レゼさんじゅうろくさい   作:大学鯖

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もう正月終わり…早い…。


第三十四話

 私はレゼ、デンジ君の彼女。

 

 早川家に戻った私たちを待っていたのは空のお皿だった。

 え、嘘?なんにも残ってない…。

 

 パワーちゃんが良く食べるのは分かってたけど、それでもあの量は無くならないはずだった。

 まさか…天使の悪魔!?なんでこの体でこんなに食べるの?

 

 「ああ、お帰り、お先に頂いたよ」

 

 天使の悪魔が何事も無かったように冷凍庫にアイスを取りにいっていた。

 その一方でアキ君がキッチンでぐったりしていた。

 

 「この馬鹿どもが…全部残さず食いやがって…」

 

 「アキさん…ご飯食べました?」

 

 「まだですよ…」

 

 「ゆっくり休んでてください。私作りますよ」

 

 「すみません、お言葉に甘えさせてもらいます」

 

 アキ君はもう作り直す気力もないみたい。

 

 こうして、デンジ君、アキ君、ビーム君、私の4人分を作ることになった。

 材料はちょっと足りないかもだけど、このくらいなら何とかなりそうだ。私はそこまで食べなくても平気だし最悪ビーム君は魚を食べてもらおう。幸いご飯と野菜はまだあったので、作り直しは楽だった。

 

 「あれ、レゼ料理できたっけ?」

 

 「ふふん、レゼちゃんは進化するのだ!」

 

 そう、今までの私は厨房に入れてもらえないレベルだった。しかし、元々お母さんだ。ロシア料理が大雑把で大味なだけだ。マスターが作っているのを見ながらこっそり賄いを作って練習していたのだ。デンジ君に食べてもらうために…。

 

 そうだ、一品ロシア料理も作ってみよう。

 

 ジャガイモ、ニンジン、卵は茹でて小さいサイコロ状に切る。

 玉ねぎは水にさらして、きゅうりは洗って、ハムはそのまま他の野菜と同じくらいの大きさに切る。

 あとはマヨネーズで和えるだけ、私は多めに胡椒を効かせるのがすき。

 

 完成、サラートオリヴィエ!!

 

 ……うん、ポテサラだね。まさか日本でもポピュラーだとは思わなかった。

 れっきとしたロシア料理なんだけどね。

 

 幸い唐揚げも市販の粉のレシピ通りだったので見ながら作ってみた。

 我ながらうまくできた気はする。

 

 とりあえず出来上がったものを食卓に並べると、パワーちゃんがやってきて

 

 「この唐揚げはワシのもんじゃ!」

 

 と、言いながらよだれを手に塗って唐揚げに付けようとしてきた!!

 

 「あ、パワ子!!てめぇ!」

 

 デンジ君が叫んで動き出そうとする前に、

 

 「フン!!」

 

 「ぐわぁっ!」

 

 さっきと同様に寸勁で眠ってもらった。

 

 これで私たちの邪魔をするものは居ない。やっとご飯にありつけた。

 

 「「「「いただきまーす」」」」

 

 デンジ君が待ちきれなさそうに唐揚げに飛びつく。

 

 ガフッ!ハフハフ…

 

 男子にとって唐揚げは飲み物だ。瞬く間に消えていく。

 流石に今回は私も危機感を感じたので何個か取り置きしておく。

 

 「レゼ、うめえよ!!このポテサラ、早パイのとも違っててうめぇ!」

 

 やった!!デンジ君に好評だ!

 

 「ああ…自分以外に作ってもらうメシがこんなに美味いなんて知らなかった…」

 

 「キャキャキャ、ウマイウマイ!」

 

 良かった…。やっぱり自分の作ったご飯を喜んでもらうというのはどんな状況であれ嬉しいものだ。世の奥さんやお母さんはこうやって料理上手になっていくのだと理解した。

 

 なお、パワーちゃんは野菜が大嫌いらしいので、このサラダも投げ捨ててたかも知れないという話になった。もしそれをやったら私はまた彼女を黒焦げにしない自信はない。少なくとも死なない程度に締め上げるくらいはやる。

 

 「「「「ごちそーさまでした」」」」

 

 みんなが満足したのは、全て空になった食器が物語っている。

 

 とはいえ、前の2人が食い尽くしたため量的には物足りなかったので、そのまま酒盛りに移行することになった。デンジ君は未成年なので、ジュースで。パワーちゃんに活を入れて起こしてあげる。

 

 「……なんじゃあ?」

 

 「パワーちゃん、ジュースあるよ」

 

