ワイ(男)「イズナの幼馴染です」   作:彼氏殿……彼氏殿だとぉっ!?

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夕闇に誘う狐宿

 夕暮れ時、寒空の中で。

 せっせと走る、影が一つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ、はっ……!」

 

 

 生徒達の悩みを聞いていたらこんな時間になってしまった。

 

 

「急がないと」

 

 

 この辺りはトリニティのはずれのはずれに位置していて、都市部と比べてとても交通の便が悪い。

 この夕暮れ時のバスを逃してしまうと、朝まで次の便が来ないのだ。

 

 ……そもそもの人口が少なくて、ブラックマーケットが近くにあるというのもあるだろうけど、学園の近くとは大違い。

 

 

「雨宿りしてる、暇もないっ」

 

 

 おまけに、晴れているのに雨まで降ってくる天気雨に遭遇する始末だ、とてもついていない。

 確か、この様な雨のことを巷では"狐の嫁入り"と呼ぶらしいが    

 

 

「あっ」

 

 

 つるりと、足から踏ん張る力が抜けて行く、滑ってしまったらしい。

 

 

「わぶっ!?」

 

 

 顔から水溜まりに突っ込んでしまう、普段はデスクワークばかりで動かない弊害だろうか。

 とても痛い。

 

 

「あ、いたたたた……」

 

 

 顔は泥だらけ、全身はびしょびしょだ。

 これでは流石に、バスに乗れない。

 

 

「ど、どうしよ……う……?」

 

 

 ふと、周りを見渡すと。

 私のすぐ隣には暖簾と提灯がかけてあった、お店の様だ。

 

 

「えっと……串屋『狐の仮宿』」

 

 

 店名は聞いたことがなくて、外から見る限り設備も真新しい。

 ……最近できたお店なのだろうか?

 

 

「灯りがついてる」

 

 

 ……とても申し訳ないが、ここでタオルを貸してもらうことはできないだろうか、と。

 最低限それだけ済ませて、あとは次のバスが来る朝まで、ホテルを借りるしかない。

 そう考え、私は引き戸を引いた    

 

 

「……おや、いらっしゃい」

 

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃい」

 

 

 本日、うちにやって来たのは大人の女性、ふむとても珍しい。

 ……しかしびしょ濡れだなこの人、顔には泥も付いている。

 

 

「あ、あの    

 

「一先ず、手ぬぐいを用意しよう。……お客を立たせたままというのもアレだ、どこか好きな場所にかけといてくれ」

 

「えっ、あ」

 

 

 しかし大人の女性か、大人    いや、先生は男だろうし。

 スーツこそ着ているが、名札の類はかけていなかった。

 ……数は少ないが、この世界には大人もいる、ということだろう。

 

 

「ほら、これで拭くといい」

 

「ありがとう」

 

「どういたしまして」

 

 

 ふむ、どうやら天気雨が降っていたようだな。

 いやはや、運の悪い御仁だ。

 

 

「最終のバスの為に走っていたところに、天気雨が降り出した。そしてこけた……と、言ったところか?」

 

「うぐっ」

 

「図星か、まぁよくあることだろうさ」

 

 

 この前訪れた守月さんによれば、この辺りはあまり遅くなると帰れなくなってしまう程バスが通らない区域なのだとか。

 故に、常に余裕を持って行動せねばならないとも。

 

 

「ちと不味いな、まだ雨も止んでいない。しかしバス停まで今から走って間に合うかどうか」

 

「近くでホテルでも……」

 

「ないぞ」

 

「えっ?」

 

「この近辺、ブラックマーケットこそあるが泊まれる場所はほとんどない」

 

 

 というよりブラックマーケットの所為で、な気もするな。

 兎にも角にも治安が悪く交通も不便、商売をしたとて赤字しか生まない場所さ。

 

 

「ご覧の通り、私の店も伽藍堂。細々と営業させてもらっている」

 

 

 幸いだったのは、近隣に住む住民達や鷲見さん守月さんが来てくれているお陰で大きく赤字、という状況にはなっていないことだろう。

 

 

「そ、そんな……」

 

「一応ブラックマーケットにはホテルもあるらしいが……ま、言うまでもない」

 

 

 帯銃……はしているだろうが、おそらく。

 それでもこの弱そうな御仁ではブラックマーケットは生き残れない。

 正直とても弱そうだ。

 

 

「う……どうしよう」

 

「誰か付近にアテはないのか」

 

「……ない、かなぁ」

 

「そうか」

 

 

 さて、私はどうするべきかと言ったところだろうが、その前に。

 

 

「よし、とりあえず食べると良い」

 

「えっ、あでも……」

 

「走って間に合わなかった場合もある、それならばいっそここで夕飯でも食べて落ち着くことも大事だろうさ」

 

 

 まずは身体を温めるところからだと、仕込んでいた味噌汁を目の前に置く。

 串物以外の経験はあまりないのだが、お店にするなら他の品物も必要だと押し切られてしまい……泣く泣く、色々なものに挑戦中である。

 

 

「……そっか。えと、いただきます……!」

 

「召し上がれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

    ごちそうさまでしたっ!」

 

「お粗末様でした」

 

「……結局楽しんじゃった」

 

 

 味噌汁を飲んだ後吹っ切れたのか、ゆっくりと品物を注文し始めていたな。

 

 

「口にあったのであれば何よりだ」

 

「うん、タオルもありがとうね、ハクさん」

 

 

 ……どうやらこの御仁、私のことを大人と勘違いしているみたいで。

 まあ制服ではなくただの和服を着用しているし、人より背も高い部類故仕方ないと言えば仕方ないのだが。

 否定した後、事情を説明するのもアレだった為特に否定はしていないのだ。

 

 

「この後はどうするつもりだ」

 

「ええっと……」

 

「貴女が良ければうちの二階を貸すことも可能なんだが」

 

「えっ?」

 

 

 基本的に二階を住まいとしているのだが、1人で使い切れるものでもないからな。

 部屋の一つをこの御仁に貸し出せば良いだろう。

 

 

「男と一つ屋根の下、というのが受け付けないのであれば無理強いはしない」




弱そうな女先生vs先生=男とかいう固定観念に囚われた男vsダークライイズナ ファイッ
彼は二次創作で何を学んだんでしょうか
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