レゼさんじゅうろくさい   作:大学鯖

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いつもご愛読ありがとうございます。
また、お気に入り登録、評価、感想、誤字報告ありがとうございます。

恐らく年内最後の投稿になると思います。
全く初心者の駄文ですが、皆様のおかげでここまで書いております。

チェンソーマン興行収入100億に到達したようです。
100億の女、レゼさんはまさに今年を代表するヒロインだったと思います。

それでは皆様、良いお年をお迎えください。


第二十九話

 私はレゼ、36歳。もう何も隠す事はない。

 デンジ君は今までで一番驚いていた。

 

 そうだよね、子どもがいたとか付き合うのに一番キツいよね。なんだろう、年齢差よりもそっちの方が歳の差実感するよね。やっぱダメだったか……。一瞬夢を見れたのになぁ…。

 

 などと考えていたら、デンジ君からは全く違うところを心配していた。

 

 「レゼ……そ、それって……俺と付き合ったらその……不倫ってやつじゃないの!?」

 

 デンジ君・・・・・・そこを気にしてくれるんだ。デンジ君自身がイヤとかそういうのは無いんだ…。

 

 「いや……その……13年前にどっちも亡くなってるから……」

 

 「……あ、ごめん。俺……」

 

 「ううん、いいの。優しいねデンジ君」

 

 そう、常に自分のことは置いといて私の事を気遣ってくれている。私をずっと見ていてくれる。それが嬉しくてたまらない。でも、そんなデンジ君は私の子どもと同じ歳なのだ。

 

 「うん、実は……生きてたらデンジ君と同じ歳なんだ、うちの子」

 

 「…マジ!?」

 

 「デンジ君16歳だよね。私が20歳の時に産んだからそうなるね」

 

 「…あ~、じゃあほんとにレゼが母ちゃんだったからなんだ。泳ぎ教えてくれた時とかさ、すごい安心できたんだ」

 

 「実は私もあの時、デンジ君をうちの子みたいに思ってた。昔、湖に連れてって泳ぎ教えたときみたいって」

 

 自然と笑みがこぼれる。

 

 「もっと聞きてえ、レゼん事、旦那さんってどんな人だったん?」

 

 「……デンジ君みたいな人、っていうかホントそっくり」

 

 そりゃ気になるよね。でも、これは本当にそう。

 

 「嘘!?マジで!?」

 

 「最初私、電話ボックスで泣いちゃって、デンジ君がうちの犬に似てるとか訳分かんない事言ってたでしょ。あれ、ホントはね……うちの夫に似てるって言いかけて慌てて直したの」

 

 「すっげぇ……そんな事あんだ」

 

 「その時にね、お花くれたでしょ。白いガーベラの花」

 

 「おお、俺が手品で出したやつな」

 

 「あれね……夫がプロポーズの時にくれたのと一緒なの。そんなとこまで一緒なのってホント驚いちゃって……それでもうこれは運命だと思ったら、デンジ君殺すなんて絶対無理って思っちゃって……」

 

 「うわぁ、俺危ないとこだったんじゃん」

 

 「あの花の意味ってデンジ君、知ってる?」

 

 「いや、知らねー。ってかあの花の名前も知らねぇ」

 

 だよね、絶対そうだと思ってた。そんなとこもあの人そっくり。

 でも、ここでふと気になったので聞いてみる。

 

 「そういや何で花持ってたの」

 

 「ちょっと前に募金して貰ったのを食った」

 

 え……!?食った?食ったってどういう事!?

 

 「……え、ちょっと待って。じゃあ……あの手品って」

 

 「おう、胃から出した。俺ん特技!」

 

 え、マジで!?……まさかそんな答えが返ってくると思わなかった。

 ダメだ、可笑しくてたまらない。

 

 「……ッ、アハハハハハハハ!!なんじゃそりゃ!」

 

 さっきまでの悲壮感が全部吹き飛んでしまった。

 

 「ッハハハ、ア~ア……デンジ君みたいな面白い人、初めて!」

 

 「んー、旦那さんよりも?」

 

 ジョンもある意味変な人だったけど、デンジ君はとんでもない。

 今まであった人の中で一番ぶっ飛んでる。

 

 「うちの夫もぶっ飛んでたけど、正直デンジ君、もっとぶっ飛んでる」

 

 「そりゃ、俺ぁデビルハンターだからな。先生が言うにゃ頭んネジがぶっ飛んでるやつが100点らしいぜ」

 

 え、そんな教育されてんの?日本の公安すごい?

 

 「いや、ほんとスゴイよデンジ君」

 

 そう、彼はデビルハンターとしてもそうだが、直観力に優れている。ズバっと本質を突いてくるのだ。だから、次の言葉もその本質を突いてくるのだろう。

 

 デンジ君が急に真面目な顔になって聞いてきた。

 

 「でさ、レゼに聞きたいんだけどさ……やっぱ、今でも旦那さんのこと好きか?」

 

 一番聞かれたくなかった、そして、一番デンジ君に嫌われるかもしれない質問だ。

 それでも、私は正直に答えるべきだ。自分にも彼にも嘘はつけない。

 

 「……うん、今でも彼のことは好き。もう13年にもなるけど。」

 

 そして、今の正直な私の気持ちを告白する。

 

 「でもね……それと同じくらい、いや、もっとかな。デンジ君が好き」

 

