ワイ(男)「イズナの幼馴染です」 作:彼氏殿……彼氏殿だとぉっ!?
「……」
どうも串屋です、人っ子1人いやしません。
このままじゃ初日から倒産してしまうッ。
「知り合いなんて声をかけた瞬間ジエンドだからな……どうしようもない」
モモトークを知ってる面々と言えば百鬼夜行なのだが、彼女達にはイズナを除いて誰にも事情を話さず出て来てしまっているのが現状だ。
そもそも伝えた瞬間連れ戻されかねない、調停委員会ならそうする。
「イズナは元気にやってるかな」
あいつはああ言う性分だ、俺がいなくなった直後は落ち込んで、ちょっとしたら空元気を回し始める。
そうして行くうちに、本当に元気になってもらいたい。
「……悪いことしたかなぁ」
……よし、湿っぽいのはここまでだ。
ただでさえ寂しい店なのに辛気臭さまで加わったらいよいよ倒産まっしぐらでしょうよ。
「とは言えお客が来なけりゃどうにもならない」
こうなるなら屋台形式にしておけばよかった。
そうすれば自らの足でお客のいる場所通る場所に合わせられた。
二階に自分が住むことを考慮した設計の場所を借りたばっかりに……。
「守月さんが来るタイミングなんてわかったものではないし。どうしたものか いっ」
しまった、指の先を切ってしまった。
呆けながら包丁を扱うなんて馬鹿な真似を、初日からしてしまうとは……。
料理をする者としてあるまじき失敗だな。
「……仕方ない、絆創膏と手袋を買いに行くしかない」
「お困りですか?」
「ああいえ、軽く指を切ってしまっただけなのでご心配には 」
飲食を扱う際に絆創膏はよろしくない、とは言え血も出ているし止血は必要だ。
自分の食べるものオンリーなら己が気にするのか否かだろうが、他人に提供するのであれば話は全く別。
……とか言う話をしている場合ではないな!
「えっどちら様」
「ケガ、されたんですよね? 見せてください」
「あ、はい」
あれよあれよと言う間に綺麗に手当てされていた。
……
「んー……と、とりあえずどちら様?」
「鷲見セリナです、他に痛い部分などはありませんか?」
「ああ、それは問題なく……あと私は土御門ハクだ。非常に失礼だと思うんだが、お礼がしたい」
「え? いえ、そういうつもりで助けた訳では……」
「そういう訳には行かない、ゴム手袋まで貰ってしまったからな」
全てわかっていたかの様に現れたお手軽ヒーラー……じゃなかった、鷲見セリナ。
瞬間移動と遠見の術でも持っているのかこの子。
……そういえばヤンデレものが多かったのはその所為か?
「そうしないと、罪悪感で今度は私の心が患ってしまうかもしれないな」
「……それはいけませんね」
「ありがたい」
まあともあれ恩には恩で返すのが私のやり方、小狡い言い方ではあっただろうが我慢して欲しい。
「持ち帰りの分もあった方が都合が良いだろうか」
「え? えっと……そうですね」
「はは、心配しなくとも味には自信がある方だ。特に焼き鳥の類はな」
ある副委員長からお墨付きを貰える程度の実力だが。
おそらく個人経営としては十分であるはず。
「……よし。では、試食用の鳥串だ」
「わぁ……!」
作ったのは自信作であるねぎま、当然だよな。
……何故か私の一番の得意料理になってしまった品だ、本当に意味がわからない。
「いただきます」
「ああ、ゆっくりと召し上がってくれ」
どうせ客はいないからな。
こう当人の立場になると広告ってのは大事なんだなとしみじみ感じるよ。
「あむ……」
鷲見さんが串に刺された肉を口に運び入れる、とても熱そうだ。
「んっ……! 美味しいです!」
「そりゃ良かった。この場所でも味には自信が持てそうだ」
トリニティじゃ口に合わないかもしれない、なんて店を開いてからの虚無時間で考えてしまっていたが、杞憂らしい。
「まだ食べるか? 在庫は沢山あるから心配しなくて良い」
「えっと……」
「手当てのお礼だと言ったろう。そういう遠慮もいらない」
生憎様、目を輝かせながら美味しいと言ってくれたお客に対して、利益が出ないからあまり食うなと言える人間性はしていない。
むしろじゃんじゃん食べてくれというタチだ。
「他にももやつくね、かわ……ささみなど色々ある。お裾分けするにも、食べてみなければ選べないだろう?」
この後、出てくる串に舌鼓を打ち続ける鷲見さんがいたとか、いなかったとか。
どこぞの御稜さん「私が育てました」