お知らせ
作者のモチベーションと精神状態の関係でしばらく執筆を行えないため、書き上がっている3話のみ投稿します。また、後書きで私が勝手にやってたキャラ紹介も無くなります。番号の解説はやります。
各話のサブタイトルの変更を行いました。内容には変化が無いため確認していただく必要はありません。
脚をバネのように使いアリスの懐に潜り込む。確かにあの膂力は脅威だが、それ以上に光の剣で色々と装備がお釈迦になる方がまずい。何よりあの攻撃範囲があれば残りのドローンを途轍もない勢いで減らしていくだろう。
なるべく長く続いてくれ。心のどこかでそう唱える。私がどこまでやれるのかが知りたいから。だから勇者。君のスキル確認も兼ねて、私と少しばかり遊んでいってはくれないか。
「させま、せん!」
こちらを見たアリスはすぐさま射撃体勢を取る。しかしエネルギーの収束はお粗末なもので、通常出力に比べて幾分か軌道が読みやすいものであった。
顔の真横を光弾が駆けていく。後ろで巻き上がったコンクリートの欠片が背中を叩いた。このぐらいの距離ならいけるか?
「さーて、お返しといきますか!」
銃弾を2発撃つ。牽制でいい。
アリスが被弾を嫌がって横に避けた。ペレットが数発袖を掠めたのが見える。しかしその顔には焦りはなく、むしろ不適で自信満々な笑みを湛えていた。
そうしてクロスレンジまで近づく。互いに一歩進んで手を伸ばせば握手ができそうな距離だった。しかしここはキヴォトス。そんななまっちょろい和平は通じない。始まるのは、銃撃戦という名の格闘戦——!
「はぁーッ!!」
「素人め、間合が遠いわ!」
横薙ぎにスーパーノヴァが振るわれる。しかし、まだ自身の武器を持って数分。打撃武器としてのリーチがどれほどなのか、まだ把握しきれていないらしい。
飛び上がってスーパーノヴァの“角”に足を乗せ、その角度のままに跳び上がる。目測1.5mほど。この速度なら2mほどまで上がる。そのまま姿勢を制御して、アンカーをアリスに向け撃ち出した。
「そうくると思ってました!」
アリスの口が弧を描く。2度目は通じない、予想通り、ってか?
アリスは伸びてくるアンカーの先端を右手で掴んだ。
これだから上澄みは苦手なんだ!
「こっちに、来てもらいます!」
アリスはそのワイヤーを思いっきり引っ張って私ごと引き寄せようとする。苦肉の策ではあるが、こちらもワイヤーの巻き取り機構を起動してさらに自分を加速させる。
視界が一瞬で後ろに流れていく。コンマ1秒もない一瞬で、私はアンカーとは反対側の右腕を展開した。
ねらいは、単純。クッソ重い相手にクッソ速くぶつかって、吹っ飛ばす——!
「うおりゃァァァ!!!」
「ッ!!」
……腕が痛い。あー、これ右肩どうなってるかな。
アドレナリンによって引き延ばされた時間で周りを見渡す。ラリアットをかけた私の右腕は明らかに
受け身を取って即座に体勢を整える。使い物にならない右手は捨て置き、ショットガンは左手に持ち替えた。若干震える左手はそのままに狙いを定め、マガジンに残った8発を連射する。
3発直撃。5発カス当たり。さっき引っ張られた時に左腕も逝ったか……!?
「まだ、いけます!」
「くっそが」
光の剣を杖代わりに立ち上がるアリスが見える。ああ、やっぱり君は私とは違うよ。
まだ左腕は動く。というか、動かせ。でなきゃ勝てないぞ。
「ひ!」
アンカーを天井へ。
「か!」
巻き取り機構を稼働させ自分の体を持ち上げる。
「り!」
肩関節に激痛が走る。重力が牙を剥く。
「よ———!」
周囲が一気に静かになる。部屋に満ちたその静寂を切り裂くように、足下を光芒が疾る。この照射もいつまで続くか分からない。利用できるだけ利用する。
幸いにも、アリスはエネルギー収束の光で今のこちらの居場所を把握できていないようだ。ワイヤーを巻ききって天井まで昇る。アンカーの固定を解除して、天井を強く蹴り付けた。
銃はリロードしていない。両腕はおそらく脱臼している。アンカーは論外だ。使えるのは、脚だけ。
じゃあそれでいい。
落下する勢いのまま、脳天に蹴りを落とす。
アリスが恐怖からか反射的に頭へと手を伸ばしてしまったがために、スーパーノヴァは操ることができる主が居なくなった。文字通り“暴れ”始める。
指向性を失った光の柱が上下左右、縦横無尽に暴れだす。
こんな挙動、なんかのゲームで見たことあるな。あー、えーっと、あれだ、そうそう。
「
光の柱が壁に穴を開けていく。私が招いたこととはいえ、少しばかり気が引けるな、これは——!
