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第三十五話の天使の悪魔の呼び方に違和感があったので修正しました。
エンジェル→天使君
私はレゼ。無事、天使君に勝つことができた。
マトリョシカを出ると、アキ君やビーム君、パワーちゃんが心配そうにこっちを見ていた。
その間を縫ってデンジ君が怒りの形相でエンジェルに向かってくる。
「てめえ!!よくもレゼを!!」
「え……?」
キーン!!
「うぐっ!!」
「あ……」
デンジ君の蹴りは、狙い違わずエンジェルの股間を直撃した。
「俺ぁ男と喧嘩するときゃ、金玉しか狙わねえんだ…よっ!」
と、2発目を入れようとしたので、慌てて止める。
「デンジ君!!ストップ!!」
「…ん?レゼ!?大丈夫なのかよ!?」
「私は大丈夫だよ、デンジ君。心配してくれてありがと」
「さっきコイツが投げた槍がさ…レゼにぶっ刺さったように見えたんだよ!そしたらレゼが急に消えて変な人形だけが残ってたんだ。レゼが死んじまうっ!って思ってさ…。あれ、俺をかばったんだろ」
「うん、あの時はあれしか方法がなかったから。デンジ君が避けても槍が外に飛び出ちゃうかもしれなかったし…」
「…俺レゼに守られてばっかだ。頼む!レゼ!俺をもっと強くしてくれ!どんだけキツくてもいい、そんなの岸辺先生で慣れてる。だから…」
「デンジ君…ありがとう、とても嬉しいよ。じゃあ早速明日から始めるね。さっき言ってたお部屋ってのがこの悪魔。マトリョシカっていうの。この中はとっても広いから悪魔に変身して暴れても大丈夫」
「あー、俺の部屋でってそういうことか」
すると、こちらの喧騒が一段落したタイミングでアキ君が話しかけてきた。
「一体何が起こったんだ、天使、説明…できそうにねえか」
天使君はまだ股間を押さえてうずくまっている。
(天使にも効くんだ、急所攻撃)
また一つ余計な知識が増えた気がする。
「あー、じゃ私から…」
そう言ってマトリョシカ内部で起こったことを話す。
「そんな…マキマさんが」
アキ君はショックを受けている。やはりデンジ君と同じように洗脳の可能性がある。
まあもういい時間だ。アキ君の方は天使君ほど重症ではないだろう。明日以降の対処で問題ないと思う。
「詳しい事は明日話すけど、マキマの能力に洗脳や鎖による支配のような力があるのは間違いないよ。だからマキマをいつから好きになったのかとか、好きになったきっかけとか思い出してみてね」
彼にも考える時間が必要だろう。
とりあえずここでお開きにして、各自部屋に帰っていった。
エンジェルはとりあえずアキ君の部屋に泊まることになった。
私たちはデンジ君の部屋に戻って、マトリョシカを展開する。
「うわー!すげー!なんだこれ!!」
「これがマトリョシカの内部よ。いらっしゃいませ、デンジ君」
とりあえずマトリョシカのセーフハウスに入る。
「…で、レゼ、本当に大丈夫だったのか?その服も血だらけだぞ」
やっぱり分かっちゃうよね、デンジ君には隠し事は無しだ。
「…デンジ君には正直に言うけど、一回殺されてる」
「!!…あ、そうか俺と同じだったらスターター吹かせばいいのか」
そう、武器人間だということしか教えてなかった。けどデンジ君はからくりにすぐ気づいたようだ。
「私の場合はこのピンだけどね」
「え、これチョーカーの飾りじゃないの!?」
「実はこうなってるの」
チョーカーを外してみる。首から直接ピンが生えてその先にリングがある。
「へぇ~!すげえ首からピンが直接生えてる!で、どうやって変身すんの?」
「このピンを引き抜くと頭が爆発して変身するよ」
「……え!?」
「頭が爆発して変身するよ」
どうも信じられないようなのでもう一度言う。自分ではどうなってるか分からないけど、多分外から見ると衝撃映像だと思う。
「あ~レゼ、それ痛くねえの?」
