レベル:15
スキル熟練度:
・両手槍[140]
・投剣[100]
・釣り[96]
育成傾向:
速さに寄ったパワーファイター
アベル
レベル:15
スキル熟練度:
・片手剣[138]
・盾[109]
・剛力[77]
育成傾向:
単騎で攻防を両立したタンク
アルゴ
レベル:12
スキル熟練度:
・片手爪[100]
・両手爪[68]
・隠蔽[87]
育成傾向:
スピード特化の斥候
2022年11月22日(火)17:00
アインクラッド第1層
拠点の村宿酒場
「…『新商品の開発』『心を届けて』『大豊作につき』『かくれんぼチャンピオン』『大変な迷子』『憧れの新居』…いったい何をやったラこんだけのクエストと巡り会えるんダ?」
──ワイワイガヤガヤ。
「いやそのぉ…何となく色々見てたら自然とそうなったと言うか何と言うか…」
「おれはもう慣れた」
驚くことに、これらのクエストは全てこの村で発生した未発見クエストである。中には私やアルゴにも発生条件が解らないクエストがあるため、アルゴの攻略本にも載せ辛いのが残念なところだ。
「念のため時間を置いて同じクエストをオレっちが個人で受けたものもあるガ、どれも初回とは特に報酬の違いはなかっタ。これだけあるとβテストで見なかっタと言うよりハ、単純に元々あったこれらのクエストにオレっち達が気が付いて居なかっタって線も考えられるようになってくるヨ」
──ドンチャンパフパフ♪。
「でも、どのクエストもそこまで報酬は大した事ないのよねぇ。一応装備品とかは貰えたけど私達には使えないし、後はいつも通り消耗品が補充されたりお金と経験値が入ったりするくらいで」
──ざわ…ざわ…。
「と言うか少し気になったんだが…」
おずおずとアベルが手を挙げる。
「最近なんか賑やかじゃないか?この店…と言うか村そのものが」
「言われてみればそうだナ…」
──ワイワイガヤガヤドンチャンパフパフざわ…ざわ…。
いつも利用客が私達しか居なかった村の宿酒場はかつてない程の賑わいを見せていた。周囲を見渡すと多くの人がテーブルを囲んでいるが、頭上のカラーカーソルを見るとその色は黄色。つまりはNPCを指すカーソルが見える。この村にプレイヤーはほぼ私達しか居ないというのにそんなのが気にならないほどの賑わいだ。
「え?これって時間と共にこうなるものじゃないの?」
「おれが知っているかぎり、この村がここまで賑やかになった所はβテストでは見たことがない」
「オレっちもだ。と言うか最初にこの村に来て思ったのガ『あれ?この村こんなだったカ?』だからナ」
「正式サービスで何かアップデートが加えられたとかは?」
「それもない。最初におれたちがこの村に来た時は、おれの知ってる『なにもない村』だったからな」
「うーん?」
少しだけ考えを巡らせる。今のところこの村を中心に活動をしているのは私達だけ。ならばこの村の状況は私達の行動が影響を及ぼしていると考えるのが自然。
では私達の行動とは?
「ねえ、今まで私達が熟してきたクエストって憶えてるわよね?」
「それはもちろん」
「何ならオレっちが入ってから情報収集を兼ねて片っ端からクエストに手を出していなかったカ?」
「もしかしたらそれが関係しているかもと思ったのよ」
この村に来て最初に行ったアベルの知らないクエストは『村の特産品』と言う第1層中央部の沼地からとある果実を採ってくるという採取系のクエストだった。
しかしよく考えると少しおかしいことに気が付く。そもそもこの果実は村には無かった筈なのに、クエスト名は村の特産品とある。初めからこの果実は村にはなかったから、それ以前から特産品だったと考えるのは何か違う。
ならばどうしてこのクエスト名なのか?
