あるゲヘナ生のどうでもいいモラトリアム   作:匿名ゲヘナ生

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リノの原作知識はアビドス3章を完結直後にSNS情報受動喫煙、他は8割くらいです。



着任初日

 あー、クソやる気出んごす。ぽ。はー意味分かんないっすね、もーね、おファックですわ、つって、誰も見てないけど中指立てたりとか。Fick dich. なんつて。まあゲヘナ生たるものね、これくらいは嗜んどかないとですよね。チョビ髭モチーフはいないけど。赤冬に吸われた? 下手すりゃ連邦生徒会とピキィーンで三発目を投下だあっですよ、もうこれ消されんぞってね。本気でヤバそうと思いました(小並感)。内心の自由内心の自由。でもこれ内心じゃないかも知れんのよなぁ。

 

 はい、というわけで適当に電車降りたらやってきましたD.U.地区。

 あのクソボケ青封筒超人が失踪したおかげで私も休み無しで駆り出され、ようやっとチナッちゃんの動きから事態の収束を悟り、ゴルゴ顔になりながらもデスマーチを乗り切り、落差で近年稀に見る超低気圧に苛まれている。ふざけんなよボケが。

 

 本当に疲れたからさ、静かなところがいい。隈濃すぎてパンダみたいになってた風紀の皆には申し訳ないけど、まあ分かってたでしょ。むしろピーク時にバックレなかっただけ褒めてくれよ。

 人目を避けるように裏、裏、どんどんと奥へ進んでいく。

 

「……あはぁ。」

 

 D.U.の街並みはフェンス越しの眼下に広がり、都会の喧騒は一幕隔てたように遠く響く。鬱陶しいことこの上ない陽射しは両側のビルに遮られ、冷たい風と自販機の唸り声だけがそこにある。

 うん、いいとこ見つけた。

 珍しいことだ、こんな素直な気持ちはね。道覚えてねえけど、地図アプリにピン刺しとけばすぐ見つかるか。

 

 ──結局何もしないのが一番いいんだよな。何をしても楽しくないとか、何にもやる気が起きないとか、そういうことじゃなくて単に私は静かなところで何もしないのが一番合ってる。それだけ。

 

 地面に座り込み、適当なヒーリング系の曲を流して、力を抜いて上を見上げる。他者との付き合いにどれほどの価値があろうか。失望、落胆、諦観、いやもとよりさほど期待もしとらんが、こういうスタンスだから余計にってこともあるだろうかね。

 ただそれを知ってどうこうできるような問題でもない。循環参照してんだから特性と受け入れる他なし。

 忍耐と寛容で以て少しずつすり合わせを行うことが大切なのだと、コストに見合わない話だことで。先にリターンを提示されなかった時点でおしまいだよ、無いのが当たり前になったらね。

 

 あとはやっぱ前世、いや別世界の知識があるのも一因かもしれないね。過去の経験として残っている以上、どうにも別物として捉えるのは難しい。始まりがこちらに寄ってしまう。

 ま、これのおかげで自分の抱える問題を言語化して向き合うことができたわけだから一概に悪いとも言えないのだが。

 

 ──────いいんだよ。なんでも。

 ごつん、と後頭部を壁にぶつけ、いよいよ雲の流れの他は視界に入らない。ヘイローって透過するんだよね。

 誰に話すでもない自分の中でどれだけ理屈こねくり回しても目新しいものは生まれないって、ただ待っているだけでなく自分から一歩を踏み出すことが大事なんだって、分かってるけどさ。

 ──────この狭苦しい空間だけで、私は完結したいのだ。

 

"……えーっと、たぶんこの辺りから音楽が。……あれ?"