ごうんごうんきゅいーん、という独特の稼働音のみが部屋に響くようになって、おおよそ5秒。
私に残された最後の攻撃手段であるアンダーバレルのグレネードランチャーを構え、引き金を引こうとした。
『そこまで!!』
「……ありゃ?」
スピーカーからウタハ先輩の声が聞こえてくる。
少し周りを見渡すと稼働しているドローンは一機も無く、残骸が散乱しているのみであった。グロッキーになりながらもモモイとミドリがその残骸に寄りかかっていた。アリスは照射が止まったスーパーノヴァの下敷きになっている。
両肩の関節を嵌めながらグロッキーなままの双子に近づいていく。
腕をグルグルと回す。まあ、一旦良さそうだ。
「2人とも、大丈夫ですか?」
「ひ、酷い目に遭った……」
「うう……ドローンと戦ってたら急に光の柱が……」
「バグみたいな挙動だった……」
「あ、あはは……」
とりあえず大きな怪我が無さそうで良かった。2人は無事を確認することができたので、今度はアリスに近づく。スーパーノヴァは私の力では動かす事ができないので、肩を何度か叩く程度しかできなかった。
「生きてるかー?」
「う、うう、アリス、負けてしまいました……!」
「落ち着いて。君の、君達の勝ちだよ」
「それでもです……!」
アリスは悔しそうに地面を叩いている。スーパーノヴァを退かして立ち上がったのを見て、手を伸ばして立ち上がるのを補助してやった。未だ肩には痛みが残っている。
「あんな風に力を暴走させているようでは……」
「まあ、どんな力でも使いようだよ。使えないんだったら、使えるようになればいい。私が蹴りを入れるまでは、はっきり言って完璧に制御できていたよ」
背中を叩いてウタハ先輩の下に向かう。背中から心地いい風が吹いていた。風通しが随分と良くなったからだろうか。
「……うう……なんというか、経緯は複雑ですが……約束は約束です!それはお渡しします!」
「アリス、こっち来て。ストラップの延長と、事故防止用の緊急停止コマンドを用意するから」
戻ったアリスはエンジニア部一年組に連れられて向こうに行ってしまった。私はウタハ先輩の手招きに付いていって、少し離れた場所に行く。
「とりあえず、その銃とアンカーに調整した方が箇所はあるかい?」
「銃の方は特に。自爆機能は試しようが無いので分かりませんけど。アンカーの方は……もっと初速を速くしてほしいぐらいですかね?重量はもっと嵩んでもいいので」
「なるほど……アンカーの方は一度預かるよ。それでなんだが……」
二、三度顎を指でさすって話しにくそうにしている。まあきっとこれだろう、と見当をつけて口を開く。
「アリスのこと、ですね」
「ああ。君の感想を聞かせてもらってもいいかい?」
「圧倒的な馬力に、高い反応速度。高火力に分類されるショットガンの連射を受けても大した傷は無い様子。何かしらカラクリはありそうですが、私にはどうとも」
「そうか、ありがとう……やはりか……」
それだけ言って彼女は思考の海に沈んだ。
……先生に挨拶だけして帰るか。先生はアリスが連れていかれた方を双子と一緒に見つめている。
「はじめまして、先生。一応セミナーの人間としてご挨拶をさせていただきます」
「“セミナーってことは、ユウカのところ?”」
「はい。色々とお世話になっています」
「“肩は大丈夫?さっき回すような仕草はしてたし、負担かかってないかなって”」
「関節は嵌めましたし、もう痛みもひいたので大丈夫ですよ。お気になさらず」
「“だ、脱臼!?”」
「大丈夫ですって。それじゃあ、今日のところはこの辺で失礼しますね。2人もお疲れ様。アリスちゃんに機会があったらリベンジ待ってるって伝えておいてね」
そのまま手を振って部屋を出る。肩を一周回した。若干残った痛みが主張を続ける。
しかしまあ、これからのことを考えると面倒ではある。セミナーの仕事をしながらリオの動向に付き合う。自分で決めたとはいえ、少し憂鬱になった。
「ただいま帰りました。お仕事はありますか?」
「おかえりなさい。って、それ、購買で買い手が付かなかったっていう……」
「エンジニア部の方で調整をしてもらってきました。結構使い勝手は良さそうでしたよ」
「そう。それならなによ……「あと、ゲーム開発部に新しい子が入ったみたいですね」早くそれを言いなさい!?」
「どうすんのこれ」
「どうかしましたか?」
「あーいや、そういうわけじゃないんだけどさ……コレは無くない?」
あの後、無事に調整が終わったアンカーを受け取り仕事から帰った。そんな私は今現在、
……ガッチガチのメイクを受けて、ウィッグを付けて、カラコンも入れて。
「一度憧れていたのです。影武者、というものに。ジュース取ってください影武者」
「影武者ってそういうものじゃねえんだけどな……ほらよ」
