星を目指して   作:白蜜8901

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 現在のレベルとスキル熟練度

 シズク
 レベル:14
 スキル熟練度:
 ・両手槍[138]
 ・投剣[96]
 ・釣り[80]
 育成傾向:
 速さに寄ったパワーファイター

 アベル
 レベル:14
 スキル熟練度:
 ・片手剣[125]
 ・盾[100]
 ・剛力[69]
 育成傾向:
 単騎で攻防を両立したタンク


仲間が増えた日

 2022年11月20日(日)08:00

 アインクラッド第1層

 東側の村の酒場

 

 

「さてト…オレっちの言いたいことはわかるナ?」

「あー…」

「な、なんのことかしら〜?(冷や汗目逸らし震え声)」

 

 私たちは現在、アルゴに詰められている。

 

 事の発端は2日前のダンジョン脱出後に遡る。

 村の宿に帰還して一息つき、今回のダンジョン行きで得られたアイテムやクエスト報酬を整理していた時のこと。私はこの世界に囚われた後のいつものノリで、アルゴにクエストの情報をメールで送った。

 今回もそこそこの価格で売れるかとウキウキして1日経ったところ、返信されたメールに書かれていたのは至ってシンプル。

 

『少し話があル』

 

 以前の丁寧な文面ではなく普段の口調そのままで送られてきたメールに、どこか強めの感情が含まれているように感じた。

 そうして今日に至る。

 

「まず第一に、オレっちはNPC店員じゃなイ。武器や道具を売れば無制限に金を引き出せる存在じゃなイ。オメーらと同じプレイヤーだ。わかるナ?」

「は、はい!」

「仰る通りです!」

 

 思わず敬語で返事をする私たち。淡々と話すアルゴの言葉の端々からは強い怒気を感じる。

 

「それに加えテ、今は一刻も早くこの状況を打開するために寝る間を惜しんで情報を集めているところダ。コレはオレっちだけじゃなク、オレっちを含めた多くの情報屋が同じ気持ちで臨んでいる。このゲームを1日でも早くクリアするためにナ」

「「……」」

「そんな中でオメーらから送られてくるβテストでも見たことが無い未知の危険なクエストの情報。オメーらこの短期間にどれだけ自分の命を危険に晒したと思ってル?」

「そ、それは…」

 

 なんて言葉を返そうかと言い淀む私とアベル。

 するとアルゴは私に鋭い視線を向ける。

 

「特にシズクっち。オメーさんには保護者としてアベルの事を任せていた筈だガ、これは一体どういう事ダ?」

「うっ…」

「え?そうだったのか?」

「アベルは少し静かにナ〜。で、どうなんダ?」

「か…返す言葉もございません…」

 

 確かにこれまでの動向を振り返ってみると私が発端で危険な目に遭っていることが多いような気がする。ホルンカの村のギガントアロワナに、この村のフルーツ。一昨日のダンジョン行も、元を辿れば私の欲しいアイテムの収集にアベルが付き合ってくれたようなものだ。

 

「まぁメールを見た限りオメーらが不可抗力で発生したクエストや戦闘に巻き込まれていたのは理解できタ。けどそれ以前にシズクっち、オメーには慎重さが足りなイ」

「はい…ホントその通りです…」

 

 そうしてアルゴは目に入れていた力を少しだけ抜いてテーブルに置かれた水を少しだけ啜る。

 

「とまぁ、オメーらのことがオネーサンとしては非常に心配になってしまってナ…そこで提案なんだけどヨ」

 

 アルゴは人差し指を立てる。

 

「ここは一つ、オレっちをパーティーに加えては貰えねぇカ?」

「「え?」」

 

 唐突な提案に私とアベルは顔を見合わせる。ひとまず私がアルゴの話を聞くことにした。

 

「えっと、理由を聞いても?」

「大きく2つあル。単純にオメーらの事を心配しているのが一つ。それともう一つが結構大きな理由でナ」

 

 そう言ってアルゴは(おもむろ)に一冊の本を取り出す。

 

「コレ、何だと思ウ?」

「本、よね?」

「けどβテストではそんな本は見たことがなかったと思うんだが…」

「百聞は一見にしかずダ。ちょっと読んでみてくレ」

 

