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親戚がきて遅くなりました。すみません。
私はレゼ、デンジ君の彼女。
早川家でお食事会……のはずだったけど…。
玄関に羽根の生えた人…いや悪魔か。
見た目からして天使だけど…と思っていたら、ビーム君から聞いた情報にあった天使の悪魔だとわかった。
今はアキ君のバディになっているらしい。
マキマに支配されてるという話だったので、監視かな。
早川君もマキマに支配まではされていないだろうけどデンジ君みたいに軽い洗脳は受けているかもしれないな。そういえばパワーちゃんはそんな素振りは全然なかった。
(何か基準があるのかな?完全な支配と軽い洗脳、全く影響のない人…)
デンジ君は軽い洗脳だった、パワーちゃんは影響なし。ビーム君は支配されてた。
でも、ビーム君はラーゲリで破れた。その時の鎖……!
(その鎖ってマキマが縛ってるってこと?)
逆に言えば、ラーゲリで捕えようとするとマキマに縛られてるかどうかわかるってことかな。
ならば、いざとなれば天使の悪魔もその手が使えるかも…。
玄関ではアキ君が応対している。バディのはずだけど何かギスギスしている。
「…俺はお前とそこまで仲良くなった覚えはないがな」
「まあ、そうだろうね。僕も来るつもりはなかったんだけど…マキマがね…」
「マキマさんが…?」
「バディなんだから一緒にご飯でも食べてくれば…だって」
…完全に監視役だ、これ。私は隠れながらどうしようかと悩んでいると
「お土産にアイス持ってきたよ」
と言いながら彼(?)は遠慮なく上がってくる。
「…ああ、クソが、メシ足りねえじゃねえか」
早川君がぼやきながら、冷蔵庫を見ている。
そして、天使の悪魔が私を見つける。
「君は?」
「初めまして、レゼと言います。デンジ君の彼女です」
「へ~、チェンソー君の彼女?」
一瞬鼻をヒクつかせる。
「キミ、人間じゃないね」
「へぇ、わかっちゃうんだ」
「悪魔だからね。鼻は利くのさ」
「で、人間じゃなかったらどうするの?」
こちらはもう既に戦闘モードに入っている。これは私の間合いだ。彼が武器を使うとしてもその前に倒せる。
「どうもしないよ」
「へ?」
「今日は僕はご飯を食べに来たんだ。仕事なんて真っ平だね」
「上司に怒られないの?」
「1日の労働時間は8時間までだよ。残業代もくれないのに働く気はないね」
「コイツはいつもこんな感じだ」
「人間君、お腹が空いたから大盛りね」
「てめえ、材料ぐらい持って来い!」
「だからアイス持って来ただろ」
「てめえが食いたいだけだろが!あ~デンジ!すまねえ、鶏肉買ってきてくれ」
「え~!メシ遅くなんのかよぉ…」
「あ、じゃあ私も行きますよ」
アキ君はちょっと思案した後で
「すんません、お願いできますか。じゃあ、鶏肉とエビお願いします」
「いいですよ、行こっデンジ君!」
と言いながら手をつないで外にでる。天使の悪魔はそれを見ても何もせず。既に食卓に着いていた。
「この唐揚げはワシのじゃ!!取るな!!」
「パワーちゃん、独り占めはないんじゃないかな?」
なかなかカオスな状態になっているところに、アキ君を一人残すのは忍びないけど、デンジ君に話しておきたいこともあるのと、天使の悪魔の目を逃れるにはちょうどいいので、その喧騒を後に買い物に出かける。
ビーム君はこっそりついてきちゃってるけど、彼なら問題ないだろう。
デンジ君と腕を組みながら道を歩く。
傍目には高校生ぐらいの初々しいカップルに見える。
幸い、スーパーはまだ開いていたので、頼まれていた鶏肉とエビとあと食後の飲み物やおつまみを買って戻ることにした。
「買い物なんて面倒だと思ってたけどよぉ、レゼと一緒ならこういうのもいいもんだな…」
「そうだね。好きな人と一緒ならどんな日常でも楽しいよ。なんか新婚みたいでいいよね、こういうの」
「結婚かあ、今まで結婚とかろくでもねぇと思ってたんだ…おふくろは早く死んじまって、残ったおやじはろくでなしで」
「……」
「そんな俺だから、結婚してもおやじと同じようなことしちゃうんじゃねえかって、そう思ってたんだよな。でも、レゼと一緒なら、そうはならねえ気がする」
