レゼさんじゅうろくさい   作:大学鯖

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水族館は好きで色んな所に行きましたが、最近は結構リニューアルしてるみたいなのでまあ巡ってみようかなと思います。個人的には大分のうみたまごが好きです。


第四十六話

 私はレゼ、永遠の16歳。これからはデンジ君の彼女になったので16歳で押し通す。

 

 みんなは公安に仕事に戻っていった。すると、デンジ君が話しかけてきた。

 

 「レゼは今日はバイトは?」

 

 「今日はお休み。デンジ君は?」

 

 「俺も休み。じゃあさ、レゼ遊びに行かね?」

 

 デンジ君は今日は非番らしい。

 

 「それってデート?」

 

 ニヤッと笑いながらからかってみる。

 

 「おう、レゼと一緒にいてえ」

 

 直球で打ち返された。くぅ~!これですよ、これ!これがデンジ君だよ。

 

 「レゼ、どっか行きたいとこある?」

 

 「えーとね…」

 

 さて困った。任務以外でデートしたことがない。

 ジョンと森や湖に出かけたくらいか。

 

 (デート、デート…あ、そうだ!)

 

 あるじゃないか、格好のデートの見本が。

 

 (まさか、この歌が実現する日がくるなんて…)

 

 私やジョンからは最も遠い、憧れの歌。

 

 「んとね、水族館…行ってみたい」

 

 「お、いいぜ!俺ペンギン見てえ」

 

 え、なんでこの歌教えてないよね!?

 まさか、デンジ君がこの歌の通りの事をしてくれるとは。

 

 私たちは都内にある水族館に行くことにした。

 ここはデンジ君と私の希望通りにイルカもペンギンも居るらしい。

 

 「あ、でもその前にメシ食わね?ハラ減った」

 

 「じゃあ、水族館の中にレストランがあるから行きますか。デンジ君何食べる?」

 

 「んーと、オムライス?」

 

 惜しい、でもほとんど同じだ。

 

 私たちは水族館中の海の生き物を見て回った。

 

 「おお、あれ何だ?」

 

 「アザラシだね、ビーム君が好きらしいよ」

 

 「ええ、あいつそんな趣味あったっけ?」

 

 「いや。食べるらしいよ」

 

 「え!?…よくわかんねえな、アイツ」

 

 「こないだ普通に唐揚げ食べてたけどね」

 

 「まあパワーも何でも食うから人間と同じでいいのか」

 

 「あ、デンジ君!ペンギンだよ!」

 

 「おお、かわいい!」

 

 「ね~!私も初めて見た!」

 

 「いいなぁ、飼えねえかな…」

 

 「あはは!流石に無理だよう」

 

 いいなあ、これが青春かぁ。ソ連に居た頃はこんな時間を過ごせるなんて夢にも思わなかった。ここでは、私は大好きな彼とデートしてる普通の女の子になれている。人間いくつになっても童心に帰れるものだというのをこの歳になって初めて知った。

 

 「レゼ、イルカショー始まるってよ!見に行こうぜ!」

 

 そう言ってデンジ君が私の手を取ってリードしてくれる。幸せ。この幸せは絶対に守ってみせる。周囲から呆れられるほど二人でイチャイチャするのだ。そんなことを年甲斐もなく考えていた。

 

 前にデンジ君が言ってたけど、人間気の持ちようでずっと青春なのだ。まして私たちは不老不死。体は青春のままだから、心もそうであれるはず。そう、私たち二人一緒なら…。

 

 ザッバーン!!

 

 「きゃああ!」

 

 「うおおお!」

 

 突然イルカが跳ねる、最前列にいた私たちはモロに水をかぶってしまった。

 

 「レゼ!大丈夫か?」

 

 幸いというか、何というか、デンジ君が私をかばってくれたので、私の方の被害はほとんどなかった。

 代わりにデンジ君はずぶ濡れになってしまった。

 

 「ごめんね、デンジ君…」

 

 胸がときめく。ついこの前まで子どもだった彼はもう立派な紳士になっている。私をしっかりと導いてくれる逞しい男だ。

 

 「いや、こんなのすぐ乾くから大丈夫だぜ」

 

 「そうだ、ショップに行ってみよう」

 

 「ん、お土産何かほしいの?」

 

 「いや、そこならシャツとか売ってるかなって」

 

 そう言って今度は私が彼の手を引いてショップに向かった。予想通りこの水族館の生き物をモチーフにしたグッズが多数あって、そのうちお目当てのTシャツもあった。

 

 「デンジ君、ほら、これどう?」

 

 そう言ってペンギンのTシャツを持ってくる。

 

 「えーこれ俺が着んの?」

 

 「かわいいじゃん」

 

 「あー、そうだ!レゼも一緒に着ねえ?」

 

