あんまり書き溜めがありませんが、しばらく執筆が行えないため投稿を行います。読者の皆様にはご迷惑をおかけすることを謝罪します。
勇者、その始まり
スラが失踪してから1週間。
足取りの一つすら掴めずに、私はアビドスから離れることとなった。リンちゃんから『シャーレ宛の書類が溜まっているのでいい加減帰ってきてください』とせっつかれたためだ。
GPSの足跡や監視カメラの確認も徒労に終わり、手がかりはなし。他校に協力を仰ごうと思っても、反応が芳しくないのが現状だ。
はっきり言って、手詰まり。スラの事を探しつつも普通に仕事をすることにした。
連邦生徒会に捜索願を出しても受理されない。おそらく向こうも仕事が多すぎて受理されていないのだろうが……組織としていいのだろうか。またリンちゃん達から仕事を……
そんなことを考えていると、ぱらりと一枚の手紙が。書類ではなく手紙。アビドスの時と同じような紙面に既視感を覚え、少し目を凝らして読んでみる。
そこに書かれていた内容は、言ってしまえば“廃部しそうな現状をどうにかしてほしい!”というものであった。……その文面がやけに芝居がかったものなのが気になるけれど。
ミレニアムは科学技術に長けた学校だと聞いた。キヴォトスにはやはり、色々な校風の学校があるようだ。
「“行ってみようか。案内よろしく、アロナ”」
『はい!早速出発しましょう!』
よく考えれば、身分の詐称には新しく銃を持つ必要があることに気づいた。キヴォトスにおいて銃とは服でありアイデンティティである。
無論、グレネード散布機も封印だ。お手製だから、見覚えがあれば簡単に見当がついてしまう。あれ結構便利なんだけどね。
私のリボルバーに関しては、その、言ってしまえばかなり
あまりこういう所で個性を出すべきではない。極力普通の……
「購買で売ってるやつ、とか」
来たのは購買部。ここには予備の銃を買いにくる生徒も居る。そのため練習なしでも使えるような癖がないものが取り揃えられており、今回の目的にはぴったりだと言える。
「やっぱりアサルトライフルかサブマシンガンか……」
そう思い陳列されていたものの一つを手に取る。アサルトライフル然としたグリップにマガジン。銃口周りが太いのはサプレッサーだろうか。まあ珍しいものでもない。構えても、まあ違和感は無さそうだ。
「すみませんこれください」
「はいはい。にしても、あんた物好きだね。それ結構売れ残ってたやつなんだが」
「……そうですか?見た感じ普通ですけど」
「ま、決済よろしくね」
端末を使って支払い。塗装なんかはどうしようか。ふむ……一度、エンジニア部の方に行ってみようか。
先日お邪魔した時にいつでも訪ねてきていいと言われている。機器をお借りすることもできるだろう。
買った銃を見る。色々と商品を識別するためのタグが付いている。エスカレーターでの移動中、手持ち無沙汰になったので少し読み込むことにした。
「ん……?」
一つ、気になった項目がある。
使用可能と表記されている銃弾が、5.56mmや7.62mmではなかった。その値は、12。単位は……
「……ゲージ…………」
これが意味するところとは……
「マガジン式ショットガンだこれ!?なんだこの変態銃!?そりゃあ購買にあっても買い手が付かねえわけだ!?」
私が購買で買った武器は、ただでさえ反動がヤバい散弾を連射するヤバい武器だったのだ。
私はエスカレーターから降り次第、エンジニア部へ駆け込んだ。
「助けてくださいウタハ先輩!!」
「この前ぶりじゃないか。どうしたんだいライムくん」
息を切らしながら駆け込む。私が右手に持っているものを見て納得したように小さく溜息を吐いた。
「……それを、どうにかしてほしいって事かい?」
「いえ、なんか追加で付けられないかなーと」
「…………なるほど……」
購買にあったコレのことはよく知っているようで、しょうがねーなこいつというような雰囲気をひしひしと感じる。
「今日の依頼は……特に無しか。せっかくだし、エンジニア部で改造しようか?」
「いいんですか!?!?」
「いいとも。この前、あそこまでキラキラした目で見られれば一度依頼を受けたくもなるさ」