 「おお、気が利くの!」

 

 ……やっぱり完璧に忘れている。

 

 「天使君は?」

 

 「うーん……ジュースもらおうかな」

 

 ……やっぱりマイペースだ。

 

 とりあえずみんなの手元に飲み物が渡ったので

 

 「カンパーイ!!」

 

 とお約束のように発声する。

 

 なお、私は当然ビールだ。

 

 「ああ!?レゼ酒飲んでる!?」

 

 「やだなあ、デンジ君。これはお酒じゃないよ」

 

 「嘘つけ、ビールって書いてあんじゃん」

 

 「????だからビールはお酒じゃないよ」

 

 「いや、ビールは酒だろ」

 

 「アルコール度数が40度未満はお酒じゃないよ」

 

 と、いうとみんな引いていた。何で?

 ありゃ、これタバコも見せられないかも。折角全部晒したのに、また隠し事ができちゃった。

 

 その喧騒の中で天使の悪魔はアイスを食べ終わってポテチを食べている。

 

 「やっぱり甘いものの後はしょっぱいものだよね」

 

 マイペースにもほどがある。というか、彼はマキマからの監視役のはずじゃ……。

 

 「…いいの?仕事しなくて?」

 

 と聞くと

 

 「働くくらいなら死んだ方がマシかな」

 

 というすごいヤル気のない答えが返ってきた。

 なんというか、つかみどころがない。監視役なのに、私たちだけで買い物行かせて唐揚げ食べ尽くしてるし…。てっきり尾行してくると思ってたけど、本当に来なかった。

 

 「僕はね、マキマに捕まって田舎から無理矢理連れて来られたんだ」

 

 あれ、そういうって事はマキマに支配されていない?デンジ君もマキマに好意のようなものを持っていたはずなのに。と思っていると、まさかのイソップ物語の話がきた。

 

 「やっぱり田舎のネズミが良かった、平和が一番だよ」

 

 この言葉が鋭く刺さった。私と同じ。普通の平和な暮らしを望んでも許されない。

 しかし、今彼はマキマに捕まって連れてこられたと言った。

 

 「…じゃあなぜマキマに従って働いているの?」

 

 「そりゃあ働かないと殺されるからね」

 

 「死にたいのに?」

 

 「…あれ…何でだろ」

 

 やっぱり彼も洗脳されている。

 しかし、本人の潜在意識が頑強に抵抗しているからこんなヤル気がないのか。

 そうするとデンジ君の時みたいに矛盾に気づけば解けるかもしれない。

 少し彼と問答することにした。

 

 「ねえ、もしも…田舎に帰れるとしたら帰りたい?」

 

 「そりゃそうさ。帰れるならね…もう、あそこには誰も居ない。僕が全部殺した」

 

 それは穏やかでない。でも、誰も迫害されていた場所に帰りたい者はいない。つまり、田舎に帰りたいっていうのはそこに居た人が彼を受け入れて仲が良かったからだ。

 

 「…なんで殺したの?」

 

 そう、ここが問題だ。天使の悪魔は怠惰な性格だ。つまり能動的に人を殺すような性格ではない。また、人間に近い姿の悪魔は人間に友好的だと言われている。そうすると、彼が田舎の人たちを皆殺しにする理由がない。恐らくここが矛盾点だ。

 

 「何でって…何でだ!??」

 

 「何で僕はみんなを殺したんだ!あんなに優しかったのに。何で僕はあの娘を!」

 

 やっぱり、矛盾していた。それならば犯人は…。

 

 「ねえ、もしかしてだけど……誰かに操られてなかった?」

 

 もう、誰かの見当は私にも、そして彼にもついているはずだ。

 

 「誰か…誰か…!」

 

 「マキマ!!」

 

 天使の悪魔が叫んだ途端に、彼の胸に鎖が現れる。

 いけない!!思ったよりも縛られていた。

 

 「10年使用」

 

 そう言って天使の悪魔は槍を取り出していきなり投げてきた!

 

 マズい、避けられない。避けたら私の後ろのデンジ君に刺さる。

 

 「レゼ!!!」

 

 デンジ君の悲痛な叫びが聞こえる。

 

 「マトリョシカ!!」

 

 咄嗟に発動して、とりあえずデンジ君に槍が刺さる事態は回避した。

 

 とりあえずデンジ君に当たらなくて良かった。

 

 

 

 

 そう思った私は次の瞬間

 

 ガフッ!!

 

 という音と共に血を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 デンジ君を救ったその代償に、私の胸には天使の槍が刺さっていた。

 

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