「デンジ君…私ね、両親の顔は知らないんだ。物心ついたときにはあの部屋にいた。そんな私でもちゃんとママになったよ。だからデンジ君も大丈夫。立派なパパになるよ」
「パパかぁ、想像もつかねえな」
「デンジ君……今日ね、デンジ君の部屋に泊まってもいい?」
「レッ…レゼ!?いいのか!?あ、でも早パイなんて言うかな」
「……ここだけの話ね。私の契約してる悪魔を使うとお部屋を作れるのね。だからアキ君には許可もらったよ」
「マジで!?よく許したなアイツ…」
「というか、実はね。私もう家に帰れないの。ソ連からの追手が来るから」
「そしたら、俺がそいつらぶっ飛ばしてやる」
デンジ君、ありがとう。その気持ちはすごくうれしい。
本当は私がデンジ君を守ってあげたいけど、逆の立場なら私が一人で守られるだけなのは耐えられない。ジョンならば戦いこそが本領なので、放っておいても参戦する。ミーシャならば私とジョンで英才教育する。あの場所では戦えなければ生きて行けない。
デンジ君は…よく考えてみればチェンソーの心臓を持っている時点で各国から狙われる。彼もまた戦わなければ生きていけない環境にいるのだ。
私も彼もつくづく普通の暮らしとは縁遠い。
(ならば、いっそ…デンジ君に戦い方も教えてあげた方がいいかも知れない)
彼も男の子だ。女の子に守られるなんて真っ平ごめんだろう。
ついつい彼を子ども扱いして守ってあげるなんて思っていたけど、彼は男だ。
いくら私が強いといっても、彼が私の背中に隠れているなんてことは、彼自身が許せないかもしれない。
決めた。彼が望むなら私の知る全ての戦闘術を彼に教える。
「デンジ君……ここから真面目な話。聞いてくれる?」
「?」
「本当はデンジ君を巻き込みたくなかった。でも、奴らは手段を選ばない。そして奴らは私じゃなくデンジ君を狙ってくる可能性が高い」
「ん、何で?」
「デンジ君を人質にされたら、今の私では抵抗できない」
「ん~?でも俺ぁ強ぇぜ!」
「はっきり言ってソ連の追手は強い。残念ながら今のデンジ君ではまず勝てない」
「やって見なきゃわかんねぇだろ!」
「そう、じゃあ構えて」
デンジ君に構えさせて、真正面に立つ。
「今からデンジ君は私に何をしてもいいよ。で、私はこの口紅でデンジ君に印をつける。5か所つけられたらデンジ君の負け。それまでに私に一発でも当てられたらデンジ君の勝ち」
「いや、レゼは殴れねえよ」
私は言い終わる前に、口紅をナイフの様に使って、デンジ君の首から上の急所10カ所に紅い痕を残す。
「これで分かった?」
「え…」
デンジ君は呆然としている。
「デンジ君、私が持ってるのがナイフなら、10回は死んでるよ。しかも私はまだ生身だよ」
「レゼ……」
「本当は私がデンジ君を守ってあげたかった。でも、それだけじゃダメ。あの時みたいに私が居ない間にデンジ君が襲われたら…」
そして、彼を失ってしまったら私は…もう人間には戻れない。ソ連という国が下手人ならなんの躊躇いもなくソ連という国を滅ぼすだろう。そして、私は未来永劫、悪魔として生きるのだろう。
「だからね、デンジ君。教えてあげる。私たちの戦い方ってのを、ね」
それを聞いてデンジ君は唇を噛みしめ、絞り出すように言った。
「……レゼ、俺、強くなりてぇ。強くなってレゼん事守りてぇ…」
やっぱりデンジ君は私の見込んだ通りの男の子だ。
彼はきっと私を守ってくれる。そして、私はきっと彼を守ってみせる。
私のもつ力、技、その全てを余すところなく伝えたい。彼ならばできる。
彼と背中を預けて戦うバディとなるならば、ある意味こんな幸せはない。
普段の生活も、戦いの場でも常に一緒だ。
「明日から特訓ね、もし私に1発でも当てられたら……」
そうして耳元に囁く
「私を一晩中好きにしていいよ」
「マジか!?よっしゃあ、やってやるぜ!」
うんうん、頑張れ男の子!やっぱ男の子のご褒美はこれが一番……ん、ちょっと待て。
それってよく考えてたら、それまで…できないって事!?
あれ、私…我慢できるのかな?
うん、大丈夫。デンジ君を信じよう。
こうして、道草を食って早川家に帰ったら唐揚げもエビフライも全て無くなっていた。