レゼさんじゅうろくさい   作:大学鯖

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まさかのチェンソーマン最終回を受けてしばらく茫然としておりましたが、この話は本編と完全にパラレルワールドですので最後まで進めていきたいと思います。

お付き合いいただければ幸いです。


第五十三話

 私はレゼ、ソ連の脱走兵。

 

 とりあえずサンタクロースの放った人形は撃破した。

 

 一段落したところで今いるメンバーは二道に戻ってきた。

 今ここにいるのは、デンジ君、マスター、マキマ、暴力さん、コベニ、私の6人だ。

 とりあえずデンジ君を守るにはほぼ最強に近い布陣だと言える。

 

 と言ってる間に裏口に反応があった。これはかなり強敵の気配がする。

 しかもこれはどこかで覚えがあるような…。

 

 窓の隙間から覗いてみて相手の姿を捉えたとき、思わず息を飲んだ。

 

 「アイツは……」

 

 そう、そこに居たのはサンタクロースと言われるドイツのデビルハンターである老人だった。しかも、その周りには子どもと思しき4つの死体があった。しかし……。

 

 「この気配はあの老人じゃない。もっと別の…」

 

 そちら側に感じた気配は一人のものだった。なのに、その目の前の老人の気配ではなかった、いや、もっとはっきり言えば、その老人は気配がなかった。

 

 それでも私はその老人から目を離せなかった。

 いや、もっと正確に言えばその老人の背後、姿を捉えることはできないが何か強大な気配がある。私の感覚で言えば老人は囮、というか傀儡だ。正確にはこの老人の向こう側に恐るべき敵が居て、私はその存在から目を離せないのだった。

 

 ガッシャーン!!!

 

 だからこそ私は背後からガラス窓を突き破ってきた男を察知できなかった。

 不思議なことに私以外にも手練れはいるにも関わらず誰も察知できなかった。

 

 それは金髪の若い男だった。私はこの男も見たことがあった。

 

 「こいつ、確か…トーリカとかいうデビルハンターだ」

 

 ソ連で次世代のデビルハンターとして教官が付きっ切りで指導していた男だった。そして、それが先ほどの強大な気配の主の答え合わせだった。

 

 「……教官か」

 

 現状、一番来てほしくない相手だった。ソ連のデビルハンターの教官だった。しかし、病にかかり職を辞してそのトーリカという男を指導しつつ療養していたはずだった。

 

 すると、突然サンタクロースが自分の腕を刃物に変えて自分の胸に突き立てた!

 

 「…!!何を!?」

 

 サンタクロースはブツブツと何か呟いている。

 

 「…………よ、ワタシの心臓…ど愛する子供たちを捧げまズ。ぞの代わりに…」

 

 「この喫茶店にいるすべての生物を……」

 

 「地獄へ招いてください」

 

 サンタクロースの言葉が途切れそうになった時、教官がそのあとを引き継いだ。

 老人が崩れ落ちるように倒れた。まるで糸が切れた人形のように……

 

 「……人形!? しまった!!」

 

 今更ながらサンタクロースの正体に気が付いた。人形の悪魔、触れたものを人形に変える能力をもつ悪魔。この悪魔と契約していた人間に心当たりがあった。

 

 そして、あのサンタクロースと呼ばれた老人も、このトーリカという男も、すべて傀儡だ。ならばこれを操るものこそがサンタクロースの本体だ。

 

 すなわち…

 

「……あの女!」

 

 あの教官こそがサンタクロースであり、ソ連の刺客だった。

 そして、その目的はチェンソーマンではなく…恐らくは…

 

 「私と…マキマの抹殺か…」

 

 そうして私たちは暗闇に飲み込まれた。

 

 気が付くと私たちはまだ暗闇の中にいた。

 ただし、ここは二道ではない。

 暗闇に目が慣れると、異様な光景が目の前に広がった。

 一見草原のように見えるが、何かが違う。

 

 よく見ると草原のあちこちに人間の指らしきものが転がっている。

 そして何よりも異様なのは空だった。

 

