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格付けチェック見てて、チェンソーマンのメンツでこれをやって、デンジが入ってきた部屋の人が膝から崩れ落ちるというネタを思い出しました。
そのうち本編と関係ないネタなんかも思いついたら小話みたいな感じで挟むかもしれませんがよろしくお付き合いくださいませ。
私はレゼ、36歳。
現在、早川君の家でデンジ君とキスしてるのがバレました。
それだけなら、愛する二人ぐらいで済むんだけど……
「こいつら交尾しおったんじゃぁ~!!」
このアホ魔人が絶叫しやがった。咄嗟に鳩尾に寸勁を入れて黙らせる。
「ぐほっ……」
パワーちゃんの体を支えて立っているように見せかける。
ちょうど早川君が帰ってきてドアを開けて入ってきたところだった。
おかげさまでご近所に丸聞こえだ……と思っていたけどよく考えたら沈黙かけてた。
早川君は家の中だったので聞こえたみたい。
もうちょっとで流せてたのに…。
「もう一度聞く…何やってんだてめえら…」
そりゃ自分の家で居候がヤッてたら怒るよね。
「おう早パイ、紹介するぜ。レゼ。俺ん彼女」
「いや、デンジ。俺が呼んだから知ってんだが……彼女!?」
「おう、だからキスしてんだぜ。いや~いいもんだぜ」
「…デンジ、お前チョロすぎだろ……。いや、まあそうなるかと思って家空けたんだが…」
「デンジ…お前ちょっとこっち来い」
そう言って早川君はデンジ君をベランダに連れ出した。
チャンス!!
さっきのあれこれで、ベッドが酷い事になっている。今のうちにベッドを掃除しよう。パワーちゃんをリビングに寝かせて、大急ぎでマトリョシカのセーフハウスに入る。そして、予備のシーツを持ってきて、急いで取り換えて、窓を開けて換気する。
案の定シーツはさっきのあれこれのせいでとんでもないことになっている。
パワーちゃんの言ったことは嘘なのだけど、これを見られるとぐうの音もでない。
パパッとベッドメイキングして、シーツをマトリョシカに放り込む。
ここまでやって今更気づく。
(最初からマトリョシカに入れば良かったじゃん……)
やはり私は頭が茹っていたようだ。
そして、ベランダの彼らの会話を盗み聞く。
聞こえないように小声で話しているようだが、私には筒抜けだ。
「デンジ……知ってるか?あのレゼって女は…」
「ソ連のスパイで俺を殺しにきたんだろ、知ってるぜ」
「だったらなんで…!」
「レゼは全部俺にさらけ出してくれた。あいつにとっては言いたくないこともな。だから俺ぁレゼを信じる。もうソ連のスパイじゃないみたいだからな」
「…だったら、あの人がお前と同じ悪魔と混ざってるってことも…」
「ああ、知ってるぜ。なんならレゼが見た目よりずっと大人だってことも、旦那や子どもが居たってこともな」
デンジ君!!!そこまでは早川君に言ってない!!!
