あるゲヘナ生のどうでもいいモラトリアム   作:匿名ゲヘナ生

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はい

 どーもはじめまして、涼昏(すずくれ) リノです。

 ゲヘナ学園、風紀委員会所属2年生、ポジションはスナイパーもしくはマークスマン。

 趣味は……寝る、ぼーっとする、深夜徘徊(裸にあらず)、狙撃、とか。

 ゲームだったらSPECIALのアタッカー枠かね、まあイベント露出があるかも怪しいけど。

 

 さて、ここがプレナパテスやそれに類する軸なのか、それとも本編なのか。それはわからない。

 少なくともシャーレの先生はご就任なされたし、今のところ死んだとかの噂も聞かない。

 けど、まーぶっちゃけどうでもいい。

 

 本編だったら私が干渉しなくともハッピーエンドになるのは確定してるし、それ以外でも別に何だっていい。

 Vanitas Vanitatumは関係ないけど、頑張りたい人が勝手に頑張ればいいと思います。

 

「……おはよーございます」

 

 扉を開けて、申し訳程度に挨拶をすると、全員が一斉にこちらを振り向く。おー、まあ想定内。

 

「……おはようございます、涼昏リノさん。今回は真面目に出席したことを褒めてあげるべきですか? それとも時間厳守の大切さを説いてあげるべきですか?」

 

「あー、とりあえず無視して議題を進めていただくってのは?」

 

 ゲヘナセイト目フウキイイン科、ヨコチチハミデヤンは顔にうっすら笑いと青筋を浮かべ、手近な席についた私を睨みつけている。

 

「5連続、22回ですよ、あなたの週次定例会及び戦闘訓練の無断欠席記録。遅刻に至ってはしていないことのほうが珍しいですね。それどころか、最近は定時巡回も途中で抜け出したりしているそうですね? 風紀を正す者として、少しは自覚ある行動を取って欲しいものですね。そもそも……えー、はあ、それでは議題に戻りましょう。次に61-03地区の──」

 

 いやあやっぱり面倒くさいね、組織勤めってのは。

 完全にバックレるってのもまずいかと思って出来るだけ顔を出すようにはしているものの、朝弱いし、何だかんだ遅刻してもこれで許してもらえちゃうのだからずるずると改善出来ずにいる。

 ニュース代わりとしてはそれなりに(万魔殿の紙屑よりは)優秀だし、風紀委員としては情報収集を怠るべきではないんだろうが、まあまあ。痛い目見なきゃ変われんべな。

 

 あ、そろそろ爪切らな。爪垢ほじほじ。

 あー、2L烏龍茶とココアの粉、弾と、あとなんだろ。

 

「──以上で週次定例会を終了するわ……けど、リノは残るように」

 

 うげ。

 ゲヘナシロモップこと最強最高の風紀委員長様、空崎ヒナからの不意打ちを受けて硬直する私を、「残念でもないし当然」と言わんばかりに横目に見ながら皆ぞろぞろと退室していく。

 

 そうして会議室に残されたのは横乳、モップ、哀れな仔羊。

 

「……監視つけてヒノム火山の巡回、1ヶ月とか?」

 

「何言ってるの? 特別指令よ、出来るだけ内密にね。貴女の狙撃の腕を借りたいの」

 

「えぁ、あ、はは、そうなの。えー、はい、分かりました。どこへ行けば?」

 

 なんだよ、ヒナちゃんから直々にお叱りもらうのかと思ってビビっちゃった。ヒナちゃんあのバカ絡みの時とかたまに覇王色の覇気出てるからね、マジで怖いの。

 と、何故かアコちゃんが目を見開いて呆然としている。

 

「言ったでしょう、彼女はこれで意外と仕事は真面目にやるのよ。ただ言われないと何もしないだけで」

 

 失礼な、言われたことを確実にこなすだけだぞ。

 遅刻欠席常習犯の負い目だって一応ありますし、今回は誠心誠意やらせていただきますよウヘヘヘへヘ。

 ていうかそもあんさんに直で頼まれて断れる奴おりまへんがな。

 

「はあ……。とにかく、今回は温泉開発部の次のターゲットを掴むことが出来ました。ですが、当日ヒナ委員長は万魔殿との対談があり、決行時刻にはおそらく間に合いません。そこで、限られた精鋭での奇襲作戦となります。リノさんには予想される撤退ルートを狙える位置に張ってもらい、横からの追い討ち、隊列の攪乱をお願いします」

 

 地図と駒を取り出し、指さし解説を進めるアコ。

 私は別に戦略に造詣が深い訳でもないが、まあぱっと見た感じ特に問題はないか。

 

「はあ」

 

「はあって……あなたちゃんと話聞いてますか?」

 

「えー、要するに頭ほかほか温泉共を見つけ次第撃てばいいんでしょ?」

 

 早く帰りたい。

 

「ですから、それは第一隊の攻撃が成功して、相手が撤退を始めてからになります。その後、貴女が足並みを乱している間に第二隊を──」

 

「第一隊が失敗したら?」

 

「本当に真面目ですね……。もちろん、予定を前倒しして即座に第二隊を投入します」

 

「んあはい、臨機応変にってことね。了解了解、そんじゃお疲れ様でーす」

 

「あ、ちょっと! まだ話が──」

 

 聞きたいことは聞いたんでぇ。後は自分で調べます。

 あーあ、おうち帰ってなんかチルなやつ聴こうぜ。

 

