レゼさんじゅうろくさい   作:大学鯖

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第四十四話

 私はレゼ、36歳。元ソ連のスパイ、現公安の協力者。

 

 今日は岸辺隊長の依頼で暴力の魔人をマキマの支配下から解放する。

 

 手筈は極めてシンプルだ。暴力の魔人のバディは東山コベニという女性だ。彼女を拉致し、暴力の魔人が負ってきたところでマトリョシカに隔離して説得、ないしは捕縛する。

 

 なお、暴力の魔人はマスクをかぶっているが、このマスクは絶対に外してはならないそうだ。理由は単純で、外すと相当恐ろしい力を持っているからだそうだ。

 

 岸辺隊長がわざわざ念押しするぐらいだから相当だろう。

 

 あと、東山コベニは臆病であるが実力はかなり高く、とくに敏捷性に優れるらしい。

 

 ターゲットの実力からして、私が変身した状態で当たることにした。当然マキマ対策で沈黙とカメレオンを発動させる。そして、蛾のソナーを発動してターゲットが近づくのを待つ。

 

 来た…!のんきにアイスを食べている。何かこれから巻き込むのが気がひけるが、まあしょうがない、やりますか。

 

 カメレオンを発動したまま裏路地に潜む。そして、ヒグマの悪魔を呼ぶ。

 

 「グオオオオオオ!!」

 

 「ひぃぃぃぃ!」

 

 突然現れたヒグマの悪魔に東山コベニが悲鳴を上げる。

 

 「アチョ!」

 

 そのヒグマの悪魔が暴力の魔人の飛び蹴りで吹っ飛ぶ。一瞬でヒグマの悪魔が倒される。なるほど、これは相当強い。

 

 その隙に難なく東山コベニの背後に回りスタンガンで気絶させる。そして、ヒグマの悪魔を回収する。

 

 暴力の魔人がこちらに気づいて追いかけてきたところにマトリョシカを発動させた。

 そして、あらかじめ変身しておく。

 

 「……ここは?」

 

 「初めまして、暴力の魔人」

 

 「アンタは?」

 

 「爆弾の悪魔…とでも名乗っておきますか」

 

 「コベニちゃんは?」

 

 「私に勝ったら無事解放してあげます」

 

 「あ、そう」

 

 と言いつつ猛ダッシュしてきて激しいパンチの連打を放ってくる。

 そして、高く飛んだかと思うと足を肥大させて、渾身のかかと落としを放ってくる。

 

 「シャあ!!」

 

 なるほど、特殊能力は自己の筋力強化だね。ならば…。右手一本でガードして左手で膝を掴みに行く。

 

 「嘘ォ!?」

 

 流石にそれは察知して距離を取ってきた。やはり簡単には極めさせてくれないか。しかし空中に居たのに良く逃げた。普通ならそのまま膝関節を破壊して終わりなのだけど…

 

 「俺のマジ蹴りだぜ!?今の!」

 

 とりあえず、マスクさえ取らなければ問題なく勝てそうだったが……。

 

 「う~ん!降参!!」

 

 そう言いながらあっさり両手を上げてきた。え…なんで?

 

 「アンタ俺よりずっと強い!と、まあそういうことで」

 

 そこでマスク外さないんだ…。

 

 「貴方まだ本気だしてないでしょ?」

 

 「暴力なんて好きじゃないぜ!」

 

 「暴力の魔人…なんだよね…?」

 

 「やっぱ世の中ラブ&ピースだよな、ピース!」

 

 …やっぱり魔人って何か変。楽でいいけど。

 

 「で、俺をどうすんの?」

 

 相変わらず暴力の魔人は飄々と聞いてくる。

 

 「あなたはマキマの配下?」

 

 「おう、俺はマキマさんに助けられてるからな!」

 

 「どんな風に?」

 

 「う~ん、わかんね。なんか人間の記憶がところどころ消えてんだよな」

 

 「それを知りたいとは思わない?」

 

 「う~ん…別にいいや!」

 

 …ダメだこりゃ、埒が明かない。

 

 「じゃあ悪いけど、捕虜になってくれるかな」

 

 「おう、まあしゃあねえ!穏便に頼むぜ!」

 

 これまたあっさりと了承されたのでラーゲリを呼びだす。すると、やはり彼にも鎖が現れた、しかもかなり頑丈だ。とりあえず爆破してみるが、一度では効かないようだ。

 

 その間に暴力の魔人の様子が変わってきて、なんとマスクを外そうとしている。

 

 (これはマズい!)

 

 一刻も早く鎖を断ち切すしかないが…

 

 (…奥の手を使いますか、あんま使いたくなかったけど)

 

 私は指で鉄砲の形を作る。

 

 「バン」

 

 私の指から放たれた銃撃が鎖に当たって大爆発を起こす。

 

 ガッシャアァァァァン!!!

 

 流石にこれには鎖が耐えきれず爆発する。

 

 「イテっ!」

 

 暴力の魔人が反動で吹き飛ばされて地面に落ちる。

 

 「ん、何か頭がすっきりするぞ」

 

 「何か思いだせた?」

 

 「ああ、マキマさんに助けられたってな…ありゃ嘘だったわ」

 

 ええ…?