 アルゴから差し出された本を手に取り、中を軽く流し読みする。

 そこには第1層の簡単な地理に出現するモンスターとドロップするアイテム。さらには村で売ってるアイテムに発生するクエストまで書いてあった。

 

「これって、もしかして攻略本?」

「そのとーリ!」

「じゃあ付いてくる理由っていうのは」

「そう、その本を書くためサ。

 どうもオメーら、と言うかシズクっちは妙にスリリングなクエストと縁があるみたいだからナ。これを期にオレっち自身の眼でその手のクエストを確かめたいと思ったのサ。そして得た情報を元にこの本を執筆するヨ」

「すごいじゃねーかアルゴ!いいよなシズク!」

「そうね、私としてもアルゴさんが一緒にいるのはとても心強いと思うわ。でもご迷惑じゃないかしら?」

「むしろオレっちの目の届かない所でオメーらが危険な目に遭ってるほうが心臓に悪イ。シズクっちなんてこのゲームで初めて得た同性の友人だゼ?」

「なあシズク!おれからもお願いだ!元βテスターだから腕も立つし、何よりこいつの方が知っていることも多い。ここは全力で頼らせてもらおうぜ」

 

 と、アベルが全力でアルゴの事をアテにしようとしていたが「あ、因みニ」と続く言葉で一気に気勢が削がれることになる。

 

「オレっちから話す情報については売物だから当然タダじゃなイ。相応の対価を貰う予定だからそのつもりでナ?」

「………(パクパク)」

 

 アベルは呆然としている。全力でたかる気満々だったのだろう。

 

「では、戦力として頼りにさせていただきます」

「毎度あリ〜」

 

 私は手元で開いたメニュー画面を操作し、アルゴにパーティーへ誘う旨のコマンドを送る。アルゴの手元にメッセージウィンドウが表示されるのが見えた。

 彼女は迷うことなく《◯》のボタンを押し、それに伴い視界の左上に新たなHPバーとプレイヤーネームが表示された。

 

「まァ短い間だと思うけド、暫くよろしく頼むヨ」

 

 こうして私たちに心強い仲間が一人、パーティーに加わった。

 

 ◆ ◆ ◆

 

 同日09:30

 同層

 拠点付近の平原

 

 

「という訳デ、早速オレっちの戦闘を見て貰おうカ。本当なら金を取るところだガ、仲間として行動する以上特別にタダで見せてやるとするヨ」

 

 頭に被ったフードを外しながらアルゴは言った。黄色いショートの頭髪が風に吹かれてふわりと舞う。初めて彼女の素顔を見たが、これがなかなかに可愛らしい。

 特に目を引くのが頬に引かれた三本一対のヒゲのようなペイント。キャラメイク時には入墨や化粧などの項目はなかったから、そういったオプションはNPCのショップなどで施してもらえるのだろうか?

 

 閑話休題。

 

 私達の仲間となったアルゴが最初に勧めてきたのは連携の確認だった。

 

「実はβテストではどんな感じで戦ってたのか知らなかったからちょっとワクワクするぜ」

「情報屋として単独行動の機会が多いと思うから、どう戦うのか少し気になってたのよね。お手並み拝見」

「あー…今までこういう機会なかったせいカ、なんかこうして見られるトちょっとだけ恥ずいナ…」

 

 アルゴはそう言ってはにかみながらメニュー画面を開く。画面に表示されたキャラフィギュアにアイテムを動かす動作が見られたが、何を動かしているのかはこちらからはわからない。

 操作が終わるとアルゴの両手に手甲のようなものが出現する。このゲームには素手で攻撃するタイプのスキルはなかったと思うが…

 

「なるほど、かなり珍しいけどアルゴにはピッタリな武器だ」

「え?アレって武器なの?」

「まァ見てなっテ」

 

 するとタイミングよくモンスターがポップする。淡い青い光から現れたのは2体の蜂型モンスター『イエローワスプ』だ。

 同じ蜂型モンスターでもホルンカの村周辺で戦ったタイプと違い、こちらは平原を縦横無尽に飛び回ってプレイヤーを翻弄する。遮蔽物が多かったがその分ある程度移動が制限されていた森とは違い、こちらは障害物が無い分その飛行能力を十前に活かせる。私たちが最初に戦ったときは、かなり苦労して倒した覚えがある。

