AI生成 FGO SS 鍋焼きうどん食べたい   作:日毎に特定の条件を達成

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『フライパンの中に二つの太陽』

◆FGO短編SS

『フライパンの中に二つの太陽』

 

 カルデアの朝はいつも静かだ。だがこの時期の朝は、冷えた空気の中にわずかな期待の余白が残っている。食欲の導線はまだ寝ぼけているのに、厨房だけは先に目覚める。

 

 その厨房で、エミヤはフライパンを温めていた。油を薄く敷き、温度を確かめ、指先で空気の流れを整えるように一拍置く。そこに迷いはない。ただ「適切な温度帯」を迎えるための沈黙だ。

 

「おはよー……って、早っ。もう焼いてるの?」

 

 眠気を纏ったまま、ぐだ子が現れた。彼女の髪はふわりと跳ね、寝癖すらイルミネーションのように散らばっている。

 

「早朝は温度が逃げやすい。だから火を入れる前の準備だけは先に済ませる」

 

「それは、まあ、わかるけど」

 

 エミヤは冷蔵庫から卵を二つ取り出した。白い殻を指で軽く弾き、割るというより“開く”。ボウルを使わず、直接フライパンの縁で殻を割る。

 

 カツン——。

 

 音は軽く、しかし確実。ひびが走り、殻が開かれ、黄身を壊さぬまま白身だけが静かに滑り落ちる。続けてもう一つ。

 

 カツン——。

 

 二つ目の卵も同じ動作で開かれ、白身が連続した波紋のように流れ込み、黄身が中央で形を保つ。フライパンの上に、二つの黄身が並んだ。

 

 まん丸。ふたつ。白い宇宙の中の恒星のようだ。

 

「……」

 

 ぐだ子の言葉が止まる。語り出しの沈黙ではない、純粋な見惚れの沈黙だ。

 

 油が弾ける。音は星の瞬きのように細かく、規則正しく。

 エミヤはフライパンを傾け、白身を泳がせ、黄身の輪郭を保ったまま焼き色だけを底面に与える。焼きすぎない。崩さない。色を付けすぎない。朝の皿に乗せるための温度管理。

 

「ねえエミヤ」

 

「なんだ」

 

「いやさ——なんか今日の卵、めっちゃ丸くない?」

 

「丸いように焼いているからな」

 

「なんでそんなドヤるの」

 

「君が訊いたからだろう」

 

「訊いてない、評価してるだけ!」

 

 フライパンの上で白身が固まり、黄身はまだ柔らかい。

 エミヤは皿を二つ用意しない。今回は不要だ。皿はひとつ。ひとつの宇宙に恒星は二つ並んでこそ意味がある。

 

「できたぞ」

 

 皿に盛られた目玉焼きは、ふたつの黄身が並んでいる。ベーコンもマカロニもいない。うどんもいない。だが太陽はいる。

 

 ぐだ子は皿を受け取り、椅子に腰掛け、両手で丼のように皿を包んだ。

 

「……なんかさ」

 

 エミヤは返さない。促さない。続きを待つ。

 

「……太陽みたい。しかもふたつ。

 フライパンの中に朝が2回あるみたいで、きれい」

 

 エミヤは黙って皿の縁を拭く。

 その仕草は言葉より優しい。

 

「太陽が2回ってなんか得した気分!」

 

 ぐだ子は笑う。さっきまで見惚れていたのに、今度は笑う。

 白身の上のふたつの太陽は、確かにイブよりも“今日”の輪郭を作っていた。

 

 ぐだ子はフォークを手に取る。

 そしてそのまま、皿の上の太陽を切らず、崩さず、端からそっと食べ始めた。

 

 黄身がとろりと流れ出す。その軌跡すら星の尾のようにきれいだ。

 食べ終わった後に残るのは焦げ跡ではなく、「あの光景の認識」だけ。

 

 エミヤは洗い物を急がない。ぐだ子も急がない。

 太陽は二つあったが、朝は一つで十分だった。




太陽二つ好きだわ
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