 無数の扉が空を埋め尽くしていた。

 その扉は一つ一つ趣きが異なっていた。

 

 「デンジ君!?」

 

 私はデンジ君を探すと、彼は少し離れたところに横たわっていた。

 幸いマスターが傍にいてくれているので、すぐに問題は起こらないだろう。

 マスターは驚いてはいるが、歴戦の強者らしく構えている。

 

 その向こうでコベニちゃんはオロオロしながら怯えている。

 暴力さんはいつもお気楽な彼には珍しく緊張し、どこか怯えているように見えた。彼はここがどこだかわかっているのかもしれない。

 

 そして、先ほど乱入してきたトーリカという男はここで何かしようとしているようだが、今は動いていない。

 

 マキマは冷静に周囲を見てから空を見上げている。

 

 「なるほど…地獄ですか、ここは」

 

 どうやら比喩ではなく文字通り我々のいる場所は地獄らしい。

 そして、地獄と言えば悪魔がいる。

 

 天を覆う無数の扉のうちの一つが開いた。

 

 「来ますよ、とても厄介なものが」

 

 マキマがいつになく警戒している。

 私には爆弾の悪魔の記憶がないのでよく分からないが、何かとてつもなく強大なものが来ているのはわかった。

 

 すると、開いた扉の中から黒い粘液の塊のようなものが落ちてきた。

 その途端に辺りの空気が一変し、周りを覆う闇がさらに濃くなった。

 

 「闇の悪魔」

 

 マキマが呟く。

 

 するとトーリカが闇の悪魔に向かって叫びだした。

 

 「私は人形の悪魔です。契約通りチェンソーを連れて来ました。私にどうかマキマを殺す力をください」

 

 マキマを殺す…。

 どうやらそれがトーリカの、いやもっと言えばソ連の目的だった。

 逆にマキマさえ仕留めれば私を含むあとのものはどうとでもできるということなのだろう。

 

 「なるほど、それが目的ですか」

 

 マキマはソ連の意図に気づいたらしい。

 私はマキマとソ連が組んでいるのかと思っていたが、それはどうやら違っていたようだ。

 ソ連とマキマも呉越同舟。

 最終的にマキマを闇の悪魔の力で葬り去れば、あとの者は地獄で殺されるだろうという意図を持っていたようだ。

 

 マキマはこの期に及んでも冷静だった。

 

 「皆さん、決してあれに敵意を向けないように。さもなければ死にます」

 

 即座に全員に告げると

 

 「じゃあさっさと帰りましょう」

 

 と言うより早く、いつの間にか片手に長剣を持っていたマキマは無造作にトーリカの首を刎ねた。

 

 「え!?」

 

 私も驚いたが、首を刎ねられたトーリカも驚いていた。

 しかし、さらに驚くべきはその後だった。

 マキマは無造作にその刎ねた首に手を当てると

 

 「地獄の悪魔よ」

 

 と呟いた?いや、正確にはトーリカの生首がそう呟いた。

 

 「わたしのすべてをささげます、なのでどうか…私たちをお帰しください」

 

 そう言い終わる直前に、巨大な剣がマキマを貫いた。

 それが、私たちが地獄で見た最後の光景だった。

 

 気が付くと私たちは二道の中にいた。

 地獄から我々がほぼ無傷で生還できたのはまさに奇跡だろう。

 

 しかし、高位の悪魔でもあるマキマが早急な撤退を選択するしかなかったあの闇の悪魔とは何者だろうか。

 また、その力の一端をもしかするとあの女が得た可能性がある。

 そうだとすると、むしろここからが本番だろう。

 

 残念ながらその懸念は当たっていた。

 

 教官であったものがこちらに近づいてくる。

 

 闇の悪魔の力を取り入れたトーリカの師匠である教官、いや、もっと言えば真のサンタクロースは闇の悪魔の力を得て、もう化け物としか呼べない姿になっていた。

 

 腕が八本ある二足歩行をする人形、正確には元人間であった人形を材料に組み立てたゴーレムのような姿、それが今のサンタクロースの姿であった。

 

 

 

 

 

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