 

「ンじゃあ行くゼ」

 

 そう言ってアルゴは姿勢を屈め、次の瞬間には猛スピードで蜂に突っ込んでいった。

 

「は、速い!?」

 

 あまりにも速い。恐らくはAGL(すばやさ)に大きくステータスを振り、そこへ突進系ソードスキルを上乗せする事でこのとんでもない速さを実現しているのだろう。その証拠に両手に付けられた手甲が蒼白いライトエフェクトを纏っている。いよいよ蜂に到達するその瞬間、大きく振り被られた両腕が勢い良く蜂に突き出される。

 

「まずは一体!」

 

 最初に狙われたイエローワスプは、アルゴの速さに対応しきれず、そのソードスキルを避けることは叶わない。

 この時、私は漸くアルゴが装備していた武器の正体に気が付く。

 それは昨今のファンタジー系RPGでは格闘家職の装備としてはありふれた、けれども現実に使うとなればかなりの度胸と技量が必要となるであろう武器。

 この世界においては、アルゴほどの背丈と驚異的な素早さが合わさって初めて武器として成立するような、使い手をかなり選ぶであろう武器。

 鈎爪(かぎつめ)だった。

 

 両手爪ソードスキル単発突進技【アトローシャス・チャリティー】

 

 突き出された両腕からは3本でワンセットの光の筋が、まるで獣が獲物に噛みつくかのように綺麗に一点で合わさる。

 素早い動きが強みのイエローワスプはその分耐久力が低い。避ける間もなく諸にソードスキルの一撃を喰らった蜂は、頭上のHPバーを一瞬で消滅させて四散した。

 

「よシ次!」

 

 続け様に近くで湧いていたもう一体に狙いを定めてその懐に飛び込むアルゴ。その瞬間にアルゴの頭があった場所をイエローワスプの毒針が襲う。

 攻撃後の硬直に入ったイエローワスプの背後に回ったアルゴは、立ち上がると同時に跳び上がり、右手の爪をアッパーカットの要領で足元から大きく振り抜いた。

 

 片爪ソードスキル回転跳躍斬り【ラパーマ】

 

 空へと昇る赤い螺旋のライトエフェクトが、その技の持つ性質を物語る。

『取り敢えず放てば当たる』

 そんな信頼性の高さがアルゴから感じられた。

 

 この技の威力はそこまで高いわけではなかったのか、イエローワスプのHPバーは数ドットを残して減少が止まる。しかしソードスキルがヒットした事で蜂は大きく体勢を崩す。

 着地と同時に技後硬直が解けたアルゴはその隙を逃さず追撃。あっと言う間にHPバーを全て削られ蜂は爆散した。

 

「フゥ…ざっとこんなもんサ。どうだイ?」

 

 10秒にも満たない僅かな時間。

 しかし私たちがアルゴの事を知るには十分な時間だった。

 

「勉強になりました!」

 

 私個人としては今のアルゴの動きは、今後の戦闘で大いに参考になる。

 彼女は自分の使うソードスキルをよく理解している。

 どの場面でどういう技が有用なのか、それを瞬時に組み立て実行してみせた。

 何れは私もああなりたいものである。

 

「一つ質問いいか?」

「なんだイ?」

 

 アベルは何か疑問があったらしい。

 

「片手爪スキルは両手に爪を装備している時には使えなかったはずだぜ。どうやったんだ?」

「ああ、それなら簡単だヨ」

 

 そう言ってアルゴは両手に着けた鈎爪を見せる。

 するとどういう原理なのか、手甲から伸びていた爪が一瞬で引っ込んだ。

 

「ファンタジーアクションお約束!原理不明の出し入れ可能な不思議な暗器〜」

「すっげえ!なにそれカッケー!!」

 

 ──ジャコンジャコン。

 

 そう音を立てて露出と収納を繰り返す両手の鉤爪。この状態変化を利用して片手爪モードと両手爪モードを切り替えるらしい。アルゴはどこか得意げな顔をしている。

 

