星の子   作:猫太鼓

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外伝 歴史は語る

 

──後世の史家は、この混乱をこう呼ぶ。

**「星野三国時代」**と。

 

アイが子を持つ母であったことを世に明かしたその日、

芸能界の地図は一変し、ファンダムの勢力図は三つに割れた。

 

まず、最も強大にして古き力、

愛子(アイ)の民:アイ推し軍】。

“永遠の推し”として数多の時代を照らした女王の軍勢。

古参は山の如く揺るがず、

新参は海の如く寄せては返す。

母となり、真実を明かしてなお、

その魅力はいっそう深みを増し――

 

彼らは長年の信仰にも似た応援を貫き、突然の告白にも揺らぐことなく、

むしろ「推しの幸せ、これぞ(まこと)の勝利」と

掲げて結束を固めた。

 

しかし彼らの中にも動揺はあった。

「子持ちアイ」を受け入れられぬ者が離反し、

後に述べる他勢力へと流れ込むのである。

 

次に頭角を現したのが

**【蒼き星の徒:アクア推し軍】**である。

主君アクアがあの“アイの子”であったと知った時、彼らは誇りと衝撃の狭間に揺れた。

「血統こそ至高」と歓声を上げる者、

「母の影を背負わせるな」と憂う者、

意見は割れ、軍は一時混迷を極めた。

だが、アクション俳優としての卓越した運動能力、モデルとしての気品を兼ね備え、その瞳に宿る覚悟──まるで冷徹なる将軍の(かお)に惹かれる者は多く、勢力はやがて大きな“国”として整えられていく。

 

最後に、もっとも跳ねる力を持ったのが

【紅き宝石の衆:ルビー推し軍】。

スター誕生の物語を純粋に夢見る者たちであり、

血筋の暴露を逆に追い風として取り込み、「天賦の才を持つ正統後継者」としてルビーを祭り上げた。

 

歌えば人の心を掴み、

そのあまりの輝きに多くの者が思わず顔を覆う――

 

“共感性羞恥の歌姫”。

 

だがそれは恥ではない、彼女の煌めきに直視が追いつかぬが故。

その勢いは若き呉への孫権の台頭にも喩えられる。

 

──こうして三軍は並び立ち、

本来ならば喜びを分かち合うはずの“星野の民”は

天下三分の計のように割れてしまった。

 

さらに事態は複雑である。

 

アイ推しの一部がアクア軍へ投じ、

アクア推しの一部がルビー軍と手を結び、

ルビー推しの狂信派がアイ軍を“古き王朝”と揶揄する。

 

裏切り、寝返り、同盟、密約──

かつて三国が覇権を争った乱世の如し。

 

しかし歴史家はこう締めくくる。

 

「三国分立は乱世にあらず。

 三つの光が交わり、星野家という大陸を照らす、新たなる夜明けである」

 

誰が主で誰が臣かも曖昧。

だが一つだけ確かなことはある。

 

三国いずれの民も、

その胸の奥底にはただ一つ、同じ願いを抱いていた。

 

──「あの三人が幸せであれ」と。




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