ワイ(男)「イズナの幼馴染です」 作:彼氏殿……彼氏殿だとぉっ!?
「……この辺りは飽きないな」
逃亡して来て一週間、毎日の様に誰かしら何かしらが騒ぎを起こしている。
割と治安がしっかりしているであろうトリニティでこれだとするとゲヘナはもっと酷いだろう。
「まさかまさか、百鬼夜行がまだまだ治安が良い方だと実感する日が来るとは思わなかった」
いや、ゲヘナよりはマシだなって感覚はあったけれどまさかトリニティより治安が良いとは。
それでも結構忙しめだったと思っていた時期が私にもありました。
「委員長殿がこちらに来たら泡を吹いて倒れてしまうかもしれん」
実際は苦笑いか、どうとも思わないかの2択になるとは思うが。
私も外面を作っている方だが、あの人の場合はちょっと洒落になっていない、そろそろ肩の荷物を下ろしてもらいたいものだ。
「……そろそろ何かしないとだな」
どれだけこの生活が続くのかわからないのに、いつまでも蓄えを浪費し続けるというのは辞めておきたい。
「はてさて、どう商いをしたものか」
正直、私がやるなら商売一択。
下働きの類だとどうしても委員長の呪いが発動してしまう。
「人が良いと損をするというのも、難儀なものだ」
あの人の下で生き方を学んだのが間違いとまでは言わない。
ただ……まあ。
「あの人にはもう少し器用に生きることを覚えて欲しかったな」
それはさておき。
先程から委員長の方向に思考がずれている。
「はは。副委員長共々、心配になるお方々だ」
正直、よく壊れないなと思う関係の一つであるというのはまた今度。
……ああそうだ。
「串屋でもするとしよう」
そうしよう、経験はある。
あとは設備が整えられるかどうかだ。
☆
「ふぅむ、闇市とて馬鹿にはできないなぁ」
古いが、中々良いものが揃っている。
無論外れも多いのだが。
「店主」
「何だい」
「この金網とコップ、あと提灯を」
「あいよ、毎度あり!」
「あと 」
とまあ、この様に寄るところ寄るところで買い過ぎてしまう。
ミイラ取りがミイラになる、と言う現象か。
「ふう……買った買った」
俺としたことが、どっさりと荷物を抱えてしまった。
前が見えなくなるリスクがあるから避けるべきなんだが。
「おっと」
「あっ」
誰かにぶつかってしまった。
「すまない、見ての通り前がまともに見える状況ではなくてね」
「いえ、こちらこそ。注意がおろそかになっていました」
ふむ、見えないが凛とした声だ、そして何より聞いたことがある。
……仕方ない、一旦荷物を下ろして見ようか。
ぶつかってしまった相手の顔も見ず、謝るだけと言うのは少々無礼だろう。
「ん、しょ……ふう。改めて、私は土御門ハク、先程は私の所為ですまなかった」
「
……おお、初期メンの子か。
「この辺りではあまり見かけない服装ですが……」
「ああ、最近百鬼夜行の方から越して来たんだ」
二次創作にばかり触れて来た身として正直なところ、あまり馴染みのない生徒ではあるが。
すごく真面目だという印象を受ける。
「なるほど、百鬼夜行から……」
「越したは良いが、越したまま過ごし続けるわけにも行かない。だからこうやって商いをする準備を進めていたんだ」
「そうでしたか」
越して来た理由以外は特に誤魔化す必要はない。
下手な嘘で疑いを持たれるのも面倒だ。
「飲食店を営むおつもりですか?」
「本当に小さなお店のつもりだけどね。それくらいの方が気ままに動ける」
「……承知の上かもしれませんが、この辺りは治安がとても悪い区域です。近くにブラックマーケットもありますし」
「……」
うん、ごもっとも。
阿慈谷さんに言ったことをほとんどそのままに言われてしまえば、私には返す言葉がない。
「承知の上さ、これでも腕に自信はある。それに……」
「?」
「君の様にパトロールをしてくれている頼もしい味方もいるだろう、自警団さん」
「……ご存知でしたか」
「噂を少し。実際に目にするのは、流石に初めてだけども」
誰かの会話を偶々盗み聞く形になってしまっただけなのだが。
トリニティの略式校章と盾が、彼女達のエンブレムなんだとか。
「準備が出来次第開店する予定だ、見かけることがあれば是非寄って行ってくれると嬉しい。サービスもしよう」
「……ふふ。成程、商売がお上手です」
そう微笑む守月さん、どうやら悪感情はないらしい。
開店前から1人目を確保することができたみたいだ。