 「え!?」

 

 これは……ペアルックってやつですか…。

 流石にいい年してこれはと一瞬躊躇したけども、先ほどからデンジ君との青春に当てられている私は気が付けば彼と同じTシャツを買ってそのまま着ていくことにした。

 

 「おーレゼ、似合ってるぜ!」

 

 「デンジ君もかわいい!」

 

 傍から見ると完全なバカップルの出来上がりだ。それでもそんな周囲の視線も気にならないほど彼と一緒になれるのが嬉しかった。

 

 その後、ショップの中のクマノミのぬいぐるみをデンジ君がずっと見ていた。

 

 「どうしたの、デンジ君?それ欲しいの?」

 

 「いや、これ見てるとさ…ポチタ思い出して…」

 

 「え、ポチタ君って犬じゃなかったの?」

 

 「いや、こんな色だったんだよ」

 

 うん、実は私も知ってる。でも夢に出たってことはもしかして、ポチタ君はデンジ君と会ってから私のところに来たのかな?

 

 その後、一通り全部見終わったので帰路につくことにした…ペアルックのままで。

 

 帰り道でデンジ君が、ポツリと話し出した。

 

 「実はさ、昨日夢ん中で久しぶりにポチタに会ったんだ」

 

 「うん…知ってる」

 

 「え!?レゼなんで知ってんの?」

 

 私のまさかの返事にデンジ君が驚く。

 

 「実はね…昨日の夢の中で会ったの」

 

 「マジで!?…実は俺も夢ん中であったんだよな」

 

 「ポチタ君は何て?」

 

 「俺たちの夢は叶ったな…って。ほらレゼとエッチしたじゃん。あれが俺ん夢で叶ってなかったことだったんだよな」

 

 「うん、そう言ってた」

 

 「そしたらポチタが次の夢は何だって聞いてきてよ、俺ぁレゼと一緒に居られるならなんでもいい、いやレゼの夢が俺ん夢だっつったんだよ」

 

 「ポチタ君もそう言ってた」

 

 「マジか!?じゃあ俺たち同じ夢みてたんだな!?んじゃレゼの夢って?」

 

 「みんなと仲良く暮らせますようにって。あと…デンジ君の子どもが欲しい……って」

 

 あ…デンジ君に言っちゃった。ま、いいか、いつかは言うつもりだったし。

 

 「うぉっ!それって…」

 

 「うん、デンジ君と結婚できたらいいな」

 

 「結婚…結婚かあ…」

 

 デンジ君が悩んでいる。事情を知らなければ結婚とか面倒抜きにエッチしたいという若い子特有のわがままなのかと思うかも知れないけど、そこはちゃんとポチタ君が教えてくれていたので良かった。

 

 「デンジ君、私とじゃイヤ?」

 

 「いや、そんなことねえよ!むしろ嬉しいけど…俺、ちゃんと親になれんのかなあ…」

 

 やっぱりデンジ君の不安はそこだった。

 

 「実はね、デンジ君が家族とか子どもとかに不安を持ってるのはポチタ君が教えてくれたよ。でも大丈夫、私達なら乗り越えられるよ。なんてったって私たち死なないし、時間はいっぱいあるよ」

 

 「……そうだな。レゼとならいいかな…」

 

 「うん、でもまずは普通に暮らせるようにしないとね」

 

 そう、そのためには…。

 

 「おう、前は銃の悪魔倒したらマキマさんがなんでもしてくれるって言ってたけど、銃の悪魔が捕まってんなら無理だよな、っつーかマキマさんポチタ欲しいってこたあ、その銃の悪魔で俺を殺そうとしてんじゃんかよ!」

 

 「そうなんだよ、だからマキマを止めないとデンジ君も私も幸せになれないよ」

 

 マキマを止めなければならない。

 

 「そうだよな、レゼも支配しようとしてたってこたあ、レゼに俺を殺させようとしたってことか…。そいつは流石に許せねえな」

 

 「だから、デンジ君。一緒に彼女を止めよう」

 

 デンジ君がとうとう決意を固めてくれた。

 

 「おう…ただなあ、俺からするとマキマさんってそこまで悪い人にゃあ見えねえんだよな」

 

 それは私にも分かる。私だってその境遇ならマキマを恩人だと思うだろう。だから私はいつしかマキマを殺すとは言わなくなっていた。

 

 「…そうよね、デンジ君にとって恩人だもんね」

 

 「でも、マキマさんそうやって俺を構う割に俺のこと見てねえなって…」

 

 「デンジ君、前に言ってたね」

 

 「もしかして、マキマさん俺じゃなくてポチタを見てんのか?」

 

 「それはあるかもね」

 