「何!!お前…お前はそれでいいのか?」
「何が?」
「いや、お前……自分の親ぐらいの歳の人で、子持ちとか付き合えるのか?」
「歳とか、子持ちとか、旦那がとか関係ねーよ。俺ぁ今のレゼが好きだし、レゼも俺が好きだ。そりゃ間違いねぇ」
……デンジ君!!不覚にもまた泣きそうになってしまう。ホントに私には過ぎた男だ。
「……わかったよ、好きにしろ。ただし、あの女がお前に危害を加えたり、日本に害になるならお前ごと殺す」
「ねえな、むしろソ連から何か来るだろうけど、そん時ゃ俺がやってやる」
え…デンジ君。マズい、このままではデンジ君をソ連との争いに巻き込んでしまう。何とかしないと。
「…実は岸辺先生にレゼを合わせることになってる。丁度いい、お前も来い」
「あん?岸辺先生?」
「どうも大事な要件らしい、彼女はその戦力になり得る」
「わかったぜ」
…岸辺氏の要件次第だけど、協力するならソ連の事を交換条件にできるかも。
「…で、話戻すけど、お前あの人とヤッたってマジか?」
「ブフォ!!」
ブフォォ!こっちでも同時に吹き出す。何聞くの早川君!!って、さっきのパワーちゃんの件か。冷静に考えると家主からすると出禁案件だよね…。
「…いいか、デンジ。ヤるんならせめて俺とパワーが居ない間で、あと掃除とか洗濯とかお前がやれ」
「…いや、まだ…ヤってねぇ…」
「はぁ!?んじゃパワーが言ってたのは?」
「パワ子だぜ、嘘っぱちだろ」
「……そういやそうか」
「…まあアイツに邪魔されたんだけどな」
「…やっぱお前らヤるんなら外行け。多分普通にパワーが邪魔だろ」
「え、外でヤんの?流石に人が見てるだろ…」
「アホか、相手の家行くなりラブホ行くなりあるだろが!」
「ああ、レゼんち行けばいいのか」
「まあ、それは後で話し合っとけ」
そう言って二人は戻ってきて、早川君が私に向き合った。
「レゼさん、先に一人で行かせたのはすみませんでした。どうもパワーの奴が迷惑かけたみたいで…」
「いえ、こちらこそすみません。私も浮かれてました。ただお部屋は多分心配するような状態じゃないと思いますよ」
「え……レゼ?大丈夫なのか」
不安そうにデンジ君が聞いてくる。するとパワーちゃんが目を覚まして、また叫びだす。
「こいつら交尾の匂いがするぞ!部屋を見せい、デンジ!」
そう言ってデンジ君の部屋に突入する。
「あ、コラ!パワ子!テメー人の部屋に勝手に入んじゃねぇ!!」
デンジ君が追っかけるが間に合わず、パワーちゃんがベッドの布団をめくる。
「こっから雌の匂いがプンプンする…あれ、さっきより薄いな」
セーフ!!あのままだとグシャグシャなシーツをみんなに晒されるところだった。
「パワ子!何すんだ……ん、あれ?」
デンジ君がベッドが片付いているのに気づく。心配そうにデンジ君が聞いてくるので、ウインクして親指を立てる。
「…何ともないな、別に」
早川君も後からやってきて確認する。
「結局パワーのから騒ぎか……」
「だから早パイ、最初っから言ってんじゃんか」
「ワシは認めんぞ!この泥棒猫!!」
…あれだけ爆破したのにまだ足りないか。ていうか忘れてるのか、マジで。
(これ健忘症とかそんなレベル?)
まあいいや、という事は目先を変えればすぐ前の事忘れるってことだね。
そう思いなおすと、買い物袋からチョコレートを取り出す。
「まあ、パワーちゃん、そんなこと言わずに友達になろう。これあげるからさ」
と、言ってチョコを渡すと
「ガハハ!ヌシもわかっておるのう、ワシに貢物か。苦しゅうない」
などと言って、いきなり食べ始めた。もう既に彼女の頭の中にデンジ君を取られたとかは残っていないようだ。
(多分、脳のメモリが少ないんだな)
つまりわがままな幼い子どもだと思えば扱い方は簡単そうだ。
子守りは得意分野だ。女の子は見たことはないけど、パワーちゃんはあんまり女の子っぽくないから男の子とほぼ一緒で大丈夫だろう。
(案外うまくやっていけそう)
この子もデンジ君の大事な家族みたいなものだ。
ならば後から入ってきた私が合わせるのが道理だろう。
そして、こういう家族に囲まれているのなら、最初からデンジ君をソ連に連れて帰るなんていう計画は破綻していたのだとわかった。
何より私がデンジ君を彼らから引き離すのが嫌だった。
ならば私がここに溶け込めるようにしよう。
(大丈夫、デンジ君もその家族も私が守ってみせる。もう今度こそ失くしはしない)
いつの日か、私やデンジ君、その周囲の人たちに立ちふさがる障害を全てなぎ倒し、安全と自由を手にする。
そして、デンジ君とこの人たちと普通に暮らすのだ。それが今の私の夢になった。