レゼさんじゅうろくさい   作:大学鯖

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チェンソーマン第八弾特典をゲットしました。
うちの近所では1日1回の上映になりましたが、ほぼ満席でした。
しかも若い女性やカップルが見に来てたり明らかに客層が変わってきた感じがします。
どうも恋愛映画という側面が認知されてきたかもしれないですね。


第四十八話

 私はレゼ、36歳…ええ、36歳。

 

 あの後は……やはり一回では終わらなかった。

 

 体力的には15歳のはずなんだけど、やはり若い子には勝てない…。

 というわけで翻弄され続けてグロッキーになった私は、とりあえず最低限寝られるようにベッドを整えて眠りに落ちていく。今日は夢もみないだろう…そう思っていた。

 

 しかし、いつの間にか目の前にポチタ君がいた。

 

 「レゼちゃん、こんばんは」

 

 「え、ポチタ君?どうしたの」

 

 ポチタ君はデンジ君の中にいるはずだ。しかし今ここにいる。

 何故ポチタ君に会えるのか考えてみた…すぐに結論が出た。

 

 「…レゼちゃん、言いにくいんだけど、私が君の夢の中に入るための条件が解った気がする」

 

 「……私も今解った気がする」

 

 うん、ここ2日デンジ君との間であったことと言えば…間違いない。

 

 「まあ、その…デンジと仲良くしてやってくれ。これもデンジの夢だったんだ」

 

 「いや、私も嬉しいけど…身体がもつかな…」

 

 これが毎晩続くのか…女冥利に尽きるけど一抹の不安はある。

 

 「…デンジが彼女10人くらい欲しいとか言ってたのは、結構本気の話だったのかもね」

 

 ポチタ君がデンジ君の夢の話をした。彼がそう言ったのは単純に情緒が幼くて手に入るものが全部欲しいという意味だと思っていたけど、もしかするともっと単純にそうしないと処理できないぐらい絶倫なだけかも知れない…。

 

 「それは嫌だから私頑張る!」

 

 そう、やっと見つけた私の安住の地にどこの馬の骨かわからない女が入るのは耐えられない。

 

 「うん、レゼちゃんがいればデンジの夢の方は大丈夫だね。そうすると次はレゼちゃんの夢の話になるね」

 

 私の夢…デンジ君と、その大切なみんなと普通に暮らす。平和な世の中なら、私たちが普通の人間なら普通に叶うはずの夢。当たり前のように三食食べて、学校に行って、安全な家で眠る。友達と遊んで、デンジ君と結ばれて…。

 

 それが叶うには、大きな大きな障壁が残っている。

 

 「夢か…その前にマキマとソ連を何とかしないとだけど…」

 

 「マキマ?ああ、支配の悪魔だね」

 

 「え!?」

 

 「君が言うマキマは、私が戦った支配の悪魔だ」

 

 「支配の悪魔…」

 

 正直ある程度そんな感じの能力かとは思っていた。しかし、想像したよりも遥かに強そうな悪魔だった。

 

 「そう、私は地獄で戦争の悪魔、支配の悪魔、飢餓の悪魔そして死の悪魔と戦った」

 

 私は爆弾というだけでそれにまつわる多種多様な能力を扱える。なら戦争とか支配とかどのぐらい広汎なそして強力な能力になるのか想像もつかなかった。

 

 「すごい強そう…」

 

 「とても強かった。私は瀕死になって命からがら地上に逃げ出したところでデンジに出会ったんだ」

 

 あれ、その4体相手に戦えるポチタ君ってものすごく強いんじゃ…?しかし、今それ以上に聞きたいのはマキマについてだった。

 

 「ポチタ君、マキマの目的ってなんだろうね?」

 

 「レゼちゃんはどう思う?」

 

 「とりあえず分かっているのは銃の悪魔など戦力を集めようとしている?」

 

 「それは間違いないね」

 

 「そして、それはある強大なものと戦うため…そして彼女が執着しているものと言えば…デンジ君、いいえチェンソーの悪魔、つまりポチタ君。キミが狙い?」

 

 「そうだ」

 

 「そして、マキマはキミを手に入れて何かしようとしてる。それは…」

 

 私は今までのマキマの行動と、今解ったマキマが支配の悪魔であるという事からある結論にたどり着いていた。

 

 「マキマが支配の悪魔ということは、支配を強くすることによって自分の能力を高めようとしているよね。と、いうことは支配する対象が増えるほど能力が増える。だからまず日本を支配して、ゆくゆくは世界征服をしようとしてるのかなと思う。そしてそのためにはポチタ君、キミの力が必要。合ってる?」

 

 そう、彼女が支配の悪魔ならその求めるところは人類の支配、つまり世界征服になるのかと思う。そしてそれを為すためにポチタ君が必要なのだと思っていた。

 

 「それは彼女にとっては通過点だろうね」

 

 ポチタ君の答えは意外なものだった。

 

 「え!?じゃあ彼女は何をしたいの?」

 

 「考えたことはなかったかい、私を支配して何をするつもりなのか」

 

 「…そういえば、チェンソーマンの心臓を手に入れるまでは任務として聞いていたけどそれを各国がどうするかまでは分からなかった」

 

