レゼさんじゅうろくさい   作:大学鯖

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KICK BACKの歌詞が最終回に刺さりすぎてて米津さんが心底恐ろしいと思いました。




第五十六話

 私はレゼ、今、彼氏が火だるまになった。

 

 って言うとなんか悲劇っぽいけど、実際はむしろギャグっぽい。

 確かに闇には光が効くんだけど、普通自分に着火するかな……。

 

 「アチャァアア!!アアチャアチャ!!アチャアチャ!!」

 

 サンタクロースもあまりの熱さに訳わかんなくなって絶叫している。

 …ブルース・リーっぽい?

 

 いや、バカなこと考えるのはよそう。

 デンジ君がサンタクロースに殴り飛ばされた。

 

 「…闇の力で知見を深めて尚、馬鹿の行動は予測できません」

 

 …そうなのだ、これがデンジ君の強みだ。

 予測の難しさ、意外性。

 頭のネジが外れているということはこういう場面で生きてくる。

 

 って、デンジ君まだ火だるまだけど大丈夫かな?

 よく見ると、いつの間にかサンタクロースがチェーンに絡まっていた。

 デンジ君が先ほど仕掛けたらしい。

 

 「…馬鹿じゃねぇ!こちとら毎日教育テレビみてんだぜ!」

 

 そう言ってチェーンを巻き取りサンタクロースに突進しつつ、頭のチェンソーでサンタクロースの喉を突き破った。

 

 …いや、教育テレビでは自分にガソリンかけたりは教えてないんじゃないかな。

 

 しかし、彼の戦闘IQはすごい。

 ちゃんとこの前の私との模擬戦を覚えている。

 しかもチェーンで絡めるだけでなく、ちゃんとチェンソーで追撃を入れている。

 

 あれ、私の時はやらなかったな…。

 もしやられてたら、私の負けもあり得た。

 …そう、実は私の全身は爆弾やミサイルとして切り離せるが、何故か頭だけはできないのだ。

 (あれでもまだ手加減してたのか…思ったより強いな、デンジ君)

 

 「無駄なことです、私は痛みを分散できます」

 

 サンタクロースが喉をチェンソーで裂かれながら答える。

 なるほど、サンタクロースは群体のようなもので、本体を攻撃してもダメージを分体へ押し付けられるのか。しかも本体は闇の悪魔の力で回復する。

 

 対抗策が無ければ不死身だっただろう。

 しかし、そのタネは割れている。

 デンジ君もそれに気づいているようだ。

 

 「テメ…エ、体ん治り遅くなってるぜ…!光ん力でなあ!」

 

 図星を突かれて怒ったのかサンタクロースは強引にデンジ君を殴り飛ばし、さらにそこへ人形を追撃させた。

 

 「あがアアアアあア!?」

 

 デンジ君が人形に囲まれて袋叩きにされている。

 悪いけど今がチャンスだ。

 

 サンタクロースはデンジ君の固執するあまりこちらへの意識が無くなっている。

 

 「食らえ、光の力!!」

 

 サンタクロースからデンジ君が離れた瞬間、私は特殊な爆弾を叩きこむ。

 それはサンタクロースの不意を突いて直撃した。

 

 カッ!!!

 

 その瞬間、強烈な光が辺り一面を包む。

 そう、これが私の対抗策。

 あらゆる爆弾を作れる私は、当然この爆弾も持っていた。

 閃光弾、フラッシュバンという非殺傷兵器だ。

 通常は相手を殺傷しないために使うが、この場面では特効だ。

 闇の悪魔相手なら、より効くだろう。

 

 「ぐわぁっぁ!!!」

 

 次の瞬間、私はすでにサンタクロースの懐に飛び込んでその胴体を貫いていた。

 その勢いのままラッシュを仕掛ける。

 

 顔面と胴体に数えきれない程の連打を浴びせる。

 ただでさえ視界を奪うための兵器だ。

 まして闇の悪魔ならよりダメージも大きくなるだろう。

 

 サンタクロースの体がひび割れていく。

 回復しようとしているが思うようにいかないみたいだ。

 

 閃光弾の光が消える頃合いに後方に飛んだ。

 

 「お…おのれ…!!」

 

 サンタクロースがこちらに向かった瞬間に

 

 「バン!」

 

