スタンド使いはお互いに惹かれ合う。
この世界に転生してからも、何度となく耳の奥にこびりついて離れない言葉だった。
アクアは街灯に照らされた夜道の真ん中で、微動だにせず周囲の空気を読む。
一見すれば、どこにでもいる学生が深夜の道端で立ち尽くしているだけ――だが、その瞳だけは違った。
研ぎ澄まされた鋼のように静まり返り、どこか“死線”に慣れた者の光を宿していた。
きっかけは、ほんの些細な一言。
「アイス食べたい!」
ルビーのやつは無邪気に言ったが、時間はすでに深夜。
「明日まで我慢しろ」と言ったが、泣きそうな顔で食い下がられたら仕方がない。
夜中に一人歩かせるわけにもいかず、アクアが買いに来たのだ。
――家から少し離れたコンビニ。そこにしかルビーの好きなアイスは置いてない。
面倒くさそうに腰を上げた兄に、ルビーは手を振って言った。
「いつものやつね〜!」
その“軽い”声とは裏腹に、道の途中でアクアの感覚は重く張りつめる。
工事現場。
照明だけが眩しく灯り、だが――肝心の作業員が、いない。
生暖かい風。
鉄と血が混ざった臭い。
嫌な記憶が、胸の奥をひと撫でしていく。
「……血の臭いだな。」
視線をずらすと、倒れ込んだ作業員がいた。
胸に深い裂傷。ピクリとも動かない。
助けようと一歩踏み込んだ瞬間――
“ソレ”がこちらを見た。
血濡れの作業員の死体にまとわりつき、形容しがたい影が震えていた。
目は無いはずなのに、アクアを見ている。
音もなく、ぬるりと持ち上がったその瞬間――
“来るッ!”
咄嗟に身を引き、同時に己の内側へ意識を沈める。
空気が震え、背後に圧の塊が立ち上る。
“スタープラチナ”――世界最速の精密動作スタンド。
しかし、目の前の“ナニカ”もまた反応した。
飛びかかる影を“迎撃”したはずの拳が――空を切った。
速い。
信じがたいほど速い。
アクアの口から、低く鋭い息が漏れる。
この世界に転生してから怪異と呼ぶべきものは何度か見た。
だが、スタンド使い級の“速度”を持って襲い掛かってきたのは、こいつが初めてだ。
「……てめぇ、ただの化けモンじゃねぇな。」
地面を滑るように影が移動し、こちらへ跳び込む。
アクアは一歩も動かず、ただ静かに息を吸った。
「――“
世界が凍りつく。風は止まり、影の爪は空の途中で止まった。
その一瞬の静寂を破るように、アクアの身体が前へ動く。
オラオラオラオラオラッ!!
渾身のラッシュが影を粉砕する。
しかし――時間が動き出した瞬間、奴は再生した。
ほんの少し小さくなっている。
だが血に近づけば、また元に戻る。
むしろ、もっと大きくなるかもしれない。
アクアは目を細めた。
そして――何の問題もない と断じた。
呼吸が整う。
この感覚は久しく忘れていた“戦いの勘”だ。
アクアはそばの巨大な工事用看板を押し倒した。
ガラガラと崩れる音に反応し、影が飛びかかる。
その瞬間――。
「――“
完全停止した世界。
影の真上にアクアが立つ。
そして、静かに、楽しげに――
「ロードローラーだぜ!!」
巨大な鉄塊を影へ叩きつけ
「こいつは
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラーッ
時が動き出す。
潰された怪異が絶叫しながら消滅していく。
夜に吸い込まれるように跡形もなく、影は消えた。
アクアはため息をひとつ。
「……問題はあったな。イメージが悪すぎる。」
肩を回し、深夜のコンビニへ歩き出す。
ルビーのためのアイスを買う――ただそれだけのために。
DIO様もニッコリのバトル回