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後書きにお知らせがあります。
私はレゼ、36歳、早川家にお邪魔してます。
一通り全部家事をこなす私は、なぜかアキ君にすごく歓迎された。苦労してたんだね……。
晩御飯を食べ終わったので晩酌タイムだ。デンジ君とパワーちゃんはジュースね。
しばらくしてパワーちゃんがおねむになったので、今のうちに恋バナのフリをしてアキ君へ本題を切り出す。
「さっきデンジ君から姫野さんって人の話を聞きました。デンジ君のファーストキスだったって…」
「ぶふっ!」
アキ君もその事件は覚えているようだった。
ただ、その後ちょっと辛そうな顔になったのが申し訳なかった。
「ごめんなさい……大切な人でした?」
「あの人は…俺をかばって死んだんです…」
その経緯は以前聞いたことがあった。アキ君を守るため悪魔に全てを捧げて消えてしまったらしい。
「…ごめんなさい、軽々しく聞いてしまって」
と、そこへデンジ君が割り込んできた。
「なー早パイ、姫野パイセンのことどう思ってたん?」
「……どうって」
「いや、早パイマキマさんのことが好きつったじゃん。じゃあ早パイはマキマさんか姫パイかどっち好きなんだよ?」
「デンジ、余計なこと言うんじゃねえ!、大体お前はどうなんだよ!
「俺ぁ当然レゼ一筋だぜ!」
デンジ君//////、惚れなおしてしまいそう。
「まーそりゃマキマさんツラいいし胸でけえし、そんで俺ん事公安に入れて三食と寝床までくれたんだ。そりゃ好きさ。でもな…それってレゼに対する好きと違えんだよ。早パイのマキマさんを好きってどんな好きなんだ?」
「どんなって…」
「ほら、エロ的に好きとか、母ちゃん的に好きとか、それとも彼女的に好きとか…レゼは全部なんだけどさ。俺はさ、昔そこんとこ区別つかなかったんだ、んで、早パイ」
一息区切ってからデンジ君が問いかける。
「マキマさんエロ的に好き?」
「何てこと言い出すんだてめぇ!」
「んじゃ母ちゃんとか家族?」
「…違う」
「んじゃ彼女?」
「……そうなるのか?」
「マキマさんがこっち見てなくても?」
「!!!」
「俺ぁ俺んこと好きな人が好きだ。アキはどうだ?」
「俺は…」
「彼氏彼女ってさ、お互いを見てんじゃね?俺はレゼと会ってやっとそれが区別がついたんだ。でもマキマさんは違ぇ。俺たちがマキマさん見てっだけで、マキマさんは俺たちを見てねえ。それって彼女か?」
「…違うな。…憧れとか崇拝なのか」
「崇拝ってなんだ?」
「神様を拝むようなもんだな」
「それって、好きなのか?」
「!」
「俺はよくわからねえけど、それって好きとは違くね?」
アキ君がすごく困惑している。
これは、やはり最初のデンジ君と同じかも知れない。理由もないのにマキマに好意を持っている。
だったら天使君と同じように矛盾を自覚させると効果的だ。
「アキさん、一つ聞きたいんですが…」
「何ですか?」
「マキマさんを好きになったのっていつ頃からですか?」
「いつって…公安に入って気が付いたらかな」
「きっかけは何でしたか?」
「きっかけ?」
「人を好きになるのって、何かきっかけがありますよね。例えば一緒に遊びに行ったとか、助けてもらったとか…」
「きっかけ……」
早川君が過去の記憶を思い出そうとしているけど、どうも思い出せないようだ。
もし、私の考えが正しければそもそもそんな記憶が存在しないという可能性がある。
「マキマさんは俺の恩人で…」
「俺はあの人に何をしてもらったんだろう……」
やっぱり記憶が改竄されている。
「俺は銃の悪魔を倒すために公安に入って…姫野先輩とかずっと一緒にいたのに、何故かマキマさんが好きになっていた。でも改めて思い出すと、マキマさんとの接点はほとんどなかった…」
「なぜ接点がない人を好きになるの?」
「それは……」
「そんな、俺は確かにマキマさんが…でも…俺は…何でマキマさんが好きなんだ?」
「アキ、多分お互いにずっと相手のこと見てたのは姫パイだぜ」
「……!!」
アキ君が驚愕を隠せていない。多分彼の中で大きな矛盾に気が付いたのだ。
なぜ接点もない、こちらを見てもいない人間を好きになるのか、その理由が全く思い浮かばなかったからだ。
「天使のやつが言ってたのはこのことか…」
「天使君が何か?」
「ああ、マキマさんに対して好きな理由が浮かばないなら気を付けろ、と」
「彼も実はそうでした、昨日鎖が出て彼が操られるように私を攻撃したのを覚えていますか?」
「…はい、突然だったので何が何やらですが」
「あれはマキマの能力です」
「え!?」
「マキマはあの鎖で他者を操れます。幸いデンジ君はそこまでではなかったのですが軽い洗脳状態にありました」