そう言って私から銃を取り上げる。ぐるぐると見回して構造を把握しながら会話を続ける。
「何か要望はあるかい?」
「武器として使えれば割とどうとでも……」
「そうか……」
「あ、ただ……」
端末にデータ……は無いか。じゃあ仕方ない。
「すみません、図面引きたいので紙貰っていいですか?」
「いいが……書けるのかい?」
「昔、ここを志望していた時があって……今となってはこんな状態ですが」
図面に書き出したのは、上廻スラとは無関係で、それでいて色々と便利なもの……
「所謂、フックショット……ってやつですかね。爪を増やしたり可動部を仕込んだりして固定力は上げていますが」
「これは……なるほど。この図面ならできるか……」
「その銃含めた私の重量を含めて遠心力がかかっても抜けないようにしています。一応コンクリート製を想定してますけど」
軽い説明を聞いて案は固まったのか、大きく相槌をうった。
「ヒビキ!コトリ!お客さんだ!」
向こうからひょこひょこと顔を出すのが見える。かわいい。
「それじゃあ、完成したら連絡するからしばらく待っててくれるか?あまり遅くならないようにはするつもりだけど」
「大丈夫です。気長に待ちますよ」
「ありがとう。それじゃあまた」
その言葉を聞いて退室する。さて、仕事に行かなければ。
「おはようございます……あれ?ユウカさんは?」
「おはようございます。ユウカちゃんなら、ゲーム開発部の方に行っていますよ」
……ということは、そろそろ始まるか。
「今日分の要望書はありますか?」
「はい、こちらに。それが終わったらユウカちゃんの分をお願いしてもいいですか?」
「機密は無いですよね?」
「大丈夫です。ちゃんと仕分けてありますよ」
ノアから書類を受け取りデスクに座り込む。1週間。それだけあれば、案外座れ慣れるものだ。
ゲーム開発部、却下。RPG調のポエムを送り込まれても困る。こんなもの書いてないでシナリオ書いてくれ。あと要望書で廃部に温情をかけてもらおうとするな。先に存続条件を満たせ。そうしないと温情をかけようにもかけられない。
エンジニア部、見た感じ普通の構造材のようだが……あ、用途が宇宙船の基礎構造になってる。これだけで後期配分予定の予算の20%ぐらい持ってかれるが……一応ユウカに回すべきだな、これは。多分却下だろうけど。
ん?トレーニング部?これは……え?一緒にトレーニングする人が欲しい……?それはセミナーに言われても困るなぁ……今度また顔を出すべきかな?
その後も一枚ずつ捌いていく。真面目なもの、不真面目なもの。セミナーではどうにもできないもの。こうして見ていると、生徒の人柄というものも見えてくる。案外、こういうのが楽しいのだ。
「今日分、終わりました!コーヒーでも淹れてきま……」
「あら?着信ですか?」
「ですね。ちょっと待っててください」
部屋から出てドアから離れて電話に出る。画面には白石ウタハの文字。改修の連絡だろうか。
『もしもし?君に頼まれていたものが大方終わったから確認に来てくれるかい?』
「ありがとうございます。今から伺いますね」
『あー、それと代金代わり……と言ってはなんだが、一つ付き合ってほしいことがあってね。協力してくれるかい?』
「仰せのままに。私が頼んでるので、文句は言えませんよ」
走ってエンジニア部へ向かう。きっと、勇者は目覚めている。野次馬、と言っては悪いが、まあ様子を見に行こう。
「と、いうわけで、君にはこの子と戦ってもらう」
「はい?????」
唐突すぎる。私が到着した時には既にエンジニア部の天井には大穴が空いていた。頭を抱えるユウカを幻視しながらウタハ先輩に詰め寄る。
「うう、またユウカさんの負担が……というか、機能説明はどうしたんですか!?」
「銃の方は見ての通り、少しの軽量化と銃口下部にアンダーバレル式のグレネードランチャーと自爆機能、Bluetoothを付けた程度さ。フックショットに関しては、君が一番よく知ってるだろ?」
「それはそうですけど……あと、フックショットは名前が長いのでアンカーでいいです」
まあまあと誤魔化されながら装備を付けさせられる。左腕のアンカーは前回通り使いやすい。やはりマイスターだ。
