レゼさんじゅうろくさい   作:大学鯖

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チェンソーマン8回目の鑑賞に行ってきて、ファイナル特典を手に入れました。
花束を受け取り満面の笑みのレゼさんを見ながら映画のラストで……

ホントどうしてこうならなかった……




第五十二話

 私はレゼ、元ソ連のスパイ、現脱走兵。

 

 今、世界中から襲撃を受けているところ。

 ……ホント、冗談だったら良かったのに。

 

 幸い、アメリカからの刺客はパワーちゃんのお手柄?によって撃退できた。

 

 「ワシの手柄じゃ!!」

 

 ……あれ、本物の黒瀬って人だったら処刑されてたよ。

 

 ていうか、デンジ君撥ねたのは忘れてないからあとでお仕置きね。

 

 デンジ君はさすがに今動けないので二道の中で休ませている。

 

 現在、暴力さんがコベニを連れてアメリカの刺客を追っている。アメリカの刺客は皮の悪魔と契約していて、他人に成りすますことができる。そうなると発見は容易ではない。

 

 「ただいまー!」

 

 そう思っていたが、暴力さんがあっさり2人を引きずってきた。既にこと切れている。

 

 「早かったね」

 

 マキマが言うが、さも当然という顔をしている。

 

 「匂い一緒だからね、簡単だったよ」

 

 そう、魔人も嗅覚が鋭いのでこの死体と近い匂いを追ったらしい。

 そして首尾よく2人を見つけ出して始末したらしい。

 この3兄弟を知る人間で首実検してみたが、確かに本人だった。

 

 とりあえず、これでアメリカはなんとかなった。

 …と安心する暇もなく、マキマの電話が鳴った。

 

 「はい……わかりました。至急2課に応援要請。そちらはそのまま迎撃しつつ2課と合流してください。民間人の避難は……わかりました」

 

 電話を切ってマキマがこちらに向かって告げた。

 

 「サンタクロースの人形がこちらに大挙して押しかけてきます。現在いたるところに人形が発生しており岸辺隊長以下が対処に当たっています」

 

 窓の外を見ると、道路の向こうから大勢の人形が片腕を刃物にしてわらわらとこちらに向かってくるのが見えた。

 

 幸い人形の足は遅く、こちらに来るにはまだ時間がかかりそうだけど、かなりの数だ。

 

 「あれがサンタクロースの力…」

 

 「そう、サンタクロースがもつ人形の悪魔の力。触れた人間を人形に変えてしまう。されに恐ろしいのは、その人形が人間に触れると触られた人間も人形になってしまう。いわゆるゾンビ映画みたいなことになってしまう」

 

 マキマが映画になぞらえて解説する。

 そんなものが大量に発生して、しかも増え続ける。このままだとどうにもならない。

 

 「それでどうするの?」

 

 「まず人形を減らさないとどうにもならない。その後サンタクロース本体を叩きます。倉橋君、出番です」

 

 「あーあ、本当にやんなきゃダメ?」

 

 「それともレゼさんに頼んだほうがいいですか?この店が木っ端微塵になりますが」

 

 失礼な!人を破壊魔みたいに…と思ったけど、私が迎撃するならどう考えてもマキマの言った通りにしかならないので、反論できなかった。

 

 そして、これはごく個人的な興味だが、マスターの力はぜひ見ておきたかった。正直マスターは敵ではないはずだけども、あまりに背景が不明すぎる。元公安は間違いないだろうけど、それだけでは安心できない。万が一ソ連とつながってた場合はどうしようもなくなる。

 

 そんなことを考えながらマスターの方を見ると、マスターは何やら古い本を取り出して広げた。

 

 「マキマ、後始末は頼んだよ」

 

 え…何の後始末?と聞く間もなくマスターが力を発動した。

 

 「鸚鵡返文武二道」

 

 すると本の中から鎧兜の武者が現れて、さらに槍やら弓やらをもった人がたくさん出てきた。

 

 「え……!?何これ!?」

 

 「これが倉橋君の力の一端。彼は風刺の悪魔と契約している」

 

 マキマが解説を始めた。

 

 「風刺の悪魔?」

 

 「そう、江戸時代の日本では民衆は政府の権力に対して、風刺で対抗した。ある意味成熟した文化だったんだ。倉橋君はそんな風刺作品を操ることができるんだ。ある意味現実の不条理を茶化すことができるんだよ」

 

 ん?それって……支配に対抗するってことじゃん。つまり、対マキマ特化の能力じゃないの?