「痛いよ。デンジ君はどうなるの」
「チェンソーが回りながら頭と腕を突き破って生えてくる」
え、何かそっちの方が痛そう。
「え……!?デンジ君、痛くないの!?」
「痛ぇよ」
「……ふっ、あははははは!いやあお互い酷い変身方法ですねえ」
「ははは、ホントだな!」
「明日から特訓するよ。デンジ君、先に言っとくけどめちゃくちゃ厳しいよ」
何せソ連の軍隊と同じ方法だから。しかも武器人間用のプログラムだ。
「岸辺先生よりゃマシだろ」
え、公安のデビルハンターヤバい?そういやクァンシの元バディか。
「岸辺先生ってそんなスパルタなの!?」
「俺もパワ子も何回も殺されたぜ」
何だ、ただ殺されるだけか。私みたいに首を刎ねられた後、その首を持って投げるとか、胴体だけで走って爆発するとかはないのね。
「あ、殺されるのは当たり前だと思っててね」
「え……!?」
「その上で自分の能力を十全に使いこなさないと勝てないよ。デンジ君はどんな能力があるの?」
「……チェンソーでぶった切る」
「え!?……それだけ?」
「おう、ポチタのチェンソーは最強だぜ」
わーお、脳筋過ぎ。
「デンジ君、明日一回模擬戦をやってみよう。私たち武器人間がどう戦うのか見せてあげる」
どうもデンジ君はまだ搦め手が弱いようだ。ならそっちを先に見せるか。もしデンジ君の戦闘センスが良ければ応用が効くし。
「俺もサムライソードっつー武器人間倒してるぜ。明日レゼに俺ん力見せてやるよ!」
え、そのぶった切るだけでどうやって武器人間倒したの?てか、もしかして相手もぶった切るだけじゃ…。
「おっけー、じゃあ明日早いからお風呂入って寝ようか」
「へ?風呂あんの?」
「あるよ、沸かしてくるね」
そういや布団とかないな…
「デンジ君、ベッド使って。私はシュラフがあるから大丈夫」、
「いやいや、レゼがベッド使えよ」
「いやいや、あ…そうだ一緒に寝ようか?」
「え、えぇ!!レゼ、そしたら…その……さっきの続きしてえ!」
したい!本当は私だってすぐにでもしたい!けど……。
「……ダメだよ、デンジ君。私に勝ってからね」
心を鬼にして断る。大丈夫デンジ君ならやってくれるはず。
でも、ダメなら手加減……ダメだダメだ!私が色ボケでどうする!
「えぇぇぇぇ、う~…よっしゃ、明日早速一本取ってやっからな!」
「頑張って、デンジ君!」
「あ、お風呂沸いたよ。デンジ君先入って、それとも……一緒に入る?」
ちょっとした悪戯心で誘ってみる。
「入りまぁす!」
爆速で食いつく。ピラニアか。
「でも触るのなしね」
ここで触られたら私がもう我慢できない。
「え、えええええ。くぅ~…」
子犬のような上目遣い、それダメ!言う事聞いてあげたくなっちゃう。
「私に勝ったらなんでもさせてあげるよ、だから今日はお預け」
「ううううう!わーったよ!絶対一本取ってやる!」
「はいはい…」
スイッチを切り替えよう、今の私はお母さん。子どもをお風呂に入れてあげるお母さん。煩悩退散!
「さあ、入るよ」
そう言いながら脱衣所でお互い服を脱ぐ。
やはり、デンジ君の目が私の胸やあそこに釘付けになっている。
「こ~ら~!ダメだよHな目で見ちゃ!」
「み、見てねーし!」
慌てて目をそらすが、男のチラ見は女にとってガン見だ。
私のような貧相な胸ですらそうだったのだから、グラマーな娘は大変そうだ。
「私に勝てば自由だからね、デンジ君、背中流してあげる」
そう言いながら、彼の背中を洗う。さっきも思ったけど彼は結構筋肉質だ。
なかなか男らしい、いい体だ。
今度は私が体を洗っていると、デンジ君が
「レゼ、じゃあ背中流してやるよ」
「え、いいよいいよ…」
と言ったものの結局押し切られてしまう。
「レゼ…ほんと真っ白だな…」
「うん、まあ雪国育ちだからね」
「すべすべでなんか…すげえ綺麗」
「ちょっ!デンジ君!」
「あ、でも結構ケツでかいのな」
デリカシーゼロ!