 「なるほどな、でもそうしたら簡単にゃあきらめてくれそうにねーな。わざわざ俺をあんなとこから拾って育ててるようなもんだから」

 

 ここで、私は前から思っていた疑問をぶつける。

 

 「デンジ君…ポチタ君と何か契約してる?」

 

 「契約?…契約…あっ!?」

 

 「どうしたの?」

 

 「さっき夢の話したじゃん、夢が叶ったってポチタが言ってたやつ。んで、次の夢聞いてきたやつ」

 

 「うん、私も聞かれたやつね」

 

 「俺さ、一回死んだときにポチタが心臓になってくれたじゃん。その時にポチタがこれは契約だって言ってたわ」

 

 「つまり…ポチタ君にデンジ君の夢を見せる代わりにポチタ君が心臓になるってこと?」

 

 「そうだ、だから俺の夢を見せんのが契約なんだ」

 

 やっぱりポチタ君との契約がなされていた。でもそれは…。

 

 「契約はデンジ君が夢を見る限り続いていくってこと?」

 

 「…ってことになんのか。でも夢が叶ったら次の夢って言ってたから…」

 

 「これ永久に続くんじゃ…」

 

 「そっか、俺たちが夢を見続けるとずっと続くんだ」

 

 「つまり、マキマは永遠にポチタ君を手に入れられない…?」

 

 「ああ、この契約がある限りは…ん?じゃあこの契約ってどうすりゃ終わるんだ」

 

 「契約は破った時に終わるから、夢を見なくなった時?」

 

 「夢を見なくなるときってどんな時だ?」

 

 私にはその答えが分かってしまった。デンジ君はあの酷い暮らしのなかですらずっとポジティブに希望を持って生きてきた。つまり夢を見続けていた。

 

 一方、私は…夢を見なくなっていた。それは夢を諦めたから。モルモット時代、あるのは絶望と虚無だけだった。ジョンと会ってミーシャを授かって、束の間の夢を見た。

 

 その後、再び夢を見なくなったのは…。

 

 「デンジ君、人が夢を見なくなるのはね…心底絶望して、全てを諦めた時だよ」

 

 考えうる最悪の結論に達してしまう。

 

 「レゼ…!?」

 

 「私はね、デンジ君に出会うまでずっと諦めと絶望の中で生きてきた。デンジ君、今デンジ君が絶望するとしたらどんなことが起きた時かな?」

 

 「……レゼが居なくなること、だな」

 

 「…!」

 

 今のデンジ君にとっての絶望はそれか。逆に考えると当然だった。私の絶望はデンジ君が居なくなることだ。

 

 「アキとかパワーとかそりゃみんな居なくなっちゃ困るけど…レゼが一番困る。もしもレゼとずっと会えなくなったら…俺……」

 

 「デンジ君…。マキマの狙いが分かったかも」

 

 「え!?」

 

 「マキマがポチタ君を手に入れようとするなら、デンジ君の契約を破棄しないといけない。じゃあどうするか?それはデンジ君を心から絶望させればいい。そうすれば夢を見なくなって契約破棄になる」

 

 「……それって」

 

 「ええ、多分デンジ君の周りの人を殺しにくる。アキ君もパワーちゃんもターゲット。でも一番殺したいのは…」

 

 「……レゼか」

 

 そう、どう見ても私だ。

 

 「そう、私を殺して復活できないようにするか、完全に支配すれば…デンジ君が絶望するかも。だから、デンジ君。お願いがあるの」

 

 これは彼にとって過酷な…一種呪いといっても過言ではないお願いだ。

 

 「お願い?」

 

 「もしも私が殺されたり支配されてもしても、決して諦めないで。私はずっとデンジ君を待ってる。そして、もし私を戻す手立てがなかったら、デンジ君の手で私を殺して…」

 

 「…ああ、任せとけ。レゼが天国にいようが地獄にいようが俺が探し出して連れ戻す。そんで絶対しなせやしねー、レゼは俺んだ!」

 

 デンジ君が力強く宣言する。キミに会えて本当に良かった。私の運命の人…。

 

 「デンジ君…Я тебя люблю」

 

 「レゼ、それ前も言ってたけどどういう意味?」

 

 「そうね、もう教えてもいいよね。これはロシア語でね…」

 

 気づけば視界がぼやけてデンジ君しか目に映らなかった。

 

 「…愛してる」

 

 「レゼ…」

 

 「だからねデンジ君、お願い…Я не могу без тебя,поэтому,Не бросай меня, будь всегда со мной……もうキミなしで生きて行けないから、ずっとそばに居てね」

 

 「ああ、ぜってえ離さねえ!」

 

 そう言ってデンジ君は私を抱きしめてくれた。

 ここが往来だという事も忘れて、私たちはこの世界に二人きりみたいに思えた。

 

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