近くの机に置いてある炭酸飲料を投げ渡す。しかしまあ、ヘイローを考えなければ案外ソックリだろう。ヘイローの判別ができないキヴォトス人相手であれば結構いい線いってると思う。
とはいえ、あれよあれよとこうして乗せられてしまったが、普通に能力で代用できるんだよな。
「その顔、能力でもできるのにめんどくせーなー、と、思っていますね」
「キモ」
未開封のペットボトルを開きながらそう言う。じゃあやってみせてくださいとでも言いたげにこちらを軽く睨んでくる。なんかムカつくなこいつ。
「
どろどろと表面が溶けるように肉体が変わっていく。服も溶けきって、顔はすらっとした細いものに。全身をスリムに絞り、髪型をその特徴的なものに沿わせていく。服は先程のものとデザインが変わっていないが、中身は再構築されたものである。
「お待たせしました。いかがでしょう」
「……そっくりですね」
「ええ。これでリオ様の身の回りのお世話も2倍の速度で進みます」
「それは魅力的」
無表情のままぱちぱちと拍手をしてくる。少し誇らしげにふふんと鼻を鳴らして胸を張った。この能力は仕草や口調までは真似できない。腕の見せ所だ。
ドアノブに手がかけられた。扉がゆっくりと開き始め、隙間から真っ黒な髪が垣間見える。
「トキ。次の調査任務なのだけれど……」
「「どうかされましたか、リオ様」」
「…………」
固まる。
「…………お邪魔したわ」
「「お待ちくださいリオ様」」
素早く体を引こうとしたリオの肩をがしりと掴む。彼女に2人分のホールドから抜ける力は無い。そのまま2人で抱えて、備え付けのソファーに座らせる。
トキは部屋中に散らばったクッションを集め、私はリオが逃げないようにホールドする。
無言のままにクッションを受け渡し、さっとリオの両脇を固める。
「?????????????」
「それでは、任務の詳細をお願いします」
「C&Cのエージェントであり、パーフェクトメイドであるこの飛鳥馬トキが」
「「完璧に任務を遂行してご覧にいれましょう」」
「え、ええ。そうね……?」
無人操縦のヘリから降りてビルの上に立つ。リオを混乱した状態のままにさせておくことで私も任務に同行することに成功した。
是非は知らない。目撃者を全て消せば契約上何の問題も無いのだ。
「ターゲットはあれですか」
「元々1人で片付ける予定でしたし、2人居れば盤石ですね。それとトキ、私用の銃はありませんか?このままでは私は無手の格闘戦をすることになります」
何も持っていない手を振って何も持ってないよーとアピールをする。小さなため息とともに一丁のハンドガンが差し出された。
「私のサブアームです。普段はあまり使いませんので、そちらを使ってください」
「助かります」
真っ白なその銃を撫でる。昔に使ったことがある。最低限の動作確認だけを行い、腿のホルスターにそれを差し込んだ。
今回の目標は廃墟への侵入を企む小企業。連邦生徒会の方から禁止が出されたとはいえ、こういうバカが定期的に出る、らしい。あそこには秘匿すべき事物が多い。世界を破滅に導くようなものも。
どうやらその企業の連中は業績が悪化の一途を辿っているらしく、オーパーツやら古代の遺物といった噂を聞きつけて一発逆転にと乗り込んできたようだ。
バカめ。現在のミレニアムはリオの手によってほぼ完全な監視社会と化している。外部からの侵入はもちろん、その中での怪しい動きも監視対象と決まっているだろうが。護衛の傭兵なんかもぞろぞろと連れてきやがって……隠れる気があるのか?
「私は上層の兵員宿舎を狙います。外部との接続があるシステムはリオ様がハックしたのですが……」
「では、私は下層の電気制御室を。オフラインセキュリティの無効化が完了次第本格的な制圧を行ってください」
私の仕事は下層にある電気系統の破壊。トキの仕事は上層にある違法業務の証拠をすっぱ抜くこと。
私達の仕事はいわば露払い。コールサイン持ちのような本命の消耗を抑えるため、そして表向きの戦力である彼女達を派遣できるようにするための証拠集めのための投入らしい。廃墟とかの裏の厄ネタではそういった人員投入がし辛いという事情があるのだろう。
だとしても私達要る?ダブルオーなら全部薙ぎ倒していけそうなんだけど。
……まあ、いいか。
それにしても、メイド服というものも久々に着る。昔を思い出さなければ。
さて、
自身の体を泥のようにして対象に似せる能力。身長から声までそっくりになるが、対象に精神構造を似せることはできない。長期間の使用が続くと、自分の姿に戻るのが難しくなる。
上廻スラの結末は
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哀れな愚者に永遠の救済を
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幸せな咎人に寛大な天罰を