会社の同僚や先輩達が全員薄い本みたいな能力なんだけど 作:特殊性癖
『お?新入り。まずは着いてこい話が長くなるからな』
ボスとの話が終わり、用意された寮の自室へと戻ろうとした矢先だった。先輩が僕を待っていた様で、そのまま言う通り先輩の後ろを歩いた。
少し歩くと、先輩が立ち止まったのでそれに従い僕も歩みを止めた。
『突然だが、お前の"能力"は何だった?』
「ぼ、僕ですか?僕の能力は"常識改変"です。触れた人間の当たり前を変える事が出来るって言われたんですけど、正直実感が……」
『分かるさ。俺だって、突然"貴方の能力は時間停止です"って言われた身だからな』
「え、先輩の能力って時間停止なんですか!凄い!!あの伝説の能力の保持者なんて」
ネットでしか聞いた事が無かった有名な能力に、つい僕は興奮してしまう。
『よせよ、大した能力じゃない。時間を止める事が出来るだけの能力だ。それより、常識改変か。良い能力だな』
それに対して、先輩は軽くあしらい話を変えた。だから僕は深くも突っ込まない。
「そうですかね?先輩に言われるのなら、そうなのかもしれないですね」
『まぁ、どんな能力だろうと使いこなせれば強くなれるからな。……にしてもやっぱりか。いや、今更か』
先輩は独り言の様にそう呟く。訳も分からずぼーっとしていると。
『そうだ、これから仕事に行くんだが、行くか?ボスにも一回自室に戻った後、仕事に同行しろって言われた筈だ。順番は逆になっちまうが、自室は後で俺が後で案内するから』
僕はまだ何も知らなかった。この会社の事、そしてこの会社における仕事の事。そして能力の事も何一つ知らなかった。
『悪いな、初めてで実戦の仕事なんて』
「いえ、大丈夫です。ただ何するのか分からないのが不安ですが……」
『ん?何にも聞いてないのか?』
「はい、言われたのは能力と先輩に付いていけば良いって事を社長に言われました」
『通りで短かった訳だ。全部丸投げかよクソッタレ』
短くため息をついた後、先輩は何処かに電話を掛けた。
『作戦変更だ。おい、今何処ににいる?そこからで良いから俺の現在地の穴から現場までの穴を繋げてくれ』
『人使い荒ッ。ったくしょーがないなー。棒菓子後で箱で頂戴よ?箱ね?』
『わーった、分かった。早よ』
『此処かな?アナは、よし入った。貫通したよー』
大きい音が響いた後、その場所に人一人入れそうな穴が出来た。これも能力?
『上出来だ、流石変態した能力者は違うな』
『辞めてよー。一文字も褒められてる気がしないからさー』
ガラケーをパタンと畳んだ音の後、先輩は行くぞと呟いてそこから飛び降りた。下が全く見えない穴に恐ろしいなぁと思いつつもこうしていても何も終わらない。
僕は、勇気を出して穴に飛び込んだ。
「うわああああああああ!?」
その穴は思ったより暗くて深かった。
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