 

「…………うげぇ」

 

 わざわざ人気のないところ選んだってのになんで来るんだよ失せやがれ、ここには面白いもんなんて何にもねーぞ。

 とか、すっかり地主気分で声の方に目をやれば、そこにいたのはヘイローのない、くたびれたシャツを着た取り立てて特徴のない人間の成人男性。

 なんでこんなカビ臭いところにおいでになりやがる。

 完全無謬のシャーレの先生(デウス・エクス・マキナ)様。

 

 ……なんつーか、アニ先と便利屋先を足して紙ヤスリかけまくったって感じだわ。髪の話ではない。

 とりあえず変なフェロモン出してるとかはない。メモロビ時空ってのが実際のところどうなるのかはともかく、個人的にはあまり好かん面してる。

 

 つーかそもそも、前世記憶の影響からか元から希薄だった異性(つまり男)への興味は殆ど失われている。その代わりに他生徒の太ももやら無防備なパンチラやらを目で追ってしまうようになった訳だけど、まあ自覚あるしセーフでしょ。YES太ももNOタッチ。

 いや、ぶっちゃけ間の空間に頭突っ込んで吸いたいとか思わなくもない……

 

"えーと、はじめまして、私は……"

 

「知ってます。外からやってきた大人。超法規的権限を持った連邦生徒会お墨付きのシャーレとかいう良く分からん組織、その長。今キヴォトスで最もホットな話題。ですよね、先生(・・)?」

 

 そんなクソみたいな話はさておき、声もまあ見た目から想像する通り。いかにも人を安心させる類の声だ。

 しかし私って性自認はどうなっとんのだろ。スカート履いたり女の子っぽい格好することに特に抵抗はないけど、逆に先生始め男連中に裸見られてもあんま気にしなさそうだし、生徒、先生、ましてや動物やロボットの市民たちも恋愛対象として見れるかわからん。

 あと多分今突然先生に押し倒されたりしてもあんま気にしなさそう。私見た目だけは生徒のご多分に漏れず美少女(ただし手入れ不足)だからな、服もだらしないし、気持ちは分かっちゃう。まあこいつはぜってーやらねーだろうけど。

 

"あはは……有名人みたいだね。ところで、君の名前を聞いてもいいかな?"

 

「涼昏リノです。学校は……あー、別にいいか」

 

"うん、よろしく"

 

 何となく学校伏せたけど何の意味が……? 着任から日が浅いと思しきユウカ絆エピ時点でワイルドハントの生徒全部把握してるバケモンだぞ。いくらゲヘナがマンモス校とは言え同時に三大校、この時点で即特定してても驚かんぞ。

 まああんまり歓迎されてないのも察してるだろうし、分かってても知らんぷりしてくれるでしょ……多分。

 

「で、そのシャーレの先生がこんなとこまで来て何の用ですか? まさかお暇ってわけじゃないでしょ?」

 

"ま、まあ確かに暇ではないんだけど……。音楽が聞こえたから"

 

 思いっきり口元が引きつった。

 気ぃ抜いて垂れ流しとかそんなんあり? 何年これやってんの。まあしょうがねえわ、少なくとも近寄んなオーラ出しとけば向こうから無理に距離詰めては来ようとはしない、はずだ。

 

「……で? なんですか?」

 

 思いの外ぞんざいな声出て自分でもちょっとびびった。

 ギリ取り繕ったけどこれ絶対印象値↓だよね。いや初対面でうげとか言ってるし今更か。

 

"えーっと、良ければリクエストとかお願いできるかな……?"

 

「……あー、知ってる曲ならまあ……。お駄賃くらい頂きますけどね?」

 

 大変面倒なお願いではあるがなんつーか、罪悪感というか負い目というか、私にもあるんですよねそういうの。端から見りゃ傍若無人なサボり魔だろうけど、自分で認めた過失があれば埋め合わせくらいはね。

 ま、金は取るんですけどね。それはそれ、これはこれ。

 

"それじゃあ……『Constant Moderato』で"

 

 ……あ? ……何そういうこと?

 まずいか原作改変? なんで先生がそんなん知ってんだよ知らんぞそんな機能これリアタイ更新世界かオォン、普通に欲しい機能なんだがNEXON? まずいか、いや分類としてはお仕事ストーリーが濃いすか? だし結局連邦に絡まない以上大規模な介入は難しい、バタフライエフェクト的な部分はあり得るが、そこまで考慮したら日常生活すらままならないのは自明の理。そもそも別に改変したところで私が困るかというと知らんし。

 影響の有無、範囲も方向性も不明瞭ならば杞憂と言って差し支えナシ。ヨシ!

 

「……はいよ、お代はこちらに」

 

 静かで薄暗い路地裏に、ポップで軽快なメロディが広がっていく──ことはない。

 さっきやらかしたばっかだっての。ちゃんと先生だけに絞ってるよ。私は……まあ同じでいいや。

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