 「各国はマキマに持たせたくないだけだろうね。そして、マキマは私の能力を使いたいのだろう」

 

 「能力?」

 

 「私はね、食べた者の存在をこの世から消すことができるんだ」

 

 「え!?」

 

 「…私が食べた悪魔は文字通り存在が消える。そして消えるのはその悪魔だけでなく、その概念自体が消える。例えば私が銃の悪魔を食べたとしよう。そうするとこの世界から銃という概念が消えて、銃は存在しなくなる」

 

 「え!?」

 

 想像もしていないくらい強力な能力だった。

 

 「悪魔は普通死ぬと地獄に行き、そして地獄で死ぬと現世に出てくる。しかし、私が食べた悪魔は転生せずそのまま消滅する。ただし私が食べても存在が消えなかった者もいる。それが君たち武器人間だ」

 

 「!!」

 

 そうだったのか、なぜ私たちが不死身なのか。それとも関連しているかもしれない。

 

 「私とデンジ君以外にそういう存在は…?」

 

 クァンシは間違いなくそうだろう。あとサムライソードというのも聞いたことがある。

 

 「クァンシはとサムライソードは知っているね、ならそれ以外は4人いる。恐らくマキマの手の内にあるんじゃないかな」

 

 何てことだ、すでにマキマはそんな強力な配下を持っていたのか…。しかしまだチェンソーマンを相手にするには足りないので銃の悪魔や私たちを狙っていたのか。

 

 でも今はそれよりも聞きたいことがある。

 

 「マキマがポチタ君に執着しているのは何か消したいものがあるってこと?」

 

 「そうだ」

 

 「それって…」

 

 「彼女は支配の悪魔、つまりこの世を全て支配したい。そうすると邪魔なのがその支配を邪魔するもの。例えば戦争、飢餓、死…これらは人間に降りかかると人間は死に支配できなくなる。支配するには相手が生きていないとね」

 

 「え、それってマキマの味方だったんじゃ?」

 

 マキマにとってはむしろ味方こそ一番邪魔な存在だったのか…と思っていたらポチタ君がもっととんでもない事を言い出した。

 

 「正確にいうとそれらは姉妹だ」

 

 姉妹が邪魔…やはり悪魔らしい。しかし支配、戦争、飢餓そして死。この並びはどこかで聞いたことがある。なにかこう、宗教的な…。

 

 「…支配、戦争、飢餓、死……?あっ!!」

 

 ヨハネの黙示録、終末に訪れるという四人の騎士。白い馬、赤い馬、黒い馬そして青い馬。あまりにも壮大な話になって私はついていける自信がなかった。

 

 「そう、キリスト教でいう黙示録の四騎士だ」

 

 「でもそれって…例えば死の悪魔とか食べたら…」

 

 こんな普遍的な概念すら消せるほどチェンソーマンの能力は強力なのだろうか。

 

 「みんな死ななくなるだろうね。そして、それがマキマの狙いだ。彼女は死だとか戦争だとか飢餓だとかこの世に不要と思われるものを全て排除したいのだと思う」

 

 どうやら本当に消せるようだった。しかしそうすると、いよいよマキマの目的がわからない。

 

 「なんでそんなことを…」

 

 「マキマなりにだけどこの世の中を良くしたいんだろうね、そしてそれを全部自分で管理する。そうすればみんな幸福で平等で対等だ」

 

 支配の悪魔が支配する世界。全て平等で平和で死すら訪れない。人々は幸福になるために自我を放棄し、すべてマキマに委ねて生き続ける。さながら人類は全て赤子のようにマキマという母に抱かれて生きる…。

 

 「ディストピア…」

 

 ユートピアにおける理想、つまり人間を平等に幸福にすることが行き過ぎると、その人間の個性や意志を排除することになるのがディストピアだ。

 

 ソ連のザミャーチンという作家が書いた「われら」という小説がある。これはソ連では禁書だが、私はこれを海外で読んだことがある。ソ連の共産主義を批判した小説だが、まさにこのような世界を描いている。

 

 ソ連が目指した社会主義、共産主義はユートピアを目指したものだったが、実際にできた社会はその理想郷とは程遠いものであり、意志や個性を排除する巨大な管理社会だった。

 

 「確かにその社会は平和かも知れない。でも自由も意志もなくなったら、そんなのはもう人間じゃない。そんな人生はまっぴらごめんよ」

 

 私は長い間、自由も意志もないモルモットとして生きてきた。夫と子どもを得たことでその生き方は変わったが、失ったことにより私はまた人間をやめていた。

 

 デンジ君に出会って私はやっと人間に戻れたのだ。もう二度とモルモットや兵器に戻るつもりはない。

 

 「そうだね、そんなことになったら夢も見ることができなくなる。そしたらデンジとの契約が果たせなくなる。だからレゼちゃん、頑張って」

 

 「マキマを止めないといけない。ありがとうポチタ君、私頑張るからね」

 

 マキマがやろうとしていることも、ソ連がやっていることも、どちらも私たちの夢には邪魔だ。

 

 「じゃあね、レゼちゃん」

 

 すっとポチタ君の姿が消えていく。もう目覚める時間だ。マキマとの決戦も間近になるだろう。

 

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