 

 「なんか地上に現れたらいきなりマキマさんに捕まって、ずっと毒吸わされてたな。んで公安の奴が死んだんで乗り移らされたわ。よく考えたらずっと毒漬けって、全然世話になってねえな!ははは!」

 

 暴力の魔人はその名に反して理性的で穏健だった。

 

 「世界中みんな貴方みたいな人なら戦争も起きないのにね」

 

 「あ、そんでコベニちゃんは?」

 

 そんな中彼が唯一執着を見せるのがこの東山コベニという女性だけだった。もしかすると、生前の彼は彼女と何か関係あったのかもしれない。

 

 「ここにいるよ、気を失ってるけど」

 

 「お、大丈夫だね。で、俺に何して欲しいの?」

 

 彼はコベニの無事を確認するとあっさり要件の確認に入った。

 

 「そこから先はこの人に任せるね」

 

 そういって岸辺隊長と交代する。

 

 「というわけだ、今までお前はマキマに操られてたんだ」

 

 「あっそ」

 

 「怒りとか恨みとかはないのか?」

 

 「べっつに~」

 

 「では、マキマがこの女を巻き込もうとしてもか?」

 

 「…!」

 

 「正確にいうと公安どころかすべての人間を巻き込もうとしてるな」

 

 「そいつはピースじゃないねぇ」

 

 「ああ、その女は間違いなく巻き込まれそうな顔をしている」

 

 「…否定できない。コベニちゃんならそうなる。なんか不幸体質だし」

 

 …どんな子なの、東山コベニ? でも、見た目だけでもなんか不幸っぽい。

 

 「まあ、そういうわけでマキマが物騒な事を考える前に止めたいのよね。力を貸してくれる?」

 

 「ああ、いいよ」

 

 軽っ!

 

 そうしているうちに東山コベニが目を覚ました。

 

 「あれ、暴力さん?岸辺隊長?ここは…?」

 

 そういって私と目が合う。

 

 「ひゃいいいいいい!あ、悪魔!!」

 

 人をつかまえて悪魔とは失礼な…と思ったら変身してたね、私。そりゃそうだ。

 

 「ごめんなさい!ごめんなさい!」

 

 いや、まだ何もしてないんだけど…

 

 「もう仕事やめるから許してくださぁいい!!」

 

 「「…え?」」

 

 私と暴力の魔人が同時に呆気にとられた。

 

 「いや、コベニちゃん。仕事辞めてどうすんの?」

 

 「風俗行くしか……」

 

 いや、結論早すぎ…ってかいきなりそんな結論出すほどなんだ…。なんで公安にいるんだろ?

 

 「いやいや、そこまでしなくても、ていうか、なんで私が殺すみたいな話になってんのよ」

 

 「…え?」

 

 「別に協力してくれたら何も…「しまぁす!!」」

 

 食い気味に被せてきた。

 

 「だから、どうかお助け…」

 

 どうも人の話を聞かない傾向があるようだ。

 

 「いや、コベニちゃん。この人多分味方だよ」

 

 暴力さんが割り込んでくれた。

 

 「……え!?」

 

 「……うん、まあそうなるかな」

 

 「てか、岸辺さん。私のことみんなに紹介してくれませんかね。このままだと私どうしても不審者…」

 

 「んー、あぁ、コイツはデンジの女だ…」

 

 え?いいの?その紹介で?

 

 「「ええええええ!!!」」

 

 案の定二人とも驚いている。

 そこへ見張りのアキ君を残して他のみんなが入ってきた。

 

 「ああ、合ってるよ。そのボムガールはチェンソー君の彼女だよ」

 

 天使君も加勢してくれた。助かる。

 

 「初めまして、デンジ君の彼女のレゼです」

 

 そう言いながらデンジ君の腕に縋りつく。

 

 「…てかその姿でいちゃつくとシュールだね」

 

 天使君が冷めた目でこちらを見ている。…あ、私、悪魔の姿のままだった…。そりゃ不審者だわ。

 

 「……あの~?」

 

 コベニちゃんがおずおずと口を開く。

 

 「本当にデンジ君でいいんですか…?」

 

 え、何でこんなこと聞かれてんの、私?

 

 「デンジ君って…多分会った女の人全員好きになってますよ?」

 

 あー納得。前のデンジ君ならそうだろうね。彼女も声かけられたのかも…。

 

 「余計な事言うんじゃねーよ!チビ女!!レゼは俺の彼女なんだよ!」

 

 デンジ君がムキになって反論する。

 

 「えー、でも…」

 

 まだコベニちゃんは半信半疑だったが、

 

 「んじゃ証拠見せてやるよ!」

 

 デンジ君が何か自信満々に言い出した。なんかヤな予感がする…。

 

 むにゅっ!

 

 デンジ君は予想の完全に斜め下の行動に出た。

 

 「彼女だから胸揉んでもOKだぜ!」

 

 …即座にその腕をひねり上げて脇固めに入る

 

 「あだだだだだだ!!!ギブ!!ギブ!!」

 

 「デンジくぅ~ん、いくら彼女だからっていきなり人前で胸揉んで良いワケがないんだよ」

 

 まず一般常識を徹底的に叩き込む必要がありそうだ。

 

 「……ホントにもう」

 

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