「デンジ君!そういうことは女の子に言っちゃダメだよ!」
「わりぃ、ほら学校であんなこと言ってたからこういうのありなのかなって思ってた」
…うん、これ私が悪いわ。学校で悪ふざけでBig assとか書いてたね。
「好きになった人には気にするのですよ、女の子は」
その後、お風呂を上がった私たちは寝間着に着替えて、一緒のベッドに潜り込んだ。
…これはヤバい、寝られそうにないかも。向かい合っているうちに、いつしかデンジ君の胸の中に頭を預ける体制になっていた。こうしているとデンジ君の心音が良く聞こえる。
「デンジ君……ドキドキしてる…」
「あー、そりゃポチタがドキドキしてんだな」
ポチタ…チェンソーの悪魔の心臓。彼は一度殺されたときにこのポチタが心臓を譲ってくれて武器人間になったらしい。
「そう言えば、どうしてポチタ君はデンジ君に心臓を譲ってくれたの?」
「あー、最初は俺の体をポチタにやるつもりだったんだ。そしたらポチタは魔人になるだろ、だからそれでいいかと思ってたんだ。でも、俺もポチタも殺されたときポチタが夢の中に出てきてさ、『私はデンジの夢の話を聞くのが好きだった。これは契約だ。私の心臓をやる。かわりに、デンジの夢を私に見せてくれ』だってさ」
「そっか…。デンジ君の夢って何だったの?」
ある意味、彼の本質というか核心の部分だ。
「普通の生活を送ること」
その答えはあまりに彼らしかった。
そしてその答えは私以外には理解されなかっただろう。
私だからこそ、それが本当の夢だと理解できた。
なぜなら私も彼も普通の生活が夢に思えるほど悲惨な暮らしをしてきたから。
「パンにジャム塗って食ったり…女の子とイチャイチャしたり、ゲームとかして、そんで女の腕の中に抱かれながら眠る…とかだったな」
本当にささやかな、普通の暮らしだ。私達には叶うはずもないと思っていた。
そう思うと、私は短い間とはいえ夫がいて、子どもがいて、まさに普通の暮らしを送っていた幸せな時もあった。
デンジ君はそれすらもなく公安でデビルハンターとして働かされている。しかし、マキマが与えたのはその普通の暮らしの第一歩目だ。だからデンジ君は洗脳されなくてもマキマが好きだったのだ。そして、もし私が彼の立場なら、どんなに胡散臭いと思ってもそれなりに恩義を感じてしまうのもわかる。
「それが、いざそういうのが満たされてくると不思議と夢って変わってくるんだよな…それこそレゼに会うまでは女10人くらい付き合ってセックスしてえとか思ってたし…」
そこはもう脱却したよね!流石に…。
「あれ、でも……待てよ、もしかして俺の夢もう結構叶ってんじゃねえの?」
「そうだよ…あとは私から一本取れれば、Hだってできるよ」
「そっか…夢って思い続けてりゃ叶うもんなんだな」
「そうだね。諦めずに追いかけるって大事だよね」
「でも、また夢って変わるんだよな。例えば俺がレゼと無事セックスできたとするじゃん?そしたら、次はって思っちゃうんだよな」
それは人間として自然なことだと思う。夢は現実になった時夢を見なくなるなんてことはない。人はまた次の夢を探して生きて行くのだ。
「私はあるよ、夢の続き。デンジ君と周りのみんな、アキ君やパワーちゃん、ビーム君とか天使君とかみんなで平和に暮らすの…。それでね…デンジ君との……」
ここまで言ってから急に恥ずかしくなる…。でもこれはデンジ君に知って欲しい。彼の耳元で小さく囁く。
「……赤ちゃんが欲しいな」
「レゼ!うぉぉぉ、我慢できねえ!」
「ダーメ!私に勝ってからだよ」
「畜生ぉぉぉ!」
本当は私だって欲しい!でもぐっと我慢だ。
「でも、そうするとポチタ君がいなかったら私はデンジ君に会えなかったんだね…」
そう考えると、今デンジ君の心臓として動いているポチタ君にいくら感謝しても足りない。
「ああ、ポチタのおかげだよ。マキマさんが言うにはポチタは俺の中で生きてるっていうんだけど、俺もそう思う。だから俺はポチタと一緒に夢を叶えて行くんだ」
私は彼の胸のスタータを手にとって、ポチタ君に心から礼を言う。
「こんにちは、ポチタ君、デンジ君の彼女になったレゼです。これからも一緒にデンジ君の夢を叶えて行くからポチタ君も一緒に見守ってね」
そう言いながらデンジ君の胸に手を当てて、その鼓動を掌で感じとる。
「ああ、ポチタもきっと喜んでるぜ、何せレゼのおかげで俺の夢のほとんどが叶っちなったからな」
「じゃあ、今日もう一つ叶えよう」
「?」
「おいで、デンジ君」
そう言って両手を広げて私の胸にデンジ君を誘う。
「私の腕の中でお眠りなさい…」
「…ああ、ありがとな、レゼ。また夢が叶っちまったぜ」
「デンジ君もポチタ君も一緒に抱きしめてあげる」
こうして私たちは幸せな眠りに落ちて行った。