AI生成 FGO SS 鍋焼きうどん食べたい 作:日毎に特定の条件を達成
◆FGO短編SS
『一時間後のための時間』
時計を見て、ぐだ子は小さく息を吸った。
「……あと一時間か」
「正確には五十八分だな」
隣で、エミヤが淡々と訂正する。
「細かい……」
「待つ時間が長いほど、人は無意識に誤差を広げる。正確に把握しておいた方が、気が楽だ」
「そういうもの?」
「そういうものだ」
カルデアのラウンジ。
ソファに並んで座り、特に何をするでもなく過ごす時間。
――一時間後には、特別なごはんが控えている。
それを思い出すたび、ぐだ子の足先が落ち着きなく揺れた。
「楽しみ?」
エミヤが視線だけ向けて聞く。
「うん。めちゃくちゃ」
「顔に出ている」
「えっ、そんなに?」
「隠す気もないだろう」
「まあ……ないけど」
ぐだ子は膝の上で手を組み、ふぅっと息を吐く。
「でもさ、こう……楽しみすぎると、時間進むの遅くならない?」
「なるな」
「即答!?」
「脳が未来に意識を向けすぎると、現在の時間感覚が引き延ばされる」
「なにそれ」
「心理的時間錯覚だ。子どもの頃、遠足の前日に眠れなかった経験はないか」
「ある……!」
「それと同じだ」
エミヤは背もたれに軽く体を預ける。
「だから、今の一時間をどう使うかで、体調も満足感も変わる」
「え、ここでもうんちく?」
「料理の前段階だからな」
「そこに繋げる!?」
ぐだ子は笑いながらも、少し真面目な顔になる。
「じゃあ……どう過ごすのが正解?」
「正解は一つじゃない」
「便利な言い方だなあ」
「だが、避けた方がいいことはある」
「なに?」
「無駄に腹を空かせる行為だ」
「えっ」
「空腹を強く意識しすぎると、血糖値が下がりすぎて集中力が落ちる。結果、食事の満足度も下がる」
「じゃあ間食する?」
「しない」
「しないの!?」
「今から重いものを入れると、本番が鈍る」
「難しい……」
エミヤは少し考えてから言った。
「白湯か、薄いお茶くらいだな」
「それだけ?」
「それだけでいい」
「なんか修行前みたい」
「似たようなものだ」
「ええ……」
ぐだ子はソファに背中を預け、天井を見る。
「でもさ、待ってる時間って、どうしてもソワソワする」
「それは自然だ」
「エミヤはしないの?」
「しないわけではない」
「意外」
「ただ、扱い方を知っているだけだ」
「扱い方?」
「楽しみを“今”に少しずつ分ける」
「どうやって?」
エミヤはテーブルに置かれた紙コップを軽く指で弾く。
「例えば、香りを想像する」
「香り……」
「温度、音、器。食事に至る情報を思い浮かべることで、脳は少し満足する」
「え、それズルくない?」
「調理前に仕込みをするようなものだ」
「また料理に戻る!」
ぐだ子は笑いながらも、目を閉じる。
「……湯気、立ってる気がする」
「それでいい」
「……ちょっと楽になったかも」
「だろう」
エミヤは腕を組んだまま、視線を前に向ける。
「それから、軽く体を動かすのもいい」
「え、今?」
「座りっぱなしは、待ち時間を長く感じさせる」
「じゃあ散歩?」
「廊下を一周する程度でいい」
「付き合ってくれる?」
「当然だ」
「言い切った」
二人は立ち上がり、ラウンジを出る。
カルデアの廊下は静かで、どこか落ち着いた空気が流れていた。
「こうやって歩いてると、少し気が紛れるね」
「感覚入力が増えるからな」
「難しい言い方……」
「要するに、頭が暇じゃなくなる」
「それなら分かる」
ぐだ子は歩きながら、ふと聞く。
「エミヤはさ」
「何だ」
「特別なごはんの前、どうしてるの?」
「……昔の話か?」
「うん」
エミヤは一拍置いた。
「必要以上に考えないようにしていた」
「意外と普通」
「期待しすぎると、失った時の反動が大きい」
「重い……」
「だが、今は少し違う」
「どう違うの?」
「こうして誰かと待つ時間があるなら、それも含めて“食事”だと思える」
ぐだ子は歩みを緩めた。
「……それ、ちょっと嬉しい」
「事実だ」
廊下を一周して、ラウンジに戻る。
時計を見ると、残り四十五分。
「減ってる!」
「歩いた分だな」
「すごい……」
ソファに戻り、ぐだ子は姿勢を整える。
「ねえエミヤ」
「何だ」
「今からできる、もう一個おすすめある?」
「ある」
「なに?」
「期待を言葉にするな」
「え」
「心の中で留めておけ」
「どうして?」
「言葉にすると、未来が確定したように感じてしまう」
「……?」
「余白がなくなる」
ぐだ子は少し考えてから頷いた。
「なるほど……じゃあ、内緒にしとく」
「それでいい」
静かな時間が流れる。
時計の針が進む音すら、さっきより気にならない。
「……ねえ」
「まだあるのか」
「エミヤと一緒だと、待ち時間そんなにつらくない」
「それは何よりだ」
「料理できる人って、待つのも上手なの?」
「待てない者に、火加減は扱えない」
「深い……」
「深くはない」
やがて、時計が残り十分を示す。
ぐだ子は自然と背筋を伸ばした。
「きた……」
「落ち着け」
「無理」
「深呼吸だ」
「はい……」
エミヤは立ち上がる。
「そろそろ行こう」
「うん!」
ラウンジを出るその背中は、
さっきより少しだけ軽かった。
特別なごはんは、まだ先。
けれど、その一時間は、確かに“満ちた時間”だった。
終章あと1時間だよもう。ドキドキワクワク