AI生成 FGO SS 鍋焼きうどん食べたい 作:日毎に特定の条件を達成
◆FGO短編SS
『七味唐辛子とうどんと、ふたりの距離』
ぐだ子が食堂に足を踏み入れたとき、湯気の向こうでエミヤが鍋に向かっていた。
その表情はいつも通り静かで、しかしどこか嬉しそうな気配が混ざっている。
「……今日の夕ご飯、早い?」
「いや。君の足音が聞こえたので、そろそろだろうと湯を沸かしていただけだ」
「足音でわかるの……?」
「毎日食堂に寄り道するマスターの癖は覚えやすいからな」
軽い言葉なのに、胸の奥がくすぐられたようで、ぐだ子は少し肩をすくめた。
「で、今日は何作ってるの?」
「うどんだ。昼の戦闘で体力も神経も使っただろう。刺激は控えめに――と、思っていたんだが」
エミヤは棚の隅から『七味唐辛子』を取り出し、ほんの少しだけ振って見せた。
「……ほんの少しなら、悪くない」
「絶対、ちょっとじゃなくて美味しい量を入れるでしょ」
「さて、どうだろうな」
言いながら、茹であがったうどんを手際よく氷水に取り、きゅっと締めた。
その動きがあまりにも滑らかで、ぐだ子はつい見惚れてしまう。
「はい、これを持ってくれ。薬味皿だ」
「はーい……わ、ネギいっぱい」
「香りが良いからな。あと生姜も少し。七味は、君が調整するといい」
差し出された湯気のたつ丼は、見ただけで緊張がほどけていくようだった。だしの香りが優しくて、体の奥にそっと触れてくる。
「……いつも思うんだけどさ。なんでこんなに落ち着くんだろ」
「料理とは、安心を再構築する作業でもある。君にとって“帰る場所”の一部になれているなら、サーヴァントとしては本望だ」
そんな真面目なことを言いながら、エニヤは七味のふたを開けた。
ぐだ子が慌てる。
「あっ待って! 私が自分で入れるって!」
「心配するな。これはほんの“香りづけ”だ」
ぱらり、と二振り。
たったそれだけなのに、七味の複雑な香りがふわっと広がった。
「……あのね、エミヤ」
「なんだ?」
「これ絶対、“香りづけ”の量じゃないよね」
「さて、どうだろうな」
同じ言葉なのに、ほんの少しだけ微笑んでいる彼の顔が、いつもより柔らかく見えた。
ぐだ子は七味の瓶を手に取り、エミヤをじーっと見つめる。
「じゃあ私も入れよっと。倍返しで」
「待て。辛味は蓄積するんだ。調子に乗るな」
そんな軽い言い合いをしながらも、どちらも楽しそうだった。
ひと口啜ると、だしの甘みと七味の香りが舌の上で混ざり合い、じんわりと広がっていく。辛さより先に、温かさだけが胸に落ちてくる。
「……あー、これ好き……」
「そうか。なら良かった」
「なんかさ、毎回言ってる気がするけど、これほんと元気出る。今日の私、七割くらいエミヤのうどんで生きてる」
「七割は少し多いな。せめて五割にしてくれ」
「じゃあ六割!」
「交渉になってないぞ」
ぐだ子は笑いながら、もうひと口啜る。
七味の刺激がほんの少し唇を熱くして、その温度がなんとなく心地よい。
食堂の明かりが湯気に反射し、ふたりの距離だけがぽつりと温かく照らされていた。
「ねえエミヤ」
「なんだ?」
「……明日もうどんでもいいよ」
「そんなに七味が気に入ったのか?」
「うどんと、七味と、あと……」
言いかけて、ぐだ子は視線を逸らした。
エミヤは小さく息をつき、しかし穏やかに微笑んで答える。
「――明日も作ろう。君が食べるなら、何だって用意するさ」
湯気の向こうで、七味の香りがふわりと広がった。