レゼさんじゅうろくさい   作:大学鯖

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フィギュアスケートの金メダリストのアリサ・リウさんがポチタのティッシュケースを持ち込んでて改めてチェンソーマンすごいと思いました。


第五十話

 私はレゼ、16歳…。現在二道でバイト中に公安のみんながやってきた。

 

 そして、岸辺隊長がマスターと知り合いなことが発覚、地味にマスターの名前が倉橋だということも発覚。

 

 「倉橋、お前田舎に帰ったんじゃなかったのか?」

 

 「…いろいろあったんだよ。そういうお前はなんで公安にまだいるんだ?中国に行かなかったのか」

 

 「…うるせぇ」

 

 え?中国?もしかしてクァンシ?…と聞きたかったがとても聞ける雰囲気じゃなかった。

 

 「…と、まあ今はそれどころじゃねぇ。コイツだけなら避難させなくても大丈夫だ」

 

 「相変わらずひどいな」

 

 「サボってないで働け。まだ使えんだろ」

 

 「一応はね」

 

 その時、何かがこちらに来るのが分かった。

 かなりの数だ。7人…?いや他にもいる。

 

 「来たか」

 

 「そうだね」

 

 もう岸辺隊長もマスターも反応している。

 しかし、今にも襲撃が来そうな気配だったのに来なかった。

 その代わりにドアのベルが鳴った。入ってきたのは一人だけだった。

 

 「いらっしゃいませ」

 

 マスターが咄嗟に反応するが、その顔に驚きが隠せていなかった。

 

 そこで入ってきた人物は公安の制服を着た、ピンクの長い髪を後ろに結った美人だった。しかし、何よりも印象的だったのはその目だった。

 

 黄色の同心円状の、見れば深淵に引き込まれそうな瞳。

 

 初対面だったが一目でわかった。これがマキマ、魔女だ。間違いない。

 そして、もう一つわかった。これは人間じゃない、間違いなく悪魔だ。

 

 「みんな、だめじゃない、こんなところでサボってちゃ」

 

 そう言いながらマキマが席に着く。

 

 「倉橋君、ブレンドを一つ」

 

 「……かしこまりました」

 

 「……何しに来た?」

 

 すかさず岸辺隊長が問いかける。

 

 「みんな面白そうなことをしてるのに、私だけ仲間外れなのはどうかと思いませんか?」

 

 マキマが口元だけ笑って返す。

 

 「…さて、冗談はここまでです。このメンバーなら聞かせてもよいでしょう。ソ連が銃の悪魔をアメリカに放ちました。そして現在アメリカとソ連は戦争状態になっています」

 

 一息入れてから、マキマが言葉をつなぐ。

 

 「問題はここからです、ソ連からの刺客が日本に侵入しています。その刺客の目的はチェンソーマン、すなわちデンジ君です。というわけで私たち特異4課にそのソ連の刺客の排除命令が出ました。その刺客は逮捕する必要はなく殺害せよと」

 

 そしてマキマは私の方を向いてこう告げた。

 

 「初めまして、レゼさん。いや、ソ連の刺客『爆弾の悪魔』」

 

 「………」

 

 場内に緊張が走る…予定だったのだろう。マキマからすると衝撃の事実を暴露して動揺を誘う予定だったのかもしれない。

 

 だが、誰も反応していない。

 

 …それはそうだろう。全員の反応としては

 

 「「「「「知ってる」」」」」」

 

 だった。

 

 「……もしかして、みんな知ってる…と」

 

 マキマが呟いて、しばらくの間、沈黙が流れる。正直な話、誰もがみなこのような事態は想定していなかった。てっきりそのまま襲撃に来たものと思って身構えていたのだが、マキマの方もその動揺に付け込んでデンジ君を支配しようとしていたのかもしれない。

 

 「ブレンドおまちどう」

 

 マスターがある意味空気を読んでこの沈黙を破ってくれた。

 

 「……ありがとう」

 

 ここで一つ疑問が生じた。もしかしてマキマとソ連は連携していないのか?

 

 「…マキマ、一つ聞きたい」

 

 この疑問を聞く前に岸辺隊長が口をはさんできた。

 

 「何でしょう?」

 

 運ばれてきたコーヒーに口をつけながらマキマが答えた。

 

 「お前は何をしようとしている?」

 

 …確かに、みんな聞きたかったことだ。固唾を飲んで見守る中、マキマはコーヒーを一口飲んで口を開いた。

 

 「……私は悪魔から、1人でも多く人を救いたいだけです」

 

 「…銃の悪魔を日本に呼ぶこともか?」

 

 「ええ…。最終的には人は救われる。そのためには犠牲は必要です」

 

 岸辺隊長の問いにもマキマは顔色一つ変えずに答える。

 

 しかし、その救うという意味を私は知っていた。

 正確に言うとポチタ君に教えてもらっていた。

 しかし他のみんなはこれを知らない。

 だから今から知ってもらう必要がある。

 これは答え合わせだ。

 

 「マキマ、あなたの言う救いとは…何?」

 

 真正面からマキマの目を見据えて問いかける。

 吸い込まれそうな、心が囚われるような感覚。

 以前の私ではこの時点でマキマの虜にされていたかもしれない。しかし、今の私にはデンジ君がいる。デンジ君と一緒に自由に生きるという夢を持った私は、もはやモルモットではない。

 

 マキマはふと目を反らし、ため息をついてから答えた。

 

 「人は愚かなものです。悪魔に襲われるようなこの世の中で、今もこうして戦争をして自ら滅びの道を歩いている。また人は脆いものです。仮に戦争がなくても、飢饉や病などで死んでいく。私は人がそのような脅威を乗り越えて、より良く生きるにはどうすればよいか考えてみました。まず、人が愚かであるのはそのように脆い体で長く生きられないからです。だから、戦争や飢餓や死というものが無くなれば人はより上のステージに上がれるのです」

 

 …何を言ってるんだ?

