スラム生まれのスライム使い   作:スライム

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1話 転生

 転生先は大ハズレだった。

 

 目が覚めたのはスラム街のゴミ山。

 無事に生きていけるかも怪しい。

 普通さ、異世界転生って言ったら貴族じゃないか。もしくは王族とかさ。

 

 前世も貧乏だったし、高校も行かずに働いて事故死とかいう、しょうもない人生だった。

 せっかく転生しても、俺に良いことはないらしい。

 

 生まれてからすぐに捨てられたのだ。

 この世界の言語はわからないけど、どうやら望まれて生まれたわけではないらしい。

 

 ゴミの山に捨てられた俺は、ただ泣き叫ぶことしかできなかった。

 チート能力もチート魔法もない。いやあるのかもしれないけど、使い方なんてわからない。

 

 おい神様、なんで俺を転生させたんだ。

 勇者なんて憧れてない。ただ、普通に生きたいだけなのに……。

 

「〇〇〇〇〇!」

 

 泣きつかれ、生きるのを諦めたころ。一人の女性が、ゴミ山から俺を抱き上げた。

 

「〇〇〇〇〇〇」

 

 なにを言っているのかはわからないけど、優しい声音だった。

 自分もやせ細り、ボロボロなのに……優しく、俺に笑いかけてくれた。

 

 ああ、どうやら女神はいたようだ。

 女神のような女性のおかげで、俺は生き延びることができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 スラム街の女神ことレイニーさんのおかげで、俺は五歳になることができた。

 

「アレフ、私はお仕事に行ってくるからね」

「わかった。僕は水を汲んでくるね、レイニーさん」

 

 アレフ。それが、レイニーさんが付けてくれた名前だ。

 お母さんとは、呼んだことはない。レイニーさんと他人行儀に呼ぶたび、彼女が少し悲しそうな顔をするとわかっていても。

 

 だって、レイニーさんは二十歳前後の少女なのだ。前世の俺とそう変わらない。

 母と呼ぶなんて、なんか、むずがゆいだろ?

 

「行ってきます」

「いってらっしゃい」

 

 レイニーさんを見送ってから、俺も木桶を手に持つ。

 彼女には感謝している。自分が生きるだけでも精一杯なこのスラムで、俺を五歳まで育ててくれたんだから。

 

「俺も早く稼げるようにならないとな」

 

 今は、せいぜい水を汲みに行くくらいの手伝いしかできない。

 五歳のガキにできることなんて、たかが知れている。

 

「……相変わらず、スラムは汚えな」

 

 家を出てすぐ、つんと来る激臭に鼻をつまむ。

 汚物の匂いや腐臭、なにかわからない匂い……とにかく、臭い。

 トイレもなければ汚物を処理する習慣もない。臭くなるのも当然だ。

 

 綺麗な水なんて、そうそう手に入るものではない。

 一時間ほど歩くと川が流れているので、そこまで毎日汲みに行くのだ。その川も、町の下流にあるので恐ろしいほど汚いが。

 現代日本に暮らしていた俺にとっては耐え難いが、もう慣れた。

 

「生きる。とにかく生きるんだ」

 

 せっかく転生したのに死にたくない。……それに。

 身を削って俺を救ってくれたレイニーさんに報いるためにも、俺は死ぬわけにはいかないんだ。

 

「出ろ、炎! 水! 風!」

 

 歩きながら、闇雲に魔法を使おうとする。当然、出ない。

 この世界には魔法がある。それは、レイニーさんから聞いた。

 でも、使えるのは貴族など、才能のあるごく一部だけ……。普通は使えないし、スラムでも見たことはない。

 

 でも俺は諦めない。

 魔法が使えれば、金を稼いで、レイニーさんに恩返しができるかもしれないから。

 

 彼女がなんの仕事をしているのかは知らない。

 聞いてもはぐらかされる。

 

 ロクな仕事のないこのスラムで、少女が金を稼ぐ……。悪い想像は尽きない。

 

「クソッ、俺にチート能力があれば……」

 

 水を汲みながら、舌を噛む。

 自分のことなんて、今更どうでもいい。一度死んだ身だ。

 だが、レイニーさんのことは助けたい。

 

 

 

 ……余計なことを考えていたのが悪かったのだろう。

 

「え……?」

 

 歩き出した拍子に、足元にいる存在に気付かなかった。

 

「スライム……ッ」

 

 某RPGのように、序盤に倒す弱い魔物ではない。

 スライムは、あらゆるものを溶かす魔物だ。

 

 動きも遅く意思もないから、気を付けてさえいれば、大した脅威ではない。

 だが、一度捕まれば……。

 

「まずい……」

 

 踏み出した足が、スライムに飲み込まれていく。

 

「やめろ!!」

 

 とっさに、俺はそう叫んだ。

 その瞬間、地面に魔法陣が広がった。

 

「え……?」

 

 スライムがぴくりと震え、するすると俺の足から離れていった。

 次に、俺の手の甲に魔法陣が浮かび上がる。

 

「スライム……使役?」

 

 手の甲の魔法陣には、そう書かれていた。

 

 どうやら、俺にも魔法が使えたらしい。

 チート能力と呼ぶには、少々地味だけれど。

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