そのままあれよあれよとエンジニア部1年組に連れ出されて訓練場に立たされる。すぐ目の前に居る小柄な彼女は……
「はじめまして、可愛い子。名前を聞かせてもらえるかな?」
「はい!アリスはアリス!ジョブは勇者です!」
「ハキハキとありがとう。私は棟方ライム。ジョブは……試練役のゴーレムってところかな」
「うう……セミナーの人……ここで普段の鬱憤晴らしだよー!」
「お姉ちゃん本人の前で言うのはまずいって!」
「ははは……気にしなくていいよ。恨みを買う役回りなのは事実だしね。ただ……」
「こっちも君達の嘆願書は見飽きてるんだ。私も憂さ晴らしさせてもらうよ」
おお、久しいな勇者達よ。君と会うのは何度目だろうか。
『えー、あー、聞こえるかい?今回の勝利条件を説明しよう』
ドローンが散開する。
『アリス達の方は、周囲のドローンを時間内に全て撃墜すれば勝利だ。ライムの方は逆に防衛しきれば勝利になる』
『それじゃあ!』
『3!』
『2!』
『1!』
『はじめ!』
始めに動き出したのは私。まずは撹乱のために距離を詰める。
アリスを最初に潰すのは到底無理。モモイとミドリも連携を取られると面倒だ。しかも今回は護衛ミッションのオマケ付き。とんでもないクソゲーだ。
……とはいえ、これのまま好き勝手やられるのも性に合わない。
左腕を大きく振ってアンカーを射出する。狙いは光の剣。アリスの強靭な体幹を利用して一つの障害物として使う。
アンカーの線を巻き取りつつ、地面を横に蹴って左右に広く展開している双子の片方、ミドリを狙う。あわよくばコレで狙いを外してくれないかなあ、などと思っていたがやはりそう甘くない。アリスの銃口は相変わらず周囲のドローンを狙っていた。
「よっ……と!」
「ッ!」
勢いのまま打ち込んだ蹴りは片腕で受けられた。しかし衝撃は殺しきれなかったようで、吹き飛ぶ。しかしインドア派の戦闘素人でもこの動きができるのは賞賛ものだろう。やはりポテンシャルが高い。
「よ、よくもミドリを……!私の怒りの弾丸を、食らえー!」
「お姉ちゃん……!」
よし釣れた。乱射の隙間を縫いつつアリスに接近する。モモイのアレは精度を考えずに弾を撃ちまくる都合味方が近いと使いにくい。後ろのドローンがかなりの数撃ち落とされているが
予想通り、アリスに近づくにつれ弾幕が薄くなっていく。私はアリスのタゲをこちらに向かせる意味で銃を構える。トリガーを引いた。けたたましい射撃音とともに特大の薬莢が落ちる。
アリスは咄嗟に光の剣を盾にした。散弾の衝撃が体を揺らす。
「ずるいぞー!」
「お姉ちゃん……」
「こちとら1対3で護衛任務付きだぞ!?むしろそっちが手加減しろー!」
「わかる!護衛対象が居るミッションって面倒だよね!」
「お姉ちゃん!?」
ちょっとした雑談を挟み戦闘に戻る。番号を使えないのが面倒だ。無論、戦力秘匿の観点からリオが禁止令を出している。番号はリボルバーと紐付いているものも多いので私としてもここで使うつもりは無い。
マガジンをいじってリロードする。……うん、案外使い勝手はいい。
「よし、決めた!アリス、このままライムの気を引いて!ミドリは左の!私は右のを!」
「分かったお姉ちゃん。左だね」
来るか。今の私は対複数には死ぬほど向かない。アンカーとショットガンがグレネード散布機と同程度の広域火力を出せるとは到底思えない。
……だったらここは、
ここですべきことはアリスに勝つことでも双子を倒すことではない。私の新しい武器を試しつつ、アリスへ平穏に光の剣を引き渡すこと。タイマンに持ち込めばいい。
「さっさと詰める!」
「むっ!来ましたね!勝負、です!」
さあ、エンカウントだ。
マガジン式ショットガン
モデル:GEN:12
銘:輝かしい技術
棟方ライムが白石ウタハに依頼し制作した新たな銃。マガジン式ショットガンという珍しいもので、銃口下部にグレネード、内部には自爆機構を備えている。
上廻スラの結末は
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哀れな愚者に永遠の救済を
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幸せな咎人に寛大な天罰を