会場は、熱を帯びたざわめきに満ちていた。
B小町・新曲発売記念握手会。七人編成となったメンバーが横一列に並び、ファン一人ひとりと手を交わしていく。
――だが、視線の流れは明確だった。
中央。
アイの前だけ、列の密度が明らかに違う。
「ね、見て見て!」
ルビーが背伸びして、胸を張る。
「やっぱりママが一番人気!」
「……フン」
アクアは腕を組み、冷めた目で列を見渡す。
「当然だろ。
あの女は、人を惹きつけるようにできている」
「なにそれ、素直じゃないなあ」
「うるさい」
そう言いながらも、アクアの視線はアイから離れていなかった。
ファンの笑顔、アイの微笑み、和やかな空気――
その歪みに、最初に気づいたのは彼だった。
列の中ほど。
一人の男。
体がわずかに前のめりで、呼吸が荒い。
笑っているが、目が笑っていない。
(……来るな)
次の瞬間。
「アイィィ!!」
男が柵を蹴り、列を突き破った。
悲鳴が上がる。
スタッフが動くが、距離がある。
人が多すぎる。
だが、アクアは一歩も動かない。
「……やれやれだぜ」
低く呟き――
「スタープラチナ」
その名を呼んだ瞬間――
アクアの頭上に、青紫の人型の影が現れた。
誰にも見えない。
だが確かに“そこ”にある。
スタープラチナは、アクアの背後ではなく、頭上高くに浮かび、
会場全体を俯瞰する角度を取る。
(人が多すぎる……
直線じゃ、巻き込む)
一瞬で計算が走る。
跳弾。
角度。
衝突点。
スタープラチナの指先が、角度をつけてしなる。
パァン!!
最初のパチンコ玉が、空中を鋭角に曲がり、
人の隙間を縫って飛んだ。
――膝。
「がッ!?」
男の膝が内側から砕け、体勢が崩れる。
前に踏み出す力が失われ、身体が大きく泳いだ。
その一瞬を、逃さない。
スタープラチナは、さらに角度を修正する。
上から、斜め下へ。
パパン!!
二発目が手首を撃ち抜く。
掴もうとした指がとまり、力が抜け落ちる。
「な、なんだこ――」
言葉の途中。
スタープラチナの拳が、わずかに傾く。
パァン!!
三発目。
顎。
衝撃が脳を揺らし、意識が断ち切られる。
男はそのまま、糸の切れた人形のように崩れ落ちた。
――他の誰にも、当たっていない。
悲鳴。
ざわめき。
「倒れた!?」
「興奮しすぎだ!」
「救護班!」
表向きには、暴走したファンが転倒し気絶したようにしか見えない。
アイは一瞬だけ視線を伏せ、
すぐにいつもの笑顔に戻った。
「大丈夫ですよー。
皆さん、落ち着いてくださいねぇ」
その声に、空気が戻っていく。
⸻
舞台裏。
拘束された男を見て、ミヤコは言葉を失った。
「……膝、手、顎……
全部、骨が……」
「転倒じゃ、こうはなりませんよね……」とスタッフ。
ミヤコは、ゆっくりアクアを見る。
「……アクアくん?」
「知らねえな」
アクアは肩をすくめる。
「自分で派手に転んだんだろ」
その横で、ルビーが元気よく言った。
「天罰だよ!」
「て、天罰……?」
「
ばちーんって!」
無邪気な笑顔。
この兄妹だけは、裏切ってはいけない。
ミヤコは、背筋が凍るのを感じた。
アクアは視線をステージへ戻す。
七人の中心で、変わらず輝くアイ。
誰にも聞こえない声で、呟く。
「手ェ出す相手を間違えたな」
ルビーはアイに向かって手を振った。
「
アイは優しく微笑み返す。
光は、今日も守られた。
静かに。確実に。
本編かけ足だったんで ⋯⋯
B小町って何人いるのかよくわかりません ⋯⋯ほぼ捏造です