「そんな便利な機能があるならさっきはどうしてインベントリに収納していたの?」

「オレっちにとっては使う武器の情報も立派な商品だからサ。そう安安と手の内は明かさないように気を付けてるんだヨ。これから一緒に戦うことになるオメーらだけの特別ダ」

 

 私たちに向けて少しだけ前屈みになり、口元に人差し指を当てて可愛らしくウインクしながらアルゴは言う。

 

「で、ソイツはどこで売ってるんだ?」

「オオット此処から先は有料ダ、その情報には500コルを要求するゼ?」

「何だよ〜教えてくれたっていいじゃんか〜」

「ニシシ〜悪いケドこれも立派な商売でねェ〜」

 

 ぐぬぬ。とアベルは唸る。そこで私はふと思い出した。

 

「あら?情報量は負けてくれるんじゃなかったかしら?」

「ゔ、シズクっちは憶えていたカ…仕方が無イ、400コルだヨ」

「はいよ」

「毎度アリ〜。はじまりの街に変な店があってヨ。これの他にも色々あったゼ。で、場所は──」

 

 そんなやり取りを行った脇で追加で3体のモンスターがポップ。内訳はイエローワスプ2体にダイアウルフ1体。

 

「今度はオメーらの戦い方を見せてくれ」

「よっし!行くぞシズク!」

「ええ!」

 

 私達は各々の得物を構えてモンスターへ向かう。アベルは左手の盾を前面に突き出してモンスターの攻撃に備え、私は懐の投げナイフを意識しつつアベルに追従。

 最初に攻撃してきたのは1体のイエローワスプ。腹部から伸びた鋭い毒針をアベルへ向けて急突進。アベルはそれを盾で難なく防ぎ攻撃を弾き返す。怯んだ隙を私が投げナイフによる【シングルシュート】で攻撃。投剣スキルが上がったことで威力が僅かに上昇しているおかげもあってか、耐久力の低いイエローワスプはこの一撃で倒された。

 仲間が倒されたことでモンスター達はタゲをアベルから私に変更。次々に私へと攻撃が繰り出されるが、それを私は射線から逸れたり距離を取ったりするなどをして回避。

 そして私に夢中でじゃれついていたダイアウルフは背後から来るアベルの【レイジスパイク】で光となり、最後の特攻とばかりに私に突撃してきたイエローワスプは私の放った【プレオン】で串刺しとなった。

 

「ナルホドナルホド〜」

 

 私たちが戦っていたその様子をアルゴは顎に指を当てて感心した様子で見ていた。

 

「どうだアルゴ?」

「結構上手くやれたと思うのだけど」

「うーン…」

 

 ひとしきり唸った後にアベルは私へと向き直る。

 

「シズクっち」

「はい?」

「オメーってホントにSAO…と言うかこの手のフルダイブゲームは初めてなのカ?」

「え?はい、そうですけど?」

「…とんでもねーモンが生まれちまったかも知れねぇナ…」

「??」

 

 少し考える素振りを見せたアルゴは「ヨシ!」と声を上げてこう続けた。

 

「オレっちは戦闘面は全面的にオメーらの指示に従う。それでイイか?」

「お、よく分かんないけどいいぜ!」

「?私も異論は無いわよ」

「ンじゃ今日から頑張ロー!」

 

 アルゴに一体どんな考えがあってその答えに行き着いたのかは私にはわからない。けどそれは私達にとってマイナス面に働くもので無いことは何となく理解できた。

 彼女が私達を信じると言ったなら、私はそれに応えるだけだ。

 

「じゃあ早速なんだけど、良いかしら?」

「オイオイ…まさかいきなりカ?」

「なんか村のNPCたちとすっかり仲良くなってよ…それでまぁ色々と…」

 

 私達はアルゴを連れてクエスト行脚を始めた。日が暮れて宿に戻る頃には何とも味わい深い顔色を浮かべていたアルゴなのだった。




 アルゴの爪スキルについてはまた少しずつ映画と単行本を少しずつ思い出しながら書いていきたいと思います。
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