あるゲヘナ生のどうでもいいモラトリアム   作:匿名ゲヘナ生

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エンジニア部

 クソめんどくさい。

 やる意味あるのかこれ。

 

 AM11:00にベッドから出て、水を飲んで初めに思ったことがそれだ。母趾球の擦り切れた靴下を履き、髪に手櫛を入れながら厚手のカーテンを少し開け、あまりの眩しさにソッコー閉じる。

 

 サボりだな、今日は。

 しかしまあゲーム、ゲームね、アレ(TSC)をクソゲーとする意見が一色を占めるくらいには大衆の審美眼は磨かれているらしいけど、残念ながら未熟と言わざるを得ない。

 そもそも総人口が10億もいるか怪しいから当然だけど、インディーズの裾野の広がりが圧倒的に足りない。

 この世界の名だたる名作ゲームたちもどうしても『前世の知識』がチラついてしまい、二番煎じ、劣化品感が拭えない。遊ぶけど。

 

 場所が違えば需要も異なるってことですね、やだやだ、どうしても自分が異物のように感じられますよと。

 

 ラックに架けられた銃を手に取り、弾倉を装着。カーテンの隙間から銃口を突き出してスコープを覗く。

 ほらいますよいますよ、平日昼間からお盛んなことで。

 軽く2マガジン、いつものようにストレス解消だ。大型の銃器でもそれなりに気軽に撃てることは、地球に比べたキヴォトスの数少ない利点と言えよう。

 日常的な銃声を考慮して郊外に居を構えていれば尚の事。

 

 ふう。

 サプ、やっぱサプいるかなぁ、射程も威力も下がるしつけたくねぇなぁ、できれば取り外し楽なやつがいいけど。

 行きたくないけどなぁ、ゲヘナ自治区中央における狙撃ポイントを一つでも失うのは痛い、面倒でも対応せざるを得んか。

 とは言えこの超カスタム狙撃銃、一応メンテナンス性も考慮してある程度規格内に収まってはいるものの、それは通常の手入れの話。

 新しくサプレッサーを作るとなると、生半可な店じゃあ用意してくれんだろう。

 行くしかねえか製造元、ミレニアムサイエンススクール。

 

 

 ◆

 

 

『は~い゜』、てなんだコレ声キモッ。はい、こんにちはエンジニア部の皆さん」

 

「こんにちは、おやあなたは……涼昏リノさんでしたね!?」

 

「んあ、覚えてたんかい。まあいいや、そしたら今日はこいつ用の消音器作ってもらいたくて来た次第。ワイロもあるでよ、あ、これは私の分だ」

 

 そのへんに転がっていた声がキモくなる拡声器を放り投げて、代わりにカバンからコンビニで適当に買ってきた菓子類を取り出す。ロールケーキ、チョコケーキ、プリン、ティラミス、杏仁豆腐は私のだ。

 

「忘れるわけないさ。まずゲヘナ学園からの来客が珍しいし、しかもちゃんと話が通じるどころか私達のロマンにも理解があるのだからね! しかもこうして手土産まで持ってきてくれるときた!! あ、ついでだし本体のメンテナンスもしてしまって構わないかな?」

 

「うーい」

 

 いそいそと工具を取り出す面々を横目に、私はなんとはなしに部室内を見回す。用途の良く分からないガラクタの中でも一際目を引くのは──ははぁ、パヴァーヌ1章はまだ始まってないか、始まったばかりか。

 光の剣、スーパーノヴァ。

 

 ま、関係ないけどね。

 彼女らの手際ならサプの一つくらいすぐに終わるだろうし、終わったら何するかねぇ。

 

「ほらほらアリス、ここがエンジニア部の部室だよ!」

 

 あ。

 

「すみませーん、今ちょっと……あれ?」

 

「どうかしたの? お姉ちゃん」

 

「いや、今誰か見慣れない人がいたような……」

 

 あぶねーあぶねー、危うくカメラに映るところだった。

 いくらキヴォトスの行く末に興味ないとは言え、よりによってトップクラスにデリケートな領域にずけずけ踏み込んでいく理由もない。

 適当な高台から気付かれないよう高みの見物決め込みましょう。

 

「……なるほど、大体把握できたよ。新しい仲間に、より良い武器をプレゼントしたいと……」

 

 ……まあ、武器調達ってことは人格形成(TSC)は完了してるようだし、そこまで敏感になる必要もないだろうけど、まあ努力目標ってことで。

 

「そっちの方に、私たちがこれまで作ってきた試作品が色々と置いてある。そこにあるものであれば、どれを持って行っても構わないよ。……それにしても、リノはどこに消えたんだか……」

 

 おいおい白石さんよ、あんまり人をカメラに写そうとするのは止めてもらえませんかね。変に考察班が動き出しちゃうでしょうが。

 

