」

 

 明らかに知ってますよねという問いかけだが、これも彼になら正直に答えた方がよさそうだ。

 

 「実は……私の方で預かってます。誓って言いますが、彼は無事です」

 

 「そうでしたか……。本来魔人が戻らないのは問題なんですが、この辺も岸辺さんと話してもらった方がいいでしょう」

 

 「ご理解いただけて嬉しいです」

 

 そうだった、魚買ってあげないと……。

 

 「それで、あなたが良ければですが……」

 

 「何でしょう?」

 

 「服をお返ししますので、今日うちに来ませんか。よければデンジに会ってやってください」

 

 「………ご迷惑をお掛けして申し訳ございません」

 

 そうだった……。てことはこの人にも見られてるのか、私の下着……。

 

 「あと、その日やたらうるさい奴が夜に帰ってきて合流しますので、騒がしいかも知れませんが」

 

 ああ、パワーだっけ。どんな魔人なんだろ。できれば敵にしたくはないから丁度いいか。

 

 「いえいえ、多いほうが賑やかで嬉しいです」

 

 「で、俺はこれから仕事なんですが、その後買い出ししてから帰りますんでレゼさんもし良かったら先に行ってデンジの様子見てもらっていいですか?」

 

 住所と電話番号を書いたメモを貰う。今日は早めに上がらせてもらおう。

 

 「……わかりました」

 

 あれ、するとデンジ君と二人きり……っていうかもしかして早川君……。

 

 「それでは、俺はこれで……」

 

 (すごい気をつかってくれてるなぁ……デンジ君のためなんだろうけど)

 

 沈黙の悪魔に結界を解除させてスパイからウェイトレスに戻る

 

 「ありがとうございましたぁ~」

 

 ……さ~て忙しくなるぞお。

 

 まずはビーム君に魚を買ってから、デンジ君の家に行こう。

 

 「マスター、すみません。今日早めに上がっていいですか?」

 

 「その分給料から引いとくよ」

 

 「ケチケチケチケチ」

 

 そう言いながらも、彼に会えると思うと足取りが軽く感じられた。

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