 デンジ君に前にマキマと私どっちが好きかとか選択を迫っておいてどの口が言うのかとは思うけど、これこそが何の偽りもない、私の裸の心だ。

 

 「デンジ君が夫に似てるから好きっていうのも否定できない。息子が大きくなったらデンジ君みたいになっただろうなと思って、息子みたいに好きというのも否定できない。でもね……男の子として、デンジ君が好き。こんな歳のおばさんに言われても嬉しくないかもだけど」

 

 すると、彼は私の手を握りしめて

 

 「そんなこたぁねえよ!レゼは美人だし、かわいいし、でも何ていうか……それだけじゃないんだ。二人でいるとなんか楽しいし、なんかドキドキするし、なんかワクワクするんだよ」

 

 ああ、デンジ君…、本当に私の欲しい言葉をいつもくれる…。私もそう、ドキドキとかワクワクっていうのとは無縁の人生を送ってきた私が、今何よりも期待してしまっている。

 

 「俺は素晴らしき日々送っている。ウマいモン食って、ふとんで寝て、仕事があって……それで幸せだった」

 

 そう、私も昔はそうだった。

 

 「欲を言えば今まではツラのいい女なら誰でもエッチしたかった。それこそ10人くらい彼女欲しかった」

 

 …うん、まあデンジ君ならそうだよね。

 

 「でも今はエッチするならレゼがいい、いや、レゼじゃなきゃ嫌だ」

 

 「…!!!!!!」

 

 「レゼと会ってから何か違えんだ。レゼん事もっと知りてえ、そう思ってたらレゼがいろいろ教えてくれた。そしたらさ、レゼがもっと気になって……他の女なんかどうでもよくなっちまった」

 

 デンジ君…。夢を見ているようだ。自分の子どもと同じ歳の男の子からの熱烈な求愛。今までの人生で想像もしなかった。

 

 「……デンジ君」

 

 「レゼが今まで俺に見せてきてたのが偽モンだろうと本モンだろうと、俺はレゼが全部欲しい。そう思っちまったんだ。だから、レゼ。レゼが旦那さんの事がまだ好きなら、それでもいいんだ。俺ぁ、そんな旦那さんを一途に好きなレゼごと好きなんだよ!」

 

 心臓が止まりそうな衝撃だった。デンジ君は全て私の過去を受け入れた上でなお私を愛してくれるのだ。

 

 …この人なら、今は亡きジョンも喜んでくれるはずだ。勝手な話だが、なぜか私にはそう確信できた。

 

 目の前の全てが涙で滲んで、ぼやけて溶けていきそうだった。

 奇跡だった。この瞬間からデンジ君は私の全てとなった。もう死んでも悔いはなかった。

 

 知らないうちに涙が次から次へと溢れては止まらなかった。

 

 「デンジ君……、デンジ君……」

 

 もう言葉にならなかった。彼の悪魔の心臓の鼓動を聞きながら、私は彼の腕の中で泣き続けた。

 彼の心音はとても安らかで、悪魔の物とは思えなかった。その音が私を徐々に落ち着かせていった。

 

 昔、ジョンに受け入れられた時、いや、それ以上に私は泣きじゃくり、そして、喜んでいた。

 

 「Я тебя люблю!(愛してる!)」

 

 ついに私は運命の人を見つけた。

 

 「Я не могу без тебя!(もうキミ無しでは生きていけない!)Не бросай меня, будь всегда со мной!(私を離さないで、ずっとそばにいて!)」

 

 「レ、レゼ…?」

 

 感激のあまり、日本語を使うことを忘れていた。私の頭は完全にデンジ君でいっぱいだった。

 

 「ごめん、デンジ君。わかんないよね。今のは私の故郷の言葉。意味はまだナイショ」

 

 改めて日本語にしようとして、上手く言えなさそうなのと、すごく照れくさくて恥ずかしかった。

 でも、この気持ちはデンジ君に伝えたい。

 

 そう思っていたら、ガーベラの花の事を思い出した。このことを伝えれば…。

 

 「で、話戻るけど、さっきの私にくれた花なんだけどね、私の夫も意味を知らないで私にくれたんだけどね。あの花はガーベラっていうの。そして、それを一本だけ贈る意味ってね」

 

 そっと彼の耳に口を近づけてささやく。

 

 「……あなたが私の運命の人」

 

 「……!!」

 

 デンジ君が真っ赤になってる。かわいい。

 

 「レゼっ!!!」

 

 突然、デンジ君に抱きしめられる。そして、彼の顔が間近に見える。熱に浮かされたような目で私を見つめている。その目に私の顔が映る。私もそんな顔をしていた。

 

 「……あ」

 

 私は両腕を彼の首にまわして…

 自然に、ごく自然に彼の唇が近づいて…

 目を閉じて、そのまま唇を重ねた……。

 

 こうして、私は彼のものとなり、彼は私のものとなった。

 嬉しさで涙が止まらなかった。

 

 私たちはお互いの境界線が無くなるような、二人で溶け合うような感覚をずっと味わっていた。

 どれだけの時間がたったのだろうか、私たちは時間を忘れてお互いの唇をむさぼっていた。

 

 やがて、永遠に続くかと錯覚するような時間のあと、唇を離しお互い見つめあった。

 もう止まれそうになかった。

 このまま結ばれたい。私はそう思っていたし、彼もそう思っているのは間違いなかった。

 

 「……レゼ。……いいか?」

 

 私は真っ赤になって無言でうなずいた。

 

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