 打撃で埋め込んだ爆弾を一斉に起爆させる。

 

 「ギャアアアア!!!」

 

 轟音と激しい閃光と共にサンタクロースの体が爆発四散する。

 

 とりあえずどのくらい耐久力があるかわからないけど、これでしばらく動けないはずだ。

 

 「デンジ君!!」

 

 人形に囲まれていたデンジ君の方を見ると、なんと人形に噛り付いて血をすすっていた。

 

 「アアアア!光の力で回復ぅ!」

 

 なんというか、すごい。

 まさか人形から血が出るとは思わなかった。

 というか、さっきから壊してたけど血が出なかったはずだ。

 やっぱりこの常識に捉われないのがデンジ君だ。

 

 サンタクロースはバラバラの体を必死で繋げて逃亡を図ろうとしていた。

 

 すると人形が一斉にサンタクロースの元へ走ってきた。

 サンタクロースはそれらをつなぎ合わせていびつな形で再生しようとしていた。

 

 光や爆発では殺すに至らないようだ。

 やっぱりデンジ君のように火で燃やすのが正解だったのか。すごい戦闘センスだ。何が正しいか直感で選んでいる。

 

 なら、違う弾の方が有効か。

 

 そう思った時に再びチェーンがサンタクロースに絡まっていた。

 どうやらデンジ君がサンタクロースのところに行った人形に仕掛けていたらしい。

 

 「引き寄せられる…バケモノ!」

 

 サンタクロースが今までの鉄面皮を捨てて恐怖の表情を見せていた。

 

 流石に今回はこちらに隙を見せないように、人形の一団を送り込んできた。

 

 「ボムを止めなさい!」

 

 しかしサンタクロースは冷静ではないようだ。

 

 「私にそれは悪手だよ」

 

 私は指を鳴らし、人形に火花を送り込む。

 次の瞬間爆発が起こり、人形は木っ端みじんになっていた。

 

 「おおおおりゃああああ!!」

 

 デンジ君が雄たけびをあげながらサンタクロースへ突進していった。

 これは仕留められそうだ…。

 

 と思った瞬間

 

 キキッーィィ!!ドカン!!

 

 …見覚えのある車がデンジ君を跳ね飛ばした。

 その後ろからコベニちゃんが人間離れしたスピードで走ってくる。

 

 「うわーん!返して…ああぁぁ!!また壊したぁぁ!!」

 

 そう、ここまで来て私は完全に見落としていた。

 

 地獄から戻ってきてからパワーちゃんの姿が見えなかったことを…・

 

 多分だけど、地獄で怖気づいたパワーちゃんが戻ってからコベニちゃんの車で逃走していたのだろうが、無茶苦茶な運転と何も考えてない鳥頭のせいでここに戻ってきたのだろう。

 

 「Блядь!!(Fxxk!!)」

 

 ひとりでにロシア語で悪態をついていた。

 そうしないとあの車ごとパワーのバカを爆破してしまいそうだった。

 

 とりあえずあのバカは後で〆るとして、デンジ君を再生しないといけない。

 幸いサンタクロースは私の移動速度についてこれなかったので、無事デンジ君の元にたどり着いた。

 デンジ君は火だるま状態だったがそんなことを気にしてられなかった。

 私は自分の手が燃えるのも構わず、デンジ君のスターターを吹かした。

 

 ブゥゥゥゥンン!!

 

 ガバッ!!

 

 デンジ君が起き上がった。

 とりあえず蘇生は成功だ。

 

 「てめえ!パワ子!!!またやりやがったな!!」

 

 「ワシではない、そこの女がやったのじゃ!」

 

 とコベニを指さす。

 私はパワーちゃんの首根っこを突かんで片手で吊るし上げた。

 再生するならこの場で殺してるところだった。

 

 「……パワーちゃん、いい加減にして」

 

 なるべくフラットに感情を出さずに言ったつもりだが、そんな心境を反映してたのか地獄の底から聞こえる声のようだったらしい。なぜかデンジ君もコベニちゃんも怯えていた。

 

 「ヒッひいいいい、すまん、すまんのじゃ!なんでもする!なんでもするからぁ!」

 

 「なんでも……ね」

 

 ろくでもないアイデアが思いついた。

 これならサンタクロースを仕留められるだろう。

 私もだいぶデンジ君に毒されたらしい。

 

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