「まさかとは思うガ、シズクっち達がその果実を持って帰ってきたことでそれが村の特産品になったということカ?」
「今考えるとそうとしか思えない。それに他のクエストも見てほしいの」
この村で受けられたいクエストのいくつかをリストアップする。並べてみるとあることが分かってきた。
「『新商品の開発』は武器屋で受けたやつだったナ。モンスターがドロップする結構レアな素材を持っていくシンプルなやつだっタ。報酬として完成品一号のそこそこ性能の良い短剣カテゴリーの武器が貰えタ」
「『心を届けて』は手紙の配達だったな。まさかここからホルンカの村まで行って帰って来るなんて思わなかった」
「『大豊作につき』も村の畑の収穫の手伝いだったけど、よく見たら収穫物の中に沼地で採取した果実があったのよね」
「『かくれんぼチャンピオン』では子供たちの人気者になれたゼ」
「…あ!そういう事か!だんだん分かってきたぞ!」
そう言ってアベルは続ける。
「このクエスト全部が村を発展させるものだったんだな!」
「村の発展かァ。だが一つ疑問があるゼ」
「疑問って?」
アルゴは私達の目を見て問う。
「いったい何のためニ?ってことダ。ここまで大掛かりなことをしてこっちにはどういう見返りがあるんダ?」
「多分だけど情報ね。それもβテストからでは無く、正式サービス版ならではの」
「は?」
「あのテーブルの人達を見て」
私が指し示す丸テーブルでは3人のNPCの男が酒盛りをしていた。
「あの人達、見覚えある?」
「あのなシズク…NPCの顔なんて一々憶えていないぞ」
「いいヤ、オレっちにはわかったぞ。確かにアイツラはこの村で見た覚えはねぇナ」
「私の記憶が確かなら、彼等はホルンカの村に居たはずなのよ」
この村に来る前にホルンカの村で数日間滞在した時、アベルと共に今回と同じくクエスト漁りに奔走していた私は様々なNPC達と触れ合っている。
テーブルを囲んでいる彼等はその中でモンスター素材の収集を依頼してきた商人だった記憶がある。
「よく憶えてたなシズク」
「えっへん!」
「で、ソイツらがどうしたんダ?」
「ちょっと会話を聞いてみましょ」
そうして私達は丸テーブルを囲んで談笑する彼等の会話に耳を傾ける。
「しかしここに来た剣士様は流石だな!」
「だな!こんな何も無い村によくここまでしてくれたよホント!」
「森の村や南の街までの交易路も整えてくれたお陰で村の懐もかなり潤いましたし、本当にありがたいですよ〜」
「何よりコボルドに根こそぎ盗られたあの果実を取り返してくれた!」
「衛兵も駐留してくれるようになったそうじゃねえか。もうこの村で悪さは出来ねえな」
「おめえにその度胸はねえだろ!」
「違いねえ!」
「「「わはははは!!!」」」
──グビグビプッハー!!
「そういや森の北側にも街があるそうじゃねぇか。そっちはどうなんだ?」
「それが道中は複雑で迷いやすいし、崖伝いの道は所々崩れている箇所もあって馬車なんかマトモに通れないんですよ〜」
「じゃあ中央の谷の方は?」
「何言ってるんですか!それこそ自殺行為だ!あんな危険な魔物が野放しになっているんですよ!」
「わ、
「それこそ剣士様に何とかしてもらうしか無いですよ…」
「うーん…だけどよ…」
「そうなんだよなぁ…」
「「「ハァ~…」」」
「ね?」
「ん?どういう事だシズク?」
「…恐ろしく会話が自然ダ。そもそもNPC同士でこんなやり取りが交わされているのをオレっちはβテストでは見たことがなイ」
「あ、言われてみたら!なんでおれは気が付かなかったんだ?」
「それはちょっとあとで考えてみよう。ちょっと面白い話が聞けそうだから行ってくるわ。2人はそこで待ってて〜」
「あ、オイ!?」
私はアベルとアルゴを席に残して酒盛りをしているNPC達の所へ話を聞きに行った。
◇ ◇ ◇
side Argo
「何なんだろうナぁ…シズクっちって奴は」
テーブルを囲んで酒盛りをしているNPC達に混ざって談笑しているシズクを見て、らしく無いと思いつつもそんな言葉が出る。
「けっこう変わってるだろ?」
「確かにそうなんだガ、戦闘時のギャップが激しすぎてナ」
「わかるわかる」
村のクエストを進めていく過程で戦闘に入ることは何度かあり、その中ではシズクに助けられる場面が何度かあった。
オイラはシズクのことを詰めが甘く慎重さが足りない初心者だとずっと思っていたが、実際は逆だ。
