レゼさんじゅうろくさい   作:大学鯖

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シャチって母系社会でずっと母親の元で暮らすそうです。
ここのレゼさん母熊っぽいけど母シャチもありそう。


第三十九話

 私はレゼ、元ソ連のスパイ。

 

 今、公安へ連行中。…というと私が逮捕されたみたいだけど、早川家のみんなとビーム君、天使君も一緒だ。

 これから公安一課の岸辺という人との面会だ。

 今までの調査では、日本最強のデビルハンターとして名が通っている。

 そして、中国、いや世界最強と噂のあるクァンシの元バディだそうだ。

 

 しかし、それをさらに上回ると目されているのがマキマだ。

 

 そして、このタイミングで岸辺が私を呼ぶということは対マキマの件である可能性が高い。

 ただ、果たしてそれだけだろうか…?

 

 などと考えているうちに車が公安ではない方向に向かっている。

 

 「アキさん……、この車はどこへ向かっていますか?」

 

 軽く殺気を宿しながら尋ねる。ここで私やデンジ君を騙すなら容赦はしない。

 

 「実は…内密の話があるので岸部さんから郊外の墓地で会うと指示がありまして…」

 

 「…なるほど」

 

 マキマ対策か、ならばありえる。まあ出方を見てからにしよう。

 

 そうして着いた先は公共墓地だった。何故か日本なのに十字架がいっぱい立っている。

 その墓標の中から一人の男が現れた。虚無的な目をした顔に傷のある男がスキレットを片手にやってくる。

 

 「はじめまして、だな。お嬢ちゃん。俺が岸辺だ。先生と呼ばれると気持ちがいいのでそう呼んでくれ」

 

 と言いながらメモを見せる。そのメモには

 

 「会話はマキマに聞かれている」

 

 と書かれていた。…でしょうね、だから沈黙はあれ以来常時かけている。

 ただ、安心はできないので岸辺に提案する。

 

 「レゼです。初めましておじ様!」

 

 と言いながらメモに

 

 「私の力なら誰にも妨害されず話ができます」

 

 と書いてみた。すると、岸辺はアキ君と何か確認を取っている。さて、どう出るか。

 

 「まだおじ様って年じゃねえけどな、お前らからはそう見えるのか」

 

 と言いながらメモに

 

 「俺が入る」

 

 と書いてきたのでアキ君に見張りをお願いしてマトリョシカを展開してセーフハウスに招待する。

 

 「改めてようこそ、岸辺先生」

 

 そう言って後ろ手に持っていたウォッカを差し出す。秘蔵の一本だ。

 

 「ほう、気が利くな。ん…」

 

 岸辺はウォッカと一緒に渡されたメモに気づいた。

 

「…なるほど、お前がそうか。繋がったな」

 

 そこで一息入れてから岸辺が聞いてくる。

 

 「単刀直入に聞くがお前はソ連のスパイか?」

 

 「はい、かつてはそうでしたが、今は辞めました。現在無職です」

 

 そうだって分かってるからここに入って来たでしょうに。

 

 「何で辞めた?」

 

 これも既に聞いているでしょうけど、まだ信じられないか。

 

 「今回の任務がデンジ君を殺してチェンソーの心臓を奪う事だったので。私にはデンジ君は殺せません」

 

 「なるほど…お前ならデンジを殺せそうだが?」

 

 「物理的にはイエス。精神的にはノーですね」

 

 「精神的?歴戦のデビルハンターにしては妙な事をいう」

 

 やっぱり歴戦って言うってことは私の経歴は完全に把握してそうだ。

 

 「はい、私はデンジ君を愛しています」

 

 「……そうくるか」

 

 どうやら未だに疑いを持っていたらしい。無表情な岸辺の顔に驚きの色が隠せなかった。やはりソ連のスパイが語る色恋沙汰など所詮ハニトラとしか思われていなかったのだろう。

 

 「はい。ですので、私の目的はデンジ君とその周りの人たちが平和に暮らせること。これだけです」

 

 「デビルハンターに平和はない、そいつは分かっているはずだが」

 

 「本来デンジ君には公安をやめて欲しかったのですが、彼が公安でデビルハンターとして戦いたいと言うならやむを得ません。その場合は……私を公安で雇ってもらえませんか?」

 

 「……公安がソ連のスパイを雇うか?」

 

 「多くのメリットが提供できますよ。ソ連の情報、さらに各国のデビルハンターの情報、何よりも…私というソ連の最大戦力を使うことができます」

 

 …実は私も世界最強の一角に数えられるらしい。私の場合あまり表には出してないので正体や名前は知られていないが、ソ連にそういう存在がいるというのは知られている。

 

 「ほう、お前は例えソ連相手でもそれができる…と?」

 