 

 ◆

 

 

 さて、作戦当日と相成りました。

 かっちり予定入れてりゃまあまあ起きられるには起きられるけど、クソ眠いわ。話し相手でもいれば目覚ましに困らないんだけど、案の定単独任務だし。

 何だかんだ信頼されているらしいね、勤務態度バツの遅刻欠席早退常習犯が? 人手不足の悲哀を感じますね、よよよ。

 

 さて、私の配置はこのビルで、ランデブーポイントはあっち、第二隊は私を挟んで反対か。

 ……んー、もう一つ、二つ……こっちのビルにしよう。

 

「よし……、いい風だね」

 

 建物に入ると警備員ロボがやってきたが、風紀委員会の腕章に気づくと頭を下げて、わざわざ道案内までしてくれた。

 風紀委員会が思いの外市民の信頼を得ているのか、あるいはどうせ戦っても勝てないからと諦めているのか。どうでもいいな。

 

「ポイント確認……マガジン良し……ターゲット、確認」

 

 6倍スコープを覗けば、大量の温泉入り過ぎのぼせイカレ野郎共が工具や爆弾を用意するのに混じって、黒髪赤シャツの小さいシルエットと、その隣の赤髪うおデッカ……がよーく見える。ちなみに私は貧乳派。つーか太もも派。(ボンレスハムはNG)

 しかし、キヴォトスの銃撃戦において火炎放射器に戦術的価値があるのかについては甚だ疑問だな。射程も短いしタンクに引火するし隠密性ゼロだし、そこ差し引いて使うほど威力があるのか? 仮にあったとしてもそれ大分非人道寄りだし、よほど頭のおかしいやつしか使わんのでは? そうか、そういうことか。

 

 どうでもいいこと考えてたら作戦が開始されたらしい。

 風紀委員会の先陣を切るのはやはり切り込み隊長凸砂の銀鏡イオリ、666%×3の範囲攻撃は伊達じゃないな。絶対入力ミスですよね。

 対する温泉開発部の動向は……おや、初撃こそ譲ったものの意外と対応が早い。情報が漏れていたか、ただの勘か。いずれにせよ後退を最小限に抑えつつじわじわと包囲網を広げつつある。

 焦れたイオリが突出しているのもあって、かなり雲行きが怪しくなってきた。アコちゃんよ、そろそろ第二隊を動かさんと不味いのでないか?

 

 んまあ、だから私がここにいるんだけど。

 

「──う◯ちーコングー。」

 

 やる気のない掛け声と同時に、攻撃を開始する。

 秒間約2.2発の甲高い発砲音に少し遅れて、両辺に展開していた温泉狂いが次々に倒れていく。

 気絶してはない、コカしただけ。メット抜いてワンパンするほど威力ねーの。だが先頭がコケれば後も詰まっていく。そしてこのファイヤレートでは状況を察知する前に次弾が着弾する。狙撃手が複数人いる錯覚すら覚えるだろうてな。リロード。

 

 向こうに狙撃手はいない、それかもう落ちてるか。流石に第二隊も動き始めた頃合いだろう、あと2マガも撃てば終わりかね──ち。

 さすがに頭が切れる、鬼怒川カスミ。脊髄に温泉が流れてるだけあるわ。派手に爆破して煙幕を張った。

 

 相手は闇雲に撃って当たるほどの密度じゃない、むしろ誤射が怖い。余分に爆薬を使わせたと考えるか、いや、最初から相手があの硫黄中毒者共な時点でこの可能性を考慮しておくべきだった。多少狙いが難しくとも起爆装置を落としておくのが正解だったか。相変わらず見通しが甘い、アコちゃんのこと言えねえよなぁ?

 

 ……まあ、第二隊が到着したようなのでいいでしょう。

 私の仕事はこれにて終幕:デストロイヤー(爆発特効10%加算)。

 

「くそぉ! ヒナ無しの風紀委員会に負けるなど屈辱! だが私は温泉開発部! 屈しない、屈しないぞ! そこに温泉のある限り!」

 

「いいからとっとと歩け! ──あ、リノちゃん……」

 

 一応様子を見に来れば、カスミを始め敗北者たちが数珠繫ぎにキャンキャン喚きながらイオリに連行されているところだった。

 が、遠巻きに見てただけの私をイオリは目ざとく見つけ、こちらに駆け寄ってくる。

 

「さっきはありがとうな、リノ」

 

「……はあ」

 

「途中の狙撃、お前がやったんだろ? すごく助かった!」

 

 最前線でずっと暴れていただけあって全体的に擦り傷や汚れが目立つが、温泉開発部を捕縛できたのがよほど嬉しいのか、それを意に介さないほどイオリは元気だ。

 

「……イオリんさあ」

 

「ん? 何だ?」

 

「先生に足しゃぶらせたってマ?」

 

「………………はあ!? 何言ってるんだリノ、お前今そんなこと、言ってないぞ私はそんなこと!! アイツが勝手に曲解して、て違う! 一体誰からそんなこと、とにかくそんなことはない、絶対ないからな! 無いったら無いんだからな!!」

 

「わはは」

 

 一瞬で顔を真っ赤にしてまくし立てるイオリ。ほぼ自白してるようなもんだが、本人はそれどころではない様子。

 先生、足舐めたってよ。アビドス二章も終わってんのか。

 疲れたし帰って寝よ。

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