両手槍という間合いの有る武器を扱う為か視野が広く、戦局を我々と比べて俯瞰しやすいところに常に居るように立ち回ってる。その上で自分が関わるべき戦闘に積極的に介入し、我々の戦いを常に有利である様に進めている。
しかもそれに加えて誰に対してどうフォローをすればいいのか的確に判断ができているのだ。戦闘時に一番助けが欲しい場面でオイラが何かを言う前に手が入ったときは、驚いて思わず声が出そうになった。
ソロでの戦闘もかなりの腕だ。相手の間合いの外から攻撃できる両手槍の特性を十分に理解しての立ち回りができている。そこに加えて飛び道具の扱いについても思わず舌を巻くレベルだった。
このデスゲームが始まってまだ一月が経っていない中、ある意味一番目覚ましい成長を遂げているプレイヤーがシズクなのはまず間違いないだろう。
だからこそ疑問が湧く。
「なぁアベル。ちょうど二人きりになれたかラ、アベルにも少し聞きてェ」
「ん?何だよ」
NPCの商人たちと楽しそうに話をするシズクを遠目にオイラはアベルに話しかける。
「オメーから見てシズクはどう見えるんダ?」
「どうって?ゴメンもうちょっと分かりやすく話してくれ」
「あー、オレっちもすまねェ。けどコッチもなんて聞いたら良いかよくわかんねえんだヨ。だからアベルから見たシズクっちの話を聞かせてほしイ」
「うーん…そうだなぁ…」
アベルが話し始める寸前、何かを思い出したように口を開いた。
「その前に対価の話をしようぜ」
「オメーも強かだな…分かったヨ。じゃあアベルが聞きたい情報と交換ダ。これでいいだロ?」
「よし決まり♪そうだなぁ…」
そうしてアベルの口から語られるシズクを言葉で表すなら『変な女』の一言に尽きる。
趣味として始めた釣りがかなり板についてきて、今じゃ欠かせない金策の一つとなっていること。
咄嗟の判断で出てくる対応があまりにぶっ飛びすぎていること(モンスターから逃げる際に担がれたと聞かされた時は一瞬理解が追いつかなかった)。
基本的に行動が行き当たりばったりなのに何故か最後には上手くいっていること。
なかでも意外だったのは初戦闘では相当もたついていたのに、一度ソードスキルの事を教えたらみるみるうちに技術を吸収していったことだ。
「ソードスキルの事を教えた後さ。アイツの中で何かが変わったように見えたんだ」
「何かってなんダ?」
「それはおれにも分かんねぇ。一つだけ言えるのはアイツは間違いなくこのゲームで強いプレイヤーになれるってことだけだ」
「それはオレっちも同感だガ…うーン…本当に謎だナ…フルダイブも初めての割にはかなり動き慣れていたシ…」
「何か、学生時代に新体操部?だったらしいぜ」
「ナルホド一応運動経験はあるのカ。けどそれにしたってやっぱおかしイ」
「おかしいって?」
「オレっちもお前さんも、この世界で動くことに慣れるのは結構時間がかかったんじゃねえか?早くても数日、遅くて大体1週間は無いとこの世界で体を動かすのはかなり大変だったはずダ」
ソードアート・オンラインより以前、ナーヴギアを用いたこの手のフルダイブゲームは数は少ないながらも存在はしていた。と言っても最初期に出たその殆どが四畳半から八畳くらいの四角い部屋で行うパズルや脱出ゲームが主流だったが、それでも現実の身体から精神を切離してまるで別世界に居るかのような体験は感動が大きいものだった。
しかしそれでも現実と仮想空間とでは異なるものは確かにある。それが情報伝達の速さだ。
とにかく早く体が動く。そう動こうと考えた時にはすでに動き始めているような。最初の内はとにかく自分の意志が体に振り回されているように感じたものだ。現時点でオイラの情報にある強プレイヤーもβテスト期間を含めた下積みあっての強さだ。
ここまで考えると運動能力とか以前に脳の構造から一般のプレイヤーとは異なるような、あり得ないと思いつつもそんな考えが脳裏を過ぎる。
「…今度コツとか聞いてみるかァ。期待はしないけド」
「あ、戻ってきたぜ」
5分と時間が経つ前にシズクがテーブルに戻ってくる。その様子はオイラたちから離れる前とは少し違っていた。
side out
◇ ◇ ◇
「あ、戻ってきたぜ」
「ただいま、二人とも」
「どうしたシズクっち?なんかさっきと様子が違うみたいだガ?」
「ちょっと…二人に相談したいことがあってね」
NPC達から聞いた話を頭の中で整理する。個人的にはある意味で待ち望んでいたものではあったが、あまりに突然のことで一人で抱えるには大きすぎる内容だった。
「単刀直入に行くわね。フィールドボスの攻略について、相談させてほしいの」
次回フィールドボス