「ん? なんか珍しく地味な見た目してるけど、これ何?」

 

「説明しましょう! そちらの銃はとあるクライアントからの預かり物でして、名をパノプティコンHAと言います! 秒間凡そ2.2発の高い連射力、射程、精度を両立させた玄人向けのスナイパーライフル! ベースは汎用のものを流用していますが、ブルパップ方式を採用し装填をオートマチック、それも我々独自考案の高速装填型に変更した都合上ハッキリ言って元とはもはや別物レベルに改造されていると言わざるを得ませんね! また高い連射力から来る強烈なリコイルを最低限に抑えるためにマズルブレーキも精緻に計算されたオーダーメイドのパーツを採用、ジョイント用パーツやフラッシュハイダーを取り外すことにより銃口接合部の強度を高めることに成功した結果、連続発射可能数はおよそ千弱にも上ります! スコープはあまり使用されていないようですが3〜8倍の自動補正機能付きで、有効射程を示すガイドも装備しています! 使用弾薬は7.62x51mm NATO弾で連射力を活かすために大型の弾倉が欲しいところですが、クライアントの意向もあり装弾数は12発となっています! 取り回しの良さと狙撃能力を両立させるためにブルパップ方式にも関わらず長大な銃身を持つことが外見上の大きな特徴ですね! それから──」

 

「うわわ、ストップストップ! ていうか高連射のスナイパー? そんなの扱えるの?」

 

「ハッキリ言って難しいですね! ただ、それでデチューンを頼まれたこともないので本人は扱えているのだと……」

 

「ええ……? うわしかもセミオート射撃だよこれ! 絶対当たんないって!」

 

 当たるよ。最速連射に拘ったらそりゃちょっとは命中率下がっちゃうけど、そこはまだ伸びしろってことで。

 ──極限まで軽量化された本体、そして小型のマガジンでリロードも高速なため接近戦も最低限こなせ、スナイパーの弱点である物量作戦にも手数で対処、もちろん肝心の長距離狙撃も800mくらいは余裕で狙える。

 器用貧乏と評するか、理論値だけのロマン兵器と評するか。いずれにせよ前世から愛用(ゲーム内)してるだけはある、いい銃だよ。6では小イカ相手にしか使った覚えないけど。

 軽さと強度の両立が肝要、余計な機能は絶対に入れるなと何度も言い続けてたらエンジニア部の悪癖を抑えられたのもいい。

 飾り気ないのは悪かったな、別にいらんやろと思って見た目はほぼカスタムしてないし、校章も隠してあるから尚更地味だね。

 

 つーかあれ返してもらわんと流石に丸腰で帰れないんですが。まだサプも出来てないし、愛銃ベタベタ触られるのはまあいいがよりによってモモイなのがなんか不安。

 

「……光よ!!!」

 

 とかアホなこと考えてたら、部室の天井に穴が空いた。アリスに限った話じゃないけど、あの怪力見てなお普通に受け入れるのは素直にすげぇわ。リオの気持ちも分かるってもんだね。

 変なスイッチでも入ったのかドローン等機械類をゲ開部にけしかけるエンジニア部。何考えてんだかさっぱり分からん連中だけど、まあ私も手元に銃があればひょっとしたら乱入してたかも。

 ポテチとコーラ欲しい。……ねむ。

 

「──うわ!? ……と、そんなところにいたのかい、リノ」

 

「……あ? 今何時……あー、はい……」

 

 ニ時間も経ってないか、つか流石に出先で寝落ちはマズイでしょ。

 

「突然いなくなるものだからびっくりしたよ。君のことだから、平気な顔して居座りそうなものだったけど……」

 

「ガキの相手は苦手なもんでして。あー、出来たんで?」

 

「うん、これだよ。君の寝ている間に良いことがあってね、モチベーションも鰻登りというわけさ。理論上は問題ないはずだけど、動作確認していくかい?」

 

 銃口をさらにゴツくする太い筒状のパーツ、なんつーか単体で見るとTENG……いややめておこう、嫌な予感がする。

 重心は結構変わるな、引き撃ちは安定せんか。旋回にも影響出るし、接近戦には尚の事ハンデを背負う。しかし着脱の手軽さの分ほぼ踏み倒せる、そもそもこれ使うのごく一部のポイントでのみだし。威力の下げ幅次第だが……

 総評、さすがエンジニア部、良い仕事する。

 

「んーいや、もういい時間だし、地元がアレだから下校時間に被せたくないし」

 

「そうかい。……いつでも気軽に来てくれたまえよ」

 

「んー」

 

 カス共の大半は律儀に授業なんぞ受けず朝からハッスルしているが、一部のまともな生徒だって流れ弾を喰らえばキレ散らかす。人口密度とトラブルは正比例関係にあるってそれー。ですので、さっさと帰りましょね。

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