戦争終結から64年。比較的平穏に暮らしていた人類は戦争のツケを払わされることとなった。
後に深海棲艦と呼称されることとなる存在が海から現れ、人類が操る船・航空機・港が襲われるようになったのである。
深海棲艦の襲撃と同時期、後に艦母と呼称される存在と妖精と呼称される存在によって、深海棲艦に襲われた人類が助けられるようになった。
人類に接触した艦母は、「彼女達は、恨みや怨念が集まって生まれた。彼女達を浄化するために私達は生まれてきた」と語った。
艦母と妖精は、沿岸の土地を求めた。人類はそれを承諾した。
深海棲艦に襲撃された中には、人類が保有する兵器もあった。
その力が一切通じなかったのだ。思惑はどうあれ、断るという選択はなかったのである。
人類は、深海棲艦の被害にあい破壊された土地と利用できなかった険しい土地を艦母と妖精に譲渡した。
その土地に、妖精は設備を建て、艦母はその周囲の制海・制空権を確保した。
制海・制空権が確保された頃、艦母は戦力を増やすことに着手した。
艦母は持っている力は強かったが、元になった船につき一人しかいなかった。
「弱い怨念の深海棲艦しか現れてない今は大丈夫だが、そう遠くない内に強い怨念の深海棲艦が現れて、数が少ない私達は押し負ける」
そのことを解っていた艦母は、数の不利の対策のために資材から己の分身を造れる設備を妖精に頼んだ。
艦母に宿っている存在である妖精は、己の分身を生み、設備に宿らせることで、それを成した。
最初の分身を造った艦母は、「この子達には人の指揮が必要だ」と人類に指揮官を求めた。
そして、「私達と、この子達は別個の存在。けれども、源である艦母と妖精が沈むと、それ以後新しく艦娘と妖精さんが生まれなくなる」と独立した裁量権を要求した。
その対価として、艦母と妖精は資源の供給と技術提携等を提示した。
人側に有利な取引を持ちかけられた人類は一も二もなくそれを承諾した。
艦母の分身は艦娘と、妖精の分身は妖精さんと呼称されることとなり、沿岸に立てられた設備群は鎮守府や泊地・基地と呼ばれる、人の営みがある地になった。
人類に艦娘と妖精さんを託した艦母と妖精は、内地で艦娘と妖精さんの指導をするようになった。
戦争が始まって4年が経とうとする春、鬼・姫種と呼称されることとなる強い怨念から生まれた深海棲艦が現れるようになった。
その時に、建造艦娘を無暗に沈める・建造艦娘を欲で利用している指揮官がいることが判明し、艦母・妖精からの要求による粛清が行われた。
「恨みを晴らす側の人間が、恨みを生むようなことをするべからず」が、暗黙ではなく公の了解になったのは、この時からである。
それから2年が経った7月7日、輸送姫と呼称されることとなる存在が日本海で目撃された。
それを聞いた日本の艦母は思った、『彼女』が帰ってきたと。日本の妖精は思った、『あの方』がどこかにいると。
これは輸送姫と呼ばれた『彼女』と一人の異端者が、世界をかき回すお話である。