 「元々私は人殺しは好きではありません。ただしデンジ君を害するものは敵です。敵に情け容赦は無用です」

 

 「…仮に公安がデンジを悪魔として処分したら?」

 

 「公安は私の敵になります。そして敵は例外なく消します」

 

 「どうやって?」

 

 「公安という組織を構成する人間が一人もいなくなれば」

 

 「お前にそれができると?」

 

 「さあ、どうでしょう?」

 

 と答えながら不敵に笑う。実際デンジ君が処分されるというならその前に公安を滅ぼしてやるくらいのつもりではある。その命令を下したもの、遂行しようとしたものは等しく同罪だ。

 

 「…100点だ。常識人かと思ったがデンジのことになるとネジが外れている。なるほど、クァンシの言う事も嘘ではなかったか」

 

 「彼女は何と?」

 

 先ほどのメモの中身だろう。私もちょっと気になる。

 

 「素敵なハニーを見つけたので日本に来たら便宜を図ってくれ…だと。あと、私と互角だとも」

 

 「それは光栄ですわ」

 

 あのクァンシがそこまで評価していたとは…。そして、ハニーか…、まあ彼女らしい。

 

 「今、何回か挑んでみたが倒せるビジョンがなかった。こちらも倒れはしなかったがな」

 

 これアキ君の未来視とかじゃなくて純粋に武の極みにある人だな。人間の頂点レベルだろう。

 

 「さて、本題に入る。マキマのことだ」

 

 「そうですね、情報交換ができれば」

 

 「まずお前はマキマの能力をどこまで把握している?」

 

 「そうですね、まず人間ではないですね。悪魔だと思います」

 

 「…ほう」

 

 「そして人を洗脳あるいは従属させる、遠隔地であっても情報を把握し敵を殺せる、そして殺しても死なない、あとは推測ですがデンジ君を狙ってる…こんなところですかね」

 

 「おおむね合っている。そしてそこまではこちらも把握している。では付け足すならば奴は内閣官房直属のデビルハンターだ。基本的にこちらからは手を出せない、そして公安の中には奴の直接の配下の悪魔がいる」

 

 「ええ、8人の魔人がいると聞きました」

 

 「そうだ、その内パワーは見ての通り直接支配はできていない。そしてお前はその内2人、サメと天使を手懐けている。どうやった?」

 

 「…私の力とだけ。それ以上はこちらも対価を要求します」

 

 「腹の探り合いは好きじゃねぇ。こちらの目的は一つ、マキマを殺す。協力できるか?」

 

 「唐突ですね。貴方はマキマの同僚では?」

 

 「ああ、奴が人間の味方でいるうちはな。だがどうもそう言ってはいられない情報を掴んだ。お前が協力するならこれが対価だ」

 

 「……聞きましょう。マキマが人間に仇なすならデンジ君にも害になる」

 

 「奴の目的は有力なお前の推測通りデンジ、正確に言うとチェンソーの悪魔だ。だが奴はそれに向けて過剰な戦力を集めようとしている」

 

 「例えば?」

 

 「デンジが仕留めた刀の武器人間、それ以外にも武器人間を集めようとしている」

 

 「…!!」

 

 「つまりお前とクァンシもターゲットだ」

 

 合点がいった。なぜソ連がマキマの事を伏せて私を単体で派遣したのか。私をマキマに売ったのだ。

 

 「なるほど…ではマキマとソ連は組んでますね」

 

 「何…?」

 

 「ソ連は今回の任務でマキマの事は伏せていました。マキマを相手取るなら私の単独任務はないですね。当然軍のバックアップが必要になります。マキマの事を知らなければ上層部がボンクラなだけですが、マキマのターゲットが私そのものなら私を売ったと見る方が自然ですね」

 

 「ふむ…ならば銃の悪魔もあるいは」

 

 「銃の悪魔…!?」

 

 まさかここで私の仇敵の名前が出るとは思わなかった。地獄では銃の悪魔の親玉はマキマの味方だったという。それを現世でもやろうというのか。しかし、銃の悪魔は行方不明のはずだが……。

 

 (それは本当なのか?)

 

 ソ連が今の私の敵である可能性が高い、でもそれは何時からだ?もしかして、ずっと前から……?

 

 「マキマは銃の悪魔も呼び込もうとしている可能性が高い。そして、コイツが現れるとそれは日本の危機だ。だからその前にマキマを殺る」

 

 「マキマは銃の悪魔の場所を知ってるのですか!?」

 

 「その様子だと、もしかしてソ連からは聞いていないのか?一応国の機密だが知らないと今後の話がややこしくなるので説明しておこうか。銃の悪魔は既に倒されて拘束されている」

 

 「……は!?」

 

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