AI生成 FGO SS 鍋焼きうどん食べたい 作:日毎に特定の条件を達成
◆FGO短編SS
『宵のやすらぎ、エミヤの夜食』
その夜。
ぐだ子は布団の中で天井を見つめ、深い息を繰り返していた。胸の奥に、何の形も持たない霧のような“モヤモヤ”が渦巻いている。
不安とは違う。悲しみとも違う。
ただ、理由のわからない落ち着かなさがずっとまとわりついて離れない。
「……はぁ。やだ、全然眠れない……」
枕を抱きしめても、布団をかけ直しても、気持ちはさまよったままだ。
このままじゃ朝まで眠れない気がする。
その時――廊下の向こうから、やわらかい光が漏れていた。
普段なら気にも留めないはずなのに、今は吸い寄せられるように身体が動いた。
足は自然とキッチンへ向かい、扉を開けた瞬間、懐かしい安心の空気が漂ってきた。
「……こんな時間にどうした、マスター」
調理台の前にはエミヤ。
夜の静けさに溶け込むような声だった。
「えっと……眠れなくて……なんか、胸がずっとモヤモヤしてるの。理由はわかんないけど」
正直に告げると、エミヤは一度、鍋から目を離し、ぐだ子の表情を静かに確認した。
淡い気遣いがその目に宿る。
「……そういう夜もある。心が整理できない時は、むしろ寝ようとするほど遠ざかるものだ」
「うぅ……そう……なのかな……」
「無理に眠ろうとする必要はない。まずは身体の緊張をほどくほうが先だ。座っていろ。温かくて、胃に優しいものを用意しよう」
「……ありがと」
椅子に座ると、さっきまで胸の奥で濁っていた気配が、少し薄くなる気がした。
エミヤがキッチンに立つ、ただそれだけの風景なのに――
何故か心のざわめきが静まっていく。
「眠りを妨げるのは、冷えと緊張だ。そこでだが、ほうじ茶を使った粥を作っている。香りが神経を落ち着かせる。夜でも負担にならない」
「ほうじ茶……粥……?」
「食べればわかる。焦る必要はない」
彼の包丁の音は、夜の中で優しく響いていた。
まるで波の音みたいに一定で、静かで、心地よい。
器が差し出される。
ほんのり香ばしい湯気がふわりと広がった。
「ほうじ茶粥だ。梅肉をごく少量、大葉をほんのひとかけ混ぜてある。香りが強すぎると逆効果だからな」
「……いただきます」
匙ですくい、そっと口に含んだ瞬間――胸の奥のモヤモヤがすぅっと溶ける。
優しい味が舌に広がり、温かさが喉から胃へ落ちていく。
「あ……これ……すっごく落ち着く……」
「それは良かった。ほうじ茶の焙じ香には、神経を鎮める働きがある。昔から、眠れぬ夜に飲まれてきた理由のひとつだ」
説明を聞くだけで、ぐだ子はもう半分眠い。
「さらに、身体を温めるための飲み物も作っておいた」
差し出されたマグカップ――
はちみつ生姜ミルク。
「生姜は冷えを取り、はちみつは疲れた神経をほぐす。夜向けに、甘さは控えてある」
「……完全に“眠るための”セットじゃん……」
「君が眠れないというのなら、最適な方法を選ぶだけのことだ」
ミルクを口に運べば、生姜の温度が胸の奥にゆっくり広がり、深い呼吸を誘う。
ぐだ子は椅子によりかかりながら、ふっと細い息をこぼした。
「エミヤって……どうしてこんなに優しいの……?」
「優しいかどうかは知らないが……君が安心して休めるなら、それでいい」
声は静かで、穏やかで、嘘がひとつもなかった。
気づけば瞼が重い。
身体もぽかぽかで、胸のモヤモヤも消えかけている。
「……もう、ねむ……」
「部屋まで送ろう。立てるか?」
「ん……うん……」
帰り道、エミヤは歩調を合わせ、ぐだ子がよろめけば軽く支えた。
細かい気遣いが自然で、息をするみたいにやってのける。
「着いた。……おやすみ、マスター。心配はいらない。ゆっくり眠れ」
「……おやすみ……エミヤ……」
扉が閉じた瞬間、ベッドへ倒れ込み、意識はそのまま静かに沈んでいった。
温かい香りがまだ胸に残る。
ようやく、穏やかな眠りが訪れた。