星の子   作:猫太鼓

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密着!?星野家の夏休み!!

 

──夏休み特番・星野家ロケ、開幕!

 

朝の柔らかな光が差し込むキッチン。

アイは三角巾をきゅっと締め、鼻歌まじりに弁当作りの真っ最中だった。包丁の音が心地よくトントンと響き、油の中ではカラリと唐揚げが揚がる。揚げたてをつまんでふぅふぅと冷ましながら並べるアイの横顔は、本当に楽しそうだった。

 

「アイの唐揚げ、美味しいんだよねぇ……あ〜食べたい……今晩はゲストナレーターの有馬かなです。」画面下のワイプ内でぺこりとお辞儀をするかな。

 

一方その頃、リビングではアクアが静かに新聞を広げていた。

窓から差し込む朝日を背にゆったりと新聞を読む姿は、どう見ても中学一年生には見えない。落ち着いた視線でページをめくる度、番組スタッフも思わず「貫禄がある……」と小声で漏らしたほどだ。

 

「……いや中1じゃないでしょ絶対。ていうか普通にイケメン……」

 

アイがリビングへ顔を出した。

 

「アクア、ルビー起こしてきて。そろそろ撮影始めちゃうから」

 

アクアは新聞を畳んで静かに立ち上がり、ルビーの部屋へ向かう。

カメラは部屋の外に留まり、扉越しの音声だけが響く。

 

「ルビー、いつまで寝てる? 撮影始まってるぞ」

 

布団に沈み込んだルビーのくぐもった声が返る。

 

「……あと……五分……」

 

アクアは無言で布団を剥がす音を立てた。

 

「ひゃっ……! なに、なに!? あ、お兄ちゃん!? やだ〜!!」

 

がさがさと動く音。

次の瞬間、アクアが扉を押し出されるようにして廊下へ出された。

 

「支度するから外いて! 海、海! やったぁー!!」

 

扉がバタンと閉まる。

 

アクアは半眼で疲れた表情を見せたが、それでもどこか優しげな色が混じっていた。

 

「朝から大変ですね〜。……いや、その困り顔もかっこ……さ、さあ出発です!」

 

弁当・水着・タオルが詰め込まれた大きなクーラーボックスをスタッフが車へ積み込む。

星野家は、ロケ用に内装を改装した大きなワゴン車に乗り込み、海へ出発した。

 

アイとルビーは車が動き出した瞬間からテンションMAXだった。

 

「海楽しみ〜! 泳ぐの久しぶりー!」

 

「ママ、この浮き輪かわいいね! 一緒に遊ぼう!」

 

車内は笑い声と弁当のいい匂いとで満ちていた。

アクアは窓の外を見ながら溜息をついたが、隣からアイとルビーの声が聞こえるたびに、その目元は少しだけ柔らかくなる。

 

「ほらルビー、シートベルト! 浮き輪ふくらますのは海着いてからな」

 

「えへへ、はーい!」

 

「優しい……。ていうかアクアだけ“保護者”なんだよなぁ……」

 

山道を抜けて視界が開けると、陽にきらめく海が広がった。

 

「わぁ〜〜!! 海だぁ!!」

 

アイが、子供みたいに身を乗り出して声を上げた。

ルビーもきゃあきゃあと嬉しさをはしゃがせ、アクアは深めの息をつきながらも、その表情には確かな“嬉しさ”が浮かんでいた。

 

家族三人、海の匂いに包まれながら車を降りる。

照りつける光と、波の音と、賑やかさ。

──星野家の夏が、ここから始まる。

 

「さてさて! お騒がせな一家ですが、今回はどんな夏の思い出を作るんでしょうか……いいなぁ……私も行きたかった……




日常回は後一話
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