 私以外の人間は呆気にとられていた。当然だ。この世から戦争や飢餓、ましてや死が無くなるなどありえない。

 

 しかし私はそれを為す術を知っている。

 それをマキマの口から聞きたい。

 

 「どうやって戦争や飢餓、ましてや死を無くすの?」

 

 マキマはその問いかけをした私の様子を見て若干の驚きがあったようだ。

 

 「……もしかして貴女はその方法を知っているのかな?」

 

 「…そうだと言ったら?」

 

 「だったら私のやりたいこともわかるのかな?」

 

 彼女はどこか期待を込めたような口ぶりで私に尋ねてきた。

 

 「…ええ、予想はついている。でも貴女の口から聞きたいの、マキマ」

 

 マキマは驚きを隠せない様子で、私を見てきた。

 それはまるで無垢な少女のような、いや、まるで夢を語る子どものような無邪気な顔で語り始めた。

 

 「そのカギはチェンソーマン。チェンソーマンが真の力を発揮するとき、人間は戦争や飢餓、死すらも超越できるの。チェンソーマンは地獄のヒーロー、彼が食べた悪魔はその名前の存在がこの世から消えてしまうのです。私はチェンソーマンを使ってより良い世界を作りたいのです」

 

 そこに居た人間は驚きを隠せなかった。マキマの目的がまさかそんなに壮大なものだったとは誰も気づかなかったのだ…私以外は。

 

 ここまでは完全にポチタ君の推測通りだった。

 

 「そう、マキマ。あなたの夢はわかったわ。とても素晴らしいことね。でも一つ教えてくれる?」

 

 私は表情を変えずに最後の答え合わせに出た。

 

 「貴女の目論見通り戦争、飢餓そして死が無くなったとして…そうすれば本当に人は高みに登れると思う?」

 

 この答えもある程度は予測できた。

 

 「もちろんそれだけでは人は変わらない。しかし、それを克服する手段はあります」

 

 「それは?」

 

 「私が人を導きます。人があらゆる苦しみや悲しみから逃れるには母たる存在の元で守られる必要があります。私はそんな人々を母として育て、慈しみ、守り抜きます」

 

 ここは結論は変わらないものの、想定した答えとは違っていた。私はマキマが支配の悪魔として己の力をもって支配することそのものが目的だと思っていた。

 

 しかし、マキマはどうやら本気で人を愛し、そして人を守るつもりのようだった。それは決して利己的なものではなく、むしろ崇高ともいえる思いだった。

 

 その志はとても尊いものだった。

 ただ、それはあくまでマキマの理想だった。そして最も疑問だった点を、ここだけはまだ分からない点を聞く。

 

 「マキマ…それはとても素晴らしい理想ね。でも最後に一つ教えて。真のチェンソーマンの力はどうやって呼び起こすの?」

 

 それを聞いたマキマの雰囲気が一変する。

 まるで夢を語る少女、あるいは聖女のような姿から一変して悪魔の本性を現したように見えた。

 

 「チェンソーマンは今はデンジ君と結びついています。デンジ君はチェンソーマンに夢を見せるという契約をしました。そして、その契約が生きている間はデンジ君とチェンソーマンは離れられません」

 

 そう、マキマは真のチェンソーマンと言った。それは間違いなくポチタ君のことだ。デンジ君の変身したチェンソーマンはポチタ君ではなく、あくまでデンジ君だが、マキマはポチタ君だけが欲しいのだ。マキマは言葉を続けた。

 

 

 「チェンソーマンはあなたも知っての通り不老不死です。つまり寿命で彼が死ぬことはないので、この契約はデンジ君が夢を見せる限り基本的に未来永劫継続します。ならばと私は考えました。つまり夢を見なければいいのだと」

 

 私は何か恐ろしいものに触れてしまった気がした。

 この女は悪魔だ、悪魔は人間の倫理観など全く持っていない。その悪魔が己の目的を達成するためだけに行動するのだ。どんな方法でそれを行うのか私は固唾を飲んでマキマの言葉を待った。

 

 しかし、それは思わぬ形で中断された。

 

 「全く無粋な…」

 

 マキマが愚痴のように呟いた。

 私も、そして他の何人かも感づいた。

 明らかに敵意を持ったものがこちらに向かってきている。

 

 「レゼさん、一つ提案があります」

 

 マキマが唐突にこちらに振ってきた。

 

 「何かしら?」

 

 「この無粋な侵略者どもを片付けるまで共闘しませんか?」

 

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