「…」
「気を悪くしないでくださいね。アキさんも多分同じ状態にあります。マキマが好きと言いながらその理由が全く浮かばないのがその証拠です」
「そんな……」
「デンジ君は出会いと今までの暮らしからマキマを好きになる動機はありました。アキさんあなたはどうですか?」
「……ずっと考えてたんだ、そして姫野さんが死んだあと…妹さんが見舞いに来てくれたんだ。そして、姫野さんが妹さんに宛てた手紙を持ってきてくれたんだ。俺が読むべきだ…って」
「……」
それはアキ君の話では、いかに姫野さんがアキ君を心配していたか、できれば公安を辞めて欲しかったという話が書かれていたそうだ。姫野さんの気持ちが痛いほどわかった。私もデンジ君にそんな思いを持っていた。でもそれが叶わないならせめて横で一緒に戦いたかった。そして、不幸にも姫野さんは力及ばず先に命を落とすことになてしまった。
「そして、やっとわかったんだ。そうだ、俺は姫野さんが好きだった…。ずっと一緒に居たかった…のに…なぜかマキマさんと比べてた。何のつながりもなかったのに…俺は…俺はっ!!自分の復讐なんてものを優先して……姫野さんを死なせてしまった……!」
その思いもわかる、それはかつての私だ。彼を罪の意識から解放してあげたい。知らないうちに私の内なる母親が目覚めていた。
「それは違う。姫野さんが死んだのは決してあなたのせいじゃないですよ、アキ君」
「そうだぜ、ありゃ…姫パイは助からなかった。だからあんなことしたんだ、アキだけは生かしたかったから!」
しばらく自分の記憶を辿っていたアキ君は、ある事実に気が付いたようだ。
「そして、その時マキマさんからは……何もなかった…」
アキ君は何か夢から醒めたような、吹っ切れた顔をしていた。
「…ありがとう、何か目が覚めた気がするよ」
これで恐らくマキマの洗脳は解けた可能性が高い。その上でマキマが好きならそれは彼の意志だ。しかし、おそらくそうならないと思う。
「さて、もういい時間だな。風呂に入って寝るか」
アキ君は残っていた缶ビールを一気に空けるとお開きを宣言した。
「おう、レゼどうする?」
デンジ君が聞いてくる。
「あ、私はマトリョシカのセーフハウスにあるので大丈夫ですよ」
というか、流石にここでお風呂まで入るのはちょっと…。
「おう、じゃあ俺は…」
デンジ君…何か忘れていませんかねぇ。悪戯心と今朝の特訓のことを思い出させるようにニヤリと笑いながら誘ってみる。
「デンジ君……一緒に入りませんか?」
「入りまぁす!!」
即答だった。
「お前ら……まあいい、好きにしろ。俺は風呂に入る」
折角いい話の後でこんなノロケを見せられたアキ君は呆れたようにそう言ってお風呂に向かっていった。
パワーちゃんはまだ寝こけてて起きてお風呂に入る気配がない。というか、そもそもお風呂に入らないらしい…。それってマジで?
「こいつ、風呂入らねーわ、クソ流さねーわほんと汚ねえんだよ」
いや、流石にトイレ流さないのはダメでしょ…って誰が掃除すんの?もしかして私!?
「まあ、じゃあパワーちゃんはこのままにしておこう…ね、デンジ君?」
「何?」
やっぱり素で忘れてるな…。
「忘れてない?今日の特訓で勝ったら……」
「勝ったら…あ!……その、レゼ?…いいの?」
デンジ君がやっと意味に気づく。そして急に真っ赤になる、こういうところがピュアでかわいい。
「いいよ、私を好きにして……」
お姉さんぶって言ってみたものの、顔が真っ赤になっているのが分かる。
(うわー!!恥ずかし!!ヤバイヤバイ!!)
「レゼ!!」
デンジ君が私を抱きすくめる。そしてそのままキスをする。
「ここじゃイヤ…パワーちゃん起きちゃう」
「あ…ああ、じゃあ部屋行こうぜ」
そうして、デンジ君の部屋に入りマトリョシカを展開する。
長かった。色んなものに邪魔されて、デンジ君に無茶な課題を振って…。
でもデンジ君はそんな無茶ぶりを乗り越えて私から見事に一本取った。
末恐ろしい成長だ。近いうちに私の背中を預けられる頼もしいバディになってくれるだろう。
そして、あらゆる意味で私の真のパートナーになってくれる。
そのための最初の夜がやっと巡ってきた。
もう私たちを邪魔するものは何もない。
私は目標を達成した彼へのご褒美に、私自身の全てを差し出す。
……いや、実はこれは私へのご褒美でもある。
ずっと待たされてきた。やっと今夜、デンジ君と一つになれる。
…という訳でお待たせしました(待ってない?)
この後はR18です。第四十二・五話になります。長くなったので前後編に分けています。
苦手な方はそのまま第四十三話につながりますので、ご覧にならないでください。
お好きな方はぜひ…。