 

 「そしてこの『鸚鵡返文武二道』は恋川春町という江戸時代の作家が書いたもので、当時の政府の方針を皮肉ったものなんだけど…とりあえず大軍が呼び出せるからこういう場面ではうってつけなんだ」

 

 「…でもそれって、全然風刺とか関係なくない?」

 

 「…この本はね、堕落した人々に喝を入れて文武両道を鍛えなおすという当時の政策を皮肉ったものなんだ。そのために昔のすごい有名な武将を呼び出して人々を鍛えていくんだけど……」

 

 そう、私はこの本の内容を知らないので単純に軍勢召喚できるすごい能力だと思ってたけど、どうもそれだけではなさそうな雰囲気だ。

 

 今のところ、呼び出された大勢の人たちは槍や弓やらで順調に人形を倒しているように見える。

 逆に人形に触れられても本に戻るだけで人形にはならないようだった。

 なるほど、これは対サンタクロースにもってこいだと思った。

 これに何か問題でも?と思っていると、マスターが渋い顔をしている。

 

 「そろそろ始まるかな…」

 

 マスターがそうつぶやいたころ、人々の行動が目に見えておかしくなってきた。

 ターゲットとなる人形がほとんど姿を消したころ、何故か民間人に襲い掛かろうとしたり、弓を全然関係のないところに打ち出す奴が現れ始めた。

 

 また、こっちに明らかに発情した様子で来る奴らもいた。

 

 「マスター、これどうなってんの!?」

 

 襲い掛かってきたバカをぶん殴ると、それは本の中に消えていった。パワーちゃんも嬉々として切り刻んでは血を飲もうとしていたが、その前に消えていくようだ。 

 

 「…人々は最初は文武両道を目指して頑張るんだけど、そのうち飽きて全然見当違いなことをやり始めるんだ。江戸時代も幕府の命令で文武を奨励したんだけど、みんな言うこと聞かないんだ。要するに幕府の政策を茶化した本なんだよ。刀の訓練だって言って辻斬りしたり、弓の訓練だって言って家に矢を撃ったり、挙句の果てに馬の訓練だって女に乗る奴も…」

 

 「ひぃぃぃぃ!!助けてくださぁぁぁい!!」

 

 外を見るとコベニが大勢の男に乗っかられそうになっては暴力さんが片っ端からぶっ飛ばしている。

 

 「マスター!これどうにかなんないの!?」

 

 「……うん、だから使いたくなかったんだ…」

 

 …酷い能力だと思った。

 

 「ある程度時間が経てば、なぜかみんな凧揚げを始めてそれから鳳凰が出てきたら終わりになるんだけど…」

 

 「……なんじゃそりゃ」

 

 本当に訳が分からなかった。マスター曰く元々の「鸚鵡返文武二道」という本がそういうストーリーだからだそうだけど、これは使いどころが難しすぎる。

 

 「今回は待ってられなさそうだね、マキマ、頼めるかい」

 

 「そうですね、そろそろ止めましょうか」

 

 そう言ってマキマが軍勢に向かって一言

 

 「これは命令です。戻りなさい」

 

 すると、暴れていた人たちが突然おとなしくなり次々と本に吸い込まれていった。

 

 ……最初っからそうして欲しかった。

 

 「……もしマキマがいなかったらどうしてたんですか?」

 

 「その時はレゼちゃんに任せてたよ」

 

 「…お店壊れちゃいますよ」

 

 「その時は給料から差し引いておくからね」

 

 「……ケチケチケチケチ」

 

 久